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ART/DESIGN

ReStyle30周年|ReStyleとminä perhonen、ものづくりの時間をめぐる——皆川 明さんと歩く「つぐ minä perhonen」特別鑑賞

Jul 19, 2026
伊勢丹新宿店 本館3階「ReStyle(リ・スタイル)」の30周年を記念し、1日限りのスペシャルプランが実施された。会場となったのは、閉館後の松本市美術館。<minä perhonen(ミナ ペルホネン)>の展覧会「つぐ minä perhonen」を、皆川 明さんの解説とともにめぐる特別鑑賞だ。

「ReStyle」が30周年のテーマに掲げるのは、ファッションと日常をつなぐ「ライフスタイリング」。旅や食事、芸術鑑賞といった体験を通して、洋服やブランドとの出会いをより豊かにしていく提案だ。オリジナルのテキスタイルを軸に、服やインテリア、日々の暮らしへと表現の場を広げてきた<minä perhonen>のものづくりは、そのテーマとも自然に響き合っている。

閉館後の展示室で皆川さんの言葉に耳を傾けていると、テキスタイルや服の奥に、社会との向き合い方、職人との関係、そして着る人へ渡った後の時間が見えてくる。「ReStyle」が30周年の節目に見つめた、服と日常、そしてものづくりの時間。その一夜をレポートする。

ReStyle30周年|ReStyleとminä perhonen、ものづくりの時間をめぐる——皆川 明さんと歩く「つぐ minä perhonen」特別鑑賞

Jul 19, 2026 - ART/DESIGN
伊勢丹新宿店 本館3階「ReStyle(リ・スタイル)」の30周年を記念し、1日限りのスペシャルプランが実施された。会場となったのは、閉館後の松本市美術館。<minä perhonen(ミナ ペルホネン)>の展覧会「つぐ minä perhonen」を、皆川 明さんの解説とともにめぐる特別鑑賞だ。

「ReStyle」が30周年のテーマに掲げるのは、ファッションと日常をつなぐ「ライフスタイリング」。旅や食事、芸術鑑賞といった体験を通して、洋服やブランドとの出会いをより豊かにしていく提案だ。オリジナルのテキスタイルを軸に、服やインテリア、日々の暮らしへと表現の場を広げてきた<minä perhonen>のものづくりは、そのテーマとも自然に響き合っている。

閉館後の展示室で皆川さんの言葉に耳を傾けていると、テキスタイルや服の奥に、社会との向き合い方、職人との関係、そして着る人へ渡った後の時間が見えてくる。「ReStyle」が30周年の節目に見つめた、服と日常、そしてものづくりの時間。その一夜をレポートする。

閉館後の美術館で、皆川 明さんの言葉とともにめぐる

松本市美術館で開催された「つぐ minä perhonen」は、1995年に前身となる「minä」を設立して以来、独自のものづくりを続けてきた<minä perhonen>の歩みと、その背景にある思想をたどる展覧会だ。

今回の特別鑑賞は、一般開館時間を終えた松本市美術館に入り、貸し切りの展示室で皆川 明さんの解説を受けながら、展示と向き合うというもの。会場には、<minä perhonen>の服や小物を身につけた参加者の姿もあり、ブランドへの親しみや期待が感じられた。各展示の前で皆川さんが説明を加えると、参加者は原画やテキスタイル、映像を見つめながら、皆川さんの言葉に耳を傾けていた。

展示室へと続く空間に吊るされたminä perhonenのテキスタイル

「ReStyle」にとって<minä perhonen>は、ファッションの可能性を広げてくれる存在だ。オリジナルのテキスタイルを軸に、服やインテリア、日々の暮らしへと領域を広げてきたそのものづくりは、モードブランドを多く扱う「ReStyle」の中でも独自の位置を占めている。

今回の企画には、旅や展覧会鑑賞を通して、<minä perhonen>の服やテキスタイルの奥にある時間や記憶、風景や人、手仕事まで感じてほしいという「ReStyle」の思いが込められている。閉館後の美術館で展示と向き合う時間は、完成した服やテキスタイルの向こう側にある、ものづくりの過程へと目を向ける場でもあった。

