ファッション業界人が注目しているブランド図鑑 vol.5【J】
ここでは、ファッション業界人100名が注目しているブランドを紹介。
大御所ブランドから、新進気鋭ブランドまで、業界人ならではの視点にも注目したい。
JIAN YE — 岡﨑 陸大 / 4K PRESS
2021年にデザイナーのスゲノ コウスケによって創設された<JIAN YE(ジェン イェ)>。ゲーム性や機能性、そしてアジアンテイストを意識したデザインが魅力的です。3Dのスキャンデータやイラスト、ビットマップを用いて独自の世界観を表現していて、ビジュアルクリエイション等のアウトプット面でも目が離せません。コレクションのテーマ性と洋服の2面性(2way等)も面白いです。
JIAN YE
https://www.instagram.com/jianye.official/
JIYONG KIM — 椋田 暁 / 伊勢丹新宿店 メンズ館6階 メンズクリエーターズ バイヤー
2025春夏から伊勢丹新宿店 メンズ館6階 メンズクリエーターズで取り扱い開始予定のブランドです。特筆すべき点は2つ、まずはブランドを象徴する「サンブリーチ」という太陽光の日焼けによる退色だけで色彩を表現する手法についてです。サステナビリティの観点でも優れていますが、何より長い時間をかけて自然とデザインが出来上がる雄大さに惹かれます。もう一つは、服のパターンワークです。ルックやECなどでは、前述した柄に目がいきがちですが、着用した際のシルエットやフォルムも、唯一無二だと感じます。
JIYONG KIM
https://www.instagram.com/jiyongkim_official/
_J.L – A.L_ — 野澤 圭介 / ELIMINATOR BUYER
バイヤーのみならず、様々な企業やブランドも注目しているであろう<_J.L – A.L_ ( ジェイラル )>。
デザイナーのJEAN-LUC AMBRIDGE LAVELLE ( ジャン=リュック・アンブリッジ ) はロンドンを活動拠点とし、元々はファッションではなく、グラフィックデザインやスペキュラティブデザイン※1を学んでいました。
JEANにとっての転換期は世界がパンデミックによって落ち込んでいた時です。ロックダウン中でも家で時間を持て余す事なく、好きなファッションデザインを追求するチャンスだと思い、服作りに関して独学で習得。パターン製作に欠かせないソフトウェアのCADを使いこなす技術を身に付け、同時に縫製も出来るようになったというのがデザイナーに至るまでのプロセスです。その後、自分で形にした数々のデザインをインスタグラムへ投稿。僕もジェイラルを見つけたのはその頃でした。テクニカルな縫製と実験的なデザインを試みているようなヴィジュアルに心惹かれて彼を追いかけましたが、どれだけ調べても世界中どこのショップでも販売している様子がなく、何者なんだろう?とずっと思っていましたが、ようやくAW22より本格始動。AW24で5シーズン目を迎え、世界的に注目を集めています。
デジタルを駆使すれば多くは実現を可能とする現代社会だからこそ、このような器用なニュージェネレーションが現れる時代なのかもしれませんね。
ファッションを本格的に学ばず、デザイナーのもとでの経験も無い人間がどこまでファッショニスタを感動させる事ができるのか?バイヤーとしてはそこを良い意味で裏切ってもらいたい、と期待しています。
ファッションデザイナーの一般的なプロセスを通ってきていないからこそ、セオリーや固定概念に縛られる事のない自由度がある。しかしながら自由度があってもメンズファッションの基本軸を全く無視し単に突飛な物を作っては、多くの他者からの共感や賞賛、そして影響は与えられず、継続性は生み出せません。
支持されている理由の一つとしては、テクニカルウエアを求める流れによるものかと思います。事実、<_J.L – A.L_>はテックブランドに括られる事が多いですが、単なるテックブランドではなく、機能性にクラシックさやスポーツ、ユニフォームなど様々な要素をミックスし、さらに自身のシグネチャーである有機的モチーフをパターンやカラーパレットに反映させ、個性のあるプロダクト作りに繋げている点が他との違いであり、支持を加速させているポイントかと思います。
※1. スペキュラティブデザインはRCAの教授であるアンソニー・ダンによって提唱されました。スペキュラティブデザインは問題解決ではなく「問題を提起するデザイン」です。「スペキュラティブ」とは日本語で「思索する・推測する」という意味であり、スペキュラティブデザインは「未来について考えるきっかけを提供する」事を目的としています。
_J.L – A.L_
https://www.instagram.com/_j.l_a.l_/
Julie Kegels — 宮崎 典子 / stylist 、高野 公三子 / 明治大学特任講師 , 「ACROSS」シニアエディター、荻生すみれ / 阪急百貨店 モード商品部 バイヤー【3名選出】
宮崎 典子 / stylist
既に注目されているかと思いますが、2024秋冬コレクションでデビューしたブランドです。
久しぶりにドキドキと高揚するような「この服どうなってるの?」系のスタイリングとアイテムのラインナップに、例にもれず、私も心を掴まれた一人です。実際に1点1点のアイテムを見ると手持ちのワードローブにもすんなり馴染む、もしくはアクセントになり得るアイテム展開に唸りました。遊びがありながらも品があり、難易度が高そうですがそれに挑みたくなる。これは何がなんでも絶対ゲットせねば!とエプロンスカートを購入しました。一生物になる予感がしております。同じく捻りの効いたバッグカバー、ブローチ、ソックスなど徹底したこだわりを感じるアイテム展開。どれもをとってもコレクションのスパイスになり、世界観が反映されていて、全アイテム「気になるっ!」と思わされました。これからの展開がとても楽しみです。
高野 公三子 / 明治大学特任講師 , 「ACROSS」シニアエディター
パリ・マレ地区の路地裏にある小さなショップのウィンドウ越しに披露されたデビュープレゼンテーション「50/50」がツボ!
ファッションが「見る、見られる」という個人的な視点と他者からのイメージなど多層なものであることをコンセプチュアルに表現していて(服そのもののクォリティも高い!)、久しぶりにアントワープ派のエッセンスを感じました。
荻生すみれ / 阪急百貨店 モード商品部 バイヤー
2024秋冬よりスタートした26歳の若手デザイナーによる新星ブランド。今季はサーフとエレガンスの要素が落とし込まれたラインナップが新しく、クラシックながら今のムードにもぴったりなアーガイルのアイテムが個人的にヒット。小物も秀逸で、半透明のバッグカバーやトング型のニーハイソックス、メンズのスイムウェアからインスパイアされたベルトなど、今すぐに身に付けたいプラスオンアイテムも豊富でした。今後も遊び心あふれるジュリーのクリエイションから目が離せません。
Julie Kegels
https://www.instagram.com/juliekegels/
JUUKIFF — 塩山 喜里恵 / THE WALL PR
<JUUKIFF(ジューキフ)>は2021年に韓国にて立ち上げれた、ニットウェアを中心にファッションと環境のバランスを追求したブランドです。限られた素材の中で展開される多様なアイテムや、着用する人に寄り添う着心地の良いデザイン、環境に配慮し長期的な視点で製作される生産過程に共感しています。その中でアンニュイな雰囲気を纏うビジュアルに心惹かれ、今後が楽しみなブランドとしてピックアップしました。