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軍手で服を作っていたら、「歌わないか」とスカウトされた|xiangyuインタビュー 〜前編〜

Aug 13, 2019
2018年9月にアーティスト活動をスタートさせたxiangyu(シャンユー)。未だ“謎ばかり”のxiangyuは、文化服装学院を卒業し、デビュー前までアパレルの仕事をしていたという経歴の持ち主。音楽とはまったく縁がなかった彼女が、なぜ歌手としてデビューしたのか、音楽にかける想いとは。xiangyuを音楽の世界に誘ったマネージャー、福永泰朋(水曜日のカンパネラのDir.F)とともに話をきいた。

軍手で服を作っていたら、「歌わないか」とスカウトされた|xiangyuインタビュー 〜前編〜

Aug 13, 2019 - MUSIC
2018年9月にアーティスト活動をスタートさせたxiangyu(シャンユー)。未だ“謎ばかり”のxiangyuは、文化服装学院を卒業し、デビュー前までアパレルの仕事をしていたという経歴の持ち主。音楽とはまったく縁がなかった彼女が、なぜ歌手としてデビューしたのか、音楽にかける想いとは。xiangyuを音楽の世界に誘ったマネージャー、福永泰朋(水曜日のカンパネラのDir.F)とともに話をきいた。
Profile
xiangyu(シャンユー)
アーティスト

2018年の9月から活動をスタートした日本のアーティスト。xiangyu(シャンユー)という名前は、本名の「あゆみ」に由来して中国語の「鮎」から名付けられた。ラップ、テクノ、ベースミュージックを基礎に、幅広い音楽を展開する。

そもそも人前に出るのがあんまり得意じゃなくて…

だらしなくも愛おしい日常を歌った「風呂に入らず寝ちまった」。ひらすら“プーパッポンカリー”(カニと卵をカレーソースで炒めたタイ料理の名前)と都内のタイ料理屋の店名を連呼する「プーパッポンカリー」など、xiangyuが描き出す世界観はかなり独特。水曜日のカンパネラのケンモチヒデフミがサウンドプロデュースを務め、中毒性の高い楽曲を生み出している。

 

—先日の日比谷音楽祭のステージ拝見しました。屋外のフリーライブでしたが、ああいった環境でライブをするのははじめて?

xiangyu:はじめて。野外も初でした。あんなにたくさんの人の前でパフォーマンスをしたことがなかったので、人がいっぱいいることにずっとびっくりしていて(笑)。

—xiangyuさんのことを知らないお客さんもたくさんいたと思いますし、それこそご年配の方から小さなお子さんまでいて。子どもたちが途中から立ち上がって踊り出していたのがとても印象的でした。

xiangyu:外だと音楽が鳴っているだけで、足を止めてくださるじゃないですか。だからあのイベントはすごく面白かったです。純粋にいろんな人いっぱい見てもらって、すごくうれしかった。

—私がはじめてxiangyuさんの存在を知ったのは、ラジオ番組にゲスト出演されていたのを聴いたときなんですが、そのときラジオで「めっちゃめちゃ緊張してます」とおっしゃっていましたよね。今でもライブなど緊張されますか?

xiangyu:ずっと緊張します。そもそも人前に出るのがあんまり得意じゃなくて、最初の頃は人前に出るっていうだけで緊張していました。今は緊張の性質がちょっと変わってきていて、やっぱり毎回同じライブの現場はないですし、ラジオとか、こういう取材のときも、全部の現場が違うじゃないですか。毎回はじめてのところだから緊張する。でも、緊張していたほうがその現場を楽しめるタイプなので、悪いことではないと思っています。

デザインフェスタで声を掛けてきたのが福永さん(現マネージャー)

—xiangyuさんは活動をはじめてまだ一年も経っていないですもんね。人前に立つことも苦手だったxiangyuさんが、なぜいまアーティストとしてここにいるのか、その経緯を教えてもらえますか?

xiangyu:私は高校を卒業してから文化服装学院に入ったんです。子どもの頃からずっと、絵を描いたり、自分で手を動かして何かを作ることが好きで。高校生のとき一番はまってたのが服作り。ちょうどその頃、いろんな高校生が集まってチームを作って、渋谷のclubasiaとかVUENOSでファッションショーをやるのが流行ってたんですよ。それに高校の友達が参加していて、すごい楽しそうだったから、私も参加して。それで洋服作りをもっと勉強したくなって、文化服装学院に進んだんです。

文化のときは、授業の課題以外でも常に手を動かして、ずっと何かを作っているタイプでした。私その当時、ホームセンターにはまっていて。ホームセンターの資材って、すごい魅力的だったんです、私にとって。

—ホームセンターの資材って…、軍手とか?

xiangyu:そう、軍手とか、ブルーシートとか、カラーコーンとか、工事現場のロープとか。なんかそういうものに、すごいときめいていて。ホームセンターにある素材を使って服を作ってみようって思いはじめて、それを作りためて、専門学校1年生のときかな、東京のビッグサイトでやってるデザインフェスタに出展したんですね。その展示を見て、声を掛けてくださったのが、今のマネージャーの福永さんっていう(笑)。

—そのとき福永さんがデザインフェスタに行かれていた目的は?

