Margtが切り取り可視化した刹那の痕跡|BARNEYS NEW YORK by ANCELLM
BARNEYS NEW YORKが「MODERN HEIRLOOMS(未来へ受け継がれる定番)」をテーマに始動させたブランドとの共創プロジェクト『BARNEYS NEW YORK by』。インラインの別注とは一線を画し、BARNEYS NEW YORKらしさとブランドらしさを掛け合わせたプロダクトを生み出していく。第一弾には<ANCELLM>が選ばれた。
凝縮された過去と未来への創造という「時間の痕跡」を表現
—BARNEYS NEW YORKの新たなプロジェクトのテーマを伝える映像制作を、Margtに依頼したのはどういう経緯からだったのでしょうか。
髙橋:BARNEYS NEW YORKが今回のプロジェクトで伝えたいことが伝播していくような映像を作りたいと山近さんに相談したところ、名前が挙がったのがMargtでした。僕も以前から気になっていましたし、これまで手がけていたクリエイティブも素晴らしいので、すぐに社内で共有しクリエイティブチームから直接オファーを差し上げる事になりました。
—お願いしたいとなった決め手は?
髙橋:ファッションと音楽と映像が高次元で絡み合う。こんな表現できるのはMargtだけだろうなって思いました。社内のスタッフからも「ぜひ依頼したい」という声が多かったです。

—BARNEYS NEW YORKからのオファーをMargtはどのように感じましたか。
高畠:山近さんとは「何か一緒にできたらいいですね」って最近も話していたんです。そしたら、早速Margtの名前を挙げてくれたんだなって(笑)。本当にありがたかったですね。
—Margtはもともと山近さんと親交があったんですね。
山近:展示会にもショップにも、よく足を運んでくれます。
高畠:今回の映像でも起用したのですが、ミュージシャンのjo0ji(ジョージ)のスタイリストが山近さんと親交があって、そこからのつながりで僕たちもいろいろと接点が生まれました。
山近:jo0jiのために衣装を作ったことがMargtと知り合ったきっかけでしたね。

—これからMargtが手がけた映像を鑑賞したいと思います。完成品は山近さんも初めて目にするんですよね。
山近:楽しみです。
—途中でチェックはしなかったのでしょうか?
山近:Margtが担当するなら、素晴らしい映像が上がってくるに決まっていますから。チェックの必要なんてないですよ。

(映像を見終わって)
山近:やっぱり素晴らしい。
高畠:できれば何度か繰り返して見てもらいたいです。
—こちらの映像はどのようなプロセスで制作されたのでしょうか。
髙橋:最初にMargtのお二人に『BARNEYS NEW YORK by ANCELLM』で展開するプロダクトを見てもらいました。同時に今回のプロジェクトは「時間」というものに焦点を当てていることを説明しました。
—そこからMargtとしてはどのような動きがあったのでしょうか。
前田:最初はキャスティングからスタートしました。そこでjo0jiでいくことになって、彼にふさわしい映像はどういうものかと話し合いました。彼はミュージシャンなので「BARNEYS NEW YORK by ANCELLM」の服を着て、クールにポーズを決めているだけではキャスティングした意味がありません。そこで本業につながるピアノ演奏というアイデアが生まれました。


—ピアノ演奏といっても不協和音ですし、歪んだ映像とともに異空間に引き込まれるような感覚がありました。
前田:僕たちはBARNEYS NEW YORKの「時間」というコンセプトを「一瞬の積み重ね」として捉え直しました。宙に浮かぶパーツが音に呼応しながら収束し、ピアノとして復元される。凝縮された過去と、そこから生まれる未来への創造という「時間の痕跡」を映像で表現したんです。
髙橋:コンセプトをお伝えした数日後にアイデアが出てきて、そのスピード感に驚きました。その時点で完成度は高かったので、お二人の頭の中では完成形がすでに見えているんだろうなって。
模索しながら生まれた「瞬間の切り取り」と「刹那の視覚化」
—BARNEYS NEW YORKだけでなく、共創する<ANCELLM>のことも意識している映像なのでしょうか。
前田:どちらかといえばBARNEYS NEW YORKだからこその空気感を映像に漂わせることを優先しました。僕はニューヨークに住んでいた時期もあって、憧れのセレクトショップという存在だったので大人の雰囲気のような。
高畠:ハイソサエティみたいな。<ANCELLM>への意識はそこまで強くなかったのですが、jo0jiというキャスティングは<ANCELLM>のブランドイメージと一致するものだと思っています。なのでjo0jiと<ANCELLM>とMargtというバラバラの存在を再構築して、ひとつの映像にできた手応えはあります。

