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門脇康平 – 願いが届きますように

Sep 23, 2026
アニメーション作家・門脇康平が、初監督作となる映画『我々は宇宙人』に託した願いとは。ものづくりへの圧倒的なこだわりから、映画という文化への思いまで、世界が注目する若き才能の創作の源泉に迫る。
さらに、W主演を務めた坂東龍汰と岡山天音にも、門脇監督の人物像について話を聞いた。

門脇康平 – 願いが届きますように

Sep 23, 2026 - FILM
アニメーション作家・門脇康平が、初監督作となる映画『我々は宇宙人』に託した願いとは。ものづくりへの圧倒的なこだわりから、映画という文化への思いまで、世界が注目する若き才能の創作の源泉に迫る。
さらに、W主演を務めた坂東龍汰と岡山天音にも、門脇監督の人物像について話を聞いた。

思い出を自慢したい欲求が相当強い

― 素晴らしい作品で圧倒されました。カンヌ国際映画祭、アヌシー国際アニメーション映画祭など海外の映画祭でも、かなり手応えを感じられたのではないでしょうか。

門脇康平(以下、門脇):はい、想像以上でした。カンヌでは、プレミア上映をお客さんと一緒に観たんですけど、いろんなところから笑い声や、すすり泣く声が聞こえてきて。最後にスタンディングオベーションをいただいたときも、ポロポロ泣きながら拍手を送ってくださった方もいました。アヌシーでは、アニメファンからのより強い熱気を感じましたし、映画祭の後も「自分の人生を変えられました」というDMが何十通と届くなど、確かな手応えがありました。

― 日本公開を控えた現在の心境は? ワクワクと不安、どちらが強いですか。

門脇:本当に半々です。カンヌやアヌシーのように日本のお客さんにも喜んでいただけて、話題になってくれたらと想像するとワクワクする反面、日本では何十ものスクリーンで一気に公開されるので、自分が思ってもいないような観られ方をする可能性もある。

もちろん、どんな観られ方にも耐えうる強度のある映画を目指してはいるんですけど、「こうも意図しない捉えられ方をされるのか」ということが起こりうると思うと不安もあります。

©NOTHING NEW, MIYU PRODUCTIONS

― 難しい質問かもしれませんが、本作で核となる部分、最も描きたかった部分を挙げるなら?

門脇:自分には強く大きな“願い”に近いものがあって、究極のところ「その願いが届きますように」という思いで作品をつくっています。

まずこの作品を観ている間は、画面の中の世界に憧れるような感情を抱いてほしい。画面の中では楽しいこともあれば苦しいこともあるし、美しい部分も醜い部分も映っています。だから劇場を出たときには、ついさっきまで憧れていた画面の中の世界と、この現実世界は何も変わらないじゃないか、と感じてもらいたいんです。

さっきまで憧れていた世界に、自分は今、生きているんだ。そう思えたら、この世界で明るく、強く、前向きに生きてみようという気持ちになれるんじゃないか。そんな“願い”を、この作品に込めています。

― それこそ、いろんな人が観て、いろんな受け取り方をして、そこで完成する作品なのかもしれませんね。

門脇:人それぞれ自由に、好きなところに憧れてほしいです。

©NOTHING NEW, MIYU PRODUCTIONS

― 本作では、映画的な表現とアニメーションならではの表現が融合しているように感じました。“憧れられる世界”を描くために、画づくりでとくにこだわった部分を教えてください。

門脇:キャラクターの作画部分と背景美術、空気やカラーなど、画面の中のすべてのレイヤーがひとつの世界として成立するように、とにかく統一感を出すことにこだわりました。そのため今回は苦労を承知のうえで、作画、美術、色彩設計、最終的なビジュアルエフェクトまで、すべて自分で監督することにしました。

― 門脇監督のSNSには加筆修正の様子がアップされていますが、それを見ていると本当に果てしない作業なんですよね。

門脇:アニメはこだわり続けると生涯完成しないので、興行とか納品とかいろんな理由で締め切りをつくって、そこで諦めるしかない。だけどその地点で100に近いものにしていく手際が求められると思います。

― 作品にかける、その圧倒的な熱量の源泉はどこにあるのでしょう?

門脇:簡単な言葉にすると、自慢をしたい気持ちっていうか。「昨日こんなおいしいご飯を食べたよ」と人に伝えることと同じように、「自分は小さいころ、暑かった日にフローリングに頬をつけて寝たら涼しくて気持ちよかったんだよね」みたいな思い出を自慢したい欲求が相当強いんです。自分がすごくいいと思った感覚を、人にもいいねと思ってもらいたいという欲求が強烈にある気がします。

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― 門脇監督はアニメーション作家として、アニメの醍醐味や可能性をどのように感じていますか?

