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見せるのは、イラストレーションの“いま”と“未来”。ギャラリー・ルモンド

Sep 19, 2019
いま“来ている”イラストレーターを知りたかったら、ここを訪れよ。アート好きや旬のイラストレーターを探すメディア関係者の中でも一目置かれる存在なのが、原宿の「ギャラリー・ルモンド」だ。今回は、ギャラリーを運営する田嶋吉信さんにお話をききながら、イラストレーションの魅力に迫る。

見せるのは、イラストレーションの“いま”と“未来”。ギャラリー・ルモンド

Sep 19, 2019 - FEATURE
いま“来ている”イラストレーターを知りたかったら、ここを訪れよ。アート好きや旬のイラストレーターを探すメディア関係者の中でも一目置かれる存在なのが、原宿の「ギャラリー・ルモンド」だ。今回は、ギャラリーを運営する田嶋吉信さんにお話をききながら、イラストレーションの魅力に迫る。

ギャラリー開始年からスタートさせた「CAT POWER」

ギャラリーを訪れた日は、ルモンドが毎年恒例で行っているチャリティ展「CAT POWER」の会期中。ギャラリー内には今をときめく作家たちが思い思いに描いた猫のイラストが飾られている。

QUI編集部(以下QUI):「CAT POWER」をはじめて何年になりますか?

田嶋吉信さん(以下田嶋):今年で5年目になります。もうずいぶん前になりますが、僕はもともと保護猫を飼っていたんです。八百屋の段ボールに捨てられていたところを妻が拾ってきて、病院に連れて行ったり色々介抱している間にうちで飼うことになって。

それまで全然知らなかったんですが、耳が桜の花びらみたいな形になっている地域猫って、ボランティアの方が不妊手術をして地元に戻している猫なんですよね。自分が保護猫を飼うようになってからそういう活動を知るようになって、自分が事業をはじめるときは、年に一度はチャリティー展示をやろうと決めていました。

田嶋さんが尊敬するイラストレーター、白根ゆたんぽさんの作品。上の写真が田嶋さんが飼っていた猫ちゃん。

QUI:ギャラリー・ルモンドができたのが2015年ということですから、ギャラリーができたその年に第一回目を開催されたということですね。

田嶋:そうです。ギャラリーをはじめる前からイラストレーターとしてエージェントに所属していて、そこでいろいろな方と交流があったので、猫好きなイラストレーターに声をかけて第一回目を開催しました。

記念すべき第一回のDMを手掛けたのは、イラストレーターの布川愛子さん

ギャラリーをやりながらイラストレーターをマネジメントする

QUI:もともとご自身でイラストを描かれていたということですが、コーディネートをやりたいと思ったきっかけはなんだったのでしょう?

田嶋:当時から周りにイラストレーターの友だちがたくさんいたのですが、同年代の仲間はフリーランスの人が多かったんです。そういう仲間たちが志半ばで実家に戻ったりするのを見ていて、自分もこのままじゃ行き詰まるんじゃないかと思うところもありましたし、多くのイラストレーターはマネジメントする人を必要としていました。だったら、ギャラリーをやりながらそういう人の力になりたいと思ったのが最初のきっかけですね。ギャラリーをはじめる前にコーディネートを学びたいと思って、所属していたエージェントで勉強させてもらいました。

QUI:ギャラリー・ルモンドはどんなギャラリーを目指してスタートしたのですか?

田嶋:わかりやすくいうと多様性ということですかね。この近辺にも30年以上続く老舗のギャラリーがあって、日本でイラストレーターを目指す人はそこをゴールにやってきたというくらいの存在なのですが、僕の肌感としてちょっと時代が変わってきている気がしていて。若いイラストレーターが目指すゴールは少しズレてきたのかなと。だから、そこを補えるようなギャラリーをやりたくて。僕はあえて、これまで日本のイラストレーションではあんまり取り扱われていなかったアニメやコミック系のイラストレーターさんを積極的に取り入れるようにしています。急にそればっかりになっちゃうとみなさん驚かれるので(笑)、グループ展とかにさりげなく入れ込みながら、「この人面白いね」って思ってもらえるように。

アニメ〜コミック系で田嶋さんが注目しているイラストレーター、Shiho Soさん

同じくshironeさん

世界に注目されている、日本の80年代シティーポップ

QUI:いま田嶋さんが“来ている”と感じる潮流はなんですか?

