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ROLD SKOV を地方から広めた存在、都市と地方の境界を軽やかに越えていく新潟「sister」が導くローカル発モードの現在地

Nov 5, 2025
先日ミラノファッションウィークの公式スケジュールで2026年春夏コレクションを発表し、2025年秋冬からは日本国内での取扱店舗が大幅に増加するなど、ますます注目度が高まっている<ROLD SKOV (ロード スコフ)>。デザイナーのフランチェスコ氏は昨年に続き、今年も来日を果たした。今回は、特に<ROLD SKOV>の熱狂的なファンを抱える新潟のセレクトショップ「sister」とのコラボレーションによるカプセルコレクション「Tyrolean Jacket Capsule Collection」を発表。ローンチを記念して、特別なDJイベントも開催された。なぜこれほどまでにファッション愛好家から支持されるのか、その理由を「sister」オーナー・星氏と<ROLD SKOV>のデザイナー・フランチェスコ氏による対談から徹底的に解剖する。

ROLD SKOV を地方から広めた存在、都市と地方の境界を軽やかに越えていく新潟「sister」が導くローカル発モードの現在地

Nov 5, 2025 - FASHION
先日ミラノファッションウィークの公式スケジュールで2026年春夏コレクションを発表し、2025年秋冬からは日本国内での取扱店舗が大幅に増加するなど、ますます注目度が高まっている<ROLD SKOV (ロード スコフ)>。デザイナーのフランチェスコ氏は昨年に続き、今年も来日を果たした。今回は、特に<ROLD SKOV>の熱狂的なファンを抱える新潟のセレクトショップ「sister」とのコラボレーションによるカプセルコレクション「Tyrolean Jacket Capsule Collection」を発表。ローンチを記念して、特別なDJイベントも開催された。なぜこれほどまでにファッション愛好家から支持されるのか、その理由を「sister」オーナー・星氏と<ROLD SKOV>のデザイナー・フランチェスコ氏による対談から徹底的に解剖する。


新潟駅からほど近く、センスの光るショップが集まる中心市街地・古町エリアにひっそりと佇むセレクトショップ「sister」。縦長の細長い入口から奥へと足を進めると、洗練された空間が広がっていた。ラックにかけられた洋服は静謐な空気を纏い、空間を彩る什器はモダンな佇まいを描く。さらに奥へと進むと、雰囲気は一変。まるで蔵のような建物が、店内の一角に姿を現した。オーナーの星氏いわく、「もともとは、ここからすぐの別の場所でお店をやっていたのですが、取扱ブランドが増えてきてもっと広いところでやりたいという思いから物件を探していたんです。そしたら、蔵と融合したこの建物に出会い、不思議な空間に惹かれて引っ越してきました」

ショッパーは、創業時から16年間変わらず使用している、特注スタンプをひとつひとつ手押ししたオリジナル仕様。

2009年にこの地で店を構えて以来、<LEMAIRE(ルメール)>、<OUR LEGACY(アワー レガシー)>、<AURALEE(オーラリー)>といった錚々たるブランドを揃えつつ、まだ見ぬ新しい才能までも自分たちの審美眼でセレクト。流行よりも“調和”を大切にしながら、一つひとつのブランドを丁寧に選び抜いている。「インポートからドメスティックまで幅広く取り扱っていますが、中でもブランドのアイコニックさやプロダクトに向き合う姿勢はよく見るようにしています。同じエリアで取り扱っていないブランドであることも意識していますね。『sister』に行けば、今まで知らなかったブランドに出会える、そんな特別な場所にしたいと思っています」と店主は語る。

 

 

海外ブランドを積極的に取り入れるようになった背景には、視野の変化がある。「日本国内だけでなく、もっと広い視野で物事を捉えるようになり、まだ見たことのない新しいものを提案できる店にしたいと思うようになりました。新潟には魅力的なセレクトショップがたくさんありますが、当時の県内には海外ブランドを扱うお店がほとんどなかった。だからこそ、このタイミングで挑戦することで差別化が図れると思ったんです」と振り返る。時間の経過とともに、ショップの在り方も変化してきた。「立ち上げてからの数年は規模を大きくすることに注力していましたが、最近はその意識が薄れています。経験を重ねるうちに、身の丈に合わない規模感に足元をすくわれ、本質を見失っていたことに気づいたんです。それよりも、自分が大切にしてきたものの“純度”を高めることに情熱を注ぐようになりました。今は小規模でも特別な存在であり続けるために、どうあるべきかを模索しています。」

