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ART/DESIGN

クリエイティブに共鳴し合う仲間たちとの新たな試み|SEVESKIG Art Festival

Sep 24, 2026
<SEVESKIG(セヴシグ)>が発表した2027年春夏コレクションの「SHIFT」。デザイナーの長野剛識(NORI)は従来のショー形式ではなく、原宿のROOM MATE HARAJUKUを会場にしたArt Festivalという展示イベントを通じて「SHIFT」の世界観を発信した。5季連続での同テーマ、韓国でのランウェイなど、<SEVESKIG>の試みを追い続けてきたQUI編集部はArt Festivalの狙いについて聞くために<SEVESKIG>のアトリエを訪問。インタビューにはイベントでのコラボレーションアーティストの一人である松尾はじめにも参加をしてもらった。

クリエイティブに共鳴し合う仲間たちとの新たな試み|SEVESKIG Art Festival

Sep 24, 2026 - ART/DESIGN
<SEVESKIG(セヴシグ)>が発表した2027年春夏コレクションの「SHIFT」。デザイナーの長野剛識(NORI)は従来のショー形式ではなく、原宿のROOM MATE HARAJUKUを会場にしたArt Festivalという展示イベントを通じて「SHIFT」の世界観を発信した。5季連続での同テーマ、韓国でのランウェイなど、<SEVESKIG>の試みを追い続けてきたQUI編集部はArt Festivalの狙いについて聞くために<SEVESKIG>のアトリエを訪問。インタビューにはイベントでのコラボレーションアーティストの一人である松尾はじめにも参加をしてもらった。

<SEVESKIG>の世界観をより多くの人に直接的に届けたかった

—NORIさんは過去のQUIのインタビューで「コレクションの発表形式としてショーにこだわらない」と話していました。

NORI:言いましたね。覚えていますよ。

—それを示すように2027年春夏コレクションの「SHIFT」の世界観を体感してもらうためにArt Festivalを開催しました。ショーではなくイベントでお披露目すると決めた理由はなんだったのでしょうか。

NORI:ショーに来場するのはほとんどがファッション関係者です。ですが、普段から<SEVESKIG>を着てくれているファンはもちろんブランドのことをよく知らない層にも<SEVESKIG>がやっていることを直接的に届けたい気持ちがあったんです。

—Art Festivalというイベント形式にしたのは何か理由はあったのでしょうか。

NORI:<SEVESKIG>は以前からコアなアニメとのコラボレーションをやっているので、購入者には熱心なアニメファンも多いんです。今回も松尾くんを含め複数のアーティストに協力してもらうことで<SEVESKIG>以外のファンが来場してくれる可能性が生まれると思いました。アーティストがきっかけで<SEVESKIG>やファッションそのものに興味を持ってもらえたらいいなと思ったのでArt Festivalというスタイルを選んだんです。

松尾:誰もが知っているようなアニメとのコラボばかりだったのに、今回は僕のような自主制作アニメとコラボをやって。そんなブランドはなかなかないと思います(笑)。

—入場無料のオープンなイベントだったので会場には小さいお子さんもいましたよね。

NORI:松尾くんのファンだったみたいです。

松尾:SNSでイベント会場に僕が在廊することを告知したのですが、それを見た小学生の男の子がずっと待っていてくれたみたいで。最後に握手をしたのですが、「松尾はじめに会った」という証拠を残したかったのか手元のアップをしっかり写真に撮られました(笑)。

—コレクションテーマは深掘りをして考えていくNORIさんですが、今回の「SHIFT」にはどのようにして辿り着いたのでしょうか。

NORI:「SHIFT」で表現したかったのは「本当の自分って何者なんだろう」ということです。テーマとして取り上げようと思ったのは「自分で自分のことがわからない」と友達から相談を受けたことがきっかけでした。そのときに僕が話したのが「本当の自分というのは自分自身が決めることではなくて、他人が貼ったラベルによって決まる」ということでした。ユングでいうところのペルソナですよね。

—自分というものは他人からの見られ方によって決まるということですか?

NORI:僕はそう思っています。松尾くんに初めて会ったときも、こういう風貌だったのでおもしろいに違いないと勝手にラベルを貼りました。

松尾:こういう風貌ですか(笑)。

NORI:実際に松尾くんはイメージ通りにおもしろいですが(笑)。他人から「おもしろいね」や「ユニークだね」って言われ続けると「自分はきっとそういう人間なんだろうな」って人格のようなものが形成されていくと思うんです。

—「自分って周囲からはこう見られているのか」というのは確かにあります。

NORI:男性であっても他人には見せたくない女性性というのを誰もが心の内に秘めていて、それをしっかり理解すると本当の自分になれるとユングは唱えているんです(※)。そういう考えを表現したのが今回の「SHIFT」というテーマでした。ちなみにArt Festivalもショーからの「SHIFT」という意味もあります。

