セレクトショップの次なる視線 | THE ELEPHANT 折見健太
トレンドをとらえたブランド、趣味や嗜好性が表れた服、目利きがキャッチした 新世代のデザイナーなど、コンセプトが明確なショップであるほど、 ファッションに対する美意識は店内の品揃えからも一目瞭然だ。そんなショップを訪れるファッションフリークが気にしているのは、 常に新しい刺激を提案してくれるオーナーやバイヤーの次なる動向や関心。
今回は隠れ家的な場所で特別な服との出会いをとどけたいという、「THE ELEPHANT(ジ・エレファント)」の折見健太さんにお話を伺った。
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@kentaorimi
バイヤーのキャリアは18歳だった大学生の頃から
— 折見さんが「ファッション」を仕事として選んだ理由はなんだったのですか。
折見:「ファッション」が仕事ということでいえば大学生のときに渋谷の古着屋でアルバイトをしていました。まだ18歳だったのですが早い段階からお店のことを任せてもらえて、買い付けなども担当していました。
— アルバイトなのに買い付けまでとはすごい。そうするとバイヤー歴はかなりの年数ですね。
折見:年齢の割にはバイヤー歴は長いかもしれません。大学時代は渋谷のショップでずっと働いていたのですが、卒業をするタイミングで店長だった方が独立をして自分のお店をやると。それで右腕のような立場で立ち上げから手伝うことにしたんです。
— 最初からバイヤーまで任されて、次に移ったお店でもオーナーの右腕で、お店の方針などに意見もできたと思うのですがそれでも独立した理由は?
折見:「THE ELEPHANT」を立ち上げたのは29歳のときでした。古着屋でのアルバイトからスタートして10年が経過して、自分の中でもやれる仕事の範囲が広がっている、レベルが上がっている手応えを持てるようになっていたので、そうなると次は自分のお店を持つことかなと。自然な流れだったとしか言いようがないですね。
スペシャルな出会いがあるようなお店でありたい
—「THE ELEPHANT」のアイテム構成はどうなっていますか。
折見:自分が得意としている古着と、国内外のデザイナーズブランドです。デザイナーズブランドは若手の新進気鋭を多く買い付けるようにしています。あとは<ORIMI(オリミ)>という自分のオリジナルブランドも手がけているので、そのウェアも置いています。
— 新進気鋭というのはどんなデザイナーに惹かれることが多いですか。
折見:自分がファッションに関心を持ったのは、高校生のときに初めて原宿に買い物に来たときに実家の千葉とは異なるファッションカルチャーに衝撃を受けたからなんです。「ここでしか買えない」というような服を置いているショップに行くのが大好きでした。自分がお客だった頃の気持ちは変わらないので、新しいことをやろうとしているデザイナーほど惹かれます。「THE ELEPHANT」で取り扱っているのも、このブランド、このデザイナーじゃないと表現できないようなアイデアが落とし込まれているウェアが多いです。
— ショップも隠れ家的な場所にありますよね。
折見:自分が古着屋で買い物をしていた頃、隠れ家的なお店ほどワクワクするような出会いがあったんです。お店づくりには自分の経験、体験をかなり投影しているところがあって奥地にあるようなショップに辿り着いたゆえに得られた喜びの記憶から、今の「裏裏原宿」のような場所に落ち着きました。同じような考えのオーナーさんもいるのか、周囲にはおもしろいお店が多いですよ。
— ショップを立ち上げる時から「楽しい出会いを提供したい」という想いはあったんですか。
折見:それはありました。特別なものが手に入るお店にしたいと。現状も他店ではあまり見ないようなブランドが揃っていると思います。お店に来られるのも10代の頃の自分を見ているようなお客さんが多いですね。スペシャルな出会いを貪欲に求めているような(笑)。1万円で買える服もあれば30万円するものもありますし、ラグジュアリーもあればダメージが強めの古着もありますし、「新しい、楽しい出会い」につながるのであれば取り扱うアイテムのカテゴリーにもこだわりは特にないですね。
—ファッションのどこに価値を感じるかは自由ってことですね。
