Ralph Lauren 2027年スプリングコレクション——アメリカントラッドの旅路は日本のクラフトへ
カレッジスタイルから始まる、Ralph Laurenの旅
<Ralph Lauren>が今季の出発点として挙げたのは、カレッジスタイルと紳士的なアスリートたちの文化だ。
そこにあるのは仲間意識や競争心、そして自分らしい装いを楽しむ感覚である。ブランドが半世紀以上にわたって提案してきた男性像も、その延長線上にある。
デザイナーのラルフ・ローレンは今回のコレクションについて、「創造性、競争心、そしてパーソナルスタイルの表現を限界まで追求しながら生きる男性たちへのオマージュ」と説明する。映画のように世界観を構築してきた自身のアプローチを反映しながら、旅先で集めた記憶や憧れの風景をひとつの物語へとまとめ上げた。
今シーズンのルックにも、その空気が色濃く表れていた。仕立ての良いジャケットやスポーツコート、実用性を備えたアウター、ヴィンテージを思わせるアクセサリー。それぞれが旅先で集められた私物のように組み合わされ、ひとつのストーリーを形づくっていた。
インディゴから湖畔へ、Purple Labelの旅支度
ショー前半を担った<Ralph Lauren Purple Label>は、ブランドが掲げるアメリカンラグジュアリーの世界観を3つの章に分けて描き出した。
まず登場したのは、インディゴとニュートラルカラーによる穏やかなワードローブだ。シルク混のスーツには豊かなテクスチャーを感じさせる織り柄が施され、バンドカラーシャツやユーティリティアウターが肩の力の抜けた洗練を添える。気取らないが上質。その絶妙なバランスが全体を貫いていた。
足元やアクセサリーにはウエスタンのエッセンスも散りばめられている。ラルフ・ローレン自身が愛するヴィンテージロデオバックルの装飾から着想したサングラスやジュエリーは、長年ブランドを支えてきたアメリカ西部への憧憬をさりげなく語っていた。
続いて登場したのは、イタリアの湖畔文化とモーターレーシングの黄金時代を思わせるチャプターだ。マホガニー製スピードボートの流麗な曲線やアールデコの装飾は、スポーツアウターやニット、レザーアイテムへと姿を変える。再構築された軽やかなネクタイにもその美意識が宿り、クラシックなスポーツエレガンスを現代的に表現していた。
スーツやスポーツコートにはスラブリネンや透け感のある織地を採用。シャープなピンストライプやヘリンボーンも、従来より軽やかな印象へと変化している。幾何学柄を取り入れたイブニングウェアや、粗野な質感と洗練を共存させたリラックスシルエットのタキシードには、リゾートの夕暮れを思わせる余裕が漂った。
アメリカ西部、ヨーロッパの湖畔、スポーツカルチャー。ブランドが長年インスピレーション源としてきた風景が、ひとつのワードローブのなかで自然に交差していた。
KUONとSASHIKO GALS、日本のクラフトとの邂逅
コレクション終盤で視線を集めたのが、日本の<KUON>とのコラボレーションによるカプセルコレクションだ。
<KUON>は2016年に誕生し、日本古来の技法を現代的なファッションへと昇華してきたブランドである。
今回のカプセルコレクションでは、イタリアのテーラリング、日本のテキスタイル、そして<SASHIKO GALS>による刺し子が融合した。異なる土地で育まれたクラフトが交差することで、今季の旅というテーマを象徴する場面となっていた。
刺し子は布を補強するために受け継がれてきた技法だ。針の運び方や縫い目の表情には作り手ごとの個性が宿る。均一な仕上がりを目指す工業製品とは異なる魅力があり、一着ごとに異なる表情を生み出す。
近年は海外ブランドから日本の手仕事への関心が高まっている。そのなかでも今回の協業は、単なる参照や装飾に留まらない。東北で受け継がれてきた技術と、ブランドが長年大切にしてきたテーラリングやクラフトマンシップへの価値観が同じ場所で交差した。
アメリカントラッドを代表するブランドのショーで、日本の刺し子がフィナーレを飾ったことも印象深い。今季の旅路は、観光地ではなくものづくりの現場へと続いていた。
マドラスとパッチワーク、Polo Ralph Lauren流のプレッピー

ショー後半の<Polo Ralph Lauren>は、ブランドの代名詞であるプレッピースタイルを現代的に再解釈した。
今季が掲げたのは“次世代のアメリカンプレッピー”だ。アウトドア向けのパフォーマンスウェアとカレッジウェアを組み合わせながら、豊かなテクスチャーや大胆なカラーリング、柄使いによって定番のスタイルに新たな意味を与えていた。カラフルなインド製マドラス生地もその一部として取り入れられ、旅をテーマにしたコレクション全体とのつながりを感じさせる。
クラシックなヘリテージとスポーツウェアの軽快さを融合したルック群は、単なる懐古趣味ではない。学生文化やアウトドアライフに根差したアメリカンスタイルを出発点にしながら、その可能性をより自由な方向へと広げていた。
テーラリングでは、スリーピーススーツやエドワード朝風のネックウェアが登場。クラシックな装いをベースにしながらも、どこか遊び心を感じさせる空気をまとっている。シャツにはプレッピーな配色の生地を組み合わせたパッチワークやラッフルを施し、伝統的なアイテムにロマンティックなムードを重ねた。
さらに、ヴィンテージ調のバーシティジャケットをはじめとするカレッジウェアには、手刺繍やクラフト感のあるディテールを加えた。巧みなパッチワークや職人技による装飾は、一着ごとに異なる個性を生み出している。
特に印象的だったのは、不均一さを価値として捉える姿勢だろう。均質な完成度を追求せず、手仕事の痕跡や揺らぎを意図的に残すことで、アイテムに温度や物語を与えていた。
プレッピー、スポーツ、アウトドア、クラフトマンシップ。本来であれば異なる文脈に属する要素を自然につなぎ合わせながら、クラシックの枠組みそのものを少しずつ押し広げていく。その姿勢は、ラルフ・ローレンが長年掲げてきた「クラシックでさえも境界を広げることができる」という信念を改めて表していた。
今季のショーを通してあらためて浮かび上がったのは、異なる文化や時代の要素を取り込みながらも、それらをひとつのスタイルとして成立させる編集力だった。テーラリング、スポーツ、クラフト、プレッピーという多彩な要素は、ひとつの視点を通して有機的に結びつき、ブランドならではの世界観を形づくっている。
そのなかで日本の刺し子が重要な役割を担ったのは、手仕事が持つ温度や時間の蓄積が、このコレクションの根底に流れる“本物らしさ”と深く響き合うからだろう。古いものを受け継ぎ、着る人の個性によって育てていく。そうした感覚は、アメリカントラッドの精神とも遠くない。
2027年スプリングコレクションは、長年培ってきたクラシックの輪郭を保ちながら、その内側に新しい文化の気配を迎え入れたコレクションだった。アメリカントラッドの旅路は日本のクラフトへ。タイトルに掲げたその言葉は、ものづくりや価値観が交差する今季のテーマを象徴しているようにも映る。
アメリカ西部からイタリアの湖畔へ、そして日本の手仕事へ。今季の旅路は、ラルフ・ローレンが愛してきた風景とクラフトマンシップを結びながら、自らのクラシックを新たな時代へと導くものだった。
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- Edit & Text : Yukako Musha(QUI)










































