6月5日は、世界環境デー – みんな地球の危機を意外と知らない –
今日は、私たちが地球上で生きる責任を再確認し、環境保護に向けて何ができるか考える日でもあります。近年、サスティナブルな選択をすることが世界的に奨励されていますが、そもそもなぜサスティナブルなアクションが必要なのか、今地球で何が起こっているか、温室効果ガスとは何か、気候変動とは何かを、理解している人は意外と多くないかもしれません。今日は、私たちの地球のこと、その危機を改めてお知らせします。
「気候変動」人類が地球にもたらす危険
「気候変動」という言葉を耳にしたことがありますか?
日本では「地球温暖化」という言葉がよく使われていますが、世界基準で見ると、地球温暖化ではなく、「気候変動(Climate Change)」という言葉が主に使われています。
気候変動には気候の温暖化だけでなく、それによって起こる、干ばつや水不足、氷の融解、海面上昇、洪水 、壊滅的な暴風雨、大規模火災、生物多様性の減少、なども含まれます。
そう今、地球はゆっくりと危険な状態に陥っているのです。
止まらない気温上昇と地球のタイムリミット
地球の気温は、文明が急速に発展したこの100年間で1.1℃も上昇していることをご存じですか。
通常ならこれほどの温度変化は数千年かけて起きるものです。
このままでは人類はもちろん、他の生物も住めなくなるほどの暑さによる環境被害が地球を襲います。地球崩壊のタイムリミットが刻一刻と迫ってきているのです。
なぜ今、これほどまでに気候の温暖化が進んでいるのか。そのカギは、温室効果ガスにあります。
地球を暖める「温室効果ガス」
温室効果ガスとは、地球の大気中で太陽からの熱を吸収する性質を持つガスのこと。
主なガスに二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、一酸化窒素(N2O)などがあります。
二酸化炭素は化石燃料の燃焼や森林伐採によって排出され、メタンは家畜のげっぷやごみの分解、一酸化窒素は農業や工業活動によって放出されます。
温室効果ガス自体は地球にとって必要不可欠なもので、温室効果ガスのおかげで、地球は生きものが暮らしやすい温度が保たれており、もしガスが存在しないと、地球の表面温度はマイナス19℃まで下がると言われています。
問題は、このガスが増えすぎていること。
そして、過剰な温室効果ガスを排出し続けているのは私たち人類です。
地球の海面はゆっくりと上昇している
地球は今、「海面上昇」の危機に瀕しています。過去150年間で海面が23㎝上昇したとされ、現在でも毎年0.3㎝ずつ上昇を続けています。米海洋大気局によると、海面上昇は加速しており、2050年には25~30cmもの上昇が予測されています。このまま対策をせずにいると、安全に住める陸地が減り、水没する国が出てくるということです。
すでに沈み始めている国もあり、そこでは住まいをなくした「環境難民」が増え続けています。
海面上昇にも温室効果ガスによる温暖化が関わっています。
これには二つの要因があり、海水が温められることで膨張し、海の水位が上がること、そして、南極などの氷が溶けていることも深刻な要因です。もしこのまま地球上のすべての氷が解けると、海面は66m以上も上昇するとされています。
海に沈みゆく美しき国 モルディブ
インドの南西に位置するモルディブは、サンゴでできた1000を超える美しき島々から成る国です。低く平たんな島々が海面からわずかにのぞき出ており、この国の人々は2500年前から、海を愛し、海とともに生きる独自のアイデンティティを築いてきました。
今では、自然豊かな美しいビーチリゾートとしても知られるモルディブですが、現在、海面上昇による脅威に直面しています。特に首都であるマレ島を含むほとんどの島々は海抜わずか1メートル強しかなく、気候科学者たちは今世紀末までにこれらの島々が水没してしまう可能性が高いと予測しています。
モルディブの首相は世界に向けてこのように演説しています。
「モルディブは気候変動で地図から消えるかもしれないとよく言われるが、その現実を実感している。島は少しずつ海に飲み込まれている。その運命はほかの国々が待ち受ける厳しい未来の暗い兆しとなるだろう。これが気候変動に先手をうつ最後のチャンスになるかもしれない。どうかこの機会をむだにしないでほしい」
地球を守る 1.5℃の目標
2021年の世界各国が集まるCOP26では「1.5℃にとどめる努力を追求」することに世界の国・地域が合意しました。
1.5℃に抑えると、2℃上昇する場合と比べて極端な豪雨や熱波が少なくなり、2100年までの海面上昇は約10cm低くなると言われます。
この目標を達成するには、2030年の時点で2012年比46%の温室効果ガスの削減が必要です。このまま対策を行わないと、2℃以上、3℃程度上昇する、という研究も存在します。
絶滅の危機にある動物たち
ホッキョクグマを襲う「海氷の縮小」
気候変動により、北極の海氷が縮小していることから、このまま気候変動対策を取らなければ、21世紀末にはホッキョクグマがこの世界から絶滅する可能性があると、研究者たちは警告しています。また、頂点捕食者がいなくなることで、北極の生態系が崩れます。アザラシが増えすぎて魚が減るなどし、先住民のイヌイットたちの生活が成り立たなくなる恐れがあるのです。
「大規模火災」奪うコアラの命
そしてあの愛くるしいコアラも、実は絶滅の危機に瀕しています。
気候変動で起こる「干ばつ」と「大規模火災」の影響で、2022年にコアラは絶滅危惧種に選定されました。
記憶に新しい2019年のオーストラリア森林火災では、半年以上もの間森林火災が続き、8000頭のコアラを含む、4億8000万もの生きものの命が奪われました。
この大火災の主な原因も気候変動によるものです。
雨の量が観測史上最も少なく乾燥した記録的な干ばつと、記録的な猛暑、熱波、強風が重なったため、あのような大惨事が起こりました。いわば人災なのです。
オーストラリア森林火災で、女性が炎の中からコアラを救う動画が世界中に拡散され、その悲惨さに世界中が衝撃を受けました。
私たち人間には、このような悲しい出来事を起こさない努力が必要なのです。
温かい海でウミガメはメスだらけ
