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更新されるスポーツウェアの絶対的コード、LAの気鋭JENNAが語る「視覚的ハック」による拡張

May 28, 2026
サッカーユニフォームの上から透明なラテックスを重ねることで、エンブレムやスポンサーロゴ、メッシュ素材の表情はそのままに、ウェアだけが異なる質感をまとっていく。艶めく膜によって別の意味を与えられる。ロサンゼルスを拠点に活動するクリエイター、JENNAは、スポーツウェアに刻まれた“絶対的コード”を書き換えている人物だ。W杯に向けてサッカーユニフォームをリサーチする中で出会った彼女の作品は、単なるカスタムともアートピースとも少し違っていた。スポーツウェアが持つ機能性や記号性を残しながら、その印象だけを更新するJENNAの作品には、既成概念が更新される瞬間の空気が宿っていた。

更新されるスポーツウェアの絶対的コード、LAの気鋭JENNAが語る「視覚的ハック」による拡張

May 28, 2026 - FASHION
サッカーユニフォームの上から透明なラテックスを重ねることで、エンブレムやスポンサーロゴ、メッシュ素材の表情はそのままに、ウェアだけが異なる質感をまとっていく。艶めく膜によって別の意味を与えられる。ロサンゼルスを拠点に活動するクリエイター、JENNAは、スポーツウェアに刻まれた“絶対的コード”を書き換えている人物だ。W杯に向けてサッカーユニフォームをリサーチする中で出会った彼女の作品は、単なるカスタムともアートピースとも少し違っていた。スポーツウェアが持つ機能性や記号性を残しながら、その印象だけを更新するJENNAの作品には、既成概念が更新される瞬間の空気が宿っていた。

「フットボールを男性的ではないようにすることが私の目的ではありません。むしろ、その文化を取り巻く視覚的・感情的な可能性を拡張することにあります」と語る、JENNA。彼女はラテックス素材のフットボールウェアで注目を集め、<adidas>やドイツ女子代表のユニフォームを手がけるLAを拠点に活動するクリエイターだ。そんな彼女のアプローチは、極めて野心的でありながら、どこまでも軽やか。伝統的なフットボールウェアを艶やかなラテックスで覆い尽くすという大胆な手法で、スポーティな衣服が持つ本来の文脈を一度解体し、全く異なる視点から新しいファッションの価値観を提示している。相反する文脈を持つ二つの要素を衝突させ、融合させること。それにより、スポーツとファッションの間に引かれた強固な境界線は曖昧に滲み、彼女はその垣根をいとも容易く飛び越えてみせる。未知なる美学への探求心、素材の奥底に触れるようなアプローチ、衣服が孕む感情の記憶を紐解く視座。彼女というフィルターを通すと、既知のものがすべて新しい輝きを帯びる。

今回は、彼女のルーツから現在地、そしてクリエイションの源泉を紐解きながら、固定観念に縛られがちなスポーツウェアが“ファッション”として再解釈される瞬間を探る。衣服はどのように消化され、新たな意味を獲得していくのか。そのプロセスに迫った。

ご自身のバックグラウンドやキャリアについて教えてください。

私はドイツ生まれのクリエイティブディレクター兼デザイナーで現在はロサンゼルスを拠点に活動し、<JENNAX(ジェナックス)>というブランドを運営しています。ベルリンでファッションを学んだ後、約8年間にわたり、ファッション、音楽、クリエイティブプロダクションの分野で、さまざまなアーティストやブランドと仕事をしてきました。これまでにはカニエ・ウェスト(ye)とも仕事をし、今年のニューヨーク・ファッションウィークではエイサップ・ロッキー(A$AP Rocky)のランウェイショーのデザインも担当しました。また、<Saint Laurent(サン ローラン)>や032c(ゼロスリートゥーシー)といったメゾンやメディアとも関わっています。私のデザインは、ハイファッションとパフォーマンス、そして最近ではオブジェクトデザインの間を横断しています。ここ1年ほどで、ラテックスは私のシグネチャーマテリアルになりました。

サッカーユニフォームをラテックスで再構築した作品が印象的ですが、そもそもフットボールカルチャーに興味を持ったきっかけはなんだったのでしょうか?

私はドイツで育ったので、フットボールは常に文化の一部として身近にありました。でも子どもの頃の私にはフットボール文化がとても攻撃的で、過度に男性的に映っていたこともあり、そこまで熱心なサッカーファンではありませんでした。一方で、私はずっと「ファッションが人に与える感情的な影響」に強く惹かれていました。服が自信やアイデンティティ、そして感情的なつながりを生み出す力に魅了されていたんです。私がフットボールに興味を持つようになったのは、むしろかなり後になってからでした。そのきっかけは、ユニフォームの美学や、チームカルチャーに宿るアイデンティティ、強さ、エンパワーメントを感じたからでした。特に、ジャージが記憶や誇りを背負っている存在であることに惹かれ、スポーツそのものを超えて、フットボールウェアが持つ感情的な強さに魅了されました。

ラテックス素材に着目した背景について教えてください。

ロサンゼルスへ移住した当初、ミシンを持っていなかったんです。それで、まったく新しいことに挑戦してみたいと思い、ラテックスを使い始めました。縫うのではなく接着するラテックスは、私にとっては全く新しい制作方法だったんです。そのタイミングで、フットボールジャージにも強く惹かれるようになっていて、その二つの世界をどう融合できるかを考え始めました。ラテックスは非常に扱いが難しい素材で、特にグラフィックやプリント表現に関しては試行錯誤の繰り返しでした。通常の布地のように、単純にグラフィックをスクリーンプリントすることはできないので、私たちは独自の柄やプリントを施したラテックスシートを作るために、何度も実験を重ねました。最終的に、最初のテストとして3着のラテックス製サッカージャージと1着のジャケットを制作しました。そして、それらを軸に撮影やストーリーを構築し、そのプロジェクトを使って<adidas(アディダス)>に企画提案を行ったんです。

フットボールジャージをラテックスで表現するうえで、どのようなテーマや視点を大切にしていますか?

