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パリ・ファッションウィーク 2026年秋冬コレクションガイド — 現実に触れる衣服 vol.1

Apr 17, 2026
2026年3月2日(月)〜3月10日(火)、パリ・ファッションウィーク 2026年秋冬コレクションが開催された。今シーズンは、身体や環境、社会との接点を通して、衣服を現実の中で成立させるアプローチが、これまで以上に際立った。世界的ブランドから気鋭のデザイナーまで、注目のショーをvol.1からvol.3にわたってご紹介。

パリ・ファッションウィーク 2026年秋冬コレクションガイド — 現実に触れる衣服 vol.1

Apr 17, 2026 - FASHION
2026年3月2日(月)〜3月10日(火)、パリ・ファッションウィーク 2026年秋冬コレクションが開催された。今シーズンは、身体や環境、社会との接点を通して、衣服を現実の中で成立させるアプローチが、これまで以上に際立った。世界的ブランドから気鋭のデザイナーまで、注目のショーをvol.1からvol.3にわたってご紹介。

KIMHĒKIM/キムヘキム

<KIMHĒKIM>が、ソウルから運び込まれたアートクレートの荷解き現場を思わせる空間で、2026年秋冬コレクション「ENTER THE SPECTRUM」を発表した。10年にわたるブランドのアーカイブを土台に、新たな方向性を研ぎ澄ませた今シーズンは、色彩、質感、動きの移り変わりによって場面を連ね、彫刻的なヘアピース、静かなユニフォームのパート、クチュールの精度を備えたルック、柔らかな高揚感を帯びた終盤へと進行した。クチュールの技術は日常着へと引き寄せられ、身体により近いシルエットのなかに、親密さと軽やかさを備えた佇まいが組み込まれ、ルック全体は展示物のように丁寧に配置され、運ばれ、現れていった。過去と未来をひとつの光のスペクトラムに接続しながら、メゾンのクラフツマンシップをより身近な輪郭に置き換え、<KIMHĒKIM>において誰もが動き続ける芸術作品であるという視点を明確に打ち出した。

KIMHĒKIM 2026AW COLLECTION RUNWAY

JULIE KEGELS/ジュリ ケーゲル

<Julie Kegels>が、2026年秋冬コレクション「Face Value」を発表し、私的領域と公的領域が重なり続ける時代における“見せること”と“隠すこと”のせめぎ合いを出発点に据えた。アンディ・ウォーホルの“オーラ”をめぐる言葉や、会話の最中に長時間露光で撮影したチョン・キョンウのポートレート、マルティン・ハイデガーの“現存在”への参照を背景に、沈黙が保つ神秘と、外見が握る力、その一瞬の不安定さがショー全体を貫いた。ダマスクと軽やかなシルクをダークグレーのグラデーションに重ね、エレクトリックブルーやオレンジを差し込み、縮んだフェルト状に縮絨ウールのセーター、円形裁断の袖、後ろに深く切り込んだ袖、ジグザグカットのレザーマスク、シャンデリアのアップサイクルジュエリー、トロンプルイユのシルクステッカーが身体の輪郭と影をずらしていった。事前収録された“影の分身”の映像とともに、箱の輪郭が身体、ドレス、プリントへと変換されるフィナーレまでを通じて、真正性と社会的期待のあいだで揺れる身体の像を、視線と沈黙の距離感から組み立てた。

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Julie Kegels 2026年秋冬コレクション──外見が流通する社会で、身体はどこにあるのか
Apr 09, 2026

JULIE KEGELS 2026AW COLLECTION RUNWAY

HODAKOVA/ホダコヴァ

<HODAKOVA>が、カルーゼル・デュ・ルーブルで2026年秋冬コレクション「Conventional Collection 112603」を発表した。4つの扉に囲まれた室内セットにカーペットやテーブルを配し、「家」と「自己の層」をめぐる構成のもと、黒、灰、骨色、タバコブラウンのストイックなパレットで、公的なペルソナと私的な自己の緊張関係を組み上げた。細長いコートやノースリーブブレザーはフロントを精密に仕立てながら背面を大胆に剥ぎ取り、<Icelandic Glacial(アイスランディック グレーシャル)>とのガラスアクセサリー、シープスキンやファー、ティータオルから作られたスカートとイブニングドレス、銀のスプーンのジュエリー、<Harris Tweed(ハリスツイード)>の彫刻的な帽子、馬の毛の弦を織り込んだ服、裸足や乗馬ブーツが連続した。既存素材をそのまま見つめ直す姿勢と、感情の露出と防衛が同居する衣服の構造を重ねることで、ファッションを精神空間の構築として捉え、自分自身であることの輪郭を静かに掘り下げた。