田嶋:僕はいま台湾や韓国の方に注目しているんですが、20代の若いイラストレーターがとくにヨーロッパで評価されてるんですよ。なんでだろうって思ったら、音楽からつながっていたんですね。日本の80年代シティーポップを元ネタにしたフューチャーファンクというジャンルがいまアジアや欧米でものすごく注目されていて、今年のフジロック最終日に出ていた韓国出身のDJ、Night Tempo(ナイトテンポ)は、韓国、台湾のイラストレーターとすごくリンクしてる。日本の80年代の音楽やイラストレーションから影響を受けた人たちが、いますごく盛り上がっていると感じます。

イラストレーターでいうと韓国のtree_13さんという方がいるんですけど、この間ソウルでお会いしたら、めちゃくちゃ80年代で笑っちゃいました。ラジカセやミックステープをいっぱい持っていて(笑)。いま韓国ですごく売れてるんですよ。意識しているかわからないですけど、絵の中に日本語もいっぱい入れていて。まだ二十歳前後で80年代なんて全然知らないはずなのに、こういう人たちがどんどん出てきているっていうのが面白いですよね。

7月に韓国ソウルで開催されたイラストレーションイベント「grimdosi」にて、tree _13さんのブース

いま、兼業イラストレーターが面白い

QUI:台湾や韓国に注目されているということですが、ギャラリーで展示をするイラストレーターさんは、どのようにセレクトしているのですか?

田嶋:もともといろいろなイラストレーターさんと交流がありますが、いまは特に、若い子からの情報収集が重要ですね。最近誰が気になってるの?と聞くと、SNSでしか出てこないような人たちを教えてくれたり。自分がキャッチアップできない部分もあるので、そういう意見はすごく大事にしています。

いまのイラストレーターは、イラスト一本でやっていくというより、仕事をいくつか掛け持ちでやっている人が圧倒的に多いと思います。普段はアイドルやってるとか、消防士やってるとか。最近は、新しいことにつながりそうだな、と思える方には、例え実績がなかったとしても絵がよければ声をかけさせていただいています。

中央の作品を描く影山紗和子さんも、イラストレーターとしてだけでなく、映像作家として活躍するクリエーター。くるりのMVなどを手掛けている

ギャラリーはこれから、もっと好き勝手できる場に

QUI:これからギャラリーとしてチャレンジしていきたいことはありますか?

田嶋:9月から正式にエージェント事業を立ち上げて(https://www.agencelemonde.com)、ギャラリーとエージェントの両軸でイラストレーターをサポートしていきたいと考えています。これまではギャラリーをメインに日本のイラストレーションを盛り上げて行こうと思っていたのですが、7月に開催した香港のリトルサンダーさんの個展で、4年半やってきた集大成ができた気がして。個展に合わせて作品集を発売したり、アパレルブランドとコラボ商品を作ったり、自分がいままで培ってきたノウハウをすべて詰め込むことができて、おかげさまで大盛況だったんです。そこで、ギャラリーでやりたいことの第一章は終えたかな、と。

リトルサンダーさんの個展時に制作したZIne。1,000部が完売した

これからはちゃんとエージェントとしてイラストレーターとクライアントをつなげながら、ギャラリーではいい意味で好き勝手できるような形にしたいと考えています(笑)。これまで以上に。僕が気になるイラストレーターさんを展示していけるような。

いま、どんどん社会が変わってきているじゃないですか。旧態依然としたマインドから解放された人たちの活躍の場が増えてきている。だからこそ、日本のイラストレーターも新しい価値感と個のチカラを信じて活動してほしいと思います。そしてルモンドも、国内だけでなく、台湾や香港、韓国、シンガポールへと拡大していきたいですね。アニメやコミックなどいろいろなスタイルの人たちの発表の場をつくり、もっと多様性のあるイラストレーションの魅力を伝えていければと思っています。

イラストレーターとしての経験を活かし、イラストレーションの新たなシーンを開拓しつづける田嶋さん。その熱い想いと審美眼が見出す新たな才能に会いに、ぜひギャラリー・ルモンドへ足を運んでほしい。

L’illustre Galerie LE MONDE(ギャラリー・ルモンド)

〒150-0001 東京都渋谷区神宮前6-32-5ドルミ原宿201

Tel:03-6433-5699

営業時間:火曜〜土曜12:00〜20:00/日曜12:00〜17:00/月曜定休

http://www.galerielemonde.com

  • Text : Midori Sekikawa
  • Photography : Kei Matsuura

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