桜田ひより × 木戸大聖 – 出会いで人は変わる
映画『モブ子の恋』で、W主演を務めた桜田ひよりと木戸大聖。原作のファンでもあるというふたりに、役へのアプローチやお互いの印象、そして自分自身の壁を越えた経験まで、たっぷりと語ってもらった。










Hiyori Sakurada:blouse ¥8,690 / LILLIAN CARAT , one-piece dress ¥17,050 / COCO DEAL , Other stylist's own
自分と、誰かと、向き合うこと
― まず、本作に出演が決まった際の心境を教えてください。
桜田:『モブ子の恋』はずっと拝読させていただいていた漫画だったので、信子を演じられる嬉しさと、より一層大切に演じていきたいという気持ちがありました。
木戸:僕も原作を読んでいたのですが、入江は今まで自分が演じてきた役とは真逆なところもあり、役者として挑戦する役どころだなと、前向きに受け止めました。
― 桜田さんが演じた田中信子と、木戸さんが演じた入江博基。それぞれの役をどのように捉えましたか?
桜田:信子は、自分のことを目立たない脇役=モブだと認識していて。苦手なことの方が多いけれど、かといってずっとネガティブに生きているわけではない。自分なりの小さな幸せや楽しみを見つけながら、いたって平凡に暮らしている女の子だなと思いました。
木戸:信子が一人でがんばっている姿に、一番最初に気づいてあげられる。そして、そっと隣にいてくれて、居心地がいいと思ってもらえる男性像にしたいと思いました。

― 演じるうえで大切にした部分はなんでしょう?
桜田:私自身の中に眠っている内向的な感情や思考にフォーカスを当てて演じました。信子は、前向きに自然体で生きているので、モブということに対して重きを置かず、私の内面と信子の内面をすり合わせながらつくっていきました。
― 桜田さん自身にも内向的な面があるんですね。木戸さんは入江と共鳴できたところはありますか?
木戸:入江は人を傷つけないように、すごく言葉を選んでいて、だから話す前に独特な間があるんです。そういう節は自分にもあって、誰かに共感できることだったらストレートに言えるんですけど、改善してほしいことの場合はつい遠まわしになってしまう。そこは入江と重なるように感じました。

― おふたりが普段からコミュニケーションで心がけていることがあればお聞きしたいです。
桜田:相手がどういう人なんだろうと観察するところから始まります。その人が備えている雰囲気を感じながら、使っているものや好きな食べ物などを探って、会話の糸口を見つけています。でも、うまく自分を出せずにいる場面も多いです。
― 自分から話しかけられるタイプ?
桜田:いえ、まったく(笑)。周りに大人の方が多くて、皆さんやさしく話しかけてくださるので……。同世代の方と一緒になったときや、主演という立場を任されたときは、なるべく自分から話しかけようとがんばっています。
― 木戸さんはいかがでしょう?
木戸:結論から言うことです。自分の欠点として、まわりくどく言っちゃう癖があるので、なるべく「こう思っています」という結論を先に伝えるようにしています。
― 自分の中で考えがまとまっていないと、なかなかできないことですよね。
木戸:そうですね。この人の話は入ってくるなというときは、端的に話されている方が多いイメージがあります。

ふたりが出会い、つくりだすこと
― 本作で、おふたりは初共演だったのですか?
桜田:お芝居では初めてで、以前バラエティ番組でご一緒させていただきました。
― バラエティとはまた印象が変わりそうです。
桜田:木戸さんがクランクインして最初に撮ったシーンが、カートを押している入江くんに信子が出会う場面で、私が行ったときには木戸さんがもうカートを持っていたんです。その姿が完全に入江くんで。これから入江くんと素敵なシーンが撮れるんだろうなと思って、ワクワクした気持ちになりました。
木戸:僕が覚えているのは、最初の顔合わせのときですね。芝居を一緒にやるのは初めてだったので、「はじめまして」と挨拶したら、「え? バラエティで1回会ってますよね」「これは忘れられちゃったな」って(笑)。自分のミスに、そうやって笑いながら返してくれるひよりちゃんとなら、楽しくやっていけそうだなと思えた瞬間でした。
いざ現場が始まったら、スタッフさんのことにも気が回るし、明るいし、本番の直前には一瞬で信子スイッチが入る。その振り幅はすごいなと思ったし、信子の視野の広さにもリンクするなと感じました。

― 風間太樹監督とはどんなお話をされましたか?
桜田:原作の信子の雰囲気も大切にしながら、桜田ひより自身に眠っているものも信子に反映できるように、ひとつひとつのシーンを大切に撮っていきたいと、作品に入る前にお話させていただきました。
木戸:信子に対する入江の好意が表に出すぎないよう、風間監督からは「そこは僕がチューニングをするので、絶妙なバランスを探していきましょう」と言っていただいて、撮影期間中ずっと一緒にチューニングしていました。油断すると「ちょっと入江が好きが出すぎている」と(笑)。
― 本作では見た目も、かなり漫画に寄せていますよね。
桜田:はい。髪も本作のために短く切りました。入江くんのメガネもピッタリ。
木戸:そこが一番こだわったかも。あまり見たことないオクタゴン型で。風間監督といろんなメガネを試して、やっぱりこれだねって。
桜田:エプロンに赤いラインがあるかないかとか、衣装合わせにはしっかり時間をかけました。

