QUI

ART/DESIGN

賛否に関係なく「変化の絶対値」を求めていく|クリエイティブディレクター TaiTan

Jul 31, 2026
麻布台ヒルズギャラリーに出現した架空のコンビニエンスストア「ギガマート」。日本で独自に進化するコンビニを文化的IPとして捉えるクリエイティブディレクターのTaiTanが「Conveni Alternative」のプロジェクトの一環として企画し、海外メディアからも取り上げられた「盗-TOH-」のエリアも併設されている。QUI編集部のエディターでありながらTaiTanのPodcast『奇奇怪怪』のリスナーとしてファン心理も隠せずに臨んだ今回のインタビュー。「TaiTanさんの頭の中をのぞいてみたい」という日頃からの想いを叶えることができた。

賛否に関係なく「変化の絶対値」を求めていく|クリエイティブディレクター TaiTan

Jul 31, 2026 - ART/DESIGN
麻布台ヒルズギャラリーに出現した架空のコンビニエンスストア「ギガマート」。日本で独自に進化するコンビニを文化的IPとして捉えるクリエイティブディレクターのTaiTanが「Conveni Alternative」のプロジェクトの一環として企画し、海外メディアからも取り上げられた「盗-TOH-」のエリアも併設されている。QUI編集部のエディターでありながらTaiTanのPodcast『奇奇怪怪』のリスナーとしてファン心理も隠せずに臨んだ今回のインタビュー。「TaiTanさんの頭の中をのぞいてみたい」という日頃からの想いを叶えることができた。


機能が拡張し続けていくコンビニの可能性と向き合う

—これまでの「盗-TOH-」では「音を出さなければ全商品を盗める」がルールでしたが、今回は「監視カメラに認識されない」に変更されましたね。

TaiTan:ありがたいことに「盗-TOH-」は世界的にも話題になって、3回も実施することができたのですが、「音を出さない」というフォーマットでは一人がチャレンジしている最中は他の人は何もできず体験人数も限られるので、同時に複数のエリアで実施できるように「無音」のルールを取っ払いました。僕としては今回の「盗-TOH-」はスピンオフのような感じです。

—体験コーナーではルールが変更されたことで周囲の声援もあって盛り上がっていました。

TaiTan:僕の活動は多岐に渡るのですが、「盗-TOH-」や今回の「ギガマート展」はスポッチャやラウンドワンなどのコンテクストにつながるものだと位置付けています。僕はロードサイドから発展しているカルチャーにおもしろさを感じていて、具体的にはスポッチャやラウンドワンのようなエンタメ施設は海外からも日本独自のクールなIPのように思われているはずです。そのIPに通ずるイベントを広めていきたいという思いはあります。


—TaiTanさんは「Conveni Alternative」を企画テーマとして掲げてコンビニというモチーフを掘り続けていますが、コンビニのどこに惹かれるのでしょうか。

TaiTan:今のコンビニはIPコラボも盛んで、店内にはオリジナルグッズや商品のパッケージにもアニメや漫画のキャラクターがあふれていますよね。僕らにとっては見慣れた光景ですが、インバンドの観光客からするとコンビニがアニメのギャラリーのようにも見えると思うんです。すごく便利で身近な存在のコンビニが別の文脈ではギャラリーの機能まで獲得している。そこに日本独自の文化の可能性を感じるんです。

—Alternativeは「もうひとつの選択肢」のような意味ですが、コンビニを選択する理由って人によってさまざまですよね。買い物なのか支払いなのか荷物の受け取りなのか。

TaiTan:クレーンゲームが導入されていたり、社会的なインフラを果たす店舗というよりもコンビニがプレイグラウンド化している印象があります。海外の人からするとわざわざ訪れる観光地のようにもなっていますからね。コンビニに対しても日本の視点と海外の視点には差異があって、そこはまだまだ探りがいがあると思っています。


