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4月24日は、日本ダービー記念日 – なぜ人々は競馬に魅せられるのか

Apr 23, 2023
いまからおよそ80年前の今日、はじめての日本ダービーが行われたことから、4月24日は日本ダービー記念日に制定されました。
競馬の歴史は古く、古代ギリシャまで遡ります。世界中で競馬が行われていますが、実は日本が世界一の競馬大国といっても過言ではないことをご存じでしたか?
日本人はなぜ、競馬、ないしはギャンブルに魅せられるのか。今日は、日本ダービーから競馬の魅力を紐解いていきます。

4月24日は、日本ダービー記念日 – なぜ人々は競馬に魅せられるのか

Apr 23, 2023 - LIFE/STYLE
いまからおよそ80年前の今日、はじめての日本ダービーが行われたことから、4月24日は日本ダービー記念日に制定されました。
競馬の歴史は古く、古代ギリシャまで遡ります。世界中で競馬が行われていますが、実は日本が世界一の競馬大国といっても過言ではないことをご存じでしたか?
日本人はなぜ、競馬、ないしはギャンブルに魅せられるのか。今日は、日本ダービーから競馬の魅力を紐解いていきます。

馬たちの青春・日本ダービー

汗と涙の結晶・馬の甲子園『日本ダービー』

(※1)

日本ダービーは、「皐月賞」「菊花賞」とあわせて「三冠競走」と言われているレースです。

日本ダービーは“競馬の祭典”とも呼ばれ、ここで勝つことは、日本の馬に関わる全てのホースマンが憧れる最高の栄誉とされています。

 

なぜそこまで、人々が日本ダービーに懸けるのか。それは、日本ダービーが「馬の人生の中で一度しか出られないレース」だからです。

日本ダービー、皐月賞、菊花賞に出られるのは、3歳の牡馬・牝馬だけ。馬の寿命は平均25年という中で、若い馬が青春を懸けて走り、その世代の頂点を決める姿に人々は魅了されるのです。

 

8000頭、毎年日本ではこれだけの馬が競走馬として生み出されます。
そこから中央競馬へデビューできる馬は半分の4000頭。
そんな馬の中で、日本ダービーのレースに出られる馬は、最大で18頭です。
まさに、馬の夏の甲子園。日本ダービーはホースマンたちのあこがれの場所です。

「東京優駿」優れた馬たちの賞レース

そもそも「ダービー」とは、1780年にイギリスで同レースを創設した、第12代ダービー卿エドワード・スミス・スタンレー氏の名前にちなんだもの。現在も世界中で3歳馬、2400メートルのレースとして行われています。

ちなみに日本ダービーの正式名称は「東京優駿」。「優駿」とは、特に優れた競走馬を指す言葉です。日本ダービーは副称ですが、こちらの呼び方がより親しまれています。

1932年に目黒競馬場で、最初に行われ、その2年後に府中の東京競馬場に会場を移して以来、およそ80年間も続く伝統あるレースなのです。

ダービーの主役・サラブレッド、その研ぎ澄まされた血統

(※2)

徹底的に品種改良された美しき馬

競馬の主役は美しきサラブレットたち。サラブレッドとは馬の品種のひとつです。

イギリスで長い間をかけて競走馬として作り出されたもので、サラブレッドには「純血」という意味があり、「徹底的に(THROUGH)品種改良された(BRED)」ということを表します。

競走馬としての大まかな定義としては「連続8代にわたりサラブレッドが交配された馬」と決められている。

もともと馬の品種を表す言葉ですが、最近は一般用語としても使われており、家柄がいい、育ちがいい、特定の遺伝的性質を受け継いでいることを、サラブレッドということがあります。

わずか3頭からはじまったサラブレッドの系譜

じつは、現代の世界中で走っているサラブレッドは父系の血統をたどっていくと、すべてたった3頭の馬に結び付くといいます。この3頭の馬は、サラブレッドの三大始祖と呼ばれ、

馬名はバイアリーターク(1680年生)、ゴドルフィンアラビアン(推定1724年生)、ダーレーアラビアン(1700年生)です。

左上:バイアリーターク(※3)右上:ゴドルフィンアラビアン(※4)下:ダーレーアラビアン(※5)

中でもバイアリータークの子孫には日本で活躍した名馬が多く、シンボリルドルフ、トウカイテイオー、メジロマックィーンなどの馬に、その血筋が受け継がれています。

血統を超越したヒーロー・オグリキャップという存在

優駿スタリオンステーションで繋養されていた時代のオグリキャップ(※6)

サラブレットが「純血」を意味し、その血統に最も重きが置かれる競走馬の世界。

競走馬は、生まれたときから血統が評価され、その価値が決まってしまう厳しい世界で生きています。

オグリキャップは、父の成績が振るわなかったため、“二流の血統”とされ、デビューした当時は誰からも期待されていませんでした。しかし、馬主の小栗孝一は、貧しい家に生まれ、養子に出された自分自身の人生とオグリキャップを重ね合わせ、馬に愛情を注ぎました。

「環境に負けず、血統という格差を超えて走ってほしい」という願いを込めて、馬に接した結果、オグリキャップは競走馬として大活躍し、競馬ファンから愛される存在となりました。