店を目指して訪れるお客さまも多く、その年齢層は10代から50代までと幅広い。店主が大切にしているのは、単なる「販売」ではなく、服を通して人と対話を重ねること。来店者の多くは「sister」を信頼し、季節の変わり目ごとに店を訪れるという。そこには、ファッションを“消費”ではなく“文化”として楽しむ姿勢が息づいている。「毎年の周年にはブランドとのコラボレーションアイテムをつくっています。イベントを開いて盛大に祝う年もあるんですが、そうした取り組みも、お客さまやブランドとの関係を深めていく大切な機会だと感じています」近年では、ミラノで注目を集める<ROLD SKOV>をはじめとした海外ブランドをいち早く紹介し、地方からモードの熱を発信。都市と地方の境界を軽やかに越えながら、服の持つ可能性を静かに広げている。「sister」は、地方にありながら世界のデザインを発信する“感性の交差点”なのだ。

sister について

sister
2009年に新潟市でオープンしたセレクトショップ。<LEMAIRE>、<OUR LEGACY>、<AURALEE>など錚々たるブランドラインナップを揃えながら、インポートからドメスティックまで幅広いラインナップを展開している。ブランド選定では、プロダクトへの姿勢や独自性、そして地域内での重複がないことを重視。新潟を拠点に、地方から最新のモードを発信している点が特徴で、海外ブランドの取り扱いにも積極的に取り組む。10代から50代まで幅広い層の顧客が訪れ、トレンドに左右されない確かなセレクトと、丁寧な接客で支持を集めている。

〒951-8063
新潟県新潟市中央区古町通四番町632 Ryuto bldg. 1F

Instagramはこちらから!
@sister_web

邂逅から生まれる美学、「sister」と <ROLD SKOV> の創造の交差点

今回、「sister」の16周年を記念するコラボレーションのパートナーに、<ROLD SKOV>を選んだ理由を教えてください。

星:正式に<ROLD SKOV>の取り扱いを始めてから、今季で9シーズン目を迎えますが、シーズンを重ねるごとにファンが着実に増えており、その年齢層も20代前半から50代までと幅広いことを実感しています。そんな折、昨年フランチェスコ氏が初来日した際に開催したナイトイベントでは、多くのお客様が集まり、その熱量を目の当たりにしました。その瞬間、<ROLD SKOV>とのコラボレーションはきっと喜んでいただける、そう確信しました。

フランチェスコ:僕にとって音楽をかけることは“仕事”ではなく“純粋な喜び”なんです。心地よい空気やポジティブなエネルギーを感じられるときだけプレイするようにしていて、そうした活動が今回のような素晴らしいコラボレーションにつながったことを、本当に嬉しく思います。

星:音楽やDJの経験が、コレクションのデザインに影響することはあるのでしょうか?

フランチェスコ:デザインに直接的な影響はほとんどありませんが、ブランドにとって欠かせないインスピレーション源になっています。それはコミュニケーションの方法にも表れており、音楽を通じて出会った人々や訪れた場所を通して、ブランドの認知が広がっていくことも多いです。

星:そうした関係性によって形成されるオーガニックなネットワークが、ブランドの“本物性”や“信頼”につながっているのだと思います。先日ミラノで行われたプレゼンテーションでも、音楽との密接なつながりを感じました。

フランチェスコ:今の僕にとって、音楽を通してメッセージを届けることはごく自然な表現方法なので大切にしていきたいと思っています。ただ、毎シーズン必ずやると決めているわけではありません。もし将来、別の表現手段が自分にしっくりくると感じたら、そのときは迷わず新しい形に挑戦するつもりです。

コラボレーションアイテムについても教えてください。

星:長年集めてきたヴィンテージのチロリアンジャケットをリワークした、限定16着のスペシャルアイテムです。通常の別注では色や素材を変えることが多いのですが、今回はひとつのテーマのもとに、すべてのジャケットを一点一点異なるデザインで仕上げています。ヴィンテージをベースにしているからこそ実現できた、特別なプロジェクトです。

フランチェスコ:デザインの核となるグラフィックは、ミラノを拠点に活動するアーティスト、ミノ・ルチェナに依頼しました。エアブラシや3Dプリント、レーザーカットなど、多彩な技術を駆使した表現が、ブランドの世界観に新たな情緒をもたらしてくれました。

星:これは一般的なホールセールとリテールの関係ではなく、時間をかけてお互いを理解してきたからこそ生まれたプロジェクトだと思います。フランチェスコがベースの素材選びを僕に任せてくれたことにもリスペクトを感じましたし、僕自身もフランチェスコを信頼しているからこそ、リワークの手法を限定せず、自由にデザインしてもらいました。是非直接手に取って欲しいです!