自分だけの道を見つけること
― おふたりのキャリアを振り返って、信子のように自分が脱皮できた、壁を越えられたというターニングポイントはありますか?
桜田:それこそ私は風間監督と初めてご一緒させていただいたドラマ『silent』(2022)で、それをとても感じて。私が20歳のときだったんですが、20歳という特別なタイミングで、役への向き合い方、自分自身への向き合い方を考えるきっかけをいただけて、自分にはこういうやり方が合っているんだと気づかせてもらえました。風間監督と出会えたことが、私の中ではとても大きなターニングポイントです。
木戸:僕は2018年から3年間『おとうさんといっしょ』という子ども向けの番組で、2代目のおにいさんをやらせていただいたことがターニングポイントになりました。
初代のおにいさんはバク転もできて運動神経抜群だったんですけど、自分はぜんぜんできないし、理想とするおにいさん像とはまったく違う。最初はそれがコンプレックスで落ち込んでいたんですけど、一緒に番組をやっていたアメリカザリガニの柳原(哲也)さんが、「お前の負け姿は個性だ」と声をかけてくださって。視聴者の方はそこをかわいがってくれる。だからカッコつけずに、失敗したなら失敗しちゃいましたと番組で言えるようになりなさいと。それで思い切ってその通りにやっていたら、いつしか自分だけのおにいさん像ができていったんです。
それ以降、他の現場でも負け姿を正直に出すことを大事にしています。ごめんなさい、失敗しましたと言える人の方が、周りは応援してくれる。今回の作品で入江という役をやるときにも、すごく重なる部分があるなと思いました。

― 完成した作品をご覧になった感想を教えてください。
桜田:心の内側から満たされました。出てくるみんながそれぞれ、あたたかい気持ちを持ちながら人と接しているんです。誰しもが経験したことのある初恋や、人と人との関係性に、懐かしさのようなものも感じられました。
木戸:まず何よりも信子を応援したくなる。そして自分自身も隣を一緒に歩いているような感覚になりました。観終えたあとに、こんなにやさしい気持ちになれる映画はなかなかないですよね。
― ひたむきに努力していると、それを見てくれている人はきっとどこかにいる。そして自分に自信を持つことで、人はどんどん変わっていけるんだと、信子の姿から改めて気づかされました。
桜田:学生の方や社会人になりたての方にはとても刺さるんじゃないでしょうか。一方で、試写をご覧になった年配の男性にも好評だそうです。
― かつては誰もが通ってきた道ですから。
桜田:はい。幅広い年代の方に愛していただける作品になっています。観てくださった方がひとつでも共感できたり、家に帰って自分と向き合う時間を作っていただけたら、意味のある映画になったと思います。それぞれの楽しみ方で、ぜひ劇場でご覧いただきたいです。
木戸:信子と入江のように、なかなか自分を肯定できなかったり、他の人と勝手に比較して自分が劣っていると感じてしまったり。そんな人に、あなたにはあなたの良さがあるし、それは他の人が持ってない良さだということを伝えてくれる作品になっていると思います。今どうしたらいいんだろう、この先どうしていったらいいんだろうと悩んでいる人の自己肯定感を後押ししてくれるはずなので、たくさんの方に観ていただければうれしいです。

Profile _
桜田ひより(さくらだ・ひより)
2002年12月19日生まれ、千葉県出身。幼少期からドラマ、映画に出演し、俳優として活躍。第47回日本アカデミー賞では「交換ウソ日記」で新人俳優賞を受賞。近年の主な出演作はドラマ「silent」、「ESCAPE それは誘拐のはずだった」(日本テレビ系/2025)、映画「バジーノイズ」(2024)、「この夏の星を見る」(2025)など。現在は劇場版「TOKYO MER~走る緊急救命室~CAPITAL CRISIS」(8月21日公開予定)などが控えている。
Instagram X
木戸大聖(きど・たいせい)
1996年12月10日生まれ、福岡県出身。2017年俳優デビュー。Netflixオリジナルシリーズ「First Love初恋」にて主人公の青年役を演じ一躍脚光を浴びる。近年の主な出演作に、ドラマ「ゆりあ先生の赤い糸」「9ボーダー」「海のはじまり」、映画『ゆきてかへらぬ』『WIND BREAKER』など。wowowドラマ「ドラフトキング-BORDER LINE-」が現在放送中。また、7月スタート日本テレビ・読売テレビ系新日曜ドラマ「一次元の挿し木」に前原幹夫役で出演が控えている。
Instagram
Information
映画『モブ子の恋』
2026年6月5日(金)全国公開
出演:桜田ひより、木戸大聖、早瀬 憩、唐田えりか、草川拓弥、荒木飛羽、蒼戸虹子、占部房子、吉田ウーロン太、TheWorthless、中村優子、古舘寛治
監督:風間太樹
原作:田村茜「モブ子の恋」(ゼノンコミックス/コアミックス)
脚本:倉光泰子
音楽:坂本秀一
主題歌:にしな「クローバー」(ワーナーミュージック・ジャパン)
製作:映画「モブ子の恋」製作委員会
制作プロダクション:AOI Pro.
配給:イオンエンターテイメント、東京テアトル
©田村茜/コアミックス ©映画「モブ子の恋」製作委員会
- Photography : Keta Tamamura(TABUN)
- Styling for Hiyori Sakurada : Ryoko Maeda
- Hair&Make-up for Hiyori Sakurada : Mai Tokunaga(BEAUTRIUM)
- Styling for Taisei Kido : Ayato Tomida
- Hair&Make-up for Taisei Kido : Akihito Hayami
- Text&Edit : Yusuke Takayama(QUI)