Ami Paris 2026年春夏コレクション、多様なスタイルで描く、都市で過ごす人生
日常と歴史が交差し、都市生活のリアリティを象徴するこの空間において、<Ami Paris>は「人生」というテーマを象徴的に描き出した。
「Ami, c’est la vie(アミ、それが人生)」というデザイナーのアレクサンドル・マテュッシの言葉どおり、今季のコレクションは都市で生きる人々の多様な姿を捉え、それぞれの人生と個性を反映したワードローブを提案している。
ショーは、モーリス・ラヴェル作曲の「ボレロ」の旋律とともに始まった。
単一の旋律が反復されながら、徐々に楽器が重なりクレッシェンドしていく構成は、“繰り返しの中にある美”という<Ami Paris>のタイムレスな哲学と深く共鳴する。
そして、今回<Ami Paris>が表現しようとした「人生」もまた、そうなのだろう。
同じような日々が繰り返されているようでも、経験や出会いを重ねることで少しずつ厚みが増し、気づけば豊かさが生まれている。
モデルたちは、ルイ14世の騎馬像を中心に円を描きながら歩く。通常のランウェイのように一人ずつ歩いてはけるのではなく、次第に人数が重なり、最終的には54名が輪となる。
まるで都市の中で人々がすれ違い、やがて同じリズムで動き出すかのように、ショーは静かに始まり、やがて共鳴する群像へと展開していった。
それぞれ異なるスタイルを纏いながらも、都市の風景の一部として共存していく姿は、「すべての人の人生を祝福する」という<Ami Paris>からのメッセージそのもの。
ルックのひとつひとつを見ても、多様で個性豊かなスタイリングがその人自身を浮かび上がらせる。
シャツの襟の片側だけが上になっていたり、シャツテールの片方だけインされたレイヤード、ラフに腕まくりされた袖など、日常に潜む“ズレ”や“崩し”が、エレガンスに昇華されている。
リネンやオーガンザ、ニットのレイヤードが生み出す軽やかさと奥行きは、カジュアルとエレガンスの絶妙なバランスを体現しており、特にオーバーサイズのシャツをニットに重ねるスタイルには個人的にも挑戦したくなる魅力があった。
また、エレガントな装いにビーチサンダルを合わせたルックがある一方で、パンプスと合わせたクラシカルなスタイルも登場。他にもスケーターシューズや革靴といった足元の選択のバランス感覚が、その人物像までも描き出すようで興味深い。
シャツの着こなしや袖のまくり方、小物の選び方、靴の合わせ方、日常のささいな着こなしの違いから、その人の人生が自然とにじみ出てくる。 伝統と革新が交差するヴィクトワール広場という舞台で、<Ami Paris>は“街=人生”という視座を通じて、「服とは生き方であり、そこにこそ美が宿る」というメッセージを見事に描き出した。
- Text & Edit : Yusuke Soejima(QUI)