セレクトショップの次なる視線 | CARV STORE 内田アミ
トレンドをとらえたブランド、趣味や嗜好性が表れた服、目利きがキャッチした 新世代のデザイナーなど、コンセプトが明確なショップであるほど、 ファッションに対する美意識は店内の品揃えからも一目瞭然だ。そんなショップを訪れるファッションフリークが気にしているのは、 常に新しい刺激を提案してくれるオーナーやバイヤーの次なる動向や関心。
今回は徹底したリサーチで個性的なブランドを次々と発掘している、「CARV STORE(カーブ ストア)」の内田アミさんにお話を伺った。
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@ami__uchida
目指しているのはアートギャラリーのような空間
—「CARV STORE」は2023年10月にオープンした新しいショップですが、コンセプトなどを教えてもらいますか。
内田:「CARV STORE」というショップ名は曲げる、歪む、ひねるといった曲線を意味していて、「フリーハンドで描いた曲線は唯一無二の美しさ」というテーマで店内の装飾や什器はすべてがオリジナルです。洋服がメインではありますがアートギャラリーのような空間を目指しています。
—「CARV STORE」は国内ではあまり取り扱われていないブランドが多いことでも有名ですが、「唯一無二の美しさ」というのはアイテムラインナップにも通じますね。
内田:それはあるかもしれませんね。アジアからヨーロッパまで約20ブランドを展開していますが、シーズンによってアイテムが大きく切り替わることもありますし、国内で取り扱いがあまり見られない<ANNAKIKI(アンナキキ)>のアイテムや、<KIMHEKIM(キムへキム)>のショーピースのような希少品もご縁がって買い付けているので、買い逃すと二度と出逢えないということもあります。
— 内田さんはどのような経緯でバイヤーとして「CARV STORE」に携わることになったのでしょうか。
内田:前職は美容業界にいて、過去には古着屋でバイヤーをしていたこともあったのですが、私としては「CARV STORE」がバイヤーとしてのキャリアのスタートだと思っています。ご縁があって「CARV STORE」のバイヤーを任せてもらえることになったのですが、お話をいただいた時点では素人同然。それでもオーナーは「バイヤーとはこういう仕事」という固定概念のない素人の私が持つ感性や発想をおもしろがってくれたんだと思います。
— 個性的なブランドを揃えるというのはオーナーの意向ですか、それとも内田さん自身も未知なるブランドに惹かれるタイプですか。
内田:「CARV STORE」をオープンさせるときに他店では置いていないようなブランドを揃えたいというのがオーナーの意見でしたし、私もプライベートでも常にSNSで新しいブランドを探すのが好きなので、そこはオーナーも私も目指すショップ像としては同じでした。私がプライベートで着るために見つけた新しいブランドをお客さんにも紹介したいと「CARV STORE」で買い付けたこともあって、ブランドリサーチという個人的な趣味がバイイングに活かされることもありますね。
— あまり知られていないから優先して買い付けるというわけでもないですよね。
内田:もちろん知名度の有無だけでブランドを選んでいるわけではありません。洋服や雑貨も「CARV STORE」のコンセプトであるアートの要素を感じるかどうかが重要です。世の中からあまり知られていなかったブランドが、「CARV STORE」で取り扱われることで結果的に有名になってくれたらそれはとてもうれしく思います。
尖っているアジアブランドに新たな魅力を感じる
— お店について「アートギャラリーのような空間」と表現されましたが、洋服だけでなく靴、バッグ、アクセサリーなど、どれも造形美を感じるようなラインナップですよね。
内田:「ラインナップは多彩だけれど他では取り扱っていない」というのはお店の強みのひとつだと思っています。「これがCARV STOREの世界観です」というのはアイテムやディスプレイから発信しているつもりです。
— そんな世界観に惹かれて訪れるお客さんはどのようなファッション感の方が多いですか。
内田:ファッション感度が高いお客さんが多いような気がしています。ガラス面で店内が見やすいので通りがかりで覗いてくれる方もいて、「営業している日が少ないですね」なんて言われたり(笑)。「SNSでCARV STOREが気になって来ました」という声も増えていて、そんなお客さまからも「知らないブランドだらけです」と言われることが多いです。個性的なファッションを楽しんでいる方も多いので、お客さんから新しいブランドについて学ぶこともあります。デイリーな服もあるのですが、最近はドレスアップのための服を探しに訪れるお客さんもいて、やっぱり特別な日の服は「CARV STORE」と思っていただけるようになりたいです。最近はギフト探しの男性もいらっしゃいますね。
— 内田さんがバイヤーとして惹かれるのはどんなブランドでしょうか。
内田:私が可愛いと感じるのは中国などのアジアのブランドが多いです。現在もショップで取り扱っている中国人デザイナーの<AQUA LIXUN SU(アクア リースン スー)>や<Untitlab(アンタイトル)>、韓国人デザイナーの<KIMHEKIM(キムヘキム)>や<LEJE(レジェ)>などのブランドがあります。特に上海のブランドは尖っていると感じますね。ヨーロッパとはまた異なるアジア特有のシルエットや素材感に新鮮さを感じます。
— コペンハーゲンのファッションウィークに行かれたそうですが、新たな発見やショップに持ち帰りたいアイデアなどはありましたか。