「つぐ」という言葉から紐解く、ものづくりの時間

展示ツアーの冒頭で、皆川さんは2019年に東京都現代美術館で開催された「ミナ ペルホネン/皆川明 つづく」展に触れながら、今回のタイトルである「つぐ」について語った。

「継ぐ」——何かを受け継ぐこと。「告ぐ」——誰かに伝えること。そして「注ぐ」——器に液体を満たすように、何かを注ぎ入れること。本展では、そうした言葉の広がりを内包しながら、とりわけ“継承”に近い感覚が大切にされている。

松本会場の展示室は、「chorus」「score」「ensemble」「voice」「remix」という5つのパートで構成されている。各部屋には、音から想起されるイメージをもとにしたタイトルが付けられ、テキスタイルの連なり、原画や図柄の背景、制作工程、言葉やインタビュー、そして着る人との対話を通じて、さまざまな角度から“つぐ”の意味をたどっていく。

テキスタイルが並ぶ展示スペース「chorus」の展示風景

「sleeping flower」のテキスタイルについて説明する皆川 明さん

最初に案内された「chorus」では、数多くのテキスタイルが並ぶ空間から、その“連なり”が伝わってくる。皆川さんによれば、30年余りの間に作られてきたテキスタイルの図柄はおよそ1000種類、ベースとなる素材違いでは約5000種類に及ぶという。本展では、その中から約180種類のテキスタイルが展示されている。

並んでいるテキスタイルは、それぞれに名前を持ち、異なる発想から生まれている。ひとつひとつの図柄は独立したデザインとして成立しながらも、そこに宿る構造や技法が、別の図柄やプロダクトへと受け継がれているものもある。「tambourine」から別の図柄が派生するように、ひとつのデザインの中にある要素が、次の表現へとゆるやかにつながっていく。花や鳥といったモチーフの連なり、プリントやレース刺繍、織りといった技法の展開も含め、テキスタイル同士のあいだには、そうした関係性が見えてくる。

皆川さんは、そこに並ぶテキスタイルを前に、どれが新しく、どれが古いのかは一見してわからないはずだと話した。ワンシーズンで古びるのではなく、長い時間の中で価値を保ち続けるものとして設計する。その時間感覚は、テキスタイルが一堂に並ぶ「chorus」の空間にも表れていた。

テキスタイルに宿る、社会へのまなざし

「score」では、ブランド初期から近年までの原画やテキスタイルを通して、図柄がどのような背景から生まれてきたのかが語られた。そこで浮かび上がるのは、<minä perhonen>のものづくりが、美しい図柄を生み出すだけでなく、社会の出来事や、その中にいる人や生きものの存在にも目を向けていることだ。

「sleeping flower」の展示風景。左には、着想源となったマルク・リブー《花を持った女》(1967年)が並ぶ

「sleeping flower」の展示風景

たとえば「sleeping flower」。一見すると迷彩柄のように見えるこのテキスタイルには、モチーフの内側に花の図柄が隠されている。皆川さんは、ベトナム戦争時のデモ隊と兵士を写したマルク・リブーの写真に触れながら、兵士が構える銃と、女性が差し出す花という対照的なイメージを、テキスタイルへと置き換えた背景を紹介した。

迷彩服は本来、戦場で身を隠すためのものだ。けれど、その内側に花を潜ませることで、そこには平和を願う気持ちが重ねられる。皆川さんの説明から伝わってきたのは、テキスタイルを美しさやバランスだけで完結させず、時代や社会へのまなざしを含むものとして考える姿勢だった。

「alive」の展示風景。手を挙げて意見を言おうとする熊や、飽きて後ろを向いた子熊など、熊たちのさまざまな姿が描かれている

また「alive」では、熊が人里に降りてくるというニュースをきっかけに、人間側からだけではなく、熊の視点から状況を想像した図柄が紹介された。人間にとっては不安を呼ぶ出来事でも、熊にとっては生きる場所や食べ物を失い、やむを得ず人里に降りてきているのかもしれない。そこから、熊たちが人間に相談しにくるというストーリーが生まれたという。

