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形のない感覚を、一枚の布へ - IM MEN 特別展「光が訳すもの」レポート

Oct 16, 2026
2026年10月1日より、<IM MEN(アイム メン)>は東京・ISSEY MIYAKE GINZA | CUBEと大阪・ISSEY MIYAKE SEMBA|CREATION SPACEの2会場にて、特別展「『光が訳すもの』 in collaboration with SHOKO NARITA」を開催している。

本展は、2026/27年秋冬コレクション「FORMLESS FORM」から生まれた、<IM MEN>とアーティストデュオSHOKO NARITAによる協働シリーズを紹介するもの。SHOKO NARITAは、光を起点に物質と知覚の関係を探っている。

本記事では、実際にISSEY MIYAKE GINZA | CUBEを訪れ、<IM MEN>のデザイナーたちとSHOKO NARITAから聞いた制作背景とともに、太陽の光が「空」となり、その色彩が一枚の布へと渡るまでを辿る。

形のない感覚を、一枚の布へ - IM MEN 特別展「光が訳すもの」レポート

Oct 16, 2026 - FASHION
2026年10月1日より、<IM MEN(アイム メン)>は東京・ISSEY MIYAKE GINZA | CUBEと大阪・ISSEY MIYAKE SEMBA|CREATION SPACEの2会場にて、特別展「『光が訳すもの』 in collaboration with SHOKO NARITA」を開催している。

本展は、2026/27年秋冬コレクション「FORMLESS FORM」から生まれた、<IM MEN>とアーティストデュオSHOKO NARITAによる協働シリーズを紹介するもの。SHOKO NARITAは、光を起点に物質と知覚の関係を探っている。

本記事では、実際にISSEY MIYAKE GINZA | CUBEを訪れ、<IM MEN>のデザイナーたちとSHOKO NARITAから聞いた制作背景とともに、太陽の光が「空」となり、その色彩が一枚の布へと渡るまでを辿る。

「FORMLESS FORM」の出発点にあるのは、暁や黄昏など一日の境目にふと現れる、背筋を伸ばしたくなるような感覚を、一枚の布で表すことはできないだろうかという問いだ。形のない感覚にどう形を与えるのか。その問いと、SHOKO NARITAの実践が重なることで、今回のクリエイティブは形になっている。

暁や黄昏に感じる移ろいも、刻々と変化する光によってもたらされるもの。
そうした感覚を一枚の布へとつなぐ、ひとつの手がかりとなったのが太陽の光だった。

太陽の光は、何かを通って届く

会場に足を踏み入れると、まず目に入るのが、SHOKO NARITAによる光の装置だ。

パラボラの内側に現れる色彩は、見る位置や角度によって表情を変えていく。ある場所からは青く見えていた光が、見る位置を変えると別の色彩を帯びて見える。さらに、装置内の分相ガラスや光源の位置関係を変えることでも、その見え方は変化する。ひとつの装置の中に、いくつもの光の見え方が潜んでいる。

この装置の発想のもとにあるのが、太陽の光が大気を通ることで生まれる色の変化だ。
私たちが空の青や、暁や黄昏の赤として目にしている太陽の光も、大気という膜を通過する過程で散乱し、その見え方を変えている。時間や天候、大気の状態が異なれば、同じ場所から見上げる空も同じ色にはならない。

SHOKO NARITAの装置は、そうした大気の働きをなぞる。カラーLEDによって色をつくるのではなく、LEDの光を、空が青や赤に見える現象と同じ原理を応用した分相ガラスに通すことで色彩を生み出し、それをパラボラへ映し出す。そこに現れる色を、私たちは「空」として見ることができる。自然界で大気を介して起きている光の現象を、ガラスと光源、パラボラによって捉えている。

装置を前にすると、普段何気なく見上げている空も、ひとつの色として存在しているわけではないことが改めて見えてくる。

光は、何かを通過し、置かれた条件や見る人との関係によって、その都度異なる姿を見せる。本展を読み解くうえで、まず見えてくるのがそんな光の性質だ。

偶然に現れる光を、人の手で捉える

同じ場所から見上げた空であっても、まったく同じ色を見ることは難しい。自然界で目にする光は、その瞬間のさまざまな条件が重なった先に現れるものだからだ。

分相ガラス、LEDの光源、パラボラを組み合わせたこの装置は、空の色が生まれる原理を人工的な環境のなかで捉える。光が条件によって色を変える仕組みそのものを装置の中で扱っている。

装置の条件を変えることで、自然界では一瞬の出来事として過ぎていく色の移ろいを何度も生み出し、見つめることができる。
それが、今回の衣服づくりへつながる重要な前提になった。

記憶のなかにある光を選ぶ

衣服に用いる色彩を探るため、装置に現れる「空」を何度も条件を変えながら数多く撮影したという。
興味深いのは、そのなかから何を選ぶかという基準だ。単に「美しいかどうか」で選んだわけではなかった。
選ばれたのは、彼ら自身の記憶にどこか触れるような光だった。そうした既視感をも手がかりに、膨大な写真のなかから光を選び取っていったという。
さらに、その写真をそのまま用いるのではなく、どの部分を残し、どこを切り取るのかについても、幾度となく検討が重ねられている。

