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【BEHIND THE RUNWAY – AKIKOAOKI 】“途中経過”に感じる哀愁のなかで、女性の性を追求したAKIKOAOKI | Rakuten Fashion Week TOKYO 2024A/W

Apr 12, 2024
2024年3月11日(月)から16日(土)まで開催した「Rakuten Fashion Week TOKYO 2024A/W」。
ショー前後のバックステージで、デザイナーをはじめ、ショーに携わるクリエイターにインタビューを敢行した。ショーに込めた想いや開催までの過程など、ここでしか読めないリアルな声をおとどけする。
今回は、現代の女性像の表現方法に独自の価値観を加味した<AKIKOAOKI>。フォトグラファー広瀬正道が無機質な空間に漂う色香を撮り下ろした。

【BEHIND THE RUNWAY – AKIKOAOKI 】“途中経過”に感じる哀愁のなかで、女性の性を追求したAKIKOAOKI | Rakuten Fashion Week TOKYO 2024A/W

Apr 12, 2024 - FASHION
2024年3月11日(月)から16日(土)まで開催した「Rakuten Fashion Week TOKYO 2024A/W」。
ショー前後のバックステージで、デザイナーをはじめ、ショーに携わるクリエイターにインタビューを敢行した。ショーに込めた想いや開催までの過程など、ここでしか読めないリアルな声をおとどけする。
今回は、現代の女性像の表現方法に独自の価値観を加味した<AKIKOAOKI>。フォトグラファー広瀬正道が無機質な空間に漂う色香を撮り下ろした。

バックステージレポート

今シーズンの<AKIKOAOKI(アキコアオキ)>の2024秋冬コレクションのランウェイショーが開かれたのは、代々木第一体育館の倉庫。つまりバックステージである。
打ちっぱなしのコンクリートが演出する無骨さと、アリーナに沿うように縦長に作られた形状を味方に、ジグザグにランウェイを配置し、洋服との距離が近い客席が実現した。

同日に開催される<MIKIOSAKABE(ミキオサカベ)>の会場が同会場のアリーナだったこともあり、バックステージでは両ブランドのクリエイティブが交わる形で準備が行われていた。
フィッティングチームの人数が他のブランドと比べて多く、シルエットバランスの細部までこだわるブランドならではのように感じた。

<AKIKOAOKI>といえば、2020春夏コレクションにて、テーラードジャケットやシャツを「現代社会のユニフォーム」として銘打ち、社会や帰属する組織における自分のアイデンティティを確立するための衣服は、いわば民族衣装のようなものであると解釈。東洋の民族衣装からインスピレーションを受けたデザインは新しいユニフォームの定義を形作った。

今シーズンはそのベースは変えず、衣服を脱ぐ際の途中経過に宿る美しさに着目。
社会から自らを切り離し、解放される瞬間に現れる情緒や、哀愁までも含めた衣服を提案した。

服作りでは、女性の体の曲線にフォーカスし、着ることでドレープが生まれるようなデザインも取り入れた。
あえて完成しきっていない部分に美意識を持っていくことで、女性のもつ穏やかさや優しさを表現した。

裏返したようなデザインのテーラードジャケットは、遊び心はありながらも、ウエストが綺麗にシェイプされるなど、本来テーラードジャケットが持つ様式美は保たれ、デザインの抑揚が映し出す美しさに圧倒された。

無機質なコンクリート空間に馴染みやすいブラックやホワイト、グレーといった無彩色を基調にしたコレクション構成でも、相反するようなサテンやレースなどの色香が漂う素材や、ディテールの面白さによって、コレクションの輪郭をはっきりと感じ取ることができた。

また、今回のコレクションでは、新たな試みもあったとデザイナーは話す。
今まではシェイプを作るうえでゴールを先に決めてから制作していたが、今回は制作プロセスのなかで布と対話するようにゴールを決めていったという。

ブランド設立の2014年から約10年が経とうとしているものの、新しい制作方法に挑戦するなど、その進化は計り知れない。
日本のファッションシーンをこれからも牽引していくブランドだと再確認した。

