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峯田和伸 × 若葉竜也 – 時間が証明するもの

Mar 23, 2026
1978年の東京。パンクの衝動に突き動かされた若者たちの姿を描いた映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』で初共演を果たした、峯田和伸と若葉竜也。
音楽と映画への情熱と希望が交錯する本作で、ふたりは何を感じ、どんな思いを重ねたのか。

峯田和伸 × 若葉竜也 – 時間が証明するもの

Mar 23, 2026 - FILM
1978年の東京。パンクの衝動に突き動かされた若者たちの姿を描いた映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』で初共演を果たした、峯田和伸と若葉竜也。
音楽と映画への情熱と希望が交錯する本作で、ふたりは何を感じ、どんな思いを重ねたのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Kazunobu Mineta:shirt ¥66.000 / Sick (@sick_shibuyatokyo)

Ryuya Wakaba:jacket ¥103,400・shirt ¥48,400・pants ¥57,200・boots ¥86,900 / Yohji Yamamoto POUR HOMME (Yohji Yamamoto press room 03-5463-1500), belt ¥24,200 / Y's for men (Yohji Yamamoto press room 03-5463-1500)

 

『アイデン&ティティ』がつないだふたり

― まず本作のオファーが来たときのことから教えてください。

峯田和伸(以下、峯田):僕は8年くらい前に、(田口)トモロヲさんから、こういう映画をやりたいんだって聞いていたんです。すごく楽しみでしたし、トモロヲさんがこの作品にかける気持ちも伝わっていました。撮影する時期も決まっていたんですけど、そこからコロナ禍で一度流れてしまって、「本当に実現するのかな」と思った時期もありました。

若葉竜也(以下、若葉):僕ももうだいぶ前ですね。別の映画の公開初日に、プロデューサーの小西(啓介)さんがいらっしゃって、話をされたのが最初でした。僕は峯田さんが主演されていた『アイデン&ティティ』が本当に大好きで、それを何年も何年も、数え切れないほどの媒体でも喋ってきていて、やっと来たかというか、やっとたどり着いたかという気持ちが大きかったです。

峯田:若葉くんの部屋にさ、『アイデン&ティティ』のコーナーがあるんだよね。

若葉:まだ10代だったと思うんですけど、吉祥寺バウスシアターに凱旋上映を観に行ってすごい感動して、部屋にいろんなグッズを飾っていたんです。今はリビングの片隅に、当時の自分の5畳ぐらいの小さい部屋を再現していて、そこに同じように置いてあります。

― たとえばどんなグッズが?

若葉:ポスター、スピードウェイのTシャツ、グッズを入れる黄色い紙袋、原作の本、DVD……そういうのがいっぱいあります。

峯田:ガチ勢(笑)。

― おふたりは、今回の共演以前から面識はありましたか?

峯田:『アイデン&ティティ』の公開20周年を記念したイベントに、若葉くんがお客さんとして来てくれて、紹介してもらって。その日が初めてでしたね。

若葉:僕はその前に一方的に見ていて。峯田さんが三浦大輔さんの舞台をやられているときに、新宿村スタジオっていう稽古場にいらっしゃって。僕は別の仕事で行っていたら喫煙所に峯田さんがいて、「峯田だ!」って(笑)。僕の青春時代の全部が詰まった本物だ!みたいな感じで、チラチラ見ていたのが初めての出会いでした。

― 実際に共演して、お互いの率直な感想を伺いたいです。

峯田:試写を観て、若葉くんの顔が映っていると、なんかもうグッときちゃって。若葉くんが映っているだけで、なんでこんなにいいんだろうな。でもその感覚は、現場でもずっとあったんですよね。

一緒にお芝居をしていると、全部返してくれるんですよね。僕のセリフに対して、目線だったり、うなずきだったり、毎回違うのでぶつけがいがあるし、やっていて疲れない。だからこっちも、想定とは全く違う感じで次のセリフを言えたりする。そういう相乗効果もあって、毎回すごく新鮮で楽しかったです。

― スクリーンにもそれが現れているように見えました。若葉さんはいかがでしたか?

若葉:自分が10代のころから見ていた人と、同じ空間で、同じ映画を一緒に作っている。『アイデン&ティティ』という作品、そして峯田さんに、ある種の呪いにも似たようなものを抱いていたので、やっぱり特別な思いはありましたね。自分のフィルモグラフィーの中でも歴史的な瞬間でした。ただ映画は、そういう私的な感情を一回抜いて、本当にピュアに作っていく場所なので、峯田さんと初めて仕事をする場所が映画で良かったなと思います。

― 一緒にお芝居をする中で感じたことはありますか?

