感性が豊かな人々を刺激する服作りに力を注ぐ|Études Studio オレリアン・アルベ
ファッションに注力することでストリートウェアから脱却
— アルベさんのクリエイティブのキャリアは<Études Studio>からスタートしているのでしょうか。
アルベ:そうではありません。クリエイティブの活動は20歳の頃に仲間たちとファッションと出版を軸にスタートさせました。その当時はブランド名も<Études Studio>ではなかったです。
— 現在の<Études Studio>もファッションから出版まで幅広く手がけていますが、20歳の頃とは表現手法などは異なるのでしょうか。
アルベ:ファッションに関してはデザインのエレメントとして変えている部分もありますし、変えていない部分もあります。<Études Studio>も初期の頃はストリートウェアブランドのように扱われることが多かったのですが、最近は上品で洗練されたウェアとして捉えられることも増えてきました。
— ウェアの印象が変わってきたということは、デザインのインスピレーション源などに変化があったのでしょうか。
アルベ:コレクションのインスピレーションやテーマというのは毎シーズン異なるのですが、近年はアーティストウェアに注目していて、ミュージシャンや建築家など、あらゆるアーティストが身に纏う衣装にフォーカスしてデザインすることが増えています。それによって<Études Studio>のウェアの印象も変わってきているのかもしれないですね。
— クリエイティブエージェンシーとして<Études Studio>が手がけている領域にはファッション以外にもどのような分野があるのでしょうか。
アルベ:自分たちの創作のスタンスは大きくは変えてはいないのですが、手がける領域は時代によって変化してきています。以前は音楽やスポーツ、グラフィックデザインなどクリエイティブへの関わりも幅広かったのですが、ここ数年はファッションに注力するようになっています。
— クリエイティブの発想も手法も分野によって異なると思いますが、幅広く手がけることで苦労などはなかったのでしょうか。
アルベ:ジャンルが多岐に渡ればクライアントが要求することも当然ながら千差万別です。それに対して自分たちは求められている価値をきちんと提供できているのかと不安に感じることはありました。自分たちが掲げる方向性とは異なるクリエイティブを求められることもあり、そういう場合はどうアプローチするかは常に考え続けていることです。
— 求められるクリエイティブの方向性が異なってもチャレンジすることを選択してきたということですね。依頼を断るという考えはなかったのでしょうか。
アルベ:まずは挑戦をして、調節をして、クライアントと折り合えるポイントを探します。それでも考えを一致させることが難しいこともありますね。
クリエイティブな人々を刺激するような服を届けたい
— <Études Studio>の共同設立者のジェレミー・エグリさんとはクリエイティブのバックグラウンドが異なると思いますが、お二人の考え方に相違が生まれることはないのでしょうか。
アルベ:これまでに大きな衝突はなかったですよ。彼とはティーンエイジャーの頃から兄弟のように仲良しですから(笑)。クライアントからの依頼に応えるためにしっかりとディスカッションを重ねますし、日頃からコミュニケーションも深めています。お互いが考えていることも共有するようにしていますからすれ違いが生じることはないですね。僕も彼も歩み寄れる性格ではありますが、ここまでうまくやっていけるとは思っていなかったです。レアケースかもしれません(笑)。
— <Études Studio>の活動においてエグリさんとの役割分担などはあるのでしょうか。
アルベ:お互いの役割というものは特に決めてはいません。ファッションに関してもどちらかの主導でコレクションの方向性を決めるということはせず、むしろシーズンテーマなどは一緒に考えることを最も重要視しています。テーマを考えるときはパリで何日にも渡って顔を合わせて、喧騒からは離れたような環境で集中して話し合います。
— <Études Studio>のウェアの展開が最も多い地域はどこになるのでしょうか。
アルベ:フランスを中心としてヨーロッパがいちばん大きなマーケットで、その次がアジアです。アジアで最初に展開したのは日本だったのですが、<Études Studio>の認知度はまだまだなので、多くの日本の方に知ってもらうためにできることはあるはずだと思っています。
— アウターもカットソーもスポーティな雰囲気がありますが、上質感も漂っていて世代を問わず着られそうな印象を受けました。
アルベ:<Études Studio>を選んでくれる方の年齢層はとても幅広いです。ティーンエイジャーもいますし40代、50代も。25歳ぐらいから40歳ぐらいが年齢としてはいちばん多いですね。ブランドを続けていくことで僕たちも年齢を重ねてきて自分が着たいと思う服のテイストも変わってはきていますが、同時に若者のカルチャーにも興味を持ち続けているので、結果として幅広い世代から選ばれる服が生まれてきているのかもしれないです。
— <Études Studio>の服をどんな人たちに着てもらいたいですか。
