モデルとデザイナーの相乗効果。内田ゆうほ|Nora Lilyデザイナー
16歳の頃に東京コレクションのランウェイにてモデルデビュー。ロックバンド、フレデリックの「オドループ」MV出演で一躍話題に。2017年に自身がデザイン、ディレクションするファッションブランドNora Lily(ノラリリー)を立ち上げ、活動の幅をさらに広げている。
パジャマ姿でスカウトされて、東コレのランウェイへ
インタビューでこんなこと言っちゃダメなのかもしれないんですけど、もともとそんなに服が好き、というわけではなくって(笑)。モデルの仕事をはじめてから、こういう世界もあるんだなってなって興味がわいてきた感じなんです。
一番はじめはサロンのモデルをやっていたんですが、ある日撮影がすごく朝早い日があって、遅刻しそうだったので、パジャマで行っちゃって(笑)。帰り道、すごい恥ずかしいなと思いながら表参道歩いていたら、リトゥンアフターワーズっていうブランドの方に声を掛けられたんです。それが16歳のとき。その年の10月の東京コレクションでリトゥンアフターワーズのショーに出て、そこから本格的なモデルのお仕事がはじまりました。
突然ランウェイで歩くことになったんですけど、フィッティングに行ったら、服じゃなくて、熊手なんですよ。熊手に人形とかいっぱい付いてるやつを背負わされるという(笑)。しかも靴が発泡スチロールだから。もう歩くとかじゃなくて、気合でしたね(笑)。
ブランドをはじめたのは、着たい服がなかったから
それから他のブランドさんのコレクションなんかにも出させていただくようになって、高校に通いながらモデル業を続けていました。Nora Lilyをはじめることになったのは、当時バイト先の店長さんにこぼしていたグチがきっかけなんです。
わたし、お洋服を買いにいっても全然ほしい服がなくて。仕事で着る服も、ちょっとお姉さんっぽかったり、そのとき流行のものだったり、自分が着たいイメージと少し違っていて。それでいつも、店長に「着たい服がない、着たい服がない」ってぼやいていたんですよね。そしたら「じゃあ、作っちゃえばいいじゃん」って、知り合いのアパレルの方を紹介してくれて。その方が、いま一緒にもの作りをしてくださっています。
擬音で伝えたデザインイメージが形になっていく
スタートがそんな感じでしたし、服の学校に通っていたわけではないので、デザインイメージの伝え方がいつも雑なんですよね。このディテールを使ってくださいって写真を渡したり、簡単な絵を描いたり、もっとひどいときは「ここがこうなってて、ここがくるっとなってて」みたいな擬音で指示を出す感じ(笑)。ほんと、パタンナーさんに無理を言っていますし、そこから形にしてくださるのでありがたいです。最初の半年くらいは、意思の疎通もあまりうまくいかなくて手探りの状態でしたが、そこから少しずつ自分のやりたいことが確立してきて。スタッフのみなさんと方向性がひとつになっいくのを実感して、どんどん楽しくなってきました。
モデルとデザイナー。仕事が仕事に生きている
服のデザインを考えているとき、いちばんインスピレーションを与えてくれるのは、街で見かける外国人観光客の方。海外のスナップを見るのも好きですし、外国の方のファッションが好きですね。私、金髪ボブの女の子がすごい好きなんですよ。ブランド名のNora Lilyも、Nora Lilyっていう名前の金髪ボブの女の子をイメージして付けたんです。その子に着せたい服を作りたくて。
シーズンテーマみたいなものもあまりカチッと決めていないですね。私は一応モデルなので、いろんな服を着る仕事じゃないですか。だからあんまりテーマ性で絞っていくよりは、いろんな服があるほうが面白いかなと思っています。
ブランドをはじめるまでは、お店に売っている服の値段とかそんなに気にしたこともなかったのですが、服を作るようになってから生産視点で見られるようになって、買い物するのもすごく楽しくなりました。
あと、モデルとして服を着るときも、デザイナーさんはココを押したいんだろうな、みたいなのがすごい分かるようになって。そこがよく見えるポーズをとれるようになったり、本当、仕事が仕事に生きていますね。
モデルとして見せるクールな表情とはうらはらに、ふんわりやわらかな雰囲気を放つ内田さん。一児の母としての顔も持つ彼女は、お子さんを寝かしつけた後、服作りのアイデアを書きためているという。忙しくても仕事をしている時間は楽しい。そう語る彼女は、これからも自分が本当に着たいと思う服を作り続けてくれるだろう。
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- Text : Midori Sekikawa
- Photography : Yasuharu Moriyama