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HODAKOVA 2026年秋冬コレクション──「私」を包む家、剥ぎ取られた背中が語る真実
Mar 12, 2026

HODAKOVA 2026AW COLLECTION RUNWAY

Mame Kurogouchi/マメ クロゴウチ

<Mame Kurogouchi>が、2026年秋冬コレクション「Reflection」を発表し、深い霧に覆われた山並みの表情と、江戸時代から大正期にかけて発展した和ガラスの儚さを重ね合わせた“透明な景色”を衣服として立ち上げた。黒河内真衣子は、長野の山と東京を往来する日々のなかで、都市と自然のあわいを軽やかに行き来する視点を軸に、稜線、氷の下の山肌、和ガラスの肌理、霧の粒子を、織り、編み、染め、プリントへと展開した。極細のナイロンスパーク糸による揺らぐファブリックはアシンメトリーなドレスやブラウスに用いられ、山野草の手捺染プリントを施したフーデッドコートやフィールドジャケット、シアーなアノラックやケープ、コード刺繍を備えたアクティブなルック、ツリガネニンジン形のガラスアクセサリー、<TSUCHIYA KABAN(土屋鞄)>とのバッグやレザーベストが続いた。深度のあるグリーンを基調に、自然とクラフト、アウトドアウェアのコードと手仕事の言語をひとつの景色として結び、日常のなかにある視覚の揺らぎを服の表面へと定着させた。

Mame Kurogouchi 2026AW COLLECTION RUWNAY

Courrèges/クレージュ

<Courrèges>が、2026年秋冬コレクション「24 Hours in the Life of a Courrèges Woman」を発表し、パリの女性の朝から夜までを追うワンカットの映像のような構成で、一日を通して着用できるワードローブを描いた。レミー・ブリエールが構想した見慣れていながら超現実的な街並みのなか、パリで収録した音の風景とエルワン・セネ(Erwan Sene)とのサウンドトラックを重ね、1960年代から1980年代のメゾンのアーカイブに接続しながら、一人の女性の24時間を進めていった。一枚の布が身体を包むジェスチャーから始まり、サテンホワイト、ハイブリッド素材、複数のスナップボタン、トラペーズカット、ビニールのアンサンブル、インジェクションジップ、地下鉄チケットを刺繍したオーガンザ、タールのようなキャビア織りのデニム、クローク札の刺繍、ガラスビーズ、黒のチューブドレス、新作バッグ「Shadow」が順に登場した。最後に全ルックをホワイトで再構築することで、ブランドの象徴的なコードをあらためて前景化し、日常の身振りと現実の強度を、素材の親密さを通して<Courrèges>の現在へと引き寄せた。

Courrèges 2026AW COLLECTION RUNWAY

Dries Van Noten/ドリス ヴァン ノッテン

<Dries Van Noten>が、リセ・カルノーでの記憶と、1680年代のフランドル静物画『Two Peaches and a Butterfly on a Stone Plinth』『Flowers and Insects』を手がかりに、2026年秋冬ウィメンズコレクションを発表した。若さから大人へ移る接点、アイデンティティがまだ定着しきらない時間、制服やセーター、ジーンズのようにその人を形づくる服への感覚を起点に、ティーンエイジの問いかけと観察がショー全体に流れた。縦長のシルエットに、厳格なスクールユニフォームやネクタイ、ダッフルコート、紋章入りブレザー、ボンバージャケット、仕立てたデニムのジャケットとシャツ、ジャカード、チェック、ニットの厚いスリーブ、プリーツに隠れたり現れたりするプリント、刺繍に見えるプリント、落とし物を思わせるジュエリー、ジュエルのような装飾を配したバッグが組み合わされた。ブルー、ブラック、濁ったニュートラルに、赤、ラスト、タンジェリンオレンジ、ネオンイエローを差し込みながら、借りる、集める、似合わない、調和するといった不安定な過程そのものを、服と身体の関係のなかに置いた。