内田:うちでも取り扱っている<HELMSTEDT(ヘルムシュテット)>や<Opera SPORT(オペラ スポーツ)>の展示会とショーに伺うことができて、実際に肌で空気感を感じれたことは大きな収穫でした。また、街全体がカラフルで、コペンハーゲンにいる人たちはモードというよりもファッションを明るく楽しんでいる方が多いなという印象で。特にレイヤードやカラーリングがすごく上手な、おしゃれなメンズが多かったことに驚きました。メンズのおしゃれさには本当に驚いたので、「CARV STORE」でも今後はメンズの取り扱いも考えています。
— ファッションウィークは世界中で開催されていますがどの国に興味がありますか。
内田:アジアブランドに注目していることもあって、上海のファッションウィークには足を運びたいとずっと思っています。昨年は韓国のファッションウィークを観たのですが、アジア人らしい着こなしからたくさん刺激をもらいました。前職が美容関係だったこともあって、洋服と髪型の相性などもついチェックしちゃいますね。
—「CARV STORE」の店頭に立たれるときもトータルコーディネートをおすすめすることが多いですか。
内田:服だけでなく、靴からバッグ、アクセサリーまでトータルで提案しています。最近はお客さんの好みを聞いて「CARV STORE」に取り扱いがないブランドの話などもしますし、そういった話から私自身も日々勉強しています。また、買ってもらうことを目的として買い付けているのではなくて、ファッションを楽しんでもら得たらという気持ちでバイイングしています。
新しい発見に繋がるリサーチを常に楽しんでいる
— バイヤーとして大切にしていることはなんでしょうか。心構えのようなことはありますか。
内田:常にリサーチを怠らないことですね。新しいものに触れ続けること、ファッションウィークも積極的に観ること、それらもすべて重要なインプットだと思います。それを全く義務とも作業だとも思わないですし、むしろ私は楽しんでます。それこそ眠りにつく直前までSNSをチェックしているような生活です(笑)。「CARV STORE」はギャラリーという発想なので、オーナーも私の新しい発見を採用してくれることが多いです。
—「CARV STORE」がこれからどういうショップになっていくのが理想ですか。
内田:私自身もわざわざ足を運びたくなるセレクトショップが好きなので、「CARV STORE」はもっともっとおもしろくできると思っています。商品のディスプレイや店内装飾など、先週来ていても、今週もまた新しさを感じるような工夫しています。
—「CARV STORE」は個人的にInstagramにも惹かれていて、服を見せることだけに注力していないような写真の全体的な構図に可愛さやおもしろさを感じます。
内田:「こんな風に撮ったらおもしろいんじゃないか、新しいのではないか」とチームでいつも話し合っています。世界観を伝えるというのは店頭だけでなくInstagramの投稿でも狙っているところで、「どこかにあるあのお店みたい」となることだけは絶対に避けたいです。なので、私たちの想いが届いているんだとしたらとてもうれしいです。ありがとうございます。
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内田アミがリコメンドする3ブランド
<galbe(ガルブ)>
「CARV STOREと同じく2023年10月にローンチした日本のジュエリーブランドで、ショップオープンから取り扱いをしています。シルバー、真鍮、淡水パールとありますが大ぶりのものが人気で、デコルテが空いたトップスと合わせるのがおすすめです。タートルネックでもバランス良くまとまります。」
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<CHRISTIANA HADJIPAPA(クリスティアーナ ハジパパ)>
「国内ではCARV STOREでしか取り扱いのない英国ブランドです。レイヤードに特化していて、カラーリングやシルエットのユニークさに惹かれて取り扱いを決めました。レオタードはボディとスリーブがセパレートになっているので着回しが楽しめますし、フレアシルエットのデニムパンツはヴィンテージの雰囲気が魅力です。」
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@christiana.hadjipapa
<untitlab®(アンタイトル)>
「ポーチ付きのブーツがアイコンの中国のフットウェアブランドです。特に、CARV STOREで売り切れ続出なのがヒールスニーカーで、ドレスの外しとしてもおすすめです。ブーツは<CHRISTIABA HADJIPAPA>のフレアデニムにぜひ合わせてもらえたら。このブランドはSNSで見つけたのですが、とにかく商品の見せ方、モデルさんとの絡ませ方が抜群に上手なブランドでした。」
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CARV STORE
2023年10月に代官山にオープンした「CARV STORE」はショップ名通り、「まげる」「ゆがむ」「ひねる」などの曲線の要素を散らばせたアートギャラリーのようなコンセプト空間が特徴。アイデンティティを活かした多様性のファッションを叶えるセレクトショップだ。
〒150-0033
東京都渋谷区猿楽町10-8
土・日・月 12:00-19:00
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- Photograph : Kaito Chiba
- Text : Akinori Mukaino
- Edit : Miwa Sato(QUI)