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生地と色とパターンと極限まで向き合う|sssteinによるBARNEYS NEW YORKのエクスクルーシヴ

Oct 22, 2026
<ssstein(シュタイン)>が2026年10月にポップアップも併せて展開する「BARNEYS NEW YORK(バーニーズ ニューヨーク)」のカプセルコレクション。デットストック、シープレザー、フランネルなど生地への探求から生まれたコレクションは静かながらも確かな存在感と完成度を生み出している。生地の個性や特性を見極めて魅力を引き出すのは<ssstein>のモノづくりに通じるものだが、エクスクルーシヴならではのアプローチとして試みたことは。デザイナーの浅川喜一朗に話を聞いた。

生地と色とパターンと極限まで向き合う|sssteinによるBARNEYS NEW YORKのエクスクルーシヴ

Oct 22, 2026 - FASHION
<ssstein(シュタイン)>が2026年10月にポップアップも併せて展開する「BARNEYS NEW YORK(バーニーズ ニューヨーク)」のカプセルコレクション。デットストック、シープレザー、フランネルなど生地への探求から生まれたコレクションは静かながらも確かな存在感と完成度を生み出している。生地の個性や特性を見極めて魅力を引き出すのは<ssstein>のモノづくりに通じるものだが、エクスクルーシヴならではのアプローチとして試みたことは。デザイナーの浅川喜一朗に話を聞いた。

伝えたいムードのために生地ごとの色の表情にこだわる

—浅川さんは以前のインタビューで服づくりにおいて生地を重要視するようになってきたとお話しされていましたが、まだその傾向が強いのでしょうか。

浅川:生地にはこだわりますが、パターンやシルエットが後回しになるかといえばそんなこともなくて、基本的には両軸であることは変わりません。<ssstein>の初期の服づくりはパターンやシルエットの構想から始まることが多かったのですが、それが生地も同じぐらい最初から考えるようになった感じです。

—生地から、パターンから、どちらからアプローチするのかはどのようにして決めているのでしょうか。

浅川:今の自分がどのような服を作りたいかというのが全ての起点になります。そこで生地からのアプローチの方が着地しやすければそちらになりますし、その逆であればパターンやシルエットからです。どちらのアプローチからがいいかというのもすごく感覚的なもので、最近はどちらかといえば生地から考えていく方が多いかもしれないです。

—「こういう服を作りたい」という構想があったとして、それに適した生地はどのように探っているのでしょうか。

浅川:生地屋さんとはかなり話し合います。自分のイメージを伝えて、それに対してアドバイスをもらったり。理想とする風合いや色の生地がなければ別注で作り込むこともあります。最初に「<ssstein>の服づくりの傾向は」という質問がありましたが、色に対するこだわりは強くなってきているかもしれません。


—それはどういう理由からですか。

浅川:例えば同じ赤であってもカシミヤ、ウール、ナイロン、起毛の有無など、生地によって表情の伝わり方も変わります。毎シーズンのコレクションには<ssstein>として届けたいムードがあって、その表現に最もふさわしい色の生地を選びたいという想いを持っています。「この生地に、この色をのせたら、こういうムードが生まれる」というのも絶対的な正解があるわけではないですが、自分に響いてくる感覚を信じて生地を作り込んだり、選んだりしています。

—生地からのアプローチでは「風合いがもたらすムード」というのはよく聞きますが、浅川さんは「その風合いだからこその色がもたらすムード」なんですね。

浅川:テクスチャーによって奥行きや強さ、やさしさなど表情が左右される色への興味は強くなっています。

—ムードというのは抽象的でもあり感覚的なものです。理想を追求して別注の生地を作る際には試行錯誤はありますか。

浅川:試作は実験のようなものなので、成功と失敗の繰り返しです。ですが生地が思い通りに仕上がらなかったとしても、それは経験値として次に活かすことはできます。自分では失敗ではなく知識の蓄積と捉えるようにしています。

生地と身体の関係性を見極めて理想のシルエットを実現

—浅川さんは「日常のなかで感じた美しさ」をコレクションのインスピレーション源にされているのは知られていることですが、その創作スタイルも変わっていないですか。

浅川:2026年の秋冬コレクションは「心が温まるような瞬間」がひとつのテーマとしてありました。奥さんと食事に行った際、隣のテーブルに自分たちよりも年上のご夫婦がいて、その二人の周囲に漂っている空気感に温かさを感じたんです。料理長がテーブルまで来て会話を楽しんでいたのですが、そのような関係性も素敵に感じて「人と人がつながるウォーム感」のようなものを表現したいと思ったシーズンでした。ご主人がツイードジャケットを着用していたのですが、それもすごく似合っていたのでコレクションにはツイードのアイテムも加えました。


—日常で目にしたもの、感じたことがコレクションに反映されているんですね。

浅川:赤のウールカシミヤも僕が表参道でいつも目にしているイチョウの木から着想を得たものです。午前と午後の光ではイチョウの木の赤の見え方も変わって、そのテンションの違いを探って辿り着いた赤です。作りたい赤もパキッとした方向ではなく、柔らかい赤でした。正確には赤ではなく朱色に近いのですが、それも黄色から赤へと色づいていくイチョウのイメージです。