—確かにコンビニの機能はどこまで拡張するんだろうという感じです。

TaiTan:コンビニってマートであって、マートは誰が訪れてもいいし、特定のコミュニティが形成される場所でもない。なので誰もが楽しめるものを作りたいという気持ちは強くて、今回の「ギガマート展」も「TaiTan」という記号性は極力出さないようにしました。「僕がプロデュースしました」と前に出過ぎると、どうしても「TaiTan」の文脈で見られますからね。来場者に「誰が何のために作ったのかわからない。でも楽しい」と思ってもらうのがベストです。

—今回の架空のコンビニエンスストアを「ギガマート」と名付けたのはどういう理由からですか。

TaiTan:既存のコンビニ各社にはできないであろう「魅力を拡張させたい」というのが企画のコンセプトだからです。外部の視点から新しい魅力を掘り起こしてそれを「戯画化」、「GIGA化」すればきっとおもしろいものが生まれるはずだと。だから「ギガマート」です。


頭だけでなく身体にまで刻み込まれる体験を届けたい

—TaiTanさんの魅力のひとつとして発信する言葉のインパクトがあります。「盗-TOH-」や「ギガマート」、「Conveni Alternative」といった人を惹きつけるワードはどのようにして生まれるのでしょうか。

TaiTan:「要するにこれは何なんだ」と突き詰めていって、これ以上は分解できないというところまで辿り着いた先に言葉が生まれてくる感じです。自分がやりたい企画のイメージがあって、それを言葉に置き換えたらという作り方です。「盗-TOH-」は極限まで削ぎ落としたことで意味が通じない企画名ですが、やり続けたらしっかりブランドとして育っていきました。そういうのもおもしろいなって思います(笑)。

—「ギガマート」という企画はどのようなイメージを膨らませていったのでしょうか。

TaiTan:先ほどの「コンビニがギャラリー化している」という文脈がまず頭に浮かんで、じゃあそれを反転させて「麻布台ヒルズギャラリーという美術館にコンビニを作ったらどうなるか」という無邪気な思いつきが企画の発端でした。

—「盗-TOH-」のエリアも併設しようと思ったのはどういう理由からですか。

TaiTan:「盗-TOH-」って巨大なクレーンゲームのようなもので、景品を掴むアームを人間がやっているわけです。実際にクレーンゲームを導入している店舗もあるので、「盗-TOH-」を併設すれば今の日本のコンビニを戯画的に表すことができると思いました。



—TaiTanさんの企画は「ワクワクするような体験」というのを大切にしている印象があります。企画を設計する際にそこは強く意識していることですか。

TaiTan:「身体性」というのはこれまでに手がけてきた企画に共通することかもしれません。身体を動かすことで心も動く。つまり「やってみたくなるか」というのは大切にしていることです。


—巨大なポテチ袋は「さあ、飛び込んで!」って明らかに誘っています(笑)。

TaiTan:公園ならいくらでも飛びつくのに、ギャラリーの展示品だと思うと瞬間的に躊躇してしまう感じが麻布台ヒルズでやることのおもしろさですよね。鑑賞のためのファインアートももちろん好きですが、頭の中だけではなくて肉体にまで刻み込まれるような身体性を伴う体験の方がより僕の好みではあります。それを麻布台ヒルズギャラリーという由緒ある美術館でやりたかった。それもアートの真ん中を歩んでいない僕だからこその発想なんだろうなって思います。

緻密な計算があったうえで変なものを創り出したい

—TaiTanさんがPodcastで発していた「生活に根差していない言葉は嘘になる」というのはポリシーのひとつだと思いますが、クリエイティブディレクターとして守っていること、ブラさないことってありますか。

TaiTan:僕は「変化の絶対値」と表現しているのですが、評価や評判としてプラスだけを求めているだけではなく、マイナスに受け取られることもあるかもしれない。いずれにしても、それを受け取った人間の現実に具体的な変化が起こるものを作りたいとは思っています。

