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Dries Van Noten 2027年春夏メンズコレクション──現実と幻想が溶け合う、官能的な白昼夢

Jul 9, 2026
2026年6月25日、<Dries Van Noten(ドリス ヴァン ノッテン)>は2027年春夏メンズコレクションを発表した。デザイナー、ジュリアン・クロスナーが手がける今季は、ステファヌ・マラルメによる詩『半獣神の午後』を着想源に、現実と空想が溶け合うような官能性と軽やかさを追求。トレンチコートやハンティングジャケットといった日常着に、透けるシアー素材や枝葉のプリント、記憶の中でおぼろげに色褪せた情景などの幻想的なモチーフを落とし込み、衣服へと昇華した。

Dries Van Noten 2027年春夏メンズコレクション──現実と幻想が溶け合う、官能的な白昼夢

Jul 9, 2026 - FASHION
2026年6月25日、<Dries Van Noten(ドリス ヴァン ノッテン)>は2027年春夏メンズコレクションを発表した。デザイナー、ジュリアン・クロスナーが手がける今季は、ステファヌ・マラルメによる詩『半獣神の午後』を着想源に、現実と空想が溶け合うような官能性と軽やかさを追求。トレンチコートやハンティングジャケットといった日常着に、透けるシアー素材や枝葉のプリント、記憶の中でおぼろげに色褪せた情景などの幻想的なモチーフを落とし込み、衣服へと昇華した。

私たちが今季、ひそやかに迷い込むことになったのは、象徴主義の傑作詩として名高い『半獣神の午後(L'Après-midi d'un faune)』の甘美な迷宮。夏の濃厚な熱気と、青々と茂る木々に支配された深い森の中で、屋外での午睡からゆっくりと目覚めた、夢のような半獣神の物語だ。デザイナーのジュリアンもまた、その気怠くセンシュアルな幻影に、どうしようもなく囚われてしまった一人なのかもしれない。彼はこの詩を読んだ感想を、まるでおぼろげな独白のように、こう述べている。

私は、この詩が描き出す曖昧さに、現実と想像の境界が絶えず曖昧になっていることに、そして感覚と空想が互いに滑らかに溶け合う流動性に心を動かされました。暑さ、木々、空 ― 彼の周囲のすべてが夢のようであり、官能的で、生き生きと感じられます。 この官能性という概念が、私たちの選択や色使い、素材選びの多くを導き、定番のワードローブをやさしく、柔らかく、親密な着心地の服へと昇華させました。 目覚めると消えてしまう夢のように、すべてがゆるく、繊細で、簡単に脱ぐことができ、いつでも飛び立てるような感覚であることを願っています。自然の中の安らぎ。そのシンプルな美しさにオマージュを捧げて。

ジュリアン・クロスナー

※リリース抜粋

ジュリアンが今季の服に宿らせたのは、夏の情景の中で、現実と想像の境界が曖昧になっていく、心地よくも儚い感覚だ。言葉にするにはあまりにも繊細な「官能性」という概念こそが、コレクションのすべての素材を、そしてすべての色彩を支配する静かな羅針盤となった。「軽やかで繊細なものを作りたい」という彼の願いは、男性たちの見慣れた定番のワードローブを、驚くほどやさしく、肌に寄り添う親密な衣服へと変貌させてしまった。



コレクションの幕開けを飾ったのは、重い瞼をそっと開いた瞬間に広がる、淡く滲む空のような、奇妙に美しい静寂だった。柔らかなアプリコットオレンジのファーストルックで幕を開けた。配色はアプリコット、サンドベージュ、ブラッシュの中間色で統一。ルーズで曖昧な輪郭のなかに、圧倒的な品格を内包していた。

色彩は、まるで退屈な一日のなかで移り変わる空の色のように、緩やかなグラデーションを描いていく。ベースとなる穏やかなアースカラーのなかに、突如として差し込まれる、自然の生命力をそのまま宿したかのような鮮烈なグリーンやブルー。それはまるで夏の海をそのまま切り取ったかのように瑞々しく、シャツのうえで涼やかな風を揺らす。さらに、記憶の彼方でおぼろげに色褪せ、美しく滲んでしまったかのようなノスタルジックなプリント、そして雲の模様に漂白されたデニム地が、衣服の表面に豊かな情緒を刻みつけていく。やがて、静かな湖面に映る月明かりをシルクのうえに精密に表現した写真的なモチーフが登場するとき、それは夜更けの奔放さを描き出すブラックの流れるようなテーラリングと見事な調和を見せ、観客の意識を、白昼夢から深遠な夜の物語へと美しく反転させていく。


クラシックな男性の典型的な定番アイテムたちは、その硬質なルールを完全に失い、形のない流動的なものへと生まれ変わっていた。伝統的なテーラリングは風を受けてひらひらと揺らめき、深く切り込まれたネックラインは、男性のデコルテにセンシュアルな余白をもたらす。揺らめくロングコートのなかに、深く切り込まれたネックラインが印象的なトップスや、ボクサーショーツを思わせる軽快なショーツを重ねたレイヤード。それは、肩の力を完全に抜いたリラックス感と、ドリスらしい端正なエレガンスを完璧に両立させていた。短いショーツの下から大胆にのぞく素足のバランスは、肌の露出による余白そのものがシーズン性を雄弁に物語る軽やかさを生み出している。

