ファッション業界人が注目しているブランド図鑑 vol.6【K 〜 L】
ここでは、ファッション業界人100名が注目しているブランドを紹介。
大御所ブランドから、新進気鋭ブランドまで、業界人ならではの視点にも注目したい。
KANAKO KAKIMOTO — 星野 珠理亜 / モデリスト・アトリエコーディネーター
2024年から本格的にブランドスタートした<KANAKO KAKIMOTO(カナコ カキモト)>。ブランド開始前から既に様々なアーティストさんへ衣裳提供・制作をしており、幅広く活動されていました。自身のコレクションの方ではオリジナル生地の制作はもちろん、手の込んだディテール・パターン・縫製技術に驚かされます。とんでもない量のリサーチをしているんだろうなと思わされるディテールは、デザイナーが近くにいるからこそできる完成度なのかなと思います。作り手側の人間が見て「おもしろい、すごい」となれるデザインと組み立て、しかもデザイナー自身もそれを形にできる実力を持っている。本当に素晴らしく、今後が楽しみです。
KANAKO KAKIMOTO
https://www.instagram.com/kanakokakimoto_official/
Kanako Tamura — 佐藤亜都 / フリーランスエディター
「こんな日本発のレディースブランド、待っていた!」と初見で恋した<Kanako Tamura(カナコタムラ)>。白、ピンク、リボン、レースなどをふんだんに使ったガーリー&ドリーミーなブランドですが、大人の女性にこそ着てほしい。ラブリーなブランドは数あれど、質の高い生地と丁寧な縫製、そして絶妙な足し引きのバランスなど、他とは一線を画しています。作り手本人の品がものづくりにも込められているのか、こんなに「可愛い」のに胸焼けしない、落雁のような爽やかな甘さにやみつきになります。
Kanako Tamura
https://www.instagram.com/kanakotamura_official/
Kartik research — Lisas / モデル(BARK IN STYLE)
私が注目しているブランドは東南アジアにルーツを持つカーティック・クマーラ(Kartik Kumra)によって2021年に設立された、インドのニューデリーを拠点とする<Kartik Research(カルティック リサーチ)>です。サンスクリット語で『職人』を意味する同ブランドは、ほとんどがインドで生産されていてインドの豊かな文化を体現しています。アイテム一つ一つを見るとどれも複雑な手作業(刺繍、織物)で出来ていてまさに職人芸だなと痛感。洋服を通して、その国の伝統芸に触れる事は当たり前な事ではありません。是非、実際に目で見て、触って、時には嗅いでみたりしながら五感で体感してください。この服に袖を通せばあなたもインド旅行に行ったも同然。(笑)そんな貴重な体験をさせてくれるブランドだと思います。
Kartik research
https://www.instagram.com/kartikresearch/
KHOKI — 本間 哲郎 / YOUR 美容師、日比野 智之 / 阪急メンズ東京GARAGE D.EDITバイヤー【2名選出】
本間 哲郎
<KHOKI>との出会いは2023秋冬のコレクションのランウェイショーでした。
そこでは洋服はもちろん空間、演出メイクやヘッドピースなど独自で創り上げる世界観に衝撃を受けた自分がいました。
「人の手が見えるモノづくり」をコンセプトとして様々な文化や伝統的技法を用いて作り出される洋服は、複数人のデザインチームによって日常にそっと寄り添う温かみとアヴァンギャルドな要素からくる新鮮な印象を与えてくれます。
僕自身、2025春夏のルックのモデルとして撮影にご協力させていただいた際に、カメラマンやヘアメイクの方々を含むチーム全体が一つの作品に真剣に向き合い、こだわりが一つになっていく瞬間に感動しました。緊張感がありながらどこか仲間同士で楽しんでいる雰囲気も印象的で、洋服は勿論、人、チームとしても僕自身、影響を受けたブランドの一つです。最近購入させていただいたモヘアのニットカーディガンは僕の中で今の時期の一押しです。
日比野 智之
デザインソースを古着やヴィンテージから得ているブランドは沢山ある中でも、自分たちのフィルターを通すことで新しいモノに昇華しているところが魅力です。刺繍やヴィンテージのテキスタイルを用いた個性的なデザインも素晴らしいですが、脱構築的なパターンやカッティングの技術という面で、一つ一つのアイテムに説得力を感じます。人の手がみえるものづくりとしての奥深さ、ファッションの本質に触れられるブランドだと思います。
KHOKI
https://www.instagram.com/khoki146/
Kota Gushiken — 根橋 雄一 / After School Director
<Kota Gushiken(コウタ グシケン)>は、2019秋冬よりデザイナーの具志堅幸太氏によって展開されたニットブランドです。ブランドの代名詞的存在ともいえる、「モナ・リザ」、「クリムト」、「ゴッホ」などの様々なアーティストやアート作品を反映させたアイテムは毎シーズン話題になっています。
どんなテクスチャーにしたら面白いかを常に考え、一本の糸からオリジナルで製作することもあるそうで、まるで芸術作品を紡ぐかのようにこだわり抜かれたニットウェアが展開されています。
デザイナー自身の実体験や何気ない会話からインスピレーションを受けたプロダクトからは、デザイナーの人柄や感性が感じられるもの魅力のひとつ。わたしたちと一緒に食事に行った際の何気ない会話から生まれたアイテムもあったりして、思い入れがあります。
「TOKYO FASHION AWARD」を受賞され、益々注目のブランドです。
Kota Gushiken
https://www.instagram.com/kotagushiken/
KUBORAUM — 山本 泰宏 / Sales, PR