引退前の最後の有馬記念、それまで連敗していたオグリキャップが、1着に返り咲いたのも、「逆境に負けない」オグリキャップの強さを感じさせる出来事でした。

名馬との友情秘話 伝説のサラブレッド・キーストンと山本騎手

日本ダービーの頂点にたった名馬の中には、現在も語りづがれる伝説を生んだ馬もいます。

山本正司騎手は地方競馬の騎手の父のもと、馬と一緒に育ちました。誰よりも馬が好きで、念願かなって騎手になるも5年間成績は振るわず、いろいろな厩舎を転々としていたといいます。そんなときに出会ったのが、のちに伝説となるキーストン。

競走馬としては見捨てられて、誰からも期待されていなかったキーストンと出会ったときに、山本騎手は何かを感じ、「この馬の持っている力を最大限に引き出して見せる」と信じて愛情を注ぎました。

そしてデビュー戦、圧倒的な強さで圧勝し、その後6連勝。

日本ダービーの有力候補にまで上り詰めます。そしてなんと日本ダービー1着、競走馬の頂点に立ちました。

運命の日は1967年12月17日、阪神競馬場でのレース、5馬身以上も引き離して先頭を走っている最中、山本騎手が落馬、キーストンも足を骨折してしまいます。

山本騎手が脳震盪を起こし、意識を失うなか、皮膚だけでつながった足をひきずって3本足のキーストンが山本騎手の方に歩み寄り、顔を近づけます。その瞬間、山本騎手も意識を取り戻し、つよく抱擁を交わしました。自身の苦痛をおしてパートナーの山本騎手を気遣うキーストンの姿に満員の阪神競馬場はしんと静まり返り、アナウンサーは声を詰まらせたといいます。

骨折したサラブレッドは安楽死となる運命。山本騎手はこれがキーストンとの最後の対面になると感じ、キーストンもそれを察したのか、騎手のそばをはなれようとしませんでした。

このエピソードは、馬と人間との絆を象徴するエピソードとして、今でも競馬ファンの心に残り続けています。

日本人はなぜ競馬に魅了されるのか

日本は世界一の競馬大国

(※7)

日本は実は世界一の競馬大国と言っても過言ではありません。有馬記念では約500億円もの馬券が売れており、これは圧倒的に世界一の金額です。

また、世界のジョッキー賞金ランキングベスト10のうち、8人が日本人であり、ベスト5は日本人が独占。1位を獲得しているのは世界中で名の知れた伝説のジョッキー、武豊騎手です。

武豊騎手 (※8)

圧倒的な馬券の売り上げのおかげで、賞金だけでなく、馬の生産者、馬主、調教師、騎手などの収入も世界一となっています。

日本でなぜここまで競馬が人気を集めるのでしょうか?

日本人を魅了する「運」という魔力

日本人は、世界的に見ても稀なほど多くの宝くじを買うことで知られています。欧米では、宝くじのような運任せのものは、「ギャンブル」と同じような扱いを受けています。

運任せな国民性は、日本人の神頼み思考と自然観に根差していると考えられます。

日本人は、自分で決断するよりも運に任せることが好きで、ブラックジャックなどの自分で考えて判断する必要があるギャンブルよりも、競馬やパチンコなど運の要素が強いものに興味を惹かれます。

「人事を尽くして天命を待つ」という言葉の通り、やることをやったらあとは運任せにする。
自然が神であると考える自然観もあり、自然の力に任せることが良しという風潮があります。

こういった思想は競馬にも反映され、単勝(どの馬が一着か)を当てることがメインの欧米の賭け方に対し、日本では「3連単」というギャンブル性の高い馬券が圧倒的に人気となっています。この馬券は運の要素が非常に高く、配当も高くなるため、日本人のギャンブル好きと運に任せる文化が合わさって、人気を集めているのです。

2022年度のダービー馬ドウデュース(※9)

最も幸運に恵まれた馬が勝つレース「日本ダービー」

競馬の格言に、こんなものがあります。

“皐月賞は最も速い馬”が、“菊花賞は最も強い馬”が、そして“日本ダービーは最も幸運に恵まれた馬”が勝つ。

もしかしたら、「幸運に恵まれた馬が勝つ」というところに、日本ダービーが日本という国を熱狂させる理由があるのかもしれません。

 


MV:江戸村のとくぞう, CC BY-SA 4.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0>, via Wikimedia Commons
※1:nakashi from Chofu, Tokyo, JAPAN, CC BY-SA 2.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/2.0>, via Wikimedia Commons
※2:F. Babbage, Public domain, via Wikimedia Commons
※3:John Wootton, Public domain, via Wikimedia Commons
※4:George Stubbs, Public domain, via Wikimedia Commons
※5:Public domain, via Wikimedia Commons
※6:Hahifuheho, CC0, via Wikimedia Commons
※7:Flickr user kanagen, CC BY 2.0 <https://creativecommons.org/licenses/by/2.0>, via Wikimedia Commons
※8:Nadaraikon, CC BY-SA 3.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0>, via Wikimedia Commons
※9:nakashi from Chofu, Tokyo, JAPAN, CC BY-SA 2.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/2.0>, via Wikimedia Commons

  • Director : Takashi Okuno
  • Writer : Kuuki Asano
  • Edit : Ryota Tsushima

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