坂東龍汰 – 新しい引き出し
さらに、6年ぶりの舞台となる『う蝕』についても話を聞いた。
古着の愉しみについて
― 本日のファッションシューティングのテーマは「古着」でした。坂東さんは、古着好きだそうですね。
持っているのは、古着と新品の服が半々ぐらいだと思います。
― そうなんですね。
舞台挨拶や取材などで衣装が必要なときには李靖華さんというスタイリストが来てくれるんですけど、僕は古着っぽいものが似合うとは言われますね。古着系の洋服を用意してくれることが多く、衣装で着たものを買うことも結構あります。
― 古着ならではの魅力を感じることはありますか?
着古されてよれよれになっている服に惹かれるんです。スウェットは古着で買うことも多いですね。
― 古着のスウェットでも数万円するような、ヴィンテージとして価値のあるものもありますよね。
そこはあんまり買わないです。高額ならブランド物を買うかも。この間、役者の友達や先輩と久しぶりにMaison Margiela(メゾン マルジェラ)に行って、アウターを買いました。正直予算オーバーだったけど、1年間頑張った自分へのご褒美だと思って。
― 古着だと、スニーカーなど二次流通で価格が大きく上がったアイテムを買うこともないですか?
欲しいなとは思いますけど手が出なくて(笑)。去年は雑誌の企画で、新品の白いスニーカーを自分でペイントしてリメイクしました。
― 自分好みに?
はい。1年以上履きつぶしたので、めちゃくちゃボロボロになって良い感じになりました。
― これまで買った中で一番高い古着は覚えていますか?
上京して初めて買ったCOMME des GARÇONS(コム・デ・ギャルソン)のスラックスかな。20歳のときだから6年ぐらい前。たしかキャットストリートの古着屋さんにふらっと入って買いました。3〜4年ほぼ毎日履いて、擦れてお尻に穴が開いちゃって。ポケットにも全部穴が開いて、カギとか携帯とか落ちちゃうみたいな。自分で縫い合わせて、パッチワークみたいにして長く穿いていました。ボロボロでもう穿けないですが、今も大事にとってますよ。
― もともとかなり古いものだった?
古かったですね。でも状態はすごく良くて、「今買わないと損するよ」って口車に乗せられて買ったんです。
― その一期一会なところも古着の魅力のひとつかもしれませんね。
それからはVERSACE(ヴェルサーチェ)のシャツとかを古着で買い漁っていました。渋谷にある「aNiKi(アニキ)」という古着屋さんで。古い革靴もよく買っていましたが、2日でソール剥がれちゃたり……。
― 勉強ですね。
黒ステッチのDR. MARTENS(ドクターマーチン)が欲しくて、古着屋さんで探して買ったんですけど、撮影で履いたまま海に飛び込んだんですよ。そしたら速攻で両足ともビリッって破れちゃって。皮用の針を使って、違う色の糸で縫い合わせて、おしゃれに直していましたね。
― 坂東さんはリメイクやものづくり自体が好きというのもあるんでしょうね。
そうですね。破れたら、リメイクできてラッキーって思っちゃいます(笑)。
― 物持ちが良さそうです。
まったく捨てないですね。500円で買った古着のPatagonia(パタゴニア)のTシャツは、ボロボロになって生地も3倍ぐらいに伸びてもお気に入りでいまだに着ています。
― 最近よく行く古着屋は?
下北沢の古着屋「signal(シグナル)」にはよく行きます。今年もアメリカのロングコートなど何着か買いました。あと原宿の「零,壱四(0.14)」という古着屋さんでもナイキのパーカーを買いましたね。
― 古着に限らず、たとえば古家具とか古道具も買うことはありますか?
ベッドサイドに置くテーブルランプを買ったぐらいです。でもゆくゆくは、家具にも手を出していきたい願望はあります。両親が家具にもこだわる人で、椅子とかテーブルとか食器棚とか全部オーダーメイドで知り合いの家具職人に作ってもらっていて。あと父親は、ランプシェードを水牛の皮で作ったり、壊れたスピーカーを買って修理していたり。そういうことに小さい頃から影響を受けてきたので。
― 服も家具も古いものって、今まで残ってきている時点ですごく価値があるものですよね。
だから古くても使いたくなる。でも僕はヴィンテージということ自体にそこまでこだわりはなくて。それこそ3歳ぐらいから幼馴染の友達が家具デザイナーをやっているので、いつか自分の家を持ったときには全部家具をお願いできたらなと思っています。
― 良いですね。自分でヴィンテージを育てる楽しみがありそうです。
でも車は古いものに乗りたいんです。80年代、70年代の車って、フォルムも色合いもかわいいじゃないですか。友達がいすゞの117クーペに乗っていて一目惚れしましたね。「僕も乗りたい」って。
― 古いから良いというわけでなく、今は同じような車がないから。
街には最新の高級車もガンガン走っていますけど、僕が惹かれるのは古い型のゴルフとか、ボルボとか、レンジローバーとか。全部友達の影響ですけど。マニュアルで免許を取っているので、マニュアル車を買って練習したいなとも思っています。
主演舞台『う蝕』について
― ここからは舞台『う蝕』のお話を。6年ぶり、2度目の舞台となります。
そうですね。岩松さん(岩松了プロデュースvol.3『三人姉妹はホントにモスクワに行きたがっているのか?』)以来の。
― 岩松さんの舞台には、なにか思い出がありますか?