—流れる時間を映像にするというのは観念的でもあるのですが、そのためにどのようなアプローチを取り入れたのでしょうか。
高畠:「瞬間を切り取る」、「刹那を視覚化する」という映像はこれまでも手がけたことがあるので、その表現手法はこれまでもいろいろ模索してきました。今回でいえば相反するようなニュアンスをグチャっとひとまとめにして、新しいものを生み出すということに挑戦しました。
前田:実写とCGを組み合わせているのですが、それは現実と非現実の融合です。<ANCELLM>の服は実物を目にして、触れて、その魅力が伝わってくるものなので実写だけでいくのが正解のような気もしました。ですが、CGという相反する映像を取り込むことで、より実写が引き立つ、<ANCELLM>の服が目に飛び込んでくると思ったんです。
高畠:そうやって筋道をしっかり考えているように聞こえるかもしれませんが、Margtは「偶然性」というのも大事にしていて、当日の現場でコンテに手を加えることも珍しくないです。うまく説明はできなくても、「こうした方が絶対に良くなる」という自分たちの感覚を信じているんです。
—無意識や感覚でモノづくりをしたとしても、最終的な完成品を目にして「自分がやりたかったことはこれだったと確信する」という声はクリエイターの方からよく聞きます。

山近:それは僕もそうですね。<ANCELLM>もそんなことばかりです。
—完成した映像は、髙橋さんから見ても最初の案からアップデートされている印象はありますか。
髙橋:最終的にどこまで最初の案に足し引きされているのかわからないのですが、多くのアイデアを出して、そこから直感で取捨選択しているというライブ感は映像からしっかり伝わってきました。
新しい試みのなかにも自分たちが培ってきた表現を潜ませる
—クリエイティブにはクライアントの要望と自分たちが表現したいことのせめぎ合いがあると思うのですが、Margtとしてのスタンスや考えってありますか。
高畠:僕たちはかなり優等生ですよ(笑)。自分たちの力だけでモノづくりができているなんて思っていないですから。創り出す映像に関しても社会との接合を考えますし、どうしてこういう表現なのかというのをクライアントにはきちんと説明します。自分たちのフィルターを通すことは大切にしていますが、自分たちの考えを押し付けることはないですね。
—Margtというユニットには我が道をいくアーティストのようなイメージがありました。
高畠:そう見られることは多いです。ですが「自分たちの表現はこれだ!」ということではなく、全ての表現は求められていることに応えた結果です。
前田:僕たちのこれまでのクリエイティブを知ったうえでのオファーが多いので、ありがたいことに「こうしてください」と指示されることはほとんどないですね。
高畠:今回の映像にしてもかなりソリッドだと思うんです。「もっと服を露出してください」って意見があっても不思議ではないですが、それでもBARNEYS NEW YORKは全面的にOKで、すごくやりやすかったです。

—髙橋さんとしては特に口出ししたくなるようなこともなかった?
髙橋:「BARNEYS NEW YORK by ANCELLM」のラインナップがベーシックでデザインもシンプルだったので、ソリッドな世界観というのは個人的にはマッチしていたと思っています。
高畠:最初にjo0jiにはブラックデニムを穿いてもらうつもりでしたが、映像と同調するブラックより穏やかなインディゴの方が相反して引き立つんじゃないかって考え直してカバーオールを着てもらいました。それも先ほどの現場での感覚です。


前田:そういう服のセレクトも自由にやらせてもらえました。
—それだけクリエイティブに関して自由だったとしたら、今回は産みの苦しみのようなものは少なかったですか。
高畠:それはそうかもしれないです。ですがBARNEYS NEW YORKのようなケースばかりではなくて、依頼主の思想が強いときは対話を重ねますし、意見がぶつかって戦うこともあります。そういう場合は産みの苦しみばかりです。
前田:スケジュールや予算など、あらゆる条件が厳しくて苦しむことがわかっていたとしても自分たちがやってみたいと思うクリエイティブだったら断ることはないですね。
高畠:今回でいえばBARNEYS NEW YORKと<ANCELLM>だったので、断る理由が見当たらなかったです。
—「BARNEYS NEW YORK by ANCELLM」のために制作した映像で注目してほしいポイントはありますか。
前田:Margtの映像は多色のイメージがあるかもしれませんが、今回に限っては色は削ぎ落としました。そこはあまり挑戦してこなかった領域なので全体の印象としては新しい試みのように思われるかもしれないのですが、随所にはMargtらしさというのを散りばめていて、そのあたりを注目してもらえたらと思います。
—「新しい試みのなかにも自分たちが培ってきた表現を潜ませる」って、今回の取り組みで山近さんが実践したことと同じですね。
山近:前田さんの話を聞いていて僕もそう思いました。「BARNEYS NEW YORKを意識しながら<ANCELLM>らしさをどこで打ち出すか」ってことがミッションだったので。そして僕も本当に自由にやらせてもらった(笑)。
高畠:擦り合わせたわけじゃないのに服と映像がシナジーを生み出している(笑)。
髙橋:BARNEYS NEW YORKとしても新しいことを始動させるので、これまでのBARNEYS NEW YORKのカラーを尊重してくださいでは意味はなくて、山近さんにもMargtにも、自分たちのクリエイティブを思う存分に発揮してほしかった。服も映像も今回のプロジェクトにふさわしいものが完成したので、とてもうれしく思っています。
BARNEYS NEW YORK
特設HP:https://onlinestore.barneys.co.jp/feature/barneys-new-york-by-ancellm_lp
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- Interview Photography : Kaito Chiba
- Text : Akinori Mukaino(BARK IN STYLE)
- Edit : Yusuke Soejima(QUI)