福永:僕は水曜日のカンパネラというアーティストのマネジメントもやってるんですけど、カンパネラの曲を作っているケンモチさんも、昔そのデザフェスでCDを売ってたんですよ。僕はそこでケンモチさんと出会って、何か面白いことやりましょうみたいにはじまった経緯があって、カンパネラの初期のCDはデザフェスで売ろうということになって出店したんです。もともとデザインとか好きなんで、いろいろと物色しながら回っている中で、ちょっと引っ掛かった展示物があって。物を売ってなくて、展示だけしていて、なんか面白いなあと思って。

xiangyu:もともとビックサイトでやってるデザインフェスタって、皆さん物を売ってるんですよね。それ、わかってなくて、私が。

福永:多分展示をする所と間違えたのかなと思って(笑)。

xiangyu:本当に単純に凡ミスなんです。そのイベントに私何度も行ったことあるんですよ。何度も行ったことあるのに、気付かなくって。何も売らずに見せるだけの展示を…。

—いったい何を展示していたんですか?

xiangyu:軍手で作った服を着て、ホームセンターに軍手を買いに行くっていうのを、写真で撮って展示していました。あとブルーシートで作った服を着て、ブルーシートを買いに行くっていうのも。今考えると、自分でもなんか謎だなって思う。映像でもなんでもないし、1人ですっごいしょぼい展示をしてたんです。それに対して、声を掛けてくださったんですけど、しかも音楽を一緒にやらないかって。それって結構謎じゃないですか。

歌がうまいより、面白いアイデアと実行力があるかどうか

—もう謎しかないです…。福永さんは、歌を歌わないか、と声を掛けたんですか?

福永:そうですね、基本的には。音楽に関してはケンモチさんがいるので、そこの才能はあんまり求めてないというか。それよりは、その人自体の面白みというか、才能に興味があります。

—歌がうまいとかではなく?

福永:歌がうまいとか以上に、何か面白いものを持ってる人のほうが、ステージ立っても多分面白いだろうし、みんなが気にするってことじゃないですか、人気者になるってことは。そういう才能は、別に音楽じゃないところでも一緒なんで、歌が歌えるかどうかはスカウトする際の重要なファクターではないという感じですかね。

—たしか水曜日のカンパネラのコムアイさんも同じような声の掛け方だったんですよね?

福永:彼女も自分でお金を集めてキューバに行くとかいろいろな活動をしていて、面白いなと思ったんですね。だから、面白いアイデアと実行力があるかどうかのほうが重要というか。

平成の終わりまで、カラオケに行ったこともなかった

—xiangyuさんはその両方を兼ね備えていたわけですね。

xiangyu:わからないですけど、まあ、そういうことになるんでしょうね(笑)。でも私、歌を歌うのにすごいコンプレックスを持っているので、友達とカラオケに行ったのも、本当この前の4月下旬とか、平成の終わりがはじめてなんですよ。避けてきたんです、そういうの。

2次会とかでカラオケに行ける人たちのことを超尊敬してて、本当に無理なんですよ。今はもうだいぶ平気になったんですけど。よくあるじゃないですか、高校生のときとか、帰りにカラオケ行こみたいな。うらやましいなと思って、行きたいんですよ、本当は。でも、小さい頃に音痴だって言われたことがあって、それ以来ずっと自分は音痴なんだと思って生きてきちゃってるから、そんな簡単には考えが変わらなくって。学校で歌のテストとかあっても、わざわざ休んで再試に混ざって、最少人数の前で歌うくらいの徹底ぶりだったんです。40人もの前で歌うとか、本当にきついので。

不安もあるけど、いまは音楽をやっている自分が好き

—そんな状態の中、音楽をやるというのはそもそも人生の選択肢に入ってないですよね?

xiangyu:入ってない。そうなんですよ。これが文章を書くとか絵描くとかだったら、まだなんとなくわかるんですけど、歌っていうのは自分自身が楽器になって表現するっていうことだから、すごいハードルが高過ぎちゃったんですよね。福永さんのことをネットで調べたりしても、どういうことをされてる人なのか、全然出てこなかったので、よくわからなくって(笑)。その後何年も保留にしちゃったんです。

それで、専門学校を卒業した後は、アウトドアアパレルの会社で働いたり、コスチュームデザイナーのアシスタントをやったりしました。仕事中はいつもラジオを聴いているんですが、あるとき阿川佐和子さんがゲストの回があって、「他の人も自分自身も気付いていない自分の才能って、まだどこかに眠ってるんじゃないか」みたいなことをおっしゃっていて、私はそれにすごい感銘を受けたんです。私は服を作るという表現方法しか持ってないって思ってたけど、もしかしたら自分の気付いていない何か別のできることがあるのかもしれないって、思うようになって。

福永さんは、その後もコンスタントに連絡をくださって、それこそ5、6年も何か一緒に面白いことをやろうって言い続けてくれたので、それに乗っかってみるのもいいかなって。私、そのとき年女だったっていうのも、結構大きいんですけどね(笑)。

今25ですし、音楽をやりはじめたのは決して早くはないと思うんです。それこそ10代とか、もっと若い頃からやってる方とかは、私ぐらいの年齢で活躍されてる方もたくさんいらして、焦らないことはないんですよ、もちろん。すごく不安になることもいっぱいあるけど、専門時代にいろいろもがいたときの自分とか、会社員のときのことも、それがすべてあって、ようやく音楽する気持ちに向いたから、全部やっててよかったなっていうか。そういうときがあったから、今はちょっと、音楽やってる自分が好きなんですよ。そういうふうに思わせてくれたのも、結局音楽の力じゃないですか。だから、音楽の持ってる力ってすごいな、って思っていて、それに今自分もすごい助けられてるから、音楽という表現方法を使って、自分ももっといろんな人にその力を届けたいなあとは思ってます。

人前に出ることが苦手。カラオケも行けなかったxiangyuが、音楽をはじめるまでの物語をきいた前編。後編では楽曲作りや衣裳についてのこだわりきいた。

インタビュー後編はこちらから

 

↓餃子になったxiangyuさん!インタビュー後編の予告動画もみてね!

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