憂鬱なときには憂鬱な曲を|椿正雄のレコード・レコメンvol.1〜梅雨編〜
第一回目のテーマは梅雨。ここ数年梅雨らしい梅雨がないとはいえ、やはり雨の日には気分が落ち込むもの。そんな時聴きたい曲は?教えて、椿さん。
気だるい感じが雨にぴったり。ダイアナ・ロスの「Touch Me in the Morning」
僕はね、憂鬱なときにはムリして明るい曲を聴くんじゃなくて、憂鬱な曲を聴いたほうがいいと思ってるんです。悲しいときは、すごく泣ける音楽を聴いた方がいいと思うし。
これなんかいいんじゃないですか?ダイアナ・ロスの「Touch Me in the Morning」。この気だるい感じが雨にぴったりだね。でもアルバム一枚聴くと、まぁまぁ元気が出るような曲も入っていて。「雨に唄えば」といっしょですよね。あれも最初は地味なのに、最後には踊りまくってるじゃないですか(笑)。
ダイアナ・ロスははじめザ・スプリームスっていうグループにいて、1969年にソロになったんだけど、そこから4年後の1973年にリリースされたアルバム。
この頃は女優業もはじめていて、音楽もソウルからもっとメジャーになろうとしていた頃ですね。タイトル曲の「Touch Me in the Morning」は後にホイットニー・ヒューストンのデビュー曲も手掛けるマイケル・マッサーが楽曲提供していたり、いいシンガーといいスタッフで作りあげている間違いのない一枚です。
びょんびょんって感じのギターがいい。ガボール・ザボの「Spellbinder」
これもいいですよ。ガボール・ザボというハンガリー生まれのギタリスト。
なんか、びょんびょんびょんって感じのギターがいいんですよ。
1966年に出たアルバム「Spellbinder」の「MY FOOLISH HEART」は、いわゆるスタンダード曲でいろんなジャズの人がやっているんだけど、このアレンジがすごくいいんです。カルロス・サンタナはこの人から大きな影響を受けたと公言していますね。60年代の終わりにはじまったロックというのは、ブルースの影響を受けていて、みんなあの頃のロックの人はブルースをすごく研究していました。当時いちばん人気があったのがB.B.キングで、ギターの神様みたいな存在だったんだよね。ブルースロックをやっているギタリストのほぼ全員がB.B.キングを追っかけていたなかで、もっと他にないのかと思ったとき、カルロス・サンタナはガボール・ザボに行き着いたみたい。このアルバムに入っている「GYPSY QUEEN」っていう曲は、サンタナがカバーもしていますよ。
これも気だるい。キャロル・ベイヤー・セイガーの「COME IN FROM THE RAIN」
キャロル・ベイヤー・セイガーの「COME IN FROM THE RAIN」。この人も大作曲家で、バート・バカラックの当時の奥さんだね。さっきのダイアナ・ロスの「Touch Me in the Morning」を手掛けたマイケル・マッサーと並んでこの時代を代表する作家で、このアルバムは1977年の作品。僕がはじめてレコード屋に入ったのが1977年だから、こういうのをよく扱ってましたね。ちょうどイーグルスとかが活躍してきた時期と同じ頃で、80年代の頭までこの流れが続いてたかな。
最初のダイアナ・ロスとちょっとかぶるけど、これもいいと思うよ。
- Text : Midori Sekikawa
- Photography : Makiko Higuchi