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設立して13年を迎えるベルリンを拠点とするアイウェアブランド<KUBORAUM(クボラム)>は、まるで何かを第六感で感じるような鋭い表現を継続するパワーに感動させられます。
自身のプロダクトをマスクと呼びますが、(<KUBORAUM>はマスクとは、記号性が先立つのではなく着用する人のパーソナリティーを際立たせるものだと謳っている。)ミニマルなデザインとは全く逆です。
彼らのプロダクトは一度見たら忘れられないほど強烈です。この感覚は、ベルリンの街が持つ鮮烈さそのものだと思います。それはファッションブランドの成り立ちとは異なり、ベルリンのアートや音楽などの文化と深く繋がる一つのプラットフォームとして存在しているからではないでしょうか。本当の意味で<KUBURAUM>のデザインやプロジェクトが土地の文化の一つとして成り立っていることを感じます。
実際に彼らは「Kuboraum Editions」というレーベルを運営し、新しくLPをリリースしました。スペース・アフリカ(Space Afrika)やエンマ(Emma DJ)、 アレッサンドロ・エイドリアン(Alessandro Adriani)といったアーティストのキュレーションからも彼らが目指す自由で刺激的な世界が見えてきます。
KUBORAUM
https://www.instagram.com/kuboraum/
LAURA ANDRACHKO — 溝口 翼 / fernweh オーナー
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今最も注目しているという点でロンドン発の<LAURA ANDRACHKO(ローラ・アンドラシュコ )>を挙げたいと思います。
デザイナーのローラは幼少期をベルリンで過ごし、13か14歳ぐらいの多感な時期にはベルリンのクラブカルチャーにどっぷりと浸かっていたそうです。その後、ロンドンに渡り、セントラル・セント・マーチンズを卒業した後に自身のブランドを立ち上げます。クリーンガールとは正反対な、ユース、カウンターカルチャー、反骨精神の塊そのもののようなコレクションからは、作り手の生き様やパーソナリティを色濃く感じます。
自分の中で、「やっぱりロンドンコレクションってこうじゃないとな…。」みたいな感覚を彼女の作風には感じました。最新の2025春夏コレクションでは、イギリスやフランスの階級社会による上流階級の為にあつらえられた歴史的な服に対して強烈なアンチテーゼを唱えています。特にシューズ(<CHANEL(シャネル)>や<GUCCI(グッチ)>の誰もが知っている名作靴と乗馬ブーツへの反抗)は、見た瞬間に「これは買わなきゃダメだ」と思わされました。
LAURA ANDRACHKO
https://www.instagram.com/laura.andraschko/
LQQK STUDIO — Kim Smith / DOMICILE TOKYO manager , Musician
皆さんに知ってほしいお気に入りのブランドはアレックス・ドンデロ(Alex Dondero)が2010年に設立したブルックリンを拠点にする<LQQK STUDIO(ルック スタジオ)>です。メインアイテムはシルクスクリーンのプリントアイテムですが、最近はアウターやパンツアイテムの展開に力を入れていて、派手すぎないデザインと色使いがオシャで好んでいます。
毎シーズン出す<CAMBER(キャンバー)>のボディを使った肉厚のフーディーがお気に入りで、大人びたファッションをしたい自分にとっては使い勝手が良く気に入っています。
ファッションのフィールドだけにとどまらない<LQQK STUDIO>は、音楽シーンとの熱い関係によって制作された「Motion Graphics Harmony Cel Capsule」は、Alex本人がアーティストに声をかけて作ったMix USB付きTシャツを販売。
他にもヴァイナル DJでもあるアレックスは、シルクスクリーンプリントされたヴァイナル用スリップマットや家でゆっくり音楽を楽しむのにぴったりなキャンドルを発売したりと、とにかく音楽好きにはたまらないアイテムが多い素敵なブランドです。
LQQK STUDIO
https://www.instagram.com/lqqkstudio/
Luna Del Pinal — 中森 帆香 / ファッションスタイリスト
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<Luna Del Pinal(ルナ デル ピナル)>はグアテマラでデザインされ、現地の職人によって生産されるウィメンズウェア・ライフスタイルブランドです。デザイナーのガブリエラ・ルナとコリーナ・デル・ピナールはグアテマラ出身で、職人の伝統的な工芸技術を守り支援しながら、新しいテキスタイルの発展を目指しています。ブランドの目的として、商業的な利益を得ることよりも伝統的な工芸技術を守ることを優先しており、生産コスト、労働者の賃金、価格設定などをブランドサイトに掲載することで、財務の透明性を高めています。
ブランドを知ったきっかけは中目黒のセレクトショップ「Casimir Pulaskiday.」で同ブランドのスカートに一目惚れしたことです。
民族的なテキスタイルから受ける、なんとなくほっこりとしたイメージとは対照的に、モードで計算され尽くしたシルエットデザインに衝撃を受けました。履いた瞬間、この先もずっと好きな自信が湧いてくる出会いに、ブランドのファンになりました。
元々民族的なアイテムは好みだったのですが、伝統的なテキスタイルが前衛的なデザインに落とし込まれた、あまりにも完璧なミックスと斬新な姿に改めて心を打たれました。シーズンビジュアルを見ただけでも十分魅力的ですが、実際に手にとって拘り抜かれたシルエットと色使い、そしてテキスタイルの美しさを味わってほしいブランドです。
Luna Del Pinal
https://www.instagram.com/lunadelpinal/