若葉:僕は相手がいるから自分が存在している、という感覚が強いので、峯田さんが本番で変わる瞬間だったり、テストで変わる瞬間だったり、いろんなものを絶対に逃さないという意識はありました。逃しちゃうとたぶん、自分が存在できなくなってしまうので。

― 峯田さんはカメラマンのユーイチ、若葉さんはバンド「TOKAGE」のボーカル・モモを演じられましたが、それぞれの役にはどのように向き合いましたか?

峯田:僕は映画の話が来る前から、地引雄一さんの『ストリート・キングダム』『TOKYO STREET ROCKERS 1978–1981』という写真集を持っていて。日本のパンクの成り立ちが好きだったんです。自分がバンドをやるにあたって、当時の人たちはどういう感じでやっていたのかな、というのはずっと考えていたので。そういう意味では、役作りは昔からできていたような気がするんですよ。

新しく準備したことといえば、1978年の当時、地引さんが使っていたニコンのF2を買って、フィルムを巻く練習をやったぐらいです。

― カメラに慣れるために、普段から練習も?

峯田:自分のバンドのライブのときに、対バンのステージを横で撮ってみたり。でも現像に出したら、絞りが全然うまくいってなくて、真っ白で。ダメだこれって。そろそろ撮影が始まっちゃうから、ちゃんとやらないとな、みたいな。

― 若葉さんはいかがでしょう?

若葉:台本をもらったときに、自分がずっと考え、向き合っていたことが言語化されて、そこに書かれていました。当時の人たちもやっぱりこういう思いだったんだということを知れただけでも、すごく嬉しかった。

僕は役作りをほとんどやったことがないんですけど、役で喋るっていうこととは、また別だった気がするんですよね。本当に“吐き出した”という感覚でした。

― 感じていたものが言語化されていたというのは?

若葉:売れているものがいいとは限らないとか、周りの政治的なことに対する違和感とか。撮影時はとくに、そういうことに対する怒りのようなものがあった時期だったので。だからそれを何百というスクリーンの中で吐き出せる喜びがあったように感じます。

 

自分の音を鳴らすための選択

― おふたりは、映画のキーワードでもあるインディーズやインディペンデントというものをどう捉えていますか?

峯田:自分のバンドは、マネージャーも地元山形の同級生だし、もう辞めちゃいましたけど、オリジナルメンバーも高校の同級生で。友だちとの遊びで始めて、その延長で今まで来ちゃった感じなんです。多少手間がかかるところはありますけど、メジャーに行かなくてもやりたいことはやれるかなっていう。

周りには、メジャーに行って、そこから東京ドームでやることを目指すバンドやアーティストもいて、でもそれが一般的だとは思うんです。ただ、自分はそういうタイプではなかったんじゃないですかね。

― どういう部分が違ったのでしょう?

峯田:映画のセリフにもありましたけど、やりたくないことまでやるのは違うし、そういう妥協は許せないみたいな。たとえばツアーをやるからチラシを作ろうとなって、それをプロのデザイナーに任せて、できあがったデザインを見てなんか違うなと思っても、ごめんもう一回作ってと僕は言えないんですよ。NOって言えないから、だったら自分で作ったほうが早いやって。

― DIY精神ですね。

峯田:でも大した主義があるわけじゃなくて、ただメジャーに行く度胸がなかったともいえるし、自分のやっていることがそんなかっこいいことだとは思ってないです。

若葉さんにとってのインディペンデントとは?

若葉:現代ではインディペンデントやメジャーという意味合いがだんだん変わってきて、本質的な差異はほとんどなくなってきているなとは思います。それでも自分が体感し、選択してきた結果が、俗に言うインディペンデントだったというだけで。これはメジャーだから、インディペンデントだからということで選ぶことはないです。インディペンデントでも面白くないものは面白くないので。

― ご自身が選択するうえで指針となるところはありますか?

若葉:自分がドキドキするかどうかですね。映画を撮って、自分が観客だったら観に行かないだろうなっていう作品を観てくださいと宣伝はしたくない。作品に関わる以上は、身も心も削って現場に全身全霊を注がなきゃいけないのに、あんまりやりたくないものを選んでしまったときの精神的な苦痛って計り知れないですよね。

だから「これめっちゃ面白いんで観てください」と責任を持って言える作品だけをやるということは、軸としてあるかもしれません。

本作を通して得たものをひとつ挙げるなら、どんなことを思い浮かべますか?