事務所に入って数カ月後に稽古が始まったので、まだ右も左もわからずとにかく必死で。しかも映画の撮影をしながら舞台の稽古をやっていたので、当時の自分にとっては本当に大変でした。若い子たちが集められて、ワークショップをして、稽古をして本番という流れだったので、これから世に出ていく役者さんたちのバチバチ感は覚えています。
― 熱い。
本が当て書きだったんです。役はみんな実名で、僕も坂東という役で出ました。「岩松さんにこういうふうに見られてたんだ」「こういう部分をピックアップしてもらえるんだ」という発見がありました。岩松さんにもらったセリフで、自分の知らない自分に気づいたりすることもあって。それは今回の『う蝕』にも通ずるものがあるのかな。今、横山(拓也)さんが書いてくださっているので。
― 岩松さんの舞台をキャリアの初期で経験できたのはかなり大きかったですよね。
そうですね。叩き上げられたというか、芝居の基礎をそこで教えてもらえたので。デビュー年に岩松さんの舞台に出て、当て書きでびっしり稽古してもらえて、もう怖いものなんてないですよね。映画『十二人の死にたい子どもたち』などオーディションで決まった作品はいろいろありますけど、今思うと舞台の経験がすごく大事だったんだなと思います。
― それから6年間、舞台には縁がなかった?
もちろんやりたいとは思ってたんですけど、ありがたいことに映画とドラマの撮影が常にある6年間だったので。
― 今回は念願の舞台だったんですね。
1年ぐらい前にマネージャーさんから舞台の話がありました。その頃に横山さんのワークショップを見学に行って、横山さんが脚本で当て書きしてくださるというのを聞いてから、ずっと楽しみにしてて。僕自身、映像だけじゃなくて舞台の上でしかできない表現にも触れていかないと引き出しが足りなくなっていく感覚があったので、ちょうど良いタイミングでした。
― 作劇・横山拓也×演出・瀬戸山美咲のタッグも楽しみです。
先日、横山さん作・演出の『モモンバのくくり罠』という舞台を観させてもらって、めちゃくちゃおもしろくて。瀬戸山さんの舞台『ある都市の死』も最近観させてもらいました。即興ピアノに即興ダンスでセリフだけは決められている作品で。
― かなり前衛的ですね。
そうなんですよ。今までの概念をぶち壊すような、「こういう表現もあるんだ」という衝撃がありました。その2つの舞台を観てから、横山さん作、瀬戸山さん演出という『う蝕』がさらに楽しみになりました。
― どういうものができるんでしょうね。
お2人も今までやったことのない新しいものを作りたいとインタビューでおっしゃっていて、どんな舞台になるのか本当に想像つかないです。
― 今回は座長ということですけど、気負いはありませんか?
もちろん座長なんだろうけども、全員が主役のようになる気がしていて。男6人の会話劇、不条理劇ということで、しかもあんなにすばらしい役者さんが集まっているので。その道のプロフェッショナルがまわりを固めてくださっているのは本当に恵まれた環境だなと思います。座長ということで気負いせずに、皆さんに体当たりでぶつかっていけたらなと。
そしてその中で同世代の綱(啓永)くんが一緒に戦ってくれるというのはすごく頼もしいです。
― 綱さんもすばらしい役者で、なおかつ楽しい人ですよね。
そうそうそう。波長がすごい合うんですよ、明るくて。でも逆に、横山さんはああいう子にちょっと暗い役とか書いてきそうな。
― ストーリーを見ると暗そうというか、不穏な感じもします。「この中に、ここにいるべきではない人間が混ざっている」とか書いてあって。
誰だそれは……。
― 坂東さんかもしれないということですね。
かもしれない。6分の1で。
― ドキドキしますね。では最後にメッセージをお願いします。
間違いなくおもしろい作品になる予感がするし、おもしろい作品にしたいと思っています。僕の舞台を観たことがある人はほとんどいないと思うので、映像にはない舞台ならではの体験をぜひ皆さんと一緒にしたいです。皆さんの期待に応えられるようにしっかり稽古して、良い舞台になるように頑張ります!
Profile _ 坂東龍汰(ばんどう・りょうた)
1997年5月24日生まれ、北海道出身。2017年、俳優デビュー。18年、NHK『花へんろ 特別編 春子の人形』でドラマ初主演。22年、『フタリノセカイ』(飯塚花笑監督)で映画初主演を務め、第32回日本映画批評家大賞の新人男優賞(南俊子賞)を受賞。近年の主な出演作は映画『冬薔薇』(22/阪本順治監督)、『峠 最後のサムライ』(22/小泉堯史監督)、『春に散る』(23/瀬々敬久監督)、『バカ塗りの娘』(23/鶴岡慧子監督)、ドラマ『リバーサルオーケストラ』(NTV)、『王様に捧ぐ薬指』(TBS)『きのう何食べた?season2』(TX)など多数。待機作には『一月の声に歓びを刻め』(三島有紀子監督)、『君の忘れ方』(作道雄監督)、ドラマ「RoOT / ルート」(テレビ東京4月期)がある。
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Information
舞台『う蝕』
日程:2024年2月10日(土)~3月3日(日)
会場:シアタートラム
日程:3月9日(土)・10(日)
会場:兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
日程:3月16日(土)
会場:Niterra日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
作:横山拓也
演出:瀬戸山美咲
出演:坂東龍汰、近藤公園、綱啓永/正名僕蔵、新納慎也/相島一之
- Photography : Kanto Kurosawa
- Styling : Minami Watanabe
- Hair&Make-up : Akira Nagano
- Edit : Yukako Musha(QUI)
- Text&Edit : Yusuke Takayama(QUI)