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ReStyle30周年|観客の視線を奪ったBALLET TheNewClassic 2026の衣裳に込めた想い

Aug 10, 2026
新国立劇場を舞台とした伝統と現代のクリエイティブを融合させたバレエ公演『POLA presents BALLET TheNewClassic 2026』。衣裳監修は小嶋智子が務め、衣裳制作を担当したのが<mister it.(ミスターイット)>の砂川卓也と<KAKAN(カカン)>の工藤花観。伊勢丹新宿店は小嶋、砂川、工藤から衣裳の制作背景を聞くことができる特別プログラムを企画した。観劇直後のお客さまも参加した座談会を取材したQUI編集部が、その模様をお届けする。座談会のファシリエーターはReStyleバイヤーの鳥山脩が担った。

ReStyle30周年|観客の視線を奪ったBALLET TheNewClassic 2026の衣裳に込めた想い

Aug 10, 2026 - FASHION
新国立劇場を舞台とした伝統と現代のクリエイティブを融合させたバレエ公演『POLA presents BALLET TheNewClassic 2026』。衣裳監修は小嶋智子が務め、衣裳制作を担当したのが<mister it.(ミスターイット)>の砂川卓也と<KAKAN(カカン)>の工藤花観。伊勢丹新宿店は小嶋、砂川、工藤から衣裳の制作背景を聞くことができる特別プログラムを企画した。観劇直後のお客さまも参加した座談会を取材したQUI編集部が、その模様をお届けする。座談会のファシリエーターはReStyleバイヤーの鳥山脩が担った。

ファッションと舞台芸術を横断する特別体験プログラム

©︎Fukuko Iiyama

<mister it.>と<KAKAN>をReStyleで取り扱っていることから実現した、伊勢丹新宿店本館3階のReStyleの30周年を記念した特別企画。鑑賞席として舞台全体を最も美しいバランスで楽しめる「Center席」が用意され、観劇後は通常は立ち入ることができないバックステージを見学。舞台鑑賞だけでなく衣裳に込めたクリエイターの思想までを横断的に体験してもらうプログラム。

最も似合う衣裳を作るためにダンサーの動きを徹底的に観察

鳥山:砂川さんは第2部の衣裳を担当されましたが、バレエ衣裳ということでデザインとして意識したことはありましたか。

©︎Fukuko Iiyama

砂川:デザインを起こす前に一人一人のダンサーの動きを観察しました。日本で活動しているダンサーには直接お会いして、海外を拠点にされているダンサーはSNSにアップしている練習風景などをじっくりと見ました。

鳥山:動きを観察したのはどういう理由からですか。

砂川:ダンサーに似合う衣裳を作りたいという思いがあったからです。動きを観察することでダンサーのキャラクターのようなものも見えてきましたし、それがデザインのインスピレーションにつながりました。

小嶋:私は前回もお手伝いさせてもらったのですが、今回の公演で初めて接するダンサーもいらっしゃいました。なので「この衣裳はあのダンサーの身体にフィットするか、動きにマッチするか」と砂川さんといろいろ話し合いました。

鳥山:衣裳デザインのために砂川さんがまず着目したのは個々のキャラクターだったんですね。

小嶋:砂川さんも工藤さんも「誰が着る服なのか」というのをすごく大切にしているデザイナーだと思うんです。なのでブランドの個性を活かしながら、ダンサーの個性にも落とし込んだ衣裳を制作してくれるはずだと信頼していました。

砂川:デザインのアプローチとしては<mister it.>のいつものコレクションと大きくは変えていないです。ダンサーの個性に寄り添うと同時に「12人のダンサーが並んだ時に観客席のお客さまからどう見えるか」というのも強く意識したところです。

©︎Fukuko Iiyama

鳥山:素材などでこだわったポイントはありますか。

砂川:<mister it.>らしさとして伸縮性のあるジャージー素材を使用し、舞台でも印象に残る衣裳にするためにラメ糸をアクセントとして加え、ダンサーの動きに合わせてラメ糸の煌めきが浮かび上がってくる視覚的な演出を狙いました。今回の演目のダンスとすごく相性がいい衣裳が作れたと個人的には思っています。