折見:うまく言語化はできないですがそういう考えではあります(笑)。アンダーグラウンドであればかっこいいとは思っていないですし、有名であればいいものというわけでもないはずです。それは自分のファッションへの興味が古着からだった影響は大きいような気がしています。そもそも古着ってラグジュアリーなどの概念は存在しないですよね。ブランドや価格や知名度にとらわれるのではなく、ファッション好きは誰もがオリジナルでありたいはずです。個性を張り合うような雑誌のストリートスナップのカルチャーを知っている世代なので余計にそう思います。
店舗を増やすことが目標ではないが適正に広がれば
—「THE ELEPHANT」はプライベートでも訪れたことがあるのですが、店内のお客さんはおしゃれな人が多い印象でした。
折見:個性的なファッションのお客さんは確かに多いかもしれないですね。個性的ではあるけど皆さんやりすぎてはいなくて、洗練された雰囲気もあるのは時代なのかもしれないです。バイイングするアイテムは個性もですが、どこか品があることも大切にしているので、結果として僕と同じようなファッション感覚のお客さんが集まってきているように感じます。「THE ELEPHANT」らしいブランドを教えてもらうこともあって、お客さんと一緒にお店を作っているような感覚はあります。
—「THE ELEPHANT」として推していきたいブランドやアイテムなどはありますか。
折見:最近は<MARINA YEE(マリナ・イー)>や<NAMACHEKO(ナマチェコ)>といったベルギーにゆかりのあるブランドが気になっています。ロマンチックとモードが融合しているようなところに新鮮さを感じるんです。これから<TSTS(ティーエスティーエス)>を取り扱うのですが、それもアントワープで学んで日本人デザイナーがやっているブランドです。
— 一度でも買い付けたブランドはずっと継続している感じですか。
折見:そうですね。<KEISUKEYOSHIDA(ケイスケヨシダ)>などはデザイナーと公私ともに親しくさせてもらっていて、お店を立ち上げたときからずっとです。「イケているヤツを喰ってやろう」みたいな反骨心のある服作りに共感します。
— 国内と海外のブランドでは買い付けるときのポイントに変化などはありますか。
折見:国内の場合はこれからの日本のファッションを盛り上げるためにも若い才能を応援したいという気持ちが強いですね。そういう意味では海外のブランドは純粋にプロダクトの良し悪しで判断することが多いかもしれません。日本の若いデザイナーとお会いすると本質的に服作りと向き合っているなと感じるのですが、そういう真摯な姿勢は「THE ELEPHANT」を訪れる服好きには間違いなく伝わっているはずです。
—「THE ELEPHANT」をこういうお店にしていきたいというビジョンなどはありますか。
折見:自分にとっての絶対的なゴールは特に設けてはいないです。「THE ELEPHANT」は大阪にもオープンさせたのですが店舗を増やしていくことが今後の目標ということでもないです。お店としてより良くしていく努力は惜しみませんが、スタッフからお客さんまで自分の周辺にいる方たちが楽しく、幸せになってほしいという想いで事業をやっているので、「THE ELEPHANT」が適正に広がっていけばという想いからの大阪店です。
— 東京と大阪ではお客さんに違いはありますか。
折見:ブランドやアイテムのラインナップは基本的には同じなので、東京と大阪でお客さんに大きな違いは感じないですね。地域に関係なく僕が直感的にセレクトしたものに反応してくれて、僕やスタッフ達が作り上げた「THE ELEPHANT」という領域に同じようなファッション感覚の人たちが集ってくれていることが本当にうれしいです。同じ「好き」を求めて自然とコミュニティのような存在になっていることは、セレクトショップとしてひとつの理想ではないでしょうか。
折見 健太がリコメンドする3つのアイテム
ERL / YELLOW CHECKER SWIRL HOODIE ¥74,250
ERLのイエローチェッカーフーディー
KEISUKEYOSHIDA / CAPE TRENCH COAT ¥198,000
KEISUKEYOSHIDAのケープトレンチコート
ORIMI / GLITTER KNIT POLO ¥46,200
ORIMIのグリッターニットポロ
THE ELEPHANT
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- Photograph : Reina Tokonami
- Text : Akinori Mukaino
- Edit : Miwa Sato(QUI)