※ユングは、人間に共通する無意識の原型を「アーキタイプ(元型)」として提唱し、その主要概念として「ペルソナ:社会的な仮面。他人に見せる部分」、「シャドウ:自分が認めたくない側面。抑圧された欲望や攻撃性」、「アニマ/アニムス:内なる異性性。男性の中の女性性、女性の中の男性性」、「セルフ:心の統合された中心。最終的に目指す“全体性”」を挙げている。これらを全て受け入れられると、本当の自分に「SHIFT」するというのが<SEVESKIG>の2027年春夏コレクションのテーマの核心。

想像できないような作品を期待してアーティストに全てを任せた

—Art Festivalの開催に合わせて声をかけたアーティストには選定基準のようなものはあったのでしょうか。

NORI:僕が一緒にお祭りをやりたいと思ったアーティストたちに声をかけました。創作物や活動に基準や条件のようなものがあったわけではありません。

—松尾さんはArt Festivalに参加された他のアーティストとの交流はあったんですか。

松尾:杉山日向子さんは以前からの知り合いです。

—NORIさんと松尾さんの交流はどのようにして始まったのですか。

松尾:「 #美男美女さんと繋がりたい」ってあったじゃないですか。マッチングアプリの先駆けのような。それで僕が美男で、NORIさんが美女で、そこで出会いました。

NORI:そんな始まりだったっけ(笑)。

—松尾さんがそう言うならそういうことで(笑)。

NORI:僕は記憶にないですけど、そういうことで。

—NORIさんからArt Festivalへの参加を依頼されたときに松尾さんはどう思いましたか。

松尾:自分の作品を発表する場がずっとほしかったので、Art Festivalというイベントは披露するには絶好の機会だと思いうれしかったです。

NORI:服も自分で作っているよね。

松尾:SA(夏秋)とWS(冬春)のことですね(笑)。服というよりはグッズのレベルです。

—SA(夏秋)とWS(冬春)というのは?

松尾:作るのに時間がかかり過ぎて、納品がファッションのシーズンからズレてしまうんです。

—NORIさんも春夏、秋冬というサイクルが絶対なのかと疑問を持つこともあると言っていたので、そこに同調するようなモノづくりですね。

松尾:僕の場合はファッションの人間ではないのでコレクションのサイクルを最初から気にしていないだけです。ただ、僕もNORIさんと同じで「これまではこういうルールだったから、それに則るのが常識的なやり方」と言われても「どうして?」と思ってしまうタイプです。今回のイベントのために制作したグッズにもその想いをそのまま込めていますから。

—レザージャケットが背負っているメッセージですね。

松尾:そうです。「 I 💔 PREDICTABLE OUTCOME 」で伝えたかったのは「予測できる結末なんて嫌いです」ということです。僕がアニメで表現し続けているのは「予定調和を拒絶する」ということで、そういう姿勢は<SEVESKIG>と強くリンクすると思っています。

—レザージャケットは寺田克也さんとFACEさんも手がけましたが、松尾さんはそれを見て感じたことなどはありますか。自分とは<SEVESKIG>へのアプローチが異なるなとか。

松尾:完成品だけを見て<SEVESKIG>をどのように解釈したのかを見極めることは難しいですが、それぞれのアーティストの作風は色濃く現れているなって思いました。寺田さんは圧巻のビジュアルでしたし、FACEさんはポップさに惹かれました。

NORI:松尾くんが手がけたTシャツの柄もイベントで展示した作品をぶっ壊しているよね。

松尾:レザージャケットの柄も絵描きにとっていちばん大切な鉛筆で遊んでいて、鉛筆が本来の役割を果たしていない。今回のイベントのためのコラボアイテムはいろんな表現で予定調和を拒絶しています。

—NORIさんの答えが想像できる質問をあえて。「オリジナルのレザージャケットをアーティストに発注する」というのは<SEVESKIG>側の発案でしょうが、最終的な表現はお任せですか。

NORI:お任せです。何にも口出しはしていません。

—そうだと思いました(笑)。

松尾:NORIさんとは以前から交流はあるのですが<SEVESKIG>とのオフィシャルなコラボレーションは初めてで、一緒にやってみて「何をやってもいいよ」という懐の深さはエグかったです(笑)。

—基本的には自由だったとしても表現そのものはブランドのイメージから膨らませた部分もあるとは思うのですが、松尾さんにとって<SEVESKIG>ってどんなブランドですか。

松尾:NORIさんの考え方や思想のようなものがそのまま現れているブランドという印象です。核の部分はクレイジーなんですけど、その周囲を覆っているのはどこまでもテーマを追求する真摯さや丁寧さ。だからこそアウトプットのビジュアルには深層にはなかなか辿り着けないような奥行きを感じます。

—NORIさんはテーマに対する考察は深い。でも、先ほども松尾さんが「懐は深かった」と言われたように「周囲の解釈は自由でいいよ」と自分の考えを押し付けることはないので、そこが魅力です。

NORI:僕はテーマはかなり深掘りをしていきますが、それは自分が納得するところに辿り着きたいからです。<SEVESKIG>のためであり、自分自身のクリエーションのためであって、誰かに詳しく説明したいから深掘りをするわけではないです。中途半端に考えたテーマでは洋服を作るためのソースとしてのクオリティも低いだけですから。