門脇:雲の形や空の色、虫がどれくらい飛んでいるかまで、よくも悪くもすべてを思い通りにできてしまうのがアニメで。今回の作品に関していえば、自分が幼少期に感じていた“あの頃の空気感”は、今から実写で撮ろうとしても撮ることはできないんですよね。もし同じ場所が残っていたとしても、それは現代の場所なので。自分が伝えたいと思った通りの懐かしさや風情は、アニメでなければ画にできませんでした。

あと、カンヌで取材していただいたときに実写的だとかなり言われて、初めてそうなんだと気づきました。ただ、まったく同じ画を実写で撮ろうとしても、本当は床を壊さないと撮れないとか、天井を外さないと撮りようがないとか、実写だと不可能な画もかなりあるんです。

― ご自身の頭の中にあるものを純度高く再現するためにも、アニメという表現が適しているんですね。

門脇:そうですね。今回に関しては、アニメじゃないとありえなかったと思います。

©NOTHING NEW, MIYU PRODUCTIONS

 

すべての作品を必ずヒット作にしたい

― 本作は門脇監督の個人的な思い入れを込めた物語でもあるそうですが、具体的にどんなところで表現されているのでしょうか?

門脇:自分にとって、小学生時代の初恋と友人との疎遠という2つのできごとが強烈な思い出なんです。それについて長く考えてきたので、映画の題材にしたときに、アイデアが無限に出てくる。コンテを切り出したらきりがなくて、むしろ削るほうが大変なくらいでした。

― 翼と暁太郎では、どちらによりご自身が投影されていますか?

門脇:半々ですね。映画のストーリーにするにあたって、自分の中のいろんな思い出を整理して二人に分けて託しました。

©NOTHING NEW, MIYU PRODUCTIONS

― 翼と暁太郎の声を演じた、坂東龍汰さんと岡山天音さんの起用理由は? 彼らは作品にどんなことをもたらしてくれましたか。

門脇:この作品は、キャラクターの顔も動きもかなりリアルなので、いい意味で普通っぽい喋り方を演技で出すという難しいことをお願いしたいと考えたときに、坂東さんと岡山さんの顔が思い浮かびました。

かなり複雑なお願いをいろいろしたんですけど、レコーディングの限られたスケジュールの中で完璧にこなしてくださりました。完成した作品を観て、想像以上の化学反応が起きたなと。お二人に依頼してお引き受けいただけたことに感謝しています。

― お二人には、たとえばどんな演出を?

門脇:声質を変えるのではなく、声の佇まいで年齢の差を演じ分けてほしいと。それは本当に難しかったんじゃないかな。

― 幼少期との声のつながりも考えましたか?

門脇:そうですね。声変わりするとはいえ、面影が残るようにと。岡山さんは、子どもの声をあらかじめ聞いておきたいと、子役の暁太郎のレコーディング日に視察にいらしたこともありました。

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― 門脇監督はまだ20代で、その若さも注目される部分だと思いますが、ご自身の若さについてはどう捉えていますか?

門脇:映画監督は70歳で鼻垂れとか、60歳で小僧とかいわれる世界なので、20代なんてまだ赤ちゃんですよね。ベテランの監督に比べると明らかにインプット量が少なすぎて、自分がいかに無知かということをよく感じます。

良さでいえば、これから監督作品がいくつ作れるんだろうとワクワクします。ありがたくも29歳で1作目が完成した。どんな進化ができるんだろうと考えると、スタートが早かったことは嬉しいです。

― 次回作の構想もありそうですね。

門脇:企画はもう考えていて。基本的には今回と全然違う、わりと派手なものになりそうです。

©NOTHING NEW, MIYU PRODUCTIONS

― これから先、クリエイターとしてなし得たいことはなんでしょう?

門脇:長編を作るからには、すべての作品を必ずヒット作にしたいと思っています。映画は観に来るお客さんがいるから成り立っている産業です。お客さんが観たいと思う面白い作品を作って、たくさん観てもらうことでお金が劇場や映画業界に回って、また自分や誰かが面白い作品を作ることができる。自分が大好きな映画という文化のために、自分のできることをしていきたいと思っています。

映画を愛する気持ちが伝わってきました。最後は映画に限らず、自分の人生に影響を与えた作品を教えていただきたいです。

門脇:ひとつは、写実主義から印象派までの1600〜1800年代あたりの絵画。小さいころに好きで、美術展に行ったり画集を見たりしていました。「自分が思う画面になるまで徹底的に描きたい」という感覚は、そこから育まれたかもしれません。

映画は、父の影響で80年代のアメリカ映画を観ることが多かったです。『ターミネーター2』とか、『ロッキー』とか。ジャッキー・チェンやブルース・リーなんかも観ていて、「こんなに面白いものがあるのか」ってくらいはまっちゃって。観ていると、シンプルに気持ちが熱くなるじゃないですか。その記憶の影響は強い気がしますね。

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坂東龍汰と岡山天音から見た、門脇康平という才能

― 映画『我々は宇宙人』、すごい作品でしたね。

坂東龍汰(以下、坂東):すごいですよね。天才。

― ここからは、お二人から見た門脇康平監督についてお伺いさせてください。どんな方でしたか?