—「ギガマート展」に関しては、ポテチ袋に飛び込みたくなるというのはポジティブな身体の疼きなので「変化の絶対値」としてはプラスだと思います(笑)。

TaiTan:そういう身体の反応が自然に湧き上がってきたという声を聞くと、「やって良かったな」って思いますね。

—これからも斬新な企画を世に送り出していくと思いますが、TaiTanさんが新たに興味を持っていることはありますか。

TaiTan:僕は野球ファンですが、ワールドカップの盛り上がりを目の当たりにするとサッカーってすごいなってあらためて思いました。70億人の気持ちをひとつにできるコンテンツってサッカーだけのような気もします。究極的なことですが僕も全人類を巻き込むような空間を作り出したいです。

—「全人類」とはクリエイティブとしては究極的ですね。

TaiTan:もちろん楽しければ、盛り上がればそれでいいということはなくて、コンセプトから練り上げますし、「これをやる意味はどこにあるのか」というのをロジックできちんと説明できる企画しかやりません。「緻密な設計をしつつ、結果的に想像もしていなかった発展をしていく」みたいな状態がいちばんかっこいいかなと思います。

—TaiTanさんが考えた緻密な設計をチームとはどのように共有しているんですか。

TaiTan:いつもは途中の段階でもチューニングを加えていくのですが、「ギガマート展」はチームのメンバーに任せた部分が過去一番で多いです。僕の考えにはなかったアイデアもカタチになっています。口は挟まなかったですが企画のクレジットは僕になるわけで、「これも世に出すの?」とどこまで許容するかの葛藤はありましたけどね(笑)。でも企画は考えますが、その後は自分の手から離れていってもいいかなって思い始めています。

—自分から離れていった方がいいと思う理由は?

TaiTan:「ギガマート展」も架空のコンビニエンスストアですが、最終的には公共性のある施設のようになってほしいという思いはあります。世界とコネクトできる開かれた企画こそがかっこいいと思っているので、そうなるとイメージが先行してしまう「TaiTan」というクレジットは邪魔だなと。でも、クリエイターの名前が先行しても、それを丸ごと飲み込んでしまうぐらいの存在に僕がなればいいわけで、次の段階としてそういうことにちゃんと挑む時期なのかなって自分でも思っています。

 


TaiTan
ラッパー、クリエイティブディレクターとして活動するTaiTanが担当。Podcast『奇奇怪怪』のパーソナリティを務めるほか、TV番組『蓋』や新飲料ブランド『THE DAY』などのクリエイティブディレクションも手掛けている。
Instagram:@tai_____tan

販売情報
展覧会名:「ギガマート展」
会期:2026年7月18日(土)~8月16日(日)
会場:麻布台ヒルズギャラリー
住所:東京都港区虎ノ門5-8-1 麻布台ヒルズ ガーデンプラザA MB階
営業時間:平日 12:00~20:00(最終入場19:50)/土日祝日 10:00~18:00(最終入場17:50)
主催:麻布台ヒルズギャラリー/TBS/PINPIN STUDIO
後援:TBSラジオ
展覧会特設サイト
Instagram:@pinpinstudio__
Instagram:@azabudaihillsgallery

チケット情報
価格:平日 3,200円/土日祝日 3,400円
内容:展覧会入場+会場内1つの「盗」体験
販売期間:2026年6月25日(木)18:00~
販売場所:ローソンチケット/トリップドットコム
ローソンチケット:https://l-tike.com/event/mevent/?mid=787111
トリップドットコム:https://jp.trip.com/t/HillsGalleryJP

リベンジチケット
価格:2,200円
内容:一度展覧会に入場した方限定で追加の「盗」体験が可能
販売場所:会場内ショップ

お客様お問い合わせ先
azabudaihillsgallery@mori.co.jp

  • Photograph : Masamichi Hirose
  • Text : Akinori Mukaino(BARK in STYLE)
  • Edit : Yusuke Soejima(QUI)

NEW ARRIVALS

Recommend