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Adaptation — starring Makoto Tanaka

Jan 11, 2022 - FASHION
この世界の不条理に
飲み込まれてしまわないように。

女優・田中真琴は
想像し、行動し、適応していく。

 

 

Interview with Makoto Tanaka

  田中真琴インタビュー

— 映画『異物-完全版-』、拝見しました。4章の短編からなる作品でしたが、田中さんが出演された第2章『適応』の撮影はこのお店(宇賀那健一監督が手掛ける渋谷のカフェ&ダイナー「VANDALISM」)だったんですね。

はい、ここで撮りました。

— 店内の壁には『異物』のポスターが貼られていますが、最初にこのビジュアルを見たときはホラー映画かと。

そう思いますよね。でも、ある意味ホラー?

— ホラーでもありコメディでもあり、とにかく不思議な物語でした。劇中に登場する“異物”って、なにかのメタファーなのかなと考えさせられたんですけど、それについて監督から説明は受けましたか?

いや、聞かなかったです。できあがった作品を観て、無垢な状態で“あいつ”と向き合ったことが正解だったなと思いました。偏見や先入観を持たずに、あいつと対峙してるっていうのが画面越しでも伝わったので。

— 他の3作を意識することもなかったですか?

なかったですね。あいつ自体がリアルじゃないというかファンタジーっぽいから、私はできるだけリアルでいるよう心掛けました。手がかゆかったらかくし、手遊びしたい時はしちゃうし…みたいなことは意識してやりました。

— 確かに自然でしたよね。吉村界人さんとの掛け合いも、テンポというか、間の取り方が絶妙で面白いなと思いました。

宇賀那さんが「ここはいっぱい間をとって」とか「ここは早すぎない方が良いよ」とか演出をつけてくださったので。私はあんまり間が得意じゃないので、教えていただいて考えながらやって勉強になりました。

— 吉村さんは初共演でしたか?

以前1回ドラマで共演させていただきました。上司と後輩の役で。その時も仲良くなって、今回も「おぅ、久しぶり」という感じでした。信頼しています。

— なるほど。吉村さんとの共演で、やりやすさや、やりにくさは?

やりやすかったですね。吉村さんは体現するのがうまいというか、ここに生きるのがうまい役者さんなので。全部のセリフを自分の言葉にするし、吉村さんの色で返ってくることに安心感がある。吉村さんがいるだけで、画がすごく格好良くなるなと思います。

— 田中さんも吉村さんと並んでいると雰囲気があるというか、画力がありましたよ。撮影が2020年6月っていうことは、緊急事態宣言が開けてすぐぐらいですかね?

そうです。ちょうど緊急事態宣言が出る直前に関西でお仕事があって、関西の実家にちょっと寄ったら宣言が出て東京に帰ってこれなくなって。で、帰ってきてこの撮影があって、完全にコロナ太りしてるやん、と。映像を観た時に、「こういう肩とか出した時にむちっとした女子いるよな」っていうのが逆にリアルで笑っちゃったんですけど……気を付けます、以後。

— それでより画力が出ていたのかもしれないです(笑)。

そうであればいいな(笑)。

— 緊急事態宣言中は、どう過ごしたか覚えてますか?

実家だったのでやることもないし、とりあえずラーメンを作りました。

— 作った? 自分で?

ラーメンがすごい好きで、ずっと作ってみたかったんですが、1人暮らしの家で作ると臭くなっちゃうから、やだなぁと思っていて。実家だったら良いかということで、肉屋さんで骨とかいっぱいもらってきて炊きました。豚骨とか牛肉とかネギとか玉ねぎとかいっぱい入れて出汁を作って。それで、お姉ちゃんが(蒙古タンメン)中本を食べたいって言うから、家で再現する方法を調べて作ってみたり。

— すごいですね。どうでした?出来栄えは。

中本は上出来でした。わざわざ韓国産の唐辛子を買ってきて、唐辛子を使い分けたりしてうまくいきました。醤油ラーメンも作ったんですけど、そっちは300円でもいらないレベルでした。