岡山天音(以下、岡山):最初にお会いしたときの印象では、作品と監督が結びつかなくて。というか正直、いまだに結びついてないところがあるんですけど。本人がすごくスタイリッシュなので、鉄の味がするような映画の感覚とギャップがある。すごく面白いバランス感覚の人なんだなというのが、今のところの印象です。

坂東:少し天然なところもあるよね。

岡山:たしかに。

坂東:プライベートの門脇さんは、ちょっと自信なさげで、おっちょこちょい。狙ってないけど、周りがみんな笑っちゃうみたいな。かわいらしい方でもあります。

― 最初の印象から変わっていったのでしょうか?

坂東:台本を読んで、最初はどんな方なんだろうとビビりながら現場に行ったんですが、実際は物腰柔らかい方で。でも目の奥に宿る本気度は、初めて会ったときから伝わってきました。この作品で本当に世界を驚かそうと思っているんだなと。

一緒にやっていくうちにものすごくストイックで、妥協がない方だということもわかってきました。でもやっぱり自分も、この作品と、普段のおっちょこちょいな門脇さんが完璧には結びつかないんですよね。

岡山:すごく切れるところがある一方で、ちょっと抜けているところやチャーミングなところもあって、いろんなレイヤーがある人なんだろうな。

坂東:監督の中に、翼と暁太郎の両方が存在しているように感じるよね。

声の収録では、門脇監督から具体的な演出はありましたか?

坂東:具体的だったよね。監督の中にはもうその声が聞こえていて、そこに僕らが当てられるまでがんばるという感じだった気がします。

岡山:僕は暁太郎と身体的な特徴に結構ギャップがあって、そこはかなり苦戦しました。監督からは「暁太郎は翼より弱い人だから」と、ずっと言われていましたね。

― 最後に、お二人から門脇監督へのメッセージをいただけますか?

坂東:次回作も期待しています。また呼んでください。

岡山:呼ばれなくても楽しみです。

 

Profile _ 門脇康平(かどわき・こうへい)
1996 年生まれ。アニメーション作家。東京藝術大学デザイン学科卒業後、アニメ制作会社に就職する。その後独立し、主に舞台映像や CM 映像、プロダクト PV のディレクション等を経てアニメーション作家になる。実写素材や立体のマテリアルをアニメーションに融合させる独特の映像スタイルによって重厚感のある作品を作り上げる。代表作は、YOASOBI『優しい彗星』Official Music Video。
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Profile _ 坂東龍汰(ばんどう・りょうた)
1997年5月24日、ニューヨーク生まれ、北海道出身。2017年、俳優デビュー。2022年、映画『フタリノセカイ』で、第32回日本映画批評家大賞新人男優賞(南俊子賞)を受賞。2025年には『爆弾』で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。近年の出演作は、映画『君の忘れ方』『未来』『黒牢城』、ドラマ『RoOT/ルート』『ライオンの隠れ家』『シナントロープ』など。待機作に、映画『わたしの知らない子どもたち』(10月16日公開)『かすかな彼を抱きしめて』(1月15日公開)がある。

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pants ¥79,200 / YUTA MATSUOKA (YUTA MATSUOKA 03-6434-0983), Other stylist's own

 

Profile _ 岡山天音(おかやま・あまね)
1994年6月17日生まれ、東京都出身。2009年俳優デビュー。主な出演作品として、主演映画『笑いのカイブツ』('24)、映画『キングダム』シリーズ('22〜'24、'26)、『Cloud クラウド』('24)、ドラマ『アンメット ある脳外科医の日記』('24、関テレ・フジテレビ系)など。2025年度は夜ドラ『ひらやすみ』(NHK)にて主演を務めたほか、大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』(NHK)、『冬のなんかさ、春のなんかね』(日本テレビ)、『片想い』(NHK)などに出演し、第50回エランドール賞、第63回ギャラクシー賞テレビ部門個人賞、第52回放送文化基金賞を受賞。待機作として、NHK連続テレビ小説『巡るスワン』('27年春放送開始)などがある。

 


 

Information

映画『我々は宇宙人』

2026年9月25日(金)より、全国劇場公開

企画・監督・脚本:門脇康平
出演:坂東龍汰、岡山天音、山﨑天(櫻坂46)、松井ケムリ、槙木悠人、中込佑玖、鈴木咲、末永陽
絵コンテ・キャラクターデザイン・作画監督・美術監督:門脇康平

映画『我々は宇宙人』公式サイト

©NOTHING NEW, MIYU PRODUCTIONS

  • Photography : Madoka Shibazaki
  • Styling for Ryota Bando : Yasuka Lee
  • Hair&Make-up for Ryota Bando : Yasushi Goto
  • Styling for Amane Okayama : Haruki Okamura(FJYM inc.)
  • Hair&Make-up for Amane Okayama : Masa Kameda
  • Text&Edit : Yusuke Takayama(QUI)