この流動性を物理的に支えているのが、視覚的な美しさにとどまらず、触感において圧倒的な快楽をもたらす極上の素材使いだ。シルク、シャルムーズ、ポンジーシルクをはじめ、軽くパッドが入れられウォッシュ加工が施されたシルク、上質なコットンや軽やかなウール、あるいは写真のようにリアルな風景や自然の一片を表面に映し出すナイロンにいたるまで、肌を滑るように掠めていくファブリックの数々は、纏う者だけでなく見る者にまでその滑らかな心地よさを想像させる。透け感のあるトレンチコートや、ウォッシュ加工を施したポンジーシルクのパーカー、グログランのベルトが付いた、あるいは袖を大胆に切り落としたハンティングジャケット。本来は機能性やタフさを求められるワークウェアやハンティングのエッセンスが、どこか儚く繊細な表情へと見事に昇華されている。さらに、シルク・シャルムーズのランジェリーを思わせるディテールや、ドローストリングとして機能する極細のスパゲッティ・ストラップ、タンクトップといった要素が散りばめられ、まるで衣服を“脱ぎかけ”であるかのような、極めて親密でプライベートなムードを衣服の構造そのものに織り込んでいるのである。

衣服が動きに合わせるたび、ランウェイに息をのむような美しい余韻を残すのが、陽光を受けた水面のようにきらめくスパンコールの存在。タンクトップやオーバーサイズのコート、そしてショーツにいたるまで贅沢にあしらわれたこのスパンコールは、決して華美に主張するものではなく、静かな自然の情景に一筋差し込む光の粒のように、ルック全体に深い奥行きと詩的な情緒を与えていた。その一方で、コレクションの進行とともに、野生的な官能さをダイレクトに感じさせる大胆なアニマル柄のアイテムが次々と姿を現す。レオパードやパイソン柄といった力強いモチーフは、主役級のウェアからスタイリングの細部にいたるまで随所に配され、コレクションに心地よい緊張感をもたらしていく。しかし、その野生味は決して下品な誇張には繋がらない。首元が大胆にカットアウトされたジャージーやオーガンジーのタンクトップ、あるいは切りっぱなしの生地やカットオフされた襟のディテール、そして前述の夏の海を想起させるグラデーションシャツなどと巧みに組み合わされることで、アニマル柄はあくまで快楽的でやさしいカモフラージュの解釈として提示され、<Dries Van Noten>にしか成し得ない、極めて知的で自然な官能性を引き立たせることに成功している。

今回のコレクションにおいて、衣服の流動的な魅力をさらに増幅させ、ジュリアンが目指した「超自然の神秘的なスリル」を完全に完成させているのが、計算され尽くしたフットウェアやバッグ、ロンググローブ、ジュエリーといった小物類。まず足元に目を向けると、短いショーツの下から素足を見せるスタイルに対して、極めて軽快なバレリーナシューズや、まるで素足そのものであるかのように錯覚させる軽やかなサンダルが合わせられ、ランウェイに浮遊感とも言うべき軽やかさを生み出していた。その一方で、柔らかく崩れがちな全体のシルエットに対して、確かな大人の輪郭と端正なエレガンスを担保するように、細身のレースアップシューズやタフなブーツが絶妙なバランスで配されており、リラックスしたムードの中にメゾン特有のストイックなテーラリングの精神を息づかせている。

さらに、ジュエリーやアタッチメントのディテールには、非常にユニークで自由奔放な遊び心が隠されている。まるで、自然の中で見つけた美しい破片を器用に集めて巣作りに励む鳥のように、ビールキャップ、鍵、ネジ、そして本物の小枝といった、本来であれば高級なジュエリーとは対極にある日常のレディメイドや自然の遺物が、繊細な小さなチェーンに整然と並べられ、モデルたちの身体や衣服を飾っている。首元へのフォーカスを強調するように、ジャージーやニットのトップスを優美に飾るレースやブロデリー・アングレーズの繊細さ、あるいは首元に緩やかに結ばれたり、今にも解かれたりしそうな気怠いスカーフの優雅な動き。衣服の上に咲き誇る美しい枝のモチーフは、自然の中の安らぎとシンプルな美しさに至高のオマージュを捧げた結果である。

「目覚めると消えてしまう夢のように、すべてがゆるく、繊細で、簡単に脱ぐことができ、いつでも飛び立てるような感覚であることを願っています」というジュリアンの言葉の通り、私たちが日々着用するクラシックなメンズウェアの境界線を心地よく押し広げている。機能的なハンティングジャケットやトレンチコートが美しい透け感を持ち、カジュアルなパーカーにはカモフラージュの新しい解釈として洗練された自然のモチーフが咲き誇る。

視覚的なグラデーション、肌を掠めるシルクやシャルムーズの極上の触感、そしてビールキャップや小枝を配した小さなチェーンジュエリーにいたるまで、すべての要素が完璧に一体となり、マラルメの詩が描いた、あの暑さ、木々、空がすべて官能的に生き生きと感じられる世界を見事にランウェイの上に再構築してみせた。<Dries Van Noten>の2027年春夏メンズコレクションは、現実の厳しさを忘れさせるかのような安らぎとシンプルな美しさに至高のオマージュを捧げ、私たちが生きる日常という現実に、最も美しく官能的な「夢のような世界」を確かな形としてみせてくれた。

 


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Dries Van Noten
ウェブサイト:https://www.driesvannoten.com
インスタグラム:@driesvannoten

  • Photograph : GoRunway
  • Edit & Text : Miwa Sato(QUI)

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