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ロンドン・ファッションウィーク 2025 秋冬コレクションで強く描かれた「解放と構築」

Mar 4, 2025
2025年2月20日(木)〜24日(月)、ロンドン・ファッションウィーク 2025秋冬コレクションが開催された。ロンドンらしくエネルギッシュなコレクションから感じたのは「解放と構築」というキーワード。ここでは、「解放と構築」が強く描かれていた9つのコレクションを紹介する。

ロンドン・ファッションウィーク 2025 秋冬コレクションで強く描かれた「解放と構築」

Mar 4, 2025 - FASHION
2025年2月20日(木)〜24日(月)、ロンドン・ファッションウィーク 2025秋冬コレクションが開催された。ロンドンらしくエネルギッシュなコレクションから感じたのは「解放と構築」というキーワード。ここでは、「解放と構築」が強く描かれていた9つのコレクションを紹介する。

Maximilian Raynor/マキシミリアン レイナー

<Maximilian Raynor>2025秋冬コレクション「Welcome to the Un-United Kingdom」で、未来的なディストピアの世界を描き出した。3025年の荒廃した未来世界を舞台に、急速に進化する技術と道徳的退廃、そして無秩序な社会をテーマに据え、登場人物たちが新たな秩序と価値観を模索し、自己を再構築していく過程を描いた。未来のイギリスで繰り広げられる絶望的な状況の中で、禁じられた異教文化や社会的崩壊を描き出し、深いメッセージ性を持つコレクションを通じて現代への強烈な警鐘を鳴らす。
コレクションでは、木を求める盗賊や嵐の中で鞭を振る警備員、干上がった海底を歩く漁師など、荒れ果てた世界に生きる登場人物たちをモチーフにしたアイテムがラインナップ。特に、開幕の展示では「インターネットの具現化」として、640時間をかけて制作されたケーブルとデータセンターの素材を使用したドレスが披露され、デザイナーの独自な素材使いとデジタル時代を支えるネットワークの象徴として強烈な印象を与えた。
ファッションがただの装飾ではなく、社会を映し出す鏡となることを証明する、未来的でありながらも強い現実感を持ったコレクションが完成している。

Maximilian Raynor 2025AW COLLECTION

DREAMING ELI/ドリーミング エリ

<Dreaming Eli>の2025秋冬コレクションは、女性の肉体と感情の深層を探求し、混沌、情熱、変容を無防備に抱きしめる女性を描いている。過去のトラウマを乗り越え、自らの身体を再発見し、力強く解放された女性像を映し出した。
絞り加工で作り出された有機的で束縛された形状は、皮膚が縛られ、解放される過程を表し、セクシュアリティと官能を感じさせる。ダメージ加工を施したファブリックと層を重ねることで、女性性の複雑さを象徴し、赤の色彩がトラウマと力、欲望と反抗を表現している。
また、ブランド初のニットウェアが登場し、解体されたランジェリーやコルセットディテール、ドレーピングの技法が新たなシルエットを生み出している。
強さと脆さを抱える女性を描き出し、内面の力と解放を象徴する美しさを体現したコレクションに仕上がっている。

DREAMING ELI 2025AW COLLECTION RUNWAY

Mark Fast/マーク ファスト

<Mark Fast>の2025秋冬コレクションは、夢と永遠の狭間で生きるヴァンパイアをテーマに、過去と未来を繋ぐ幻想的な世界を描き出している。
コルセットに記憶と鎖を織り込んだデザインは、エレガンスと反骨心、ロマンティシズムが交錯する強烈な美を表現。
80年代のニューウェーブを感じさせるカラフルなアクセントは、黒いゴシックなシルエットに華やかさを加え、シアー素材とテーラードの重ね着が官能的なコントラストを生み出している。また、ニットのピンタックやコルセットシルエットが動きと深みを与え、鎖が運命のようにコレクション全体に流れを作っている。
現代的な解釈で古典的スタイルを再構築したこのコレクションは、強さと自由を求める女性たちに捧げられた、洗練された一歩先を行くデザインに仕上がっている。

MARK FAST 2025AW COLLECTION RUNWAY

Charlie Constantinou/チャーリー コンスタンティノウ

<Charlie Constantinou>の2025秋冬コレクション「シーズン4.5」は、デザイナーの進化し続けるクリエイティブな旅路の一環として、シーズン4に続く新たな章と位置付けている。今シーズンは、デザイナーの過去のサハラ砂漠にインスパイアされた世界観を基に、昼夜の温度差による風景と衣服の変化を探求している。
コレクションでは、昼と夜の極端な温度差を反映したカラーパレットが登場。暖色から冷色へと移り変わり、時間の流れを感じさせる。また、古代のアーティファクトや染色技術への愛着を反映させ、新しいニットウェアの制作を行い、スクリーンプリント、ガーメントダイ技術を駆使。さらに、オランダのECCO LEATHER社とのコラボレーションでは、シルクと革を組み合わせた新しい質感や、砂漠の自然のテクスチャーを再現したエンボス加工など革新的な表現を構築している。
革新的な技術とコラボレーションが融合したコレクションは、時の流れを超えて進化し続けるデザイナーのビジョンを反映している。