ウミガメの性別は、産み落とされた卵の周囲にある砂や海水の温度で決まります。
そのためウミガメは1年の間で、オスとメスの比率が均等になるシーズンに産卵するように長年進化してきました。
卵の周囲の温度が上がるとメスが増えるため、気候の温暖化や海水温の上昇から、ウミガメのメス化が専門家の間で懸念されてきましたが、予想の遥か上を行く衝撃の調査結果が発表されました。
オーストラリアにある世界有数のサンゴ礁、グレートバリアリーフのウミガメは、少なくとも116対1の比率でメスだということが分かったのです。この結果に、世界中の研究者は愕然としました。
ウミガメの他に、ワニやイグアナ、一部の魚も気温や水温で性別が決まるため、これらの生きものへの影響も懸念されています。
日本でこれから起こること
このままだと日本では、およそ100年間に気温が4.5度も上昇すると予測されています。
このような気候変動の影響により、近年、台風や大雨などの水害の被害額も増加し続けています。さらに、将来的にはこの傾向がより加速すると言われています。
具体的には、1日に200ミリ以上の大雨の日が1.5倍以上に増え、洪水のリスクも倍増し、土砂災害の発生頻度と規模も増加すると予測されているのです。
熱中症と未知の伝染病
最近では、熱中症による死亡者数が増加している傾向にありますが、将来的にはこのような高温の影響による死亡リスクが2倍以上に増加すると予測されています。
特に東京や大阪などの都市では、屋外で作業できる時間が30~40%も減少するとも言われ、気軽に外に出られない世界が、もうそこまで来ています。
気温が上がることによって、蚊も増えます。かつて夏の風物詩だった蚊も、現代では5月~10月という長い間目にするようになりました。蚊が増えると、熱帯の伝染病を媒介する恐れも懸念されています。
そしてサスティナブルな地球へ
サスティナブルとは
サステナブル(Sustainable)とは、英語でsustain(持続する)とable(〜できる)からなる言葉です。「持続可能な」「ずっと続けていくことができる」という意味があります。
現在、環境を考える上でも、世界の共通の目標とされているのが「サステナブル(Sustainable)な社会」の実現です。
まずは節電とエネルギーの選択
サスティナブルな社会のために、電気や暖房の使用を減らし、省エネ家電を利用を心掛けましょう。可能であれば、太陽光や風力などの再生可能エネルギー源に切り替えて、クリーンなエネルギーを選択しましょう。
そしてストーリーに想いを馳せる
食べ物や洋服を選ぶときには、そのストーリーに目を向けましょう。
今、手に取ろうとしている食品や服が、ここに来るまでにどのような道をたどってきたかに想いを馳せるのです。
オーガニックな食品やコットンを選ぶことは、体にいいこと以上に、化学薬品で土壌や水を汚染していないという、「環境への負荷を最低限に抑えて」いることでもあります。
その服は何によって染められ、ファスナーやボタンはどこで作られ、どのように運ばれたのか。物を運ぶことでも、莫大な温室効果ガスが排出されます。
外国で大量に作られるファストファッションは、何を犠牲にしているのか。
食品も服も、国産・地産地消を心掛けることはそれだけで環境への負荷を抑えることができます。
服をワードローブに加えるときも、今一度自分に問いかけてみます。
この服は本当に必要か、どのくらい着られるか、自分が着なくなったら、廃棄するのではなく、誰かに譲ったり土に返すことができるかを。
地球のための選択を
猛暑に襲われたヨーロッパで、たくさんの方が亡くなったことなどで、気候の変化を肌で感じたことをきっかけに、欧米では気候変動に対する関心が高まっています。
日本は太古から台風や水害、地震などの「自然災害」にさらされていることから、世界の気候変動に気付きにくい環境です。日本人のそういったおおらかさ、ある種の鈍感さによって私たちはこの島国で生き抜いてくることができたのかもしれません。
でも今は、世界に目を向けてみましょう。
モルディブやツバルなど、今まさに海に沈みゆく国にとって、気候変動は「静かなテロ行為」だと言われています。行動を起こすこと、自ら地球のために選択することを、ぜひ考えてみてください。
MV:Christopher Michel, CC BY 2.0 <https://creativecommons.org/licenses/by/2.0>, via Wikimedia Commons
※1:Steve Amstrup, Public domain, via Wikimedia Commons
※2:Thomas Chu (Instagram), CC BY-SA 4.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0>, via Wikimedia Commons
※3:Frédéric Ducarme, CC BY-SA 4.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0>, via Wikimedia Commons
※4:LEFT Dr. Ondřej Havelka (cestovatel), CC BY-SA 4.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0>, via Wikimedia Commons
RIGHT Jonathan Palombo, CC BY 2.0 <https://creativecommons.org/licenses/by/2.0>, via Wikimedia Commons
※5:AWeith, CC BY-SA 4.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0>, via Wikimedia Commons
※6:patrickkavanagh, CC BY 2.0 <https://creativecommons.org/licenses/by/2.0>, via Wikimedia Commons
- Director : Takashi Okuno
- Writer : Kuuki Asano
- Edit : Ryota Tsushima