Dries Van Noten 2026AW WOMEN’S COLLECTION RUNWAY

Stella McCartney/ステラ マッカートニー

<Stella McCartney>が、Le Grand Manège Jean Caucanasで2026年ウィンター ランウェイ コレクションを発表し、自由、ユーモア、大胆な色彩に満ちた幼少期から現在のブランドに至るまでの人生をたどるショーを、馬の世界を体験する空間のなかで展開した。ジャン フランソワ ピニョンが黒馬と白馬の登場とともに始まった会場では、人間と馬のつながりを軸に、男性性と女性性、遊び心と精緻さを併せ持つステラ ウーマンのワードローブが、ブランド史の重要な瞬間を反映するかたちで組まれた。責任ある調達のウールやGRS認証素材のテーラリング、ヴィーガン由来のファー代替素材、ヴィンテージレース、フィッシャーマンリブ、100%リサイクル素材のデニム、カーゴジップ、リードフリー クリスタル、紋章入りのポロシャツ、星とハートのメッシュプリント、S&Mグラフィック、ポニープリント、「My Dad Is A Rockstar」と記したタンク、「Appaloosa」、「Falabella」、「Stella Ryder」、ピラミッドヒールのパンプスが並んだ。レザー、フェザー、ファー、エキゾチックスキンを用いない姿勢を貫きながら、全体の93%を環境に配慮した素材で構成し、生き物への愛と敬意をショーの演出から素材選択まで一貫して貫いた。

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Stella McCartney 2026年ウィンターコレクション──愛と敬意に満ちたエシカル ラグジュアリー
Mar 13, 2026

STELLA McCARTNEY 2026AW COLLECTION RUNWAY

Acne Studios/アクネ ストゥディオズ

<Acne Studios>が、30周年を迎える節目に2026年秋冬ウィメンズコレクションを発表し、レガシーを身に纏われ、問い直され、再構築される時間の視点として扱った。2010年にロード・スノードンのアパートメントをランウェイにした記憶を呼び戻しながら、連なるサロンのような空間に、貴族的な装いとミニマリズム、カウンターカルチャーと既存体制、プレッピーなコードと若々しい感性を交差させた。プリンス・オブ・ウェールズ・チェックはスケールや配置や色を変え、テクニカルサテンの紫陽花、抽象化したアニマルパターン、コラージュプリントのシルクスカーフ、ポール・コイカー(Paul Kooiker)によるポートレート、カーブを描くポインテッドトゥのパンプスとストレッチブーツ、ファーアクセント、ヴィンテージスタイルのアイウェア、シングルハンドルの新作バッグ、ウィークエンダーサイズのCameroが登場した。部屋から部屋へ移動するショーとポーティスヘッド(Portishead)のサウンドトラックを通じて、記憶を建築のように積み上げながら、過去を讃えるのではなく未来のクラシックへ橋を架けるという姿勢を明確にした。

Acne Studios 2026AW COLLECTION RUNWAY

ALAÏA/アライア

<ALAÏA>が、ピーター・ミュリエにとってメゾンで最後となる2026年サマー フォール コレクションを発表し、過去5年間にチームが学び、感じ、愛してきたものを、メゾン アライアの真髄へと削ぎ落としたかたちで表現した。ミニマルで、純粋で、本質的という輪郭のもと、アズディン・アライアの作品への敬意と、自身がメゾンで過ごした時間の痕跡を重ね、厳格な直線性から豊かさへと広がる流れのなかでコレクションを組み立てた。ローデン、ビスコース、コットンベルベット、ラテックス、切りっぱなしのウールといった素材を用い、アクセサリーを最小限に絞り込み、クロコダイルをあしらったシフォンや透け感のあるジャージーのドレスでは、<ALAÏA>ならではのシルエットをあらためて浮かび上がらせた。さらに北島敬三がこのコレクションを生み出した人々のポートレートを撮影し、衣服と人、メゾンとチームをひとつの像として結びながら、「私のアライアではなく、私たちのアライア」という言葉で締めくくった。

ALAÏA 2026SF COLLECTION RUNWAY

 


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パリ・ファッションウィーク 2026年秋冬コレクションガイド — 現実に触れる衣服 vol.2
Apr 17, 2026
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Apr 17, 2026

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