— 自分でやってみると、いかに店がすごいことをしているかがわかりますよね。

舐めてました。あのクオリティを保ち続けられることがすごいです。あと骨とかの後処理がめっちゃ大変で。もう二度と作らないって決めました。大変な作業だなって、よりリスペクトが生まれましたね。そして、しっかり太りました。

— お仕事がない状態が2ヵ月も続くって、今までにない経験だと思うんですけど。

確かにそうですが、別に焦ることもなかったです。お姉ちゃんが結婚して引越しが決まってたり、弟の就職が決まってたりしたので、家族5人で過ごせる最後の時間なんじゃないかなって思って。だから楽しいことをしようと、餃子パーティをしたり、クレープパーティをしたり……。

— 食べてばっかりですよね。

どこにも出かけられないし、食べることばっかり考えて食べてました。

— でも、素敵です。大人になると家族で過ごす時間ってなかなか取れないですし。

もう二度と起きて欲しくないし、起こらない状況だからこそ大切にしようぜ、みたいな。フィルムで家族写真を撮ったりもしてみました。

— お仕事には自然に戻れましたか?

役者仲間の子たちは「台詞覚えが悪くなってた」とか言ってて不安だったんですけど、意外と大丈夫でした。吉村さんが「俺めっちゃ台詞不安だから合わせようぜ」と言ってくれて、本番前に2人でごそごそと合わせられたのも良かったです。

— 映画の終盤には「人生はいつだって平等に不条理だ」という台詞があって、コロナ禍とも重なるように感じたんですけど、そうでなくても日常って不条理とか理不尽なことだらけじゃないですか。田中さんはそういうことに対して、自分自身をどうやって保ち続けていますか?

例えば、車でクラクションをならしながら、猛スピードで追い抜いていく人とかいるじゃないですか。でもむかつくと損だから、「もうすぐ子供が生まれそうなんだ」って思うようにしています。勝手に理由を作ってあげるようにしていますね。

— すごくいいですね。先ほどの緊急事態宣言中のすごし方もそうですけど、状況をプラスに捉えるっていう。

そういうふうに心掛けてます。電車で割り込みされても「そんなに疲れて座りたいならどうぞ」みたいな、あんまり気にしないように。1個気になっちゃうと、世の中気になることしかないので。東京は特に。

— 怒り出すとすべてに対して怒らないとってことですよね。

そうなんです。私も結構感情が激しい方なので、子供の頃からどうやったらそのスイッチが入らないようにやっていけるか…で、こうなりました。小学校の友達に久しぶりに会っても「丸くなったね」って言われるぐらいで。ずっと丸くなり続けてます。

— いいことですよね、きっと。

うん、いいことだと思います。

— 最近は、ご自身でも『ピーコックブルーガール』という自主制作映画を撮られていますが、制作状況はいかがですか?

クラウドファンディングで多くの支援をいただけて、そのプレッシャーもあってゆっくりちゃんと考えて作ろうと思って。今また脚本を作ってもらってるんですけど、オチが見つからず。みんなでアイデアを出しながら決めているところです。

— 完成の目標は?

本当は(2021年の)年内だったんですけど……春には上映会ができたらいいなと。

— 楽しみです。

本ができたら、すぐにやります。この1年で一緒にやろうよって言ってくれる人が増えたので、その人たちとわぁっとできると思うので。

— ご自身が監督の立場となって、なにか気付きはありましたか?

