セレクトショップの次なる視線 | Esmeralda Serviced Department 金山木子
トレンドをとらえたブランド、趣味や嗜好性が表れた服、目利きがキャッチした 新世代のデザイナーなど、コンセプトが明確なショップであるほど、 ファッションに対する美意識は店内の品揃えからも一目瞭然だ。そんなショップを訪れるファッションフリークが気にしているのは、 常に新しい刺激を提案してくれるオーナーやバイヤーの次なる動向や関心。
今回は国内だけでなく韓国でも知名度が高まっているという「Esmeralda Serviced Department(エスメラルダ サービスド デパートメント)」の金山木子さんにお話を伺った。
1990年東京生まれ。ウェブメディアでの編集・
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お客さんとフィジカルに接する場が作りたくなった
— 現在は代々木公園駅近くに店舗を構えていますが、スタートはオンラインストアだったんですよね。
金山:セレクトショップをやりたいという思いが先にあったわけではないんです。ショップを一緒に立ち上げたのがフォトグラファー(@liveinsuburbia)なのですが、彼の活動の場を作りたいと考えたのが「Esmeralda Serviced Department」でした。私は元々ファッションが好きでしたし、古着を買い付けている友人がいたので仕入れのルートもあったことからオンラインでのセレクトショップを思いつきました。ECの場合はルックもアイテムもビジュアルのクオリティが重要なので、フォトグラファーとしての腕を発揮するのにオンラインストアが最適だと思ったんです。
— それからリアルでも出店しようと思った理由はなんだったのでしょうか。
金山:こちらの連載にも登場されていましたが藤田さんが新宿でやられている「THE FOUR-EYED(ザ フォーアイド)」でポップアップを何度か開催させてもらいました。そこでお客さんと直接会って話したり、接客することの重要性を感じたんです。それでこの富ヶ谷の地にショップを2022年にオープンさせました。
— 実際にオープンさせてみて、その「重要性」というのをどのように感じていますか。
金山:「Esmeralda Serviced Department」では定期的にイベントなども開催しているので交流の場のようなものを作れているのかなと思っています。うちはお客さんの6割ぐらいが韓国などの海外の方で、旅行の目的地のように訪れてもらえているのもリアルなショップならではだと感じています。なによりもお客さんと対面で接することを私自身が楽しんでいます。
— 海外の方がそんなに多くいらっしゃるんですね。
金山:うちで取り扱っているブランドやアイテムは韓国の方と相性がいいようで、有名なインフルエンサーさんが何人も訪れてくれています。もしかしたらショップとしての知名度は日本よりも韓国の方が高いかもしれないです。
意識しているのは「メインストリームすぎないこと」
— セレクトショップありきではなかったようですが、ファッションに関わる仕事をやりたいという思いはあったのでしょうか。
金山:昔からファッション誌が好きだったこともあって、前職はWebのファッションメディアでライター、エディターをしていました。ファッションに関わりたいとは思っていましたが現在のようにバイヤーやショップのオーナーになるなんて全く考えたこともなかったです。
— それでも立ち上げるのなら「こんなセレクトショップにしていきたい」という思いはありましたか。
金山:やはり自分が好きだと思えるブランドやアイテムじゃないとお客さんに対して自信を持っておすすめする、責任を持って販売することはできないですよね。それは「Esmeralda Serviced Department」だけでなく、セレクトショップをやられている方なら思いとして共通するはずです。
— 金山さんが惹かれるのはどんなブランドやアイテムでしょうか。
金山:店内のラインナップを見ていただけるとなんとなくわかっていただけるとは思いますが、尖っていたり、奇抜なデザインを買い付けることはないですね。シンプルでメインストリームすぎないような絶妙なバランス感があるような服に私は惹かれます。ものすごく感覚的な表現ですが、言葉にするのは難しいです(笑)。
— 金山さんのバイイングの視点はすごくフラットに感じるのですが、情報と客観的に関わるライター兼エディターの経験が活かされているのかもしれないですね。
金山:セレクトショップはオーナーやバイヤーの「これが好き」が集まって世界観が生み出されるので、そういう意味ではエディトリアルですよね。バイイングと編集は作業としては近しいものはあるので、意識したことはないですが前職の経験が活きているかもしれないです。
— 新しいブランドなどはどうやって探しているのでしょうか。
金山:9割がSNSですね。
— ブランドのリサーチはSNSが主流になっていますが、目に留まったらデザイナーにも会いに行くというバイヤーもいます。金山さんはどうですか。
金山:私も「この服を作っているのはどんな人なのか」という人柄や人間性のようなものを重要視しているので、ブランドが気になったときはクリエイターと会うのが理想ですし、可能な限り会うようにしています。それでも全員となると難しいのが現実なのでオンラインでのやり取りはかなり頻繁に行います。そこでレスポンスや対応が誠実であれば信頼できるので、デザイナーと会わずに買い付けたから失敗したということは今のところないですね。
— ショップを訪れるお客さんの印象は?