社会の出来事を、ひとつの視点だけで捉えず、そこにいる人や生きものの側からも考えてみる。<minä perhonen>のデザインには、そうした視点の転換が、図柄や物語の中に織り込まれている。

洋服を単体の商品として見るのではなく、その背景にある制作の時間や、社会との関わりまで含めて受け取ること。今回の特別鑑賞は、そうした視点を参加者に手渡す場でもあった。「ReStyle」が掲げるライフスタイリングもまた、服を選ぶ行為の先にある文化やものづくりへと目を向ける試みといえる。

デザインを布に変える、工場と職人の手

「ensemble」では、織り、刺繍、プリントといったテキスタイルの制作工程に焦点が当てられていた。映像では、縦糸をかけ、横糸を通しながら「life puzzle」の図柄が少しずつ立ち上がっていく様子も紹介された。

「ensemble」の展示風景

レース工場では、原画を6倍の大きさに拡大し、ステッチの入れ方を入力していく。工場には細かな注意事項が書かれた指示書が貼られており、わずかなずれも人の目には分かってしまうという。

「forest parade」のような刺繍は、ひとつのモチーフを完成させるだけでも時間を要する。13.7メートルの生地に、およそ40万回ものステッチが入るという説明には、参加者も聞き入っていた。

皆川さんは、人間だけでなく機械もミスをすると話した。そのミスを不良品として捨ててしまえば、大量の資材が無駄になる。だからこそ、糸を切り、ブラシをかけ、必要な部分を人の手で直しながら、布として生かしていく。機械の力を用いながらも、人の手が布の表情を整えていく姿勢が、<minä perhonen>のものづくりを支えている。

「ensemble」の展示風景

ひとつのデザインが形になるまでには、数えきれないほどの工程と人の手が重ねられている。さらにその前には、糸や生地を作ること、羊を飼うこと、綿を育てることまでがある。

展覧会タイトルの「つぐ」は、そうした人と工程のリレーにも重ねられている。そして、できあがった服やプロダクトが長く使われ、時には形を変えながら受け継がれていくことで、その仕事全体が報われ、循環が生まれていく。

着る人とともに、服は変わり続ける

最後に訪れた「remix」では、服が着る人の手に渡った後も、形を変えながら受け継がれていく<minä perhonen>のものづくりが示されていた。

「remix」について説明する皆川 明さん

「remix」は、一般的なリフォームや修復とは異なる。着る人一人ひとりと対話し、その服にどのような記憶があり、これからどのように着ていきたいのかを聞きながら、新たな形へと作り直していくプロジェクトだ。ワンピースをトップスとボトムスに仕立て直すように、元の服の記憶を残しながら、これからの生活に合う形へと変えていくこともあるという。

最初に服をつくる時、デザイナーはまだ、その服を着る人と出会っていない。けれど、日々の中で着続けられた服には、持ち主だけの時間や記憶が刻まれていく。

「remix」の展示風景

<minä perhonen>にとって服は、完成した時点で終わるものではない。一度誰かの日常に渡った服を、その人のこれからの暮らしに合わせて、もう一度形づくっていく。

「remix」が示していたのは、ものづくりの終点ではなく、着る人のもとで始まるもうひとつの“つぐ”だった。

体験を通して、服との出会いを深める

「ReStyle」が今回の30周年で掲げる「ライフスタイリング」は、暮らしや体験の中で、洋服やブランドとの関係を深めていく試みでもある。

閉館後の美術館で展示と向き合う時間は、その考えを実感させるものだった。展示された服やテキスタイルの向こうには、時代の出来事、職人の手、そして着る人の暮らしが見えていた。

服を選ぶことは、完成した一着の向こうにある制作の営みや、作り手から着る人へと渡っていく時間を受け取ることでもある。閉館後の美術館で開かれたこの一夜は、30周年を迎えた「ReStyle」が掲げる“ライフスタイリング”のあり方を、静かに示していた。

  • Text&Edit : Y.O(QUI)

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