めっちゃありました。撮影日までにこんなに準備してるんだーっていう当たり前のことに改めて気付いたし、撮影当日も私たちは行ってメイクしてもらってお芝居をしてるけど、みんなもっといろんなことで頭がパンクしてるんだなとか、本当にいろんなことに気付かされました。

あと、人にこうして欲しいって伝えること、お芝居もそうだし、ライトとか音響とかの伝え方の難しさもあって。作品を作るうえで情報やイメージを共有して、バランスを取ることがすごく大事だということが発見でした。

— 役者としての田中さんの振る舞い方も変わってきそうですね。

今までももちろん感謝してやってきたつもりだけど、もう撮影日を迎えさせていただいてありがとうございますっていう気持ちになるぐらい。衣装の準備とかもめちゃ大変だし、わがまま言わないようにしよう…言わなかったけど、言わないようにしようって改めて思いました。

— 役者として現場で求められるものは? 監督目線で考えると。

やっぱり引き出しがいっぱいあったほうがいいよなと。監督がどういうふうに求めてくださっているのかを決めつけるんじゃなくて、自分はこの本を読んでこう思った、監督はこう思ってるかもしれない、全く違う人が読んだらこう思うかも、ぐらいの3パターンぐらいをイメージして現場に入ったら、自分の解釈と違うことになっても対応できると思うし、そういう役者さんの方が使いたいと思ってもらえそうですよね。

— ご自身で監督を経験したうえで、宇賀那監督のどういうところがすごいと感じますか?

今作の『異物』とか『サラバ静寂』とかが好きなんですけど、世界観の統一がすごいなって。

— それは画もそうだし、音楽もそうだし。

はい。キャスティングとか演出とか編集もバラバラになりそうな設定なのに、いいタイミングで「その音が来たらそう見ちゃうよね」みたいな。ミステリアス感があるのに気持ち悪くなく観れるっていうのが不思議。

— やっぱりそれって難しいことなんですね。

できないです。バランスの取り方がすごい。

— 映画作りやラーメン作りなどいろんなことに挑戦されていますが、他にやりたいことは?

やりたいことはいっぱいあって。今年はDIYやYouTubeもはじめました。あとは絵を勉強したいです。

— 絵画ですか?

はい。あと中国語も勉強してみたい。

— 中国語なんですね? 英語じゃなくて。

中国人の友達が外国人で一番多いっていうのもあるし、あとたぶん私中国語が得意な気がする。

— なんですかそれ?

そんな気がすると思ってたら、占い師さんにあなたは中国語がいいですよっていきなり言われて。「あ、やります」って。

— フットワークが軽いというか、本当に直感で動けるタイプなんですね。

そうなんです。何も考えずにやっちゃう。

— いや、素晴らしいです。では最後に、ここ渋谷でおすすめのラーメン屋を教えてもらってもいいですか?

えーと……私が好きなのは喜楽。もやしシャキシャキ系で。シンプルで素朴な味わいです。よかったら。

— このあと行ってみます。ありがとうございました。

ありがとうございました。ほとんど食べ物の話してた(笑)。

Profile _ 田中真琴(たなか・まこと)
1995年1月30日生まれ。京都府出身。感覚ピエロや、Bishのミュージック・ビデオに出演し、注目を集める。これまでに、ドラマ「時効警察はじめました」(19/EX)、「左ききのエレン」(19/MBS)、「きみが心に棲みついた」(18/TBS)など話題作に多数出演。

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Information

田中真琴さん出演映画『異物-完全版-』

2022年1月15日(土)より、渋谷ユーロスペースほか全国順次公開

世界20ヶ国70以上の映画祭に入選、11のグランプリに輝いた<『異物』シリーズ>。エロティック不条理コメディからはじまる4つの短編をまとめた『異物-完全版-』がついに日本で上映決定。

出演:小出薫、田中俊介、石田桃香、吉村界人、田中真琴、宮崎秋人、ダンカン、高梨瑞樹、田辺桃子
監督・脚本:宇賀那健一

『異物-完全版-』公式サイト

  • Photography : Kyoko Munakata(SIGNO)
  • Hair&Make-up : Rumi Terasawa
  • Art Direction : Kazuaki Hayashi(QUI / STUDIO UNI)
  • Text&Edit : Yusuke Takayama(QUI / STUDIO UNI)