峯田:また『アイデン&ティティ』の話を出して申し訳ないんですけど、トモロヲさんから出てくれないかと言われ、俺なんかでいいのかなと思いながら参加させてもらって。俺はあの映画を通して何ができたんだろうなという気持ちがずっとあったんです。当時は自分ごとだと思えなくて、訳がわかんないまま終わっちゃったので。

でもそれから20年が経って、『アイデン&ティティ』を観てくれた若い人が役者になったり、映画をきっかけにバンドを始めた人とも出会えたり。しかも彼らと一緒にものづくりができるっていうのが、僕にとっては本当に幸せなことなんです。彼らが、あのときの証明をしてくれているっていうか。やっぱりたまんないんですよ。若葉くんも、間宮(祥太朗)くんも、(仲野)太賀くんも、吉岡(里帆)さんもそういう風に言ってくれたりして……トモロヲさん良かったね、って思います。

若葉:峯田さんが言ったみたいに、僕もきっと時間が経つことで、この作品で得た財産が出現してくるんだろうなとは思います。10年後、20年後の自分がこの作品を観返したとき、この作品に刺激を受けた人たちに出会えたときに、この瞬間がよかったってやっと実感できるんでしょうね。

― 2026年にこの映画が公開される意味を、おふたりはどのように感じていますか?

峯田:今と比べて違うのは、スマートフォンがないこと。限られた情報の中で歯を食いしばって、やりたいことは何なんだろうと葛藤している若い人が映っている。かといって当時のシーンに詳しくない人もグッとくる、間口の広い作品になっていると思います。

若葉:自分が観ていて好きなのは、現代の空気を映し出している映画なんです。宮藤(官九郎)さんの脚本で、現代にタイムスリップして戻ってくるシーンがあるんですけど、個人的にはそこが大きかったんじゃないかなと思います。フラストレーションを溜め込んだ現代と過去の若者たちが一本の糸でつながって、ただ懐かしいねっていう映画じゃなく、現代の空気も内包しながら作品として成り立っていく。すごく意味があるし、自分の大好きなシーンのひとつです。

峯田:若い人が観て、他人事じゃない気がするんだよね。

若葉:本当にそう思います。

 

Profile _ 峯田和伸(みねた・かずのぶ)
1977年12月10日生まれ、山形県出身。ロックバンド「GOING STEADY」として音楽活動を開始、その後バンド「銀杏BOYZ」を結成。田口トモロヲ監督の『アイデン&ティティ』(03)で中島役として映画初出演にして初主演。以降『少年メリケンサック』(08/宮藤官九郎監督)、『ボーイズ・オン・ザ・ラン』(10/三浦大輔監督)、『ピース オブ ケイク』(15/田口トモロヲ監督)などに出演。またドラマ「奇跡の人」(16/NHK)では連続ドラマ初主演を務める。近年の出演作には、「いだてん〜東京オリムピック噺〜」(18/NHK)、『越年 Lovers』(20/グオ・チェンディ監督)、映画『BAUS 映画から船出した映画館』(25/甫木元空監督)、舞台 大パルコ人⑤オカタイロックオペラ「雨の傍聴席、おんなは裸足・・・」(25/宮藤官九郎演出)に出演するなど、歌手・俳優として活躍している。Instagram

 

Profile _ 若葉竜也(わかば・りゅうや)
1989年6月10日生まれ、東京都出身。2016年公開の『葛城事件』(監督:赤堀雅秋)で、第8回 TAMA映画賞・最優秀新進男優賞を受賞。2024年、テレビドラマ「アンメット ある脳外科医の日記」(KTV・CX)にて、第120回 ザテレビジョン・ドラマアカデミー賞・最優秀助演男優賞、東京ドラマアウォード2024・助演男優賞、第49回 エランドール賞・新人賞を受賞。作品によって違った表情を見せる幅広い演技力で、数多くの作品に出演。近年の主な映画出演作に『前科者』(22/岸善幸)、『窓辺にて』(22/今泉力哉)、『愛にイナズマ』(23/⽯井裕也)、『市子』(23/⼾⽥彬弘)、『ぼくのお日さま』(24/奥山大史)、『嗤う蟲』(25/城定秀夫)、『てっぺんの向こうにあなたがいる』(25/阪本順治)など多数。主演作に『街の上で』(21/今泉力哉監督)、『ペナルティループ』(24/荒木伸二)がある。

Instagram

 

撮影協力:新宿LOFT

 


 

Information

映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』

2026年3月27日(金)より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開

出演:峯田和伸、若葉竜也、吉岡里帆、仲野太賀、間宮祥太朗、中島セナ、神野三鈴、浜野謙太、森岡龍、山岸門人、マギー、米村亮太朗、松浦祐也、渡辺大知、大森南朋、中村獅童
監督:田口トモロヲ
原作:地引雄一「ストリート・キングダム」
脚本:宮藤官九郎
音楽:大友良英
エンディング曲:「宣戦布告」(峯田和伸/若葉竜也)

公式サイト

©2026映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』製作委員会

  • Photography : SAKAI DE JUN
  • Styling for Kazunobu Mineta : Hiroaki Iriyama
  • Hair&Make-up for Kazunobu Mineta : Ayumi Sugimoto
  • Styling for Ryuya Wakaba : Toshio Takeda (MILD)
  • Hair&Make-up for Ryuya Wakaba : FUJIU JIMI
  • Text&Edit : Yusuke Takayama(QUI)