デザイナー 青木 明子 インタビュー

― 今回のテーマを教えてください。

テーマは「マルチプレックス」。重なるという意味です。女性が家に帰って服を脱ぐ行為を、社会から自分を解き放つというイメージで捉えました。服を脱いでいる途中だったり、着崩れていたり、そんな“過程”に、センシュアルなムードやセクシャリティ、女性ならではの“哀愁”を込めてコレクションを作りたいなと思いました。

―女性が洋服という社会的な“鎧”を脱ぐことを、“社会的な自分を脱ぎ捨てる”と表現されたことに感動しました。

うれしいです。ありがとうございます。

― デザインにおいて意識したことはなんでしょうか?

自分の中で言葉数が多くなくとも芯のあるデザインをしたいなと思っていて。複雑なデザインもあるのですが、どこかに穏やかさだったり、優しさを感じさせたり。いわゆる露出度の高いセクシーさとはまた違った、禁欲的だからこそ現れるセクシャリティを表現をしたくて。押さえつける要素を入れることで、逆に立ち上がってくるものを意識しました。

― 制作していくなかで発見したことやチャレンジしたことはありますか?

今回はドレーピングテクニックを用いることが多かったのですが、その辿り着きたいドレープの表情を最初に決め切らないで、布と対話しながら制作を進めていきました。作る過程で自分が美しいと思う形を見つけていって。最後のドレスは、ジャケットをgrungeにまとっているような、着ているのか脱げているのかその両軸のイメージで。本来の正当な洋服の作り方ではないと思うのですが、ゴールを設定するのではなくて、プロセスの中に可能性を見出す表現をしてみました。

― <AKIKOAOKI>のルーツともいえる男性的なテイラードやユニフォームライクなディテールと、女性らしさの融合が、さらに洗練されたように思いました。

ブランドのシーズンを超えたコンセプトの1つとして、「ディコンストラクション(脱構築)」と「リコンストラクト(再建)」はありますが、今回は特に構築的にシェイプを作り込んでいくというよりも、もう少し支配し切らない間合いを持ってその2つのキーワードと向き合ったっていうのもあるかもしれないですね。

― コレクションを象徴するピースは?

2つあります。ひとつは、身体に対してわざと小さすぎるサイズのシャツをぎちぎちに着ているルック。もうひとつは先程も話した最後に出てきたドレス。この2つがすごく自分的にはキーワードになったピースです。コルセットモチーフではなく、シャツという通常そこまでタイトに着る印象が少ない衣服で、あえて拘束されている感じをつくり、それを纏っている人間像を表現したかったのです。

キャスティングディレクター Shimana インタビュー

― 新作コレクションの発表やブランドを表現するためにショーのキャスティングを行うにあたり、キャスティングディレクターとして意識していることは?

デザイナーのビジョンに忠実であることです。デザイナーがどのようなイメージでショーを表現したく、どのようなモデルを起用したいかをヒアリングしたりムードボードをいただいたりして、事前の書類選考、その後のオーディションでデザイナーと会話しながらキャスティングします。キャスティングディレクターとして、私たちはモデル個々の能力や特性を深く理解しているため、彼ら彼女らの年齢や国籍から、パーソナリティ、どのような仕事を普段やっているか等を把握し、今季のイメージに合う・合わないをオーディション現場で話しています。
素のままのモデルの見た目だけで判断せず、彼ら彼女らのパーソナリティや内面の雰囲気で、そのブランドの雰囲気に変えていけるかどうかも大事なポイントです。

― <AKIKOAOKI>のショーを開催するにあたり、デザイナーとはどのようなディスカッションを行い、今回のキャスティングに繋げていきましたか?