ロサンゼルスへ移住したことで、ヨーロッパのフットボール文化を“外側”から見る視点を得られたのは、私にとって大きな意味がありました。フットボールのデザインコードは非常に認識しやすく、一つひとつに強い意味が宿っています。同時に、それをよりフェミニンでハイファッション的な視点から再解釈する余地がまだあるとも感じていました。そうして私は、クラシックなフットボールジャージをラテックスによって再構築するようになりました。歴史的に男性性と結びついていたものを、女性的な視点を通して、彫刻的で感情を帯びた存在へ変換したかったのです。私が特に惹かれたのは、「パフォーマンスとフェティッシュ」、「男性らしさと女性らしさ」の狭間にある緊張関係でした。機能性やアスレティシズムを象徴するフットボールジャージと、まったく異なるイメージを持つラテックスを融合させることで、新しい表現が生まれると感じたんです。

また、ラテックスという素材に対する既存のイメージも更新したいと思っています。私はフェティッシュ的な文脈よりも、ハイファッションや現代的なシルエットの中でラテックスを扱うことに興味があります。この素材には、身体そのものを変容させる力がある。そして感情的な文化的オブジェクトであるフットボールジャージを、女性性とラテックスを通して再構築することで、新しい視覚言語が生まれると思いました。

ご自身のキャリアにおいて、大きな転機となった出来事はありましたか?

キャリアにおける大きな転機は、<adidas(アディダス)>のためにドイツ女子代表のフットボールジャージをラテックスで再解釈したプロジェクトでした。この作品は国際的に大きく報道され、032cの表紙にも掲載されました。このコラボレーションをきっかけに、自分自身のブランドを本格的に進めていきました。現在進行中のプロジェクト「Latex Nations」では、その世界観をさらに拡張し、ワールドカップに向けて各国代表に着想を得たラテックス製フットボールジャージシリーズを展開します、5月末に発表予定です。

<adidas(アディダス)>やドイツ代表チームとのコラボレーションについて教えてください。どのようなきっかけで始まり、プロジェクトではどのような役割を担ったのでしょうか?

<adidas>とのコラボレーションは、私がラテックスジャージのコンセプトを直接提案したことから始まりました。“非公式のコラボレーション”の提案で、私はすでに自分のデザインに<adidas>のロゴを組み込み、完成形のビジョンを見せていたんです。幸運なことに、<adidas>内に素晴らしいコンタクトがいて、その人が適切なチームへ繋いでくれました。そして最初からこのアイデアを信じてくれていたんです。タイミングも完璧でした。当時は女子EURO選手権を控えており、<adidas>側も新ユニフォームを新鮮な方法で打ち出せるプロジェクトを必要としていました。企画承認後、彼らから新しいユニフォームが送られてきて、私はそこからラテックス版の制作を開始しました。その後、032cのカバーストーリーとして、撮影コンセプトを共同で開発し、最終的にプロジェクトを完成させていきました。

最後に、JENNAさん個人として、そしてブランド<JENNAX>としての今後の展望や目標について教えてください。

私は私自身とブランドをそこまで切り離して考えていません。ブランドは、私自身のクリエイティブな進化の延長線上にあるものだからです。なので、私自身が創作面でも人間的にも成長していくにつれて、ブランドも自然に進化していきます。私にとってブランドを運営することは、従来のファッションブランドの道を辿るというより、自分の作品を軸にした、認識される“クリエイティブな世界観”を築いていく感覚に近いです。ファッションはその土台ですが、オブジェやアートにも関心があります。何より、自分の作品を通して、若いクリエイターたちが“型にはまらないアイデア”を信じ、カテゴリーや既存の期待に縛られず、感覚的かつ感情的に創作する勇気を持てるようになれば嬉しいです。

 


 

JENNA

ドイツ出身、ロサンゼルス拠点のクリエイティブディレクター/デザイナー。ブランド<JENNAX(ジェナックス)>を手がける。ベルリンでファッションを学んだ後、Kanye West(Ye)やA$AP Rockyをはじめ、<Saint Laurent(サンローラン)>、032cなど、ファッション、音楽、カルチャーを横断するプロジェクトに携わる。近年はラテックスをシグネチャーマテリアルとして用い、フットボールジャージを再構築した作品で注目を集める。<adidas(アディダス)>との協業では、ドイツ女子代表ユニフォームをラテックスで再解釈し、032cの表紙にも掲載。フットボールカルチャー、女性性、素材実験を軸に、ハイファッションとアートの境界を横断する表現を展開している。

@jennax1000
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  • Edit : Miwa Sato

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