「風」を利用して服に命を吹き込んだ ANREALAGE | 2025年春夏パリコレクション
ショーレポート
テクノロジーとファッションの融合により、ファッションの未来を提示する<ANREALAGE>。前シーズンのドラえもんとコラボレーションしたショーでは、タケコプターを装着した球体が浮かぶといった演出など、コレクションを発表する度にファッションに対する驚きと新たな視点を提示してくれる。
10周年を迎えた 2025SS COLLECTION は、“WIND”をテーマに発表。
目に見えない風の力を可視化することで、非日常のシルエットと日常のシルエットを行き来する。
実際のショーでは、モデルが風に揺られているように歩きながら、途中で電動ファンが回り洋服が膨らみ始める。
ANREALAGE SPRING/SUMMER 2025 COLLECTION “WIND”
また、サウンドプロデューサーには、XGALX Executive ProducerのJAKOPS (SIMON JUNHO PARK)が参加。ランウェイのモデルとしては、Snow Manのラウールもモデルを務めるなど10周年にふさわしい豪華なスタッフ・キャストが脇を固める。
近年の夏の猛暑への解決手段としての提案でもある、ファン付きウェアは、実際に20年間販売を続ける「空調服®」とのコラボレーションによって、機能性とファッション性の融合が実現された。
風が送り込まれる仕組みは、スマートフォンのアプリと空調服®を接続し、リモートコントロールによって電動ファンが動き出すというもの。
現場仕事の洋服としては、電動ファン付きウェアは一般的になりつつあるが、もしかしたら現場以外でも電動ファン付きウェアがマジョリティーになることの予感を、コンセプチュアルに描きつつ、未来を提示する<ANREALAGE>らしいコレクションであった。
デザイナー 森永邦彦
ショーを終えて感想を聞かせてください。
今回はショーの最中にリモートコントロールで、服についた電動ファンを起動させ、外界の風を服の中に送り込み、服の造形を拡張させて新しいフォルムをつくるという内容でした。
リモートコントロールが成功するか否かショー直前まで不安があったが、本番はしっかり成功してほっとしましたね。
今回のショーのコンセプト、考え方は?
今回のコレクションのコンセプトは「WIND(風)」。風を利用して服に命を吹き込み、目に見えない風の力を可視化し、新たなシルエットを作り出すというテーマに挑戦しました。全ての衣服は、風に形作られながらも防風機能を持ち、ファン付きウェアの先駆者である「空調服®」とのコラボレーションによりデザインされました。
素材は特別に開発された髪の毛の約3分の1の太さの糸で織られた気密性のある生地で、世界で薄いナイロンテキスタイル(1平方メートルあたりわずか23グラム)を使用しています。
スマートフォンのアプリと衣服は繋がっており、リモートコントロールをすることで、衣服に内蔵された小さなファンが風を生成し、ドレスが非現実的なプロポーションに膨らむ。風船のようなシルエットが出現し、旗のように風によってつくられる形が生まれ、翼やバブルのようなボリュームが現れる。
それは昆虫のようでもあり、未知の生物のようでもあると思ったんです。
<ANREALAGE>は未来を提示するブランドだと思いますが、今回のショーで示した未来とは?
空調服は地球温暖化という社会課題に対する一つの解決手段です。地球上の新たな課題に適応するためのテクノロジーを、ファッションにおける自由さ・遊び心と融合させて、ポジティブな未来を描き出したいと考えています。現実世界と非現実世界が、風という目に見えない、予測不能な力によって結びつく未来に期待します。
また、テキスタイルのプリントは京セラが開発した水を極力使わないサステナブルなインクジェットプリンターFOREARTHを使用しました。風と水は、未來の地球環境にとって切っても切り離せないものだと考えています。
パリに進出して10周年。やってみて思うこと、これからの<ANREALAGE>の決意を教えてください。
継続は力。ファッションにおける正義ではなく、<ANREALAGE>における正義を貫きたい。
サウンドサウンドプロデューサー JAKOPS (SIMON JUNHO PARK)
今回参加する事になった経緯は?
各国のコレクションやビヨンセさんの衣装デザインなどを通じて、以前から森永さんや<ANREALAGE>のことを知っていて、興味を持たせていただいていました。
そのような中で今回オファーをいただき、大変光栄に思うと共に素敵なショーにすべく、楽曲を制作させていただきました。
自身が作られる音楽をどう<ANREALAGE>に落とし込んだのか?
この曲は<ANREALAGE>の今回の衣装コンセプトである「風」に焦点を当てて作業しました。
風の軽さ、浮遊感を伝えるために空中に浮いているような感じを与えるステレオなシンセサイザーをメインソースとして使用し、ブランドのコンセプトと一致するサウンドを作り出し、観客がショーにさらに没頭できるようにしました。 幻想的なアンビエンスサウンドと緊張感を与えるシンセサウンド、Creatureサウンドを通じて自然が与える神秘的で雄大な印象を作り出しました。
アフロハウスのリズムを使って幻想的でありながら安らかな感じを生かし、モデルたちのウォーキングの邪魔にならないように過度でないグルーヴを作り出しました。
曲の後半に進むほど、アルペジオシンセサイザーとドラムリズムを追加して雰囲気を高めながらショーのクライマックスに向かえるように編曲し、ショーが終わる瞬間まで観客を集中させる曲になっています。
タイトルの“Aventure”はフランス語で“冒険”という意味です。 自然の中を冒険する感じと似合って語感が良い単語なのでタイトルに決めました。
- interview : Tetsu Charles Kawamoto
- text & edit : Yusuke Soejima