各ブランドに対して異なるアプローチを取りますが、明子さんとは2度目のショーで、明子さんがイメージしているモデルは大まかには分かっていたので、今回は特段事前のディスカッションは設けませんでした。明子さんの服は、身長が高く線の細い(骨が太くない)モデルが一番似合います。ただムーディすぎる雰囲気のモデルはショーの雰囲気とは真逆をいってしまうので、そこは気をつけて事前に外しました。
キャスティングしていく中で明子さんが起用したいモデルを忠実に用意するよう心がけていますが、明子さんが迷われてる際に僕なりの意見を述べることが多いです。ただ、明子さんは判断も早いので、迷われることはほぼほぼフィックス直前だけですね(笑)。

ヘアスタイリスト 雑賀 英敏(TONI&GUY JAPAN) インタビュー

― テーマをどうやってヘアスタイルに落とし込みましたか?

キーワードとして「キャラスタリスティック」と「リアリスティック」、「サスペンス」、「エレガント」があって、モデル1人ひとりのキャラクターをまず生かしていこうと。ウェーブヘアとカールヘアの子は、ほぼそのままで。ロングヘアの子と前髪がない子は、サイドパートでピチッとなでつけて。キュートになりすぎないクールに寄った感じで、サスペンスとかエレガントを表現しようと。

― 青木さんと相談しながら進めていったのですね。

そうです。髪の毛で個性を出していきましょうと。ヘアスタイリングも3チームに分けて進めました。常に一緒に動いているチームではないので、巻きの具合とか、整髪剤をつける量の指示出しなどは難しかったですね。青木さんは、エレガントの中に若干、違和感があるようなスタイルが好きなんです。そこを理解しつつ、やりすぎ一歩手前……いや、二歩手前ぐらいを意識して。

― そういった青木さんの意向を汲みつつ、ご自身のクリエイションはどういうふうに表現されましたか?

見えないところを潰したりしています。表には出ない部分ですけど、そういうことができるとちょっとうれしいですね。

― 注目してほしいポイントは?

ちょっとした毛の動きですね。スプレーで固めているところと固めていないところがあるので、モデルが歩いた時に髪がどのように動くのか。顔まわりのあしらいにも注目してほしいです。青木さんが思う女性像にフィットできたのではと思います。

メイクアップアーティスト 平尾 清香(LUNASOL) インタビュー

― コレクションのテーマをどのようにメイクで表現したのでしょうか?

明子さんとイメージを共有することで、メイクをコレクションにフィットさせていきました。「イメージは、濡れたようなツヤ肌、頬は寒いところから急に室内に入った時のような印象で、リップはラフにぼかした感じ」とおっしゃったので、<LUNASOL(ルナソル)>のファンデーションで水ツヤ肌を、オレンジ色のチークで上気したような自然な血色感を演出しました。リップは粘膜のような自然な色に、中央だけ濃い色とマットな質感を表現しました。ファッションに使われている素材がジャケットに用いるようなフォーマルな質感なのに対し、メイクをオフィスなどとは違う印象に持っていくことで違和感が演出できるように調整しました。

― ご自身のクリエーションはどのように落とし込みましたか?

<LUNASOL(ルナソル)>といえば“ツヤ肌”なので、ファンデーションは2種類を使いました。額には新作の“クラリティフロウリクイド”、頬には“カラーオイルセラム”と、部分的に使い分けています。ルナソルといえばツヤ肌なので、そのまま全顔ツヤ肌にすることも考えましたが、あえて2種類のファンデーションを使いました。ショーの見栄えとして、ツヤの必要ない場所(額や小鼻回りなど)はセミツヤに整えたほうがみずみずしい頬のツヤが引き立つため、カラーオイルセラムを頬に、それ以外の場所は新作のクラリティフロウリクイドで整えました。口元もマットよりに仕上げて引き算をしています。

<AKIKOAOKI>
設立年 2014年
Designer – 青木 明子

ファッションの潜むファンタジーを本質的な感覚で切り取っていく。 ファッションを生きる行為そのものと捉え、それを纏うひとに生き方や姿勢が感じられる衣服を提案する。

AKIKOAOKIブランドページはこちらから

  • Photograph : Masamichi Hirose
  • Interview : Kaori Sakai(STUDIO UNI)
  • Report & Edit : Yukako Musha(QUI)

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