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日本のストリートシーンを席巻したGDCが果たす再始動の全容を熊谷隆志が語る|GDC 熊谷隆志

Mar 6, 2025
1998年にローンチし、熱狂的なファンを獲得しながら惜しまれつつ2010年に熊谷がディレクターを離れた<GDC(ジーディーシー)>。2025年、約15年の時を経て、ブランドの創設者でありスタイリスト、フォトグラファー、ディレクターとして活躍する熊谷隆志は復活を宣言。QUI編集部のスタッフもファッションに多感な時期に影響を受けたブランドということで熊谷にインタビュー。復活の経緯やこれからのクリエーションについて話を聞いた。

日本のストリートシーンを席巻したGDCが果たす再始動の全容を熊谷隆志が語る|GDC 熊谷隆志

Mar 6, 2025 - FASHION
1998年にローンチし、熱狂的なファンを獲得しながら惜しまれつつ2010年に熊谷がディレクターを離れた<GDC(ジーディーシー)>。2025年、約15年の時を経て、ブランドの創設者でありスタイリスト、フォトグラファー、ディレクターとして活躍する熊谷隆志は復活を宣言。QUI編集部のスタッフもファッションに多感な時期に影響を受けたブランドということで熊谷にインタビュー。復活の経緯やこれからのクリエーションについて話を聞いた。

前例が多くなかったスタイリストによるブランドの立ち上げ

—熊谷さんが1998年に<GDC>を立ち上げた当時、周囲からの反応はどうだったのでしょうか。

熊谷:スタイリストという職業柄、数多くのブランドの服を見てきてるわけじゃないですか、それらのいいとこ取りをするように思っている人もいたみたいです。その一方で、ブランド設立当初からTシャツが飛ぶ様に売れていくので、周囲の仲間やオーディエンスからは支持されている実感はありましたね。

—当時スタイリストがブランドを立ち上げるのは珍しいケースだったのでしょうか。

熊谷:自分が最初だったかどうかは定かではないですが、前例は多くなかったような気がします。

—私の中学時代のファッション好きはみんな<GDC>のTシャツを着てました。

熊谷:中学生で<GDC>を着ていたとしたら、なかなかの早熟ですね(笑)。僕はもちろんオリジナルで勝負するつもりで<GDC>をスタートさせました。Tシャツに落とし込んだ造語は自分で生み出してプリントしていたんですけど、それがすごく売れたんです。

—独特なワードセンスで生み出す造語にファッション好きは心をくすぐられたんでしょうね。熊谷さんはさまざまなカルチャーに精通しているので。

熊谷:昨今のように答えがスグに分かる時代ではなかったので、どんな意味なんだろうって興味をもってもらえたり、面白がってくれたのかもしれないですね。カルチャーの側面で言うと、サーフィンやゴルフのイメージが先行しているかもしれませんが、それらは<GDC>をやめてから始めたことなんです。

—<GDC>をやめてからサーフィンなどを始めたのは何か理由があったのでしょうか。

熊谷:全力で突っ走っていたのでやり切った思いもどこかありました。それで一度ペースを変えたいなと。住環境も変えてみたり、海の側に引っ越したので以前から興味のあったサーフィンもリフレッシュ感覚で始めたんです。

あらためて全世代に刺さるブランドをやりたいと思った

—2025年からリ・ローンチされますが再始動しようと思ったのはどうしてでしょうか。

熊谷:これまでもブランドのプロデュースやディレクションは幅広くやらせてもらっていて、自分でも<NAISSANCE(ネサーンス)>というブランドもやってきましたが、年齢を重ねて自分の活動を多方面ではなくひとつに集約させたいと思ったんです。<NAISSANCE>でやってきたことも吸収して、若者から大人まで全世代に刺さるようなブランドをやるなら<GDC>だなって。

—<GDC>の再スタートでブランドコンセプトに進化や変化はありますか。

熊谷:僕が着たいと思う服を作っていくだけで、コンセプトに変化はないです。ただ、当時に比べると僕と同世代の大人たちも着れるアイテムが増えているかもしれません。

—アイテムのラインナップなどは変わりますか。

熊谷:<GDC>の往年のファンをあらためて大切にしたいという気持ちがあるのでオリジナルTシャツの復刻なども含めてラインナップの拡充は考えています。一方で昨今のファッションのムードや気分を取り入れたアイテムは必要不可欠です。なので、ラインナップはあらゆるカルチャー、あらゆる世代の人たちが納得してくれるコンテンツを提供したいと思っています。