—今回だと「SHIFT」がテーマですが、それを松尾さんに投げて上がってきたものが自分の設定や解釈とあまりにも異なると思うことはないんですか。

NORI:捉え方が異なるからおもしろいものができると思っています。先ほどの「予定調和を拒絶する」にも通じますが、最初から最終形が想像できるのはつまらないですよね。レザージャケットも自分は背面に大きくデザインをのせたりはしないので、見慣れたはずの<SEVESKIG>のアイテムも新鮮に映りました。松尾くんの骨のオブジェなんて全く想像もしていなかった作品です。

松尾:作品のフレームを強固にするためにテーマ作りや設定に時間をかけるのは僕も同じです。そういうイメージがないと思うので、あまり公言したことはないですけど。

—せっかくなので創作のスタイルを聞いてみたいです。

松尾:骨のオブジェは「精神の地層から発掘された出土品」という設定です。そのストーリーを固めるのに1カ月ぐらいかけています。ここに持ってきた骨の作品はひとつは武器化されていて、もうひとつは笛になっています。その理由も細かく説明はできるのですが、それは鑑賞する側からするとあまり関係ないことなので、あえて伝えようとは思っていないです。

自分のやり方に結果が出るとさらに次の高みを目指したくなる

—骨のオブジェは壮観でした。今回のArt Festivalへの出展作品として骨をモチーフにしたのはどういう理由からですか。

松尾:骨というものが小さい頃から好きでした。他にも化石や石などにもずっと興味があって、将来の夢は石博士になりたいと思っていたぐらいです。

—骨、化石、石に感じる魅力は?

松尾:輪廻転生というものがあるとしたら、虫でも恐竜でも化石に眠る生き物は自分の前世の可能性があるわけです。そう考えると発掘された化石も骨も無関係な存在ではないって思えてくる。<SEVESKIG>も骨をモチーフにしたデザインは多いので、自分のプライベートテーマとして重要視している骨と結びつけて作品に落とし込みました。

—NORIさんはこれからも従来のやり方などにとらわれず「何かおもしろいことをやろう」とずっと考え続けていくんでしょうね。

NORI:<SEVESKIG>は2027年に15周年を迎えるんです。ひとつの節目でもありますから、何か企画を仕掛けたいという気持ちはあります。例えば15人のアーティストやクリエイターとコラボレーションをするとか。

—<SEVESKIG>はファッション以外の分野のクリエイターとのコラボレーションに積極的ですが、異分野交流の醍醐味ってどこにあると思っていますか。

NORI:アパレル同士だとブランドのカラーは異なってもやり方や作り方に大きな差はない。なので完成するものが「服でしかない」という印象は拭えないんです。でも、イラストや動画、アニメーションなどのクリエイターは自分が持っていない手法も発想もあるので、そことの混ざり合いがすごく楽しいです。

—Art Festivalというイベントでシーズンコレクションを発表してみてどうでしたか。

NORI:やりたかったことがやれましたし、目的にしていたことも果たせたので開催して良かったです。でも、同時にまだやれることはきっとあるだろうなって思っています。<SEVESKIG>の見せ方はまだ探っていけるなと。

—2027年の秋冬コレクションはどのようなお披露目形式になるのかも未定ですよね。

NORI:どうなるかわからないですね。でも、どういうやり方を選ぶにしても「<SEVESKIG>をリアルに体感してもらう」というコンセプトは変わらないです。服を実際に見てもらいたいですし、触れてもらいたいという考えはずっとあるので。

—松尾さんは来場者のために創作した側でもあり、<SEVESKIG>のファンとしてイベントを楽しんだ側でもあると思いますが、Art Festivalそのものを体感してみてどうでしたか。

松尾:勉強になることが多かったので、自分にとっての経験値は間違いなくアップしたと思います。デザインすることにも興味はあるので、NORIさんからは大きな影響を受けました。

—創作のジャンルが異なっても学びは大きかったんですね。

NORI:洋服とアニメーションで作っているものは異なってもクリエイティブで大切なことって、どれも同じだと思うんです。だからいろんなクリエイターとの協業がおもしろいんです。

—テーマでも服のデザインでも表現方法でも、NORIさんの模索はこれからも続いていくんだと思います。また新しい試みを楽しみにしています。

NORI:韓国でのランウェイも今回のArt Festivalも手応えはありましたし、結果にも満足はしているんです。ですが、結果が出ればさらに次を目指したくなりますし、そういう欲がなくなったら自分が止まってしまうような気がします。僕のそういう気持ちに共感してくれるアーティスト、クリエイターとこれからもワイワイやっていきたいですね。

松尾:NORIさんが何かやりたくなったときに、僕も声をかけてもらえたらうれしいです。

  • Text : Akinori Mukaino(BARK in STYLE)
  • Photo : Yohei Ohno
  • Edit : Ryota Tsushima(QUI)

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