鳥山:バックステージでは演目の合間に衣裳を直したり、サイズの微調整もされていましたよね。

©︎Yuki Kumagai

小嶋:海外からのダンサーと会えたのは本番の1週間前ぐらいで、体型やシルエットを把握できたのはそこが初めてです。身体の個体差というのはどうしてもありますから、デザインの大枠は決まっていても微調整はやはり必要でした。

古典の新しい見せ方を自分なりに解釈してデザインを考案

鳥山:工藤さんは第1部の衣裳を担当されました。ブランドコンセプトとして「纏うことは、生きること」を掲げていますが、今回の衣裳もその思想に通じるものがあるのでしょうか。

©︎Fukuko Iiyama

工藤:第1部は新作もあれば、古典バレエを現代的に再解釈した作品もありました。例えば『眠れる森の美女』のローズ・アダージョでは、本来は若い王女像として描かれる役を、中村祥子さんが成熟した大人の女性として演じるなど、新しい見せ方に挑戦していました。なので私も「TheNewClassic」というテーマを自分なりに解釈することから制作を始めました。古典への敬意を持ちながらも、今だからこそ生まれる表現とは何かを考え、それを衣裳に落とし込んでいきました。

鳥山:<KAKAN>のコレクションと異なるデザインアプローチなどはあったのでしょうか。

工藤:<KAKAN>は羊毛を手紡ぎし手編みで制作するニットウェアなども展開していて、リアルクローズとクラフトマンシップを大切にしたアートピースが共存するブランドです。ReStyleでお取り扱いいただいているのは日常に寄り添うリアルクローズが中心ですが、今回は衣裳制作なので、衣服が何かを語るのではなく、ダンサーの身体や物語を際立たせ、作品全体の完成度を高めるための衣裳を目指しました。

©︎Fukuko Iiyama

鳥山:砂川さんも工藤さんも演目のテーマを重視しながら、普段のブランドのクリエイティブを発揮したという感じですね。きっと小嶋さんにとっても期待通りの仕上がりだったんでしょうね。

小嶋:最初に舞台監督としてのお話をいただいたときにはバレエ公演そのものの詳細は決まっていないような状態でした。そこから演目や出演するダンサーが明らかになっていくにつれて私の中では「砂川さんと工藤さんに衣裳をお願いする」というのは確定していることでした。

鳥山:お二人にお願いしたいと思ったのはどうしてですか。

小嶋:自分の頭の中に浮かび上がってきた衣裳のイメージを砂川さんと工藤さんなら間違いなくカタチにしてくれると思ったからです。

鳥山:制作にかけることができた時間はどれぐらいでしたか。

小嶋:お二人に話をしたのは公演の半年前ぐらいでしたよね?

砂川:そうですね。そのぐらいでした。

鳥山:砂川さんと工藤さんはブランドとして発表するシーズンコレクションもあるので、それと同時進行のような感じだったんですね。かなりタイトだったのではないでしょうか。

小嶋:それは私もわかっていたので「お二人に絶対にお願いしたい、でも心苦しい」という心境でした(笑)。

演目だけでなく衣裳のインパクトや存在感にも心を掴まれた

鳥山:砂川さんも工藤さんも舞台衣裳を担当するのは初めての経験だったそうですが、苦労したことなどはありますか。

砂川:ダンサーの動きのダイナミックさってすごいじゃないですか。なので日常で着る服と同じ設計ではダメで、「これぐらい腕を上げるだろう、脚を上げるだろう」と可動域を想定しながらの服作りというのはこれまでにない体験でした。

工藤:私は基本的には、苦労よりも楽しさのほうが勝りました。「BALLET TheNewClassic」には、古典を新たに解釈するという意味が込められていますが、それは決して古典を否定することではありません。古典への敬意を持ちながら、まだ誰も見たことのない表現へと昇華していく。そのバランスを探ることは、自分自身の制作姿勢とも重なり決して簡単ではありませんでしたが、だからこそ生まれる新しい表現に挑戦するきっかけになりました。

鳥山:お客さまは観劇直後にこちらにお越しいただき、舞台の記憶も熱気も冷めやらない中で衣裳制作についてのお話を聞いたわけですがいかがでしたか。

—演目がショートでどんどん切り替わっていくので、公演はあっという間でした。第1部の赤の衣裳のインパクトが強くて、しかもバレエから連想されるようなデザインでもなく、「これから一体何が起きるんだろう」と衣裳を目にするだけでワクワクしました。スタートから心を掴まれましたね。