ここで、光を選び、切り取る過程に、作り手自身の記憶や感覚が加わっていく。
自然界では偶然出会う光を、人の手で条件をつくり、記憶を手がかりに選び直していく。

なぜ、実際の空の写真ではないのか

ここまでのプロセスを辿ると、実際の空の写真ではなく、装置を介した理由も見えてくる。太陽の光を衣服へ落とし込むのであれば、実際の空の写真をテキスタイルに用いることもできたはずだ。それでも本作では、あえてSHOKO NARITAの装置を介し、光をつくり出すところから始めている。

ここで重要になるのが、実際の空の写真と、アートを介して生まれた光との違いだ。
実際の空を撮影すれば、その写真には、ある時間、ある場所に存在した風景が記録される。暁や黄昏も、その日、その場所にしかない風景として、具体的な時間や場所と結びついていく。
一方、SHOKO NARITAの作品を介することで、特定の場所や時間に紐づかない光を扱うことができる。さらに、そこに現れるさまざまな光のなかから、記憶や感覚を手がかりに選び取ることもできる。
場所や時間といった具体性をいったん離れることで、焦点は「どこの空か」ではなく、「その光を見たときに何を感じるのか」へと移っていく。
どこかで見た気がする。なぜか懐かしく感じる。ある季節や時間の空気を思い出す。
そうした感覚は、ひとつの風景として提示された瞬間に、かえって限定されてしまうのかもしれない。
アートを介し、光が生み出す空のイメージを抽象化することで、見る人はそこに自分自身の記憶や経験を重ねることができる。
衣服へ移されるのは、特定の風景そのものではなく、光を見たときに記憶や感覚が動く、その経験に近い。今回の協働の意味も、ここに見えてくる。

SHOKO NARITAの作品は、太陽の光を再現することを目的とするのではなく、光を見たときに生まれる感覚や記憶を扱うための方法として、<IM MEN>の問いと結びついている。

光を受け止める、一枚の布

こうして選び取られた光は、9つのグラデーションへと展開され、テキスタイルへと落とし込まれていく。

ここで興味深いのは、色彩だけでなく、その色を受け止める衣服の構造までが、今回のクリエイティブと結びついていることだ。
<IM MEN>が用いたのは、円形に平置きできる構造。縫い目による分断はありながらも、大きな円形の面にグラデーションを広げることができる。その構造は、円形のパラボラに光を映し出すSHOKO NARITAの作品とも呼応している。

円形の一枚の布は、光から抽出した色彩を受け止めるキャンバスとして機能する。
平面の状態では、グラデーションの広がりをひとつの面として見ることができるが、身体にまとわれると布は立体となり、色の重なりや見える範囲も変わっていく。
見る位置によって装置の光の見え方が変わるように、布に定着した色彩も、身体を包み、動くことで別の見え方を生み出す。

SHOKO NARITAの作品から生まれた色彩には、今回の協働によって、写真や記憶を経ながら衣服へとつながる新たな経路が加わった。
装置の中に現れた「空」は写真となり、記憶を手がかりに選ばれ、色彩として抽出され、一枚の布へと渡される。そして最後には、着る人の身体によって再びその見え方を変えていく。

一枚の布に宿る、形のない感覚

冒頭で触れたように、2026/27年秋冬コレクション「FORMLESS FORM」は、暁や黄昏など一日の境目にふと現れる、背筋を伸ばしたくなるような感覚を、一枚の布で表すことはできないだろうかという問いから始まっている。
暁や黄昏など、その瞬間にしかない空気や温度、季節の気配。光をきっかけに記憶のなかから浮かび上がるものは、ひとつの言葉では捉えきれない。
自身の感覚に立ち返りにくい日常のなかで、姿勢や気持ちがふっと整う瞬間。そんな感覚もまた、<IM MEN>が一枚の布を通して見つめているもののひとつなのかもしれない。

太陽の光は、それらを直接意味するものではない。けれど、私たちは光を目にしたとき、自分自身の記憶や経験を重ね、そこからさまざまな感覚を受け取ることができる。
今回の協働は、そうした形のない感覚に、光を手がかりとして形を与える試みともいえる。
その過程を辿ると、実際の空を写すのではなく、装置の中に生まれた「空」を、記憶を手がかりに色彩へと抽象化し、一枚の布へつないでいった意味も見えてくる。
場所も時間も特定されない色だからこそ、見る人それぞれに異なる受け取り方が残されている。
一人ひとりに異なる世界が提示される時代だからこそ、同じものを前にしながら、自分自身の記憶や感覚によって異なるものを見るという経験には意味がある。そこでは、世界の違いは外から与えられるのではなく、自分自身の内側から生まれてくる。

形のない感覚を、どう衣服として形にすることができるのか。
<IM MEN>とSHOKO NARITAの協働は、その問いにひとつの道筋を示している。会場で装置の前を動きながら、そして衣服に広がる色を見ながら、自分の記憶に触れる光があるか確かめてみる。その先に何を感じるかは、見る人それぞれに委ねられている。

 


 

開催情報

ISSEY MIYAKE GINZA | CUBE
会期:10月1日(木)ー11月9日(月)
住所:東京都中央区銀座4-4-5
開館時間:11:00 - 20:00

ISSEY MIYAKE SEMBA|CREATION SPACE
会期:10月1日(木)ー11月11日(水)
住所:大阪府大阪市中央区南船場4-11-28
開館時間:11:00 - 20:00

IM MEN
ウェブサイト:https://www.isseymiyake.com
インスタグラム:@im_men_official

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