Charlie Constantinou 2025AW COLLECTION

SRVC/エスアールブイシー

<SRVC>の2025秋冬コレクション「INFLUX」は、現代の過剰な情報とコミュニケーションが求められる社会における“露出”というテーマに鋭く迫っている。ロンドンのBTタワーという、通信とハイパーコネクティビティの象徴的な舞台で展開されるコレクションは、私たちがどのように自己を守り、露出(解放)し、そして絶え間なく要求される世界に向き合うのかを問いかける。
コレクションでは、解体された男性用ボクサーショーツをつなぎ合わせた女性用シャツや、サイボーグのようなロボット的なカーゴパンツが特徴的なアイテムとして登場。ミニスカートのスラッシュデザインや、ドレープされたジャンプスーツが身体の露出とモデスティーの境界を曖昧にし、知的で機能的な提案を行っている。グラフィックメッセージや英国MI5ロゴの再構築を通じて、監視社会に対する新たな視点を提示し、<SRVC>らしい挑戦的なエネルギーを注ぎ込んでいる。
現代社会における自己表現と内面的な強さを象徴するコレクションであり、露出と防御のバランスを通して、新たなコミュニケーションの形を提案している。

SRVC 2025AW COLLECTION RUNWAY

Sinead Gorey/シニードゴリー

<Sinead Gorey>の2025秋冬コレクションは、「夜が明けたその後」をテーマに、夜遊びと大人としての責任をうまく両立させた新たな女性像を描いている。ナイトライフと現実を行き来する独特なスタイルを提案している。
アイテムには、ホルターネックのドレスにケープを組み合わせたり、日常的なアイテムを仕事には不適切な形でアレンジしたり、装飾された<CONVERSE(コンバース)>のチャックテイラーとスティレットヒールを組み合わせたりと、日常と夜遊びの垣根をなくすデザインが並ぶ。シルバー、メレンゲ、シナモン、そして深紅やホットピンクなど、夜のバスや木曜日の楽しみを思わせる色調がコレクションに漂う。
コレクションは、オフィススタイルをセクシーに昇華させ、プレシャスな素材やディテールで遊び心を加えている。カジュアルとフォーマルを行き来するハイブリッドなデザインが特徴で、デスクからディスコへとスムーズに移行できるスタイルを提案している。ブランドの描く女性像は、大人になっても、自らを解放し、夜を楽しむ気持ちを持ち続けている。

SINEAD GOREY 2025AW COLLECTION RUNWAY

Jawara Alleyne/ジャワラ アレイン

<Jawara Alleyne>の2025秋冬コレクション「Construction」は、物の組み立てと解体、再構築を通じて新しい物語が生まれる過程に焦点を当てている。デザイナーは精緻に設計された構造がどのようにして軽やかに動き、ファッションの枠組みがどのようにして新たな形を取るのかを探求した。産業的な建設手法からインスピレーションを得て、縫い目をあえて見せたり、完成形の衣服のシルエットを問い直したりすることで、ファッションに対する既成概念を打破している。
コレクションは、既存の衣服を再利用する従来の解体とは異なり、建設そのものの掘り下げを行っている。無形の足場、物質と形の対話を通じて、デザインはただの服を超え、社会的・政治的な変容にも通じる問いを投げかける。特に、EU離脱後後のアイデンティティの再構築や、写真家ノーマン・ベーレントの『Blueprint』に触発された社会的背景を反映させることで、ファッションの枠を超えた深い洞察を可能にしている。
構築過程そのものへの賛歌であり、機能と表現の間に横たわる緊張感や、「作る」ことを通じて語られるストーリーに対する深い敬意が込められている。ファッションの基盤を再構築する試みとして、ブランドらしい革新と進化を感じさせるコレクションとなっている。

Jawara Alleyne 2025AW COLLECTION RUNWAY

Pauline Dujancourt/ポーリーヌ デュジャンクール

<Pauline Dujancourt>の2025秋冬コレクション「Everything is moving, Nothing feels safe… but your presence」は、過去と現在を織り交ぜながら、再び結びつくというテーマを深く掘り下げている。デザイナーは、祖母との再会という個人的なストーリーを通じて、自身のアイデンティティと向き合い、その思いを解放する形で表現している。1980年代にデザイナーの父が祖母に贈った「フリーセア」という珍しい植物が、コレクションのインスピレーションの源となり、この植物が持つ記憶とつながりの象徴性が作品に息づいている。
アイテムには、手編みのケーブルやエアリーな生地との融合、繊細な花のモチーフなどが施され、構造と脆さの絶妙なバランスが表現されている。モヘアやアルパカ、サテンシルク、フェザーチュールなどの素材が手編みや機械編みで組み合わさり、デザインに動きと流動性を与えている。また、<Dr. Martens(ドクターマーチン)>の「Buzz」や「Elphie」などのシューズがコレクションに加わり、過去と現在、強さと繊細さの対話を強調している。
さらに、色彩の対比を活かした構成も印象的で、深い赤は植物「フリーセア」を象徴し、暗闇と光が交差するカラーリングは喪失と再生のテーマを体現している。
デザイナー自身の成長とともに、彼女の未来のビジョンをさらに深めるコレクションとなっている。

PAULINE DUJANCOURT 2025AW COLLECTION RUNWAY

KEBURIA/ケブリア

<KEBURIA>の2025秋冬コレクションは、ヴィクトリア朝の厳格なドレスコードと現代的な反骨精神を融合させた対照的な美学を探求している。レースやタイトなウエストなど19世紀の装飾的な要素を解体し、現代的で挑戦的な形に再構築している。
アイテムには、重厚なウールやブークレーと、軽やかなシャンティレースやプリーツシフォンが組み合わさり、ビーズやスパンコールが現代的な華やかさを加えている。シルエットは、ボリューム感のあるバブルヘムや彫刻的な膨らみ、ミリタリー風ジャケットが対照的に登場し、ロマンチックなデザインを引き締めている。
全体として、過去と未来を結びつけ、精緻さと挑発が交差することで生まれる新しい優雅さを表現している。ヴィクトリア朝の豪華さが現代的に再解釈され、知的な要素が強調されたコレクションに仕上がっている。

KEBURIA 2025AW COLLECTION RUNWAY

  • Text : Yukako Musha(QUI)

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