—熊谷さん自身が着たいと思う服は年齢とともに変わってきていますか。

熊谷:それはもちろん変わっていますよ。ネイティブアメリカンのようなファッションが好みだった時代もありますが、今はヴィンテージのスタイルや、昔のハリスやエミスフェールのようなフレンチのスタイルも気分です。この2つの要素のミックス感は僕や35サマーズの欣児さんが得意なジャンルかもしれない。余談ですが、ベルトと革靴は大人の装いに欠かせないと思っています。ファッションにおいて楽であることを優先してしまうと、かっこよく着こなすための体型維持もできないので。

—熊谷さんのキャリアからするとファッション業界にはかなりの友人、知人がいらっしゃると思いますが<GDC>を復活させることに対してどんな声がありましたか。

熊谷:「うわぁ」って、苦笑いされることもありますよ(笑)。<GDC>がブランドとして絶好調だったときにやめたのに、また始めるんだって、って驚く人が多いからかな。ただ、どんなことでも絶好調ピーク時にやめるのは僕の癖でもありますし、そのあたりの感覚は周りも分かってるハズ。でも、今回の<GDC>はヴィンテージの要素を取り入れたり、自分が通ってきたアメリカとヨーロッパのファッションをミックスさせたり、かなり複合的になるので常に新鮮さがあると思っています。それだけに止まらず、長くやり続けるつもりですよ。

—熊谷さんが通ってきたファッションというと引き出しはかなり多そうで期待してしまいます。

熊谷:多いかもしれませんが忘れていることだらけです(苦笑)。でも、引き出しを開けることでいろいろと思い出すでしょうね。こういうインタビューも口にすることで、自分がやりたかったことを再確認できるのでありがたいです。

コラボレーションに負けないメインラインを作りたい

—熊谷さんがファッションに目覚めたのはいつ頃ですか。

熊谷:母親の影響もあってか、小学生の時点ですでに洋服に興味を持ってました。中学生の頃には地元の盛岡にあったガルフというセレクトショップに通うようになって、早い段階でインポート、デザイナーズのブランドも着るようになったし。スタイリストという仕事を選んだのはデザインの勉強のためにパリに留学したのがきっかけですね。

—そのきっかけとは。

熊谷:今も第一線で活躍している日本のトップスタイリストとパリで知り合って、その方が雑誌の撮影に誘ってくれまして。その後、ファッション誌の創刊に関わったり、大型の企画を任されたりしはじめたと思います。

—フォトグラファーとしても活動されていましたが、それはどういう経緯だったんですか。

熊谷:スタイリストとして1年、2年と全力集中でやっていたら雑誌からも大きな企画を任されるようになりました。そういう企画は一流のフォトグラファーさんを起用するので現場をご一緒する機会も増えて。こうした現場での経験から徐々に自分でも撮ってみようかなと思うようになったんです。当時写真はレイク・タホ名義で活動していたので、その頃の仕事のクレジットはスタイリストが熊谷隆志で、フォトグラファーがレイク・タホでした。

—服のデザインなどクリエーションと向き合う姿勢はどんな感じなのでしょうか。

熊谷:服を作っている途中段階からSNSにアップするビジュアルがすでに浮かんでいます。スタイリングもですし、ソフトフォーカスでいこうと撮影のやり方まで。良いトップスができたから、それに合わせやすいボトムスも作るという方法ではなく、ひとつひとつが主役を張れる服を作っていきたいです。

—コラボレーションもやりますか。

熊谷:ありがたいことに、「<GDC>がファッションの青春だったので熊谷さんと一緒に何かをやりたい」って言ってくれるブランドも多い。なので、積極的に取り組んでいく予定ですし、すでに取り組みが決まっているブランドもいくつかあります。まだ詳細をお伝えできないものも多いんですけど(苦笑)。

—<GDC>の再始動ということでQUIとしてはこのインタビューに対しても前のめりだったのですが、熊谷さんはすごく自然体だなって感じました。

熊谷:僕の人生はそんな感じですよ。いつもフレキシブルで自然体(笑)。

—QUIの読者はファッションの世界を目指している若い世代が多いのですが、熊谷さんからメッセージのようなものをいただけたら。

熊谷:ブランドや古着が好きな若い子たちからはファッションが好きだっていうピュアな想いが伝わってくる。蘊蓄って知識さえ仕入れたら誰でも言えたりするんですけど、本当に好きじゃないと気持ちは伝わってこないですからね。服好きの若い子のYouTubeを観て「今はこれが熱いのか」って、僕が参考にさせてもらっているぐらいです。服好きの若者たちは僕の目にはいつもキラキラしているように見えますね(笑)。

オフィシャル HP:https://gdc.tokyo/
Instagram:@gdc_jp

  • Photograph : Masamichi Hirose
  • text : Akinori Mukaino(BARK in STYLE)
  • edit : Yusuke Soejima

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