お二人がファッションにおいて大きく影響を受けたものを教えてください。

フランチェスコ:やはり90年代から2000年代初期にかけて流行した“音楽”です。子どもの頃から自然と耳にしてきたその音楽は、今でも僕の日常に大きな影響を与えています。当時は、音とビジュアルが密接に結びついた世界観にすっかり魅了されていました。今のようにSNSを見れば一瞬でアーティストの着ている服がわかる時代ではなかったので、何かに心惹かれたら、自分で時間をかけて調べ、探すしかなかったんです。結局見つからないことも多かったけれど、そうした過程の中で“リサーチする感覚”を自然と身につけていったように思います。

星:僕は昔は裏原宿カルチャーやマルタン・マルジェラなど、同世代が影響を受けてきたものに強く惹かれました。ですが、最近は日々の生活や旅先、仕事を通じて出会う人々、実際に目にした風景や会話、体験などからインスピレーションを得ることが多くなっています。なかでも特に影響を受けたのが、<AUGUSTE-PRESENTATION(オーギュスト プレゼンテーション)>のデザイナーである大野知哉さんです。ファッションに限らず、多方面にわたって深く影響を受けてきました。現在ブランドは休止していますが、今でも定期的にお会いし、変わらず刺激を与えてくれる師匠のような存在です。

お二人は経営者という立場でもあると思いますが、ブランドやショップを運営する上で大切にしていることは何ですか?

フランチェスコ:今の時代だからこそ、自分の置かれた状況をしっかりと見極めることが大切だと感じています。人それぞれの歩み方がありますからね。あとは、デザイナーとして“プロダクトに集中すること”は、ブランドを運営する上で重要なことです。

星:プロダクトへの真摯な姿勢は<ROLD SKOV>を取り扱う上で、重要なポイントでした。

フランチェスコ:僕は、品質にこだわり続けることがブランドにとってとても重要だと感じます。ブランド立ち上げ当初から、素材のリサーチやイタリアの小さな工房とのものづくりに多くの時間を費やしてきました。生産はすべて僕が生まれ育ったイタリア・マルケ州の工房でプロトタイプ制作から量産まで、信頼できるパートナーのもとで行っています。それはブランド設立当初からの信念であり、これからも変わることはありません。

星:デザインから生産まで、すべてのプロセスを自国で完結させている点にも強く惹かれます。当店には質にこだわる目の肥えたお客様が多いこともあり、そうした実直で誠実な姿勢はお店への信頼にもつながっています。イタリアらしいヘリテージを受け継ぎながら、時代性を感じさせるコンテンポラリーな側面を併せ持つ、それが<ROLD SKOV>の大きな魅力だと思います。

フランチェスコ:星さんがお店を運営していく上で大切にしていることは何でしょう?

星:常に余白を大切にしています。キャパオーバーになってしまうと時間に追われ、視野が狭くなり、柔軟に物事を考えられなくなってしまいます。時間に追われる日々ですが、何事も適量が理想。自分を大きく見せることもなくなりました。あとは、「less is more」という言葉も大切にしていますね。長くショップを続けていると、どうしても手広くいろいろなことに挑戦したくなる時期もあります。けれど、そうした経験を経て、むやみに広げるよりも、ひとつひとつの純度を高め、より真摯なお店づくりをしていきたいと思うようになりました。

お二人の今後の目標を教えてください。

フランチェスコ:毎シーズン掲げている継続的な目標は、ブランドの基盤をしっかりと固め、理念に沿ったコマーシャルネットワークを築いていくことです。良質な流通を維持することは、常に意識しなければならない大きな課題でもあります。近い将来は、価値観を共有できるブランドとのコラボレーションにも挑戦したいと考えています。美的感覚だけでなく、倫理観やビジョンの面でも共鳴できるパートナーと手を取り合うことで、より深いクリエイションを生み出せると信じています。

星:僕は芯の通った確かなお店として認識され、20年、30年と長く愛される存在を目指します。そのためにも初心に立ち返り、これまで以上にお客様一人ひとりの期待に応え、信頼を積み重ねていきたいです。まだ理想の形は途上ですが、その輪郭が少しずつ見え始めています。

フランチェスコ:将来的に、ランウェイショーを開催することも大きな目標のひとつです。それは、ブランドが確実に歩みを重ね、自信を持って進んできた証になるはず。焦らず、一歩ずつ次のステップを丁寧に計画しています。

INSIDE the EVENT


 


 

 

ROLD SKOV

<ROLD SKOV(ロード スコフ)>は考案から制作に至るすべての工程をイタリア国内で行うコンテンポラリーメンズウェアブランド。どのコレクションにおいても一貫したアイデンティティで表現し続けるのは、一つ一つのプロダクトが、私たちが今生きる社会から放たれるコードを読み解きカタチにしたものであること。シーズンに左右されることなく、自由に考え、選択に対する“責任”を持つことを本質としながら、空想的なデザインとクラフトマンシップを組み合わせている。現代的な生き方に馴染む完璧なバランスを求め、特別な服作りを目指している。現代人に合うシルエットや着心地を追求したリラックス感のあるシルエットと生地が特徴だ。

NEWS
ROLD SKOV × SISTER、チロリアンジャケットをベースにした限定コレクションを発売
Oct 15, 2025

  • Photograph : Toma Uchida
  • Edit : Miwa Sato(QUI)

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