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DKARTE gallery “ITINERANT” QUI的ギャラリー探訪

Nov 10, 2020 - ART/DESIGN
QUIでも以前にご紹介した、ラテン圏のアーティストをアジアに紹介するDKARTE gallery(デカルテ ギャラリー)が、コロナ禍であらたなプロジェクトを始動した。固定のギャラリーを持たず、各地にあるユニークな建築空間で、現代アートを展示する仕組みだという。QUIでは、オーナーの酒井杏子さんとダビッド・べドジャさんにお話しを聞いた。

コロナが追い風になった新プロジェクト

 

QUI編集部(以下QUI):お久しぶりです。以前の取材から世界の様子は大きく変わりましたね。いかがお過ごしでしたか。

酒井杏子さん(以下酒井):おかげさまで絶好調なんです!ただ、大きく変わったことがありまして…以前取材していただいた馬喰横山のギャラリーはもうありません。

QUI:というと…ギャラリーが移転されたんですか?

酒井:ギャラリーの契約更新のタイミングが今年の3/31だったんです。更新をどうしようか考えていた時、中国やアメリカなどではすでにコロナウイルスが蔓延していました。その波が日本にもやって来るのではと考え、ダビッドとの協議の末に、更新はやめておこうという決断をしたんです。

QUI:自粛期間中はどう過ごされていたんでしょうか。

酒井:山に籠ったりしながら(笑)、コロナ禍でどのような動きをしていくか、今後の作戦会議をしていました。ちょうどそんなとき、著名な建築家によって建てられた物件を多く所有するダビッドの友人から、「コロナの影響でテナントが退去してしまった物件があるから使っていいよ」との連絡が入り、その場所に行ってみたらすごい素敵で、すぐにアーティストと建物のマッチングができたのが、今回のプロジェクトのはじまりです。

新しい効果が生まれたギャラリーを待たないアートギャラリー”

QUI:タイミングが素晴らしいですね。今回のプロジェクトについて具体的に教えてください。

酒井:“ギャラリーを持たないアートギャラリー”です。世界には素敵な建築空間や古民家がたくさん存在しますが、長い間、使われていなかったり、上手に活用されていないことが多いんです。そんな状況を利用して、建物のオーナーさんとコラボレーションし、さまざまな都市、さまざまな建物で展示会を行います。もちろん、国内にとどまらず、海外のスペースでの展示会も行っていく予定です。

QUI:どこでも展示が行えて、かなり身軽になった感じですね?

酒井:そうですね。海外のアートフェアに赴いたりすることも多いため、以前はその間、ギャラリーを留守にしなければならず、もどかしい部分を感じていました。固定の場所から情報を続けて発信してくのも重要なことだと思いますが、作品毎に適した場所を選んで展示ができることが、常設のギャラリーをもたないことの強みだと考えています。

QUI:どのような場所をギャラリーとして選んでいるのでしょうか?

酒井:作品に合わせて展示場所を選んでいます。もちろん、その逆もあって、場所から作品を選ぶこともあるのですが。たとえば、古民家とコンテンポラリーアートの組み合わせってすごく合うんですよ!お客様は、自宅や店舗に作品を飾ります。今まででのギャラリーは、真っ白な空間に作品を展示していたため、実際に飾る場所とのイメージがかけ離れすぎているという問題がありました。このプロジェクトを始めたことで、そして、お客様が飾った時のイメージも付きやすくなったと思います。アートは飾る場所によって、大きく表情が変わるものなんです。

アーティストの澄みついたビルディング THE A.I.R BUILDING”

QUI:すべてが相乗効果のように感じます。ちなみに、ここはどのような場所なんでしょうか。

酒井:ここは日本橋にある「THE A.I.R BUILDING」という建物です。古いビルをリノベーションして生まれた、全フロアをギャラリーとして使用できる場所。B1は演奏可能なライブスペース、1Fはカフェとバーになっています。2Fは展示のために来日したアーティストのための部屋で、日本での活動拠点に代わる場所になっています。作品を制作するためのアトリエ兼宿泊場所としても活用できるんです。 

地下のライブスペース。ここもギャラリーの一部に。

作品を照らす明かりは電球色。まるで家のような雰囲気。

コラージュアーティスト“Yoh Nagao”の日本初個展

QUI:今回の展示について教えてください。

ダビッド・べドジャさん:今回の展示は、この場所が先に決まっていて、アーティストを検討するところがスタートラインでした。でも、すぐに展示するアーティストが思い浮かび、トントン拍子で展示を迎えることができました。THE A.I.R BUILDINGとYoh Nagaoは、ベストマッチだったと思います。当初はフロアごとに異なるアーティストによる展示をする予定だったんですが、全フロアを使用した彼の初個展をすることにしました。

酒井:実は、建物のオーナーもアーティストもダビッドの知り合いなんです。人と人とが結びついて新たな流れが生まれる。素敵なことですよね!

QUI:今後の展示の計画は?

酒井:内緒です(笑)。これは私たちのスタイルでもあるのですが、計画を練って何かを完成させることはあまりなくて…素敵なアーティストがポンッと表れて、素敵な建物の話がポンッと出て、この2つを掛け合わせたら良さそう!みたいな流れで展示が決まっていくことが多いんです。引き寄せの法則ですね(笑)コロナが落ち着いたら、海外での開催も考えたいと思っています。

取材時に展示を行っていたアーティスト Yoh Nagao。 「THE A.I.R BUILDINGは、築65年という歴史もあってか、コンクリートなのにあたたかみのあるビルなんです。今でこそ生きる“何か”がある、普通じゃない建物。作品の雰囲気とマッチしていて嬉しいです」

 

コロナ禍という逆境を糧にして、生き生きと活動する二人からは元気をもらうことができた。これからの活動にも注目していきたい。