金山:国内では「Esmeralda Serviced Department」でしか取り扱っていない小規模のブランドも多いのですが、「メインストリームすぎない」という提案を楽しんでくれるようなおしゃれな方が多いと思います。ブランドの知名度やアイテムとしてのトレンドなどに関係なく、「自分の好き」を選べるという印象です。それは接客時に会話をしていても感じます。
— シンプルなアイテムやデザインでも着こなしによって個性を演出できるような方ですか。
金山:まさにそうです!お客さんのスタイリングから学ぶことはすごく多いですね。ブランドについてのプロフィールなどを説明することはありますが、着こなしについてはお客さんの方が上手なのでこちらからアドバイスなどをすることは少ないです。
— 洋服だけでなくアクセサリーや雑貨も豊富ですね。
金山:最初は洋服だけだったのですが、年齢や性別に関係なく手に取りやすいアイテムを増やしたいと思った結果が雑貨のラインナップなんです。雑貨を置くようになってから新しいお客さんも増えました。
他のショップに詳しくないからこそのオリジナリティ
— 目指しているセレクトショップ像のようなものはありますか。
金山:10代の頃からファッションは好きでしたが、私はセレクトショップに頻繁に通うようなタイプではありませんでした。セレクトショップにも詳しくないので「Esmeralda Serviced Department」として参考にしているお店があるわけではありません。
— 他店について詳しくないことが「Esmeralda Serviced Department」のオリジナリティにつながることもありますよね。
金山:それはあるかもしれないです。セレクトショップに関しては無知で素人すぎるゆえに怖いものなしなのだと思います。なんでも手に入る東京でショップをやる以上はどこでも買えるようなものばかりを取り扱うのは意味がないというところは意識しています。
— 無知で素人といっても「Esmeralda Serviced Department」はファッションフリークが訪れるショップになっています。
金山:指標としているものも特にないので、最初の頃はショップとしてうまくいっているのかどうかも自分たちではよくわかっていないところもありました。それでも2年目を迎えることができたので「世の中が求めるセレクトショップになれているのかも」と少しずつですが感じるようにはなっています。正解に近づけているのかはわからないですが(笑)。
— 多少の不安はあったとしても楽しんでいますよね。
金山:楽しんでますね(笑)。気になるブランドもまだまだあるので時代によってはラインナップも変わっていくかもしれませんが、「Esmeralda Serviced Department」らしさというのは変わらないのではないですかね。自分ではそう思っています。
金山木子がリコメンドする3ブランド
<AZUR(アズール)>
「フランスのブランドで店舗をオープンしたときから取り扱っています。植物性染料によるシルクのアイテムはマルセイユの工房で全て手染めをしています。プリーツ加工もデザイナーらが自ら行っています。シュシュやクリップ、キャミソールなどがありアイテムは大きく変わらないのですがシーズン毎にテーマカラーがあり、色による表情の変化が楽しめます。」
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@azur.world
<CAMISAS MANOLO(カミサス マノロ)>
「スペインのシャツブランドです。デッドストックの生地を使ったレトロ感のある柄や少し襟が大きかったりするアンバランスなパターンに惹かれました。サイズ感としてはメンズ仕様かもしれませんが「Esmeralda Serviced Department」では購入される方の約半数が女性です。シャツ一枚でもスタイリングが決まるので、シンプルにパンツと合わせるのがおすすめです。」
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@camisasmanolo
<well(ウェル)>
「ブランドというよりはデザインチームで、東京を拠点に服だけでなく書籍やアートなどクリエイティブな活動を幅広く行っています。シンプルでベーシックなようでもアシンメトリーだったり、ひとつひとつのアイテムはすごく凝っています。フレンチのようでアメカジっぽさもあって、まさに絶妙なんです。東京で取り扱っているのは「Esmeralda Serviced Department」だけのはずです。」
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フォトグラファーや編集者らによって2017年にオンラインショ
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- Photograph : Kaito Chiba
- Text : Akinori Mukaino
- Edit : Miwa Sato(QUI)