アルベ:ジャンルや職種にこだわりはないですけどミュージシャン、ダンサー、ファッションディレクターなど男女を問わず感性が豊かな人々に選んでもらえたらうれしいです。
— 自己表現だったり、変身願望だったり、ファッションにはいろいろな役割がありますが、<Études Studio>としてはどのような服を作っているのでしょうか。
アルベ:<Études Studio>を着て、ファッションでの自己表現をもっと楽しんでほしいという思いは強いです。着ることで視点が変わったり、視野が広がったり、これまでにはなかったような発見があったり。<Études Studio>としては、そんな体験を生み出すような服を目指しています。
— この場で目にしたカプセルコレクションは1月のファッションウィークで発表予定と聞きました。サウンドメーカーから着想を得ているそうですが、コレクションにはどのように落とし込んだのでしょうか。
アルベ:ジャケットに施したドットのような模様は音を視覚化したものです。大きさも不揃いで、形も歪んでいて、その不規則さはノイズサウンドをイメージしています。フェイクレイヤードのカットソーはライブなどでミュージシャンが着ている衣装のイメージです。ミュージシャンが何年も着続けているという想定で、色もあえて経年変化を起こしたかのようにくすませています。ロゴがアイコンになっているカットソーは、エイフェックス・ツインのロゴを手がけたポール・ニコルソンに今回のカプセルコレクションのためにデザインを起こしてもらいました。<Études Studio>のロゴも2000年代のテクノカルチャーから着想を得てデザインしています。
— ポール ニコルソンとは以前からの知り合いだったのでしょうか。
アルベ:僕がエイフェックス・ツインのロゴをすごく気に入っていて、いつかコラボレーションをしたいと思っていました。それで今回のカプセルコレクションに合わせて声をかけたんです。
作品を通じて問いを発信し続けるアーティストに惹かれる
— アルベさんが今注目しているアーティストがいれば教えてもらえますか。
アルベ:僕が惹かれるのは自身の作品を通じて社会に対して疑問を投げかけているアーティストです。今はドイツの写真家のヴォルフガング・ティルマンスに注目していて、彼の社会を描写しているようなポートレートやリアルな社会を映し出しているような作品がすごく好きです。
— <Études Studio>は写真集もディレクションされていますが、取り上げるアーティストはどのようにして決めているのでしょうか。
アルベ:フォトグラファーの選出で大切にしているのは「作品が社会に何かを語りかけているかどうか」です。2025年に出版した写真集ではスウェーデンのエリック・グスタフソンを取り上げましたが、彼の作品からは「なぜ写真を撮り続けているのか」という自問自答が伝わってきて、そこに惹かれて選出しました。掲載している作品は出版のための撮り下ろしではなくて、これまでに撮りためてきたアーカイブから厳選しています。
— <Études Studio>としてコラボレーションをしてみたい日本のアーティストはいますか。
アルベ:ちょっと考えさせてもらえますか(笑)。
— 名前を挙げるのは何人でも構いません(笑)。
アルベ:坂本龍一さんは音楽や映像など、ジャンルを問わずに素晴らしい才能を発揮していて、とてもリスペクトできるアーティストでした。フォトグラファーだとホンマタカシさんですね。一緒に写真集を作ってみたいです。
— アルベさんは展示会のための来日は初めてだそうですが、プライベートでは日本を訪れたことがあるそうですね。日本でお気に入りの場所はありますか。
アルベ:日本に来たらあちこちに行くので道に迷って迷子になることがよくあります(笑)。いろんな場所に足を運びますが、頻繁に訪れているショップとして挙げるなら中目黒の「LICHT(リヒト)」です。すごく好きなギャラリーです。
— 今回のインタビューで<Études Studio>のことをより深く知る方もいると思いますが、クリエイティブエージェンシーとして今後挑戦したいことはありますか。
アルベ:パリ以外にもショップを展開していきたいですし、ポップアップも積極的に開催したいです。まだ具体的な構想を練っているわけではないですがギャラリーだったりカフェだったり、そのような分野にも挑戦していきたいと思っています。
Études Studio
<Études Studio(エチュード スタジオ)>は、ファッションからアート、出版に至るまで多様な表現を行っているパリ発のクリエイティブブランド。メンズコレクションは、ミニマルなシルエットとグラフィックな要素を融合し、ヨーロッパ旗の星やブルー・クラインカラーなど象徴的なモチーフを織り交ぜている。また、アートや写真、グラフィックデザインとのコラボレーションを重ねることで、常に進化する文化的視点をブランドの核に据えている。
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@etudesstudio
- Photography : Junto Tamai
- Interview : Akinori Mukaino(BARK IN STYLE)
- Edit : Miwa Sato(QUI)