©︎Fukuko Iiyama

小嶋:赤の衣裳はエンディングを飾ってもおかしくないようなボリュームなのですが、それが序盤から登場したことで印象に残りますよね。

—白鳥のシーンの衣裳はダンサーの身体と一体感が生まれていて、すごく美しいと思いました。ローズ・アダージョに出演したダンサーが着用されていたスーツもバレエにつながるような生地感だけれど、フィナーレにふさわしい雰囲気もあって印象に残っています。

©︎Fukuko Iiyama

鳥山:今回の衣裳に携わった小嶋さん、砂川さん、工藤さんからするとどれもがうれしい感想ではないでしょうか。お客さまにも特別プログラムを楽しんでいただき、ReStyleとしてもうれしく思います。本日はお集まりいただき、貴重なお話を聞かせてもらい本当にありがとうございました。

日常にあふれる「デザイン」について考えるきっかけに

デザイナーズファッションを日常とつなげていくことを目的として「ライフスタイリング」を30周年のテーマに掲げる伊勢丹新宿店のReStyle。「BALLET TheNewClassic」と協業した「ファッションと舞台芸術を横断する特別体験プログラム」もその取り組みのひとつであり、ReStyleの鳥山脩に企画への想いを聞いた。

—今回の「特別体験プログラム」はどのような「ライフスタイリング」につながると考えましたか。また、参加者にいちばん感じてほしかった、知ってほしかったことはどういったことでしょうか。

鳥山:ReStyleで触れていただけるデザインから一歩はみ出して、バレエという別の角度から落とし込まれたデザインはどのように生まれたのか。そういったデザイナーの思考が伝わるといいなと思いました。今回の特別プログラムでお客さまにお届けしたかったのは「デザインが与える影響度について」です。私たちの日常にはさまざまなアプローチを駆使したデザインであふれています。それは洋服だけではありません。そんなことに気づく、考えるきっかけを作ることができたら、ReStyleが掲げる「ライフスタイリング」に近づけるかなと思って企画しました。

—ReStyleでも取り扱いのある<mister it.>と<KAKAN>が手がけた衣裳を見てどう思いましたか。また、それぞれのブランドの「らしさ」をどのあたりに感じましたか。

鳥山:どちらのブランドも素材使いは普段のクリエイションと通ずるものがあり、そこに視覚的な「らしさ」を感じました。デザインアプローチに関しては、<mister it.>は「誰か一人を思い浮かべてデザインする」というブランドの軸をぶらすことなく挑戦していることが伝わってきました。「クラシックを壊すのではなく新しく解釈し、クラシックへのアンチテーゼではない表現に挑戦した」という<KAKAN>のアプローチも、「素朴で愛らしい印象になりがちなニットをクールで洗練されたものに仕上げる」という相反する要素をミックスする「らしさ」が感じられました。

編集後記

身体の動きが表現に直結するバレエと「誰が着る服なのか」を大切にするデザイナーズブランド。その両者が結びつくことで、ダンサーの個性に寄り添い、身体性の美しさを引き出す衣裳が生まれた。舞台上で観客を魅了した色や素材、シルエットの背景にあったのは、演目やダンサーと向き合いながら重ねたデザイナーの試行錯誤。観劇に加え、バックステージの見学やクリエイターとの座談会を通して、その過程までを知ることで、目に映る衣裳の一つひとつが、それまでとは異なる意味を持ちはじめる。ファッションと舞台芸術を横断する今回のプログラムは、普段は無意識に触れている日常を取り巻くデザインというものものにあたらめて目を向けるきっかけとなった。

BALLET The New Classic × KAKAN・mister it. POP-UP

伊勢丹新宿店本館3階 リ・スタイルで、「BALLET The New Classic 2026」の舞台衣裳を手掛けた <KAKAN(カカン)>・<mister it.(ミスターイット)> によるポップアップが、2026年8月5日(水)から8月11日(火・祝)まで開催される。

NEWS
BALLET The New Classic × KAKAN・mister it.、伊勢丹新宿店「リ・スタイル」でポップアップを開催中
Aug 07, 2026
  • Photograph : Kaito Chiba
  • Text : Akinori Mukaino(BARK IN STYLE)
  • Edit : Shun Okabe(QUI)/Miwa Sato(QUI)

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