adidasとのコラボレーションで密かに話題を集めた、パリ発ブランドANTHONY CALYDON
<adidas>とコラボのスニーカー
<ANTHONY CALYDON>がつくるのは、ビーニーやソックス、バッグなど、身につけるものから小物までをひとつのコレクションとして展開。そのすべてに通底しているのが、「つくること」そのものへの意識だ。素材をどう扱い、どこまで形にできるのか。完成したデザインを生産へ落とし込むのではなく、手を動かしながら生まれるものを受け入れることが、彼らのクリエイションの核になっている。<ANTHONY CALYDON>の服には、映画やゲーム、ポップカルチャーの記憶が入り込んでいる。彫刻のように立ち上がるフードや、身体を包み込むようなシルエット、特徴的なリブニットとオーバーロックステッチ。彼自身が幼い頃から触れてきたものや記憶が、独自の感覚を通してファッションのためのアイデアへと昇華され、唯一無二の造形として表現されている。
その原点にあるのは、意外にも『スパイダーマン』。ピーター・パーカーが自分のコスチュームを描く姿に影響を受け、自分が着たい服をつくり始めたのがきっかけだと話す。母親の友人から裁断や縫製を学び、生地を探しては夜通しミシンを踏むようになり、やがてInstagramでオーダーメイドの服を販売するまでになった。こうしてブランド<ANTHONY CALYDON>が2023年に立ち上がった。
ブランドを率いるのは、1993年生まれのデザイナー、アンソニー・キャリドン。現在は彼を中心とした5人のチームで、パリのアトリエを拠点に活動している。彼らは大量生産を前提としない独自のものづくりを武器に着実に実績と知名度を高めてきた。一度に大量の商品をつくるのではなく、自分たちが実際につくることのできる数だけを、ひとつひとつ手作業で仕上げていく。そのため、販売も一般的な小売店を中心としたものではない。自社オンラインストアを軸としたD2C形式を採用し、基本的には月に一度だけストアをオープン。ドロップのタイミングで登録者にメールが届き、ときにはパスコードが必要になるなど、限られたユーザーに向けたクローズドな販売も行っている。
一見すると特殊にも思えるこのシステムも、ブランドの考え方から生まれたものだ。手作業でつくれる量そのものが限られているからこそ、その数に合わせて販売する。つくれる数だけを届けるという姿勢は、販売方法にも一貫して表れている。
日本での取り扱いも現在は限定的で、<KIOSQUE CC>の1店舗のみ。常設という形を取らず、タイミングに合わせて商品が送られたり、ポップアップに近い形で展開されたりと、こちらもブランド自身のペースで行われている。卸売も、ブランドの生産量やものづくりのリズムを尊重しながら、「それでも取り扱いたい」というショップへ届ける形を選んでいる。
自分たちが生み出せる量を基準に、その先の届け方まで決めていく。ものづくりを起点に販売先や流通のあり方を選択する姿勢が、ブランドの輪郭そのものを形づくっている。
スタートからまだ数年ながら、<ANTHONY CALYDON>はすでにANDAMを受賞。アンソニー自身も、受賞を「本当に誇りに思っている」と話し、今後は現在の活動をさらに発展させることや、チームを大きくすることも視野に入れているという。そんなブランドの現在地を伝えるため、アンソニーは今回東京を訪れた。今回の発表について、彼が大切にしていたのは、自分たちの「仕事そのもの」を見てもらうことだった。展示に特定のインスピレーションを設定されておらず、「自分たちの仕事や、そのクオリティ、素材を使って何ができるのかを見せる」こと。それは、ブランドが何をつくるのかだけではなく、どうつくっているのかを伝えることでもある。
一方、東京での時間には仕事とは異なる一面もあった。「とにかく歩いている」というアンソニー。街の建築をはじめ、目に入るものすべてからインスピレーションを受けるという。パリでは毎日仕事をしているようなスピード感のなかで過ごしているからこそ、東京では歩き、街を眺めながらゆっくりと過ごす。<adidas>とのコラボレーションやANDAMの受賞によって、その名前を知る人が増えている<ANTHONY CALYDON>。けれど、その魅力を形づくっているのは、華やかなコラボレーションだけではない。5人のチームがパリのアトリエで手を動かし、自分たちがつくれるものを、自分たちのペースで届ける。 その堅実なものづくりの姿勢こそが、このブランドを知るうえで最も重要な部分なのかもしれない。
ANTHONY CALYDON
Instagram:@anthonycalydon
HP:https://www.anthonycalydon.com/
- Edit : Miwa Sato(QUI)






