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スモッキング刺繍に魅せられたデザイナー、Create Clair安藤弥生

Feb 25, 2020 - FASHION
波のように浮き上がる立体的な柄。そこから生まれる美しいドレープ。Create Clair(クリエイトクレイル)のデザイナー安藤弥生は、ブランドの象徴的なテクニックとしてスモッキング刺繍を用いる。決して奇抜でも華美でもないが、日常の中にしっくりと溶け込みながら、たしかな印象を残すCreate Clairの服。そのデザインに行き着くまでには、どんなストーリーがあったのか。
Profile
安藤弥生(あんどう・やよい)
デザイナー

1995年三重県生まれ。名古屋学芸大学ファッション造形学科卒業後、アパレルメーカーに入社。2019SSより自身のブランドCreate Clair(クリエイトクレイル)を立ち上げる。

装苑賞エントリー作品のための“手段”だったスモッキング

安藤がスモッキング刺繍(生地をつまみながら刺繍を施すことで立体的な柄を生み出すことができる、ヨーロッパの伝統的な刺繍技法)と出会ったのは、名古屋学芸大学在学中。装苑賞に応募する作品のテーマを「笑顔」にしようと考えたとき、顔の筋肉を表現する方法としてスモッキングを思いついたという。

「一枚の布をスモックすることで表情を生み出すことができたらおもしろいんじゃないかと思ってチャレンジしました。こういうシワを作りたいときはどんな図案にすればいいか、収縮率はどれくらいかなど考えながら作っていくのが楽しくて」

安藤の作品「ÈGAO」は、髙島一精氏の選出で第90回装苑賞のファイナリストに選ばれた

はじめは「笑顔」を表現する手法として取り組んだスモッキングだったが、その奥深さに惹かれ、作品作りが終わってからも研究するようになったという安藤。この装苑賞は、後にブランドのアイコンとなる刺繍技法に出会っただけでなく、安藤がデザイナーとしてブランドの立ち上げを決意するきっかけになった出来事だったという。

 

ブランドをはじめることを決意させた、コシノジュンコと中章の言葉

「わたしにはとても影響を受けたデザイナーさんが2人いて。そのひとりがこのとき装苑賞で審査員を務めていらしたコシノジュンコさん。直接お話をしたときに『あなた、本当にあなたの作りたいものを作っているの?』ときかれたんです。もちろん一生懸命作っていたのですが、コンテストに通りたいとか、インパクトを残したいみたいなことに走ってしまったところがあったのはたしか。それを見抜かれてしまったんですね。実際に売る洋服として考えたらどういうものを作るべきか、見つめ直すきっかけになりました。

もうひとりがAKIRANAKAの中章さん。中さんには別のコンテストでお会いしたのですが、そのときはニットで作った作品を出品していて。ニットって素材としてすごく重いんですよね。それで『作品自体は嫌いじゃないけど、重いよね。これ普通に着られるかな?』と指摘されました。実際本当に重くて、着られませんね…と。コンテストって作品に対して評価をもらうことが多いのですが、中さんは売ることをベースに、いちビジネスマンとして話してくださって、それがすごく嬉しかった。コシノさんと中さんにお会いしたことで、わたしもビジネスとしてブランドを作りたいと本気で思うようになりました」

 

自分が作る“意味”を持たせる、アイコンとしてのスモッキング

斬新なクリエーションを発信するブランドというより、リアルに着られる洋服を作ることにやりがいを感じたという安藤。2017年に大学を卒業後アパレルメーカーに入社したものの、すぐにオリジナルの服作りをはじめる。ダブルワークが認められていなかったメーカーを1年で退職し、2018年にはCreate Clairをスタートさせたというのだから、その行動力にはおどろきだ。

「ファーストシーズンからコレクションとして10型くらい作ろうと決めてスタートしました。ただ売るだけの服だったらわたしが作る意味がないし、アイコン的なものがあった方がブランドとして強いと思ったので、装苑賞以来ずっと続けていたスモッキングの手法を取り入れました」

2018年のファーストシーズンより

 

職人と二人三脚で作りあげる、こだわりのオリジナル生地

スモッキングと同様、Create Clairの特徴である素材へのこだわりもブランドスタート時から変わらない。

「ブランドをはじめるとき、テキスタイルメーカーさんなど一切繋がりがなくて。どうやったらいいかもわからなかったので、まずは岐阜にあるテキスタイルマテリアルセンターというところを訪ねてみました。そこで色々な生地の作り方や加工の仕方を教えてもらったり、織元さんを紹介していただいたり。本当に親切にしてくださって。それ以来ずっとお世話になっているんです」

刺繍だけでなく、素材そのものにも手仕事が加わっていることにこだわりたいという安藤。

 

「2020SSでもオリジナルのジャカード生地を作っているのですが、こういうラメの糸を交ぜたりすると目が飛んだり引っかかったりしてとても手が掛かるんです。それを職人さんが一目一目見守りながら織ってくださる。そうやって時間をかけて作られるものを大事にしたいんです。産地に行って、職人さんたちと試行錯誤しながら生地を作っていく工程がとても重要。そこにこだわっているからこそ、お客さんにも『この生地かわいいね』ってよろこんでいただけるんだと思います」

手仕事を大切にする想いはロゴのイラストにも表現されている

産地に赴き、職人と二人三脚で生地を作るなかで、次のコレクションのヒントを得ることも多いという安藤。表現したいデザインを生み出すためには、どういった設計や加工が必要なのか、日々学びながら取り組む姿勢に、職人へのリスペクトを感じさせる。

手仕事を大切にすること。リアルに着られるのに、ちょっと特別であること。安藤が本当にやりたいことをカタチにしたコレクションは、Create (創造)Clair(輝き)の名の通り、日常に輝きをプラスしてくれるに違いない。

 

枯山水をイメージしたスモッキング刺繍を前後に施したドレス。流れるようなドレープが美しい、Create Clairらしい一着

Smocking standneck dress ¥69,300(グリーンが3月上旬入荷予定)

 

裾にスモッキング刺繍を施すことで、フリルのような表情を生み出したロングスカート。ウエストはゴム仕様で、着心地のよさも魅力

Smocking mermaid skirt ¥59,400

 

ハート柄のスモッキングは今季の新柄。両脇に入った刺繍が、フロント、バッグにも美しいドレープを生み出している

Smocking Vneck dress ¥69,300

 

今季のコレクションのために作ったオリジナル生地。金ラメ糸を織り込んだジャカードを、手作業でカットしてフリンジを作っている

Jacquard A line skirt ¥44,000(2月下旬入荷予定)

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