—今季は写真家のジェイミー・ホークスワースの作品からも着想を得たそうですね。

浅川:彼の作品からはパーソナルな感情が漂ってくるんです。被写体はどれも普通で、奇抜なことをやっているわけではないのに引きよせられる。彼の作品からも人の温かな感情に通じるような情緒を感じます。

—パターンやシルエットも<ssstein>らしさを生み出す要素ですが、浅川さんが探求した生地や色と組み合わせるときにどのようなことを意識しているのでしょうか。

浅川:<ssstein>のパターンはシーズンによって大きな変化は感じないかもしれませんが、フォーカスしたい生地に合わせてアップデートを繰り返しています。生地の種類によって身体との関係性も変わり、着たときに生まれる余白がシルエットにつながると思っています。なので人に着てもらって、自分でも着て確認して、ひとつひとつのアイテムの生地とパターンの組み合わせを詰めています。

—生地の種類によって身体との関係性が変わるというのは?

浅川:生地によってフィット感が生まれたり、包み込まれるような感覚だったり着心地に違いが出ます。さらに、例えばツイードでも打ち込みが強い生地ならシルエットに力強さを感じさせたいですし、ソフトな生地なら洗練された雰囲気にしたい。そうなると理想のシルエットを実現させるには生地に合わせて最適なパターンを探っていく必要があります。そういう作業を毎シーズンのように繰り返しているんです。<ssstein>はブラックやブラウンが多く、どれもが同じ色に見えるかもしれませんが、それぞれのテンションを変化させて異なる見え方にしているつもりです。

極限まで調整したBARNEYS NEW YORKの別注アイテム


—BARNEYS NEW YORKのエクスクルーシヴコレクションは、まさに生地からのアプローチでした。デットストック生地を使用したコレクションはそのひとつですが、ミリ単位での調整を加えたそうですね。

浅川:ダブルブレストのコートはインラインでは二重織のメルトンで作っています。それをツイードに載せ替えたときに気になったのが肩まわりでした。重さのあるメルトン生地では落ち感が生まれ、それに近い表情をツイードでも出すために肩幅の詰め、鎌底の上げをミリ単位で調整しました。

—デットストックのツイードシリーズではジャケットもありますよね。

浅川:ジャケットはツイード生地でも肩まわりの表情はインラインと大きな違いは生まれなかったのですが、生地を変えることでシルエットに膨らみが生まれたので身幅は僅かですが削りました。

—バランスを調整したアイテムは他にもありますか。

浅川:デットストック生地ではないのですがシープレザーのトラウザーズもそうです。通常はコットンナイロンやウールシルクで作ることが多いのですが、ハリのあるレザーだとテーパードが過剰でバルーンパンツのように見えました。なのでシルエット感をインラインに近づけるために裾幅を広げました。

—BARNEYS NEW YORKのエクスクルーシヴは全てインラインのパターンにチューニングを加えているのでしょうか。

浅川:そういうわけではないです。フランネルのダブルブレストコートはメルトンからの生地変えですし、サルファーダイドのジャケットはインラインとパターンは同じですが硫化染めやヘリンボーン生地で独特の表情を生み出しています。こちらはどちらもデットストック生地ではありません。

—<ssstein>は表現したいムードのために生地の混率も1%単位でこだわるイメージがあります。それが既成となると手を加えることはできず、<ssstein>がデットストック生地を選んだのが少し意外でもありました。

浅川:自分がその生地で服を作りたいと思えば、既成であっても抵抗はありません。僕は古着が好きですし、ヴィンテージの生地そのものも好きです。資料としてデットストック生地もたくさん収集しています。BARNEYS NEW YORKの担当者とは以前から「カプセルコレクションを一緒にやれたらいいですね」と話していて、デットストック生地での服づくりは<ssstein>としても新たな試みでもあるので、今回のエクスクルーシヴに加えました。



—新たな試みによって発見などはありましたか。

浅川:オリジナルの生地は作りたい服のために別注するので整えやすさや着地のしやすさはあります。ですがデットストックでもレザーでもフランネルでも、既成の場合は生地の特徴をいかに活かして服に落とし込むかという発想が求められます。アプローチの違いはプロダクトのビジュアルにまで影響があって、同じような撮影方法でも上がってきた写真の雰囲気はインラインとは別物でした。BARNEYS NEW YORKとの取り組みによって表現の視点がすごく広がったので、今後に活かしていきたいです。

—今回のBARNEYS NEW YORKのエクスクルーシヴにはテーマのようなものはあったのでしょうか。

浅川:やっぱり多くの人に喜んでもらえる服を作りたいという想いがいちばんです。エクスクルーシヴではありますが自分としてはいつもの<ssstein>の服づくりと同じで、一着一着と向き合って、いつものデイリーウェアだけど着ている人にとって特別な一着になってもらえたらという想いで制作しました。

—<ssstein>のメルトンコートを愛用している方からするとツイードもフランネルも特別な一着になり得ますよね。

浅川:もしかしたらメルトンではピンとこなかったけど、ツイードやフランネルなら着てみたいと思ってくれる方もいるかもしれない。そうやって<ssstein>のことを知ってもらえるきっかけになるといいなって思っています。

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Oct 23, 2026

  • Text : Akinori Mukaino(BARK in STYLE)
  • Edit : Yusuke Soejima(QUI)

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