xiangyu初の自主イベントを本人と振り返り!|「香魚荘827」ライブレポート
2018年の9月から活動をスタートした日本のアーティスト。xiangyu(シャンユー)という名前は、本名の「あゆみ」に由来して中国語の「鮎」から名付けられた。ラップ、テクノ、ベースミュージックを基礎に、幅広い音楽を展開する。
会場に入ってすぐの物販スペースから、香魚荘の独特の世界が繰り広げられる。天井からはみかんが吊され、いたるところにxiangyuが育てている植物が。
以前のインタビューでも「イチオシの人を集めて作る、実験みたいなイベント」と話していたように、「香魚荘827」の出演者はとにかく多彩。ファッションデザイナーから古本屋の店主まで、まずはそのメンバーをご覧いただきたい。
・xiangyu(主催)
・テニスコート(コントユニット)
・半澤慶樹(ファッションブランドPERMINUTEデザイナー)
・トリプルファイヤー(音楽家)
・ぎゅうにゅうとたましい(ラッパー)
・コメカ(古本屋「早春書店」店主)
・酒向萌実(クラウドファウンディング会社社長)
7組の出演者の中でミュージシャンは半数以下。いったいどんなライブになるのか…。会場にはメインのライブステージのほかに、トークステージが設けられていた。
【トークステージ】半澤慶樹×神谷圭介(テニスコート)×xiangyu
ライブ前に、イベントの主旨を伝えるオープニングトークがスタート。xiangyuの文化服装学院時代の友人であるPERMINUTE(パーミニット)デザイナー半澤慶樹と、テニスコートの神谷圭介がお相手。
ファッションデザイナーである半澤さんがいったい何をするのか興味津々だったが、服の展示もなく、ライブTシャツを作るわけでもなく、xiangyuの実家で育てたアロエを使ってBGMを流すという離れ業を披露。
〜xiangyu振り返り〜
半澤くんには、トークショーと、物販フロアの音楽をまるっとお願いしました。ファッションをメインに活躍されているけど音楽もすごく好きな人なので、服じゃなくて音をお願いしても面白いんじゃないかと思い、ほぼ丸投げで空間の音楽をお願いしました。私も彼も、植物から音をとるのにすごく興味があったので、今回は私が育てた植物達から。これ、すごく複雑な装置なんですよ!やっぱり場の雰囲気作りには音楽がすごく大事だから、彼の音楽のおかげでリラックスしたやわらかい空気ができたと思っています。
【ライブステージ】ぎゅうにゅうとたましい
つづいては、ぎゅうにゅうとたましいのライブ。香魚荘はxiangyuが大家をつとめるアパートということで、「香魚荘の家賃を2カ月滞納している人」をイメージしたパジャマ姿で登場。
〜xiangyu振り返り〜
ライブももちろんですが、物販もすごく面白かったです。あんなに面白い曲を作れる人だから、もっと色々な引き出しがたくさんあるだろうとずっと思っていて。何と言っても「ぎゅうにゅうとたましい」という名前がとてもよいので、「たましいの安売り」っていう物販とかいいんじゃない?ということに。一番驚いたのは、当日この「たましい」の値札を全てブルーシートに貼り付けて持ってきてくれたこと。いろいろな場面で彼のキャラクターのよさを感じられる日になりました。
【トークステージ】コメカ×xiangyu
国分寺にある古本屋「早春書店」店主コメカとのトーク。実家の目の前が図書館というxiangyuは、実は大の本好き。先日「早春書店」で買った『未開人の性生活』が大ヒットだったそう。
〜xiangyu振り返り〜
「早春書店」はすごく好きな本屋さんなので、コメカさんが出演してくださってうれしかったです。ほとんど前打合せもしなかったですが、本の話から自分たちで交流の場を作る話まで。これ、永遠に話していられるなと思いました。ライブ会場で販売していた本のセレクトも面白くて、お客さんにも好評だったみたいでよかったです。私の本好きっていう一面もみんなに知ってもらえてうれしかった。コメカさんとのトーク、本当に楽しかったので続きをどこかでやりたい!
【ライブステージ】トリプルファイヤー
トリプルファイヤーの吉田がどんな風に歌詞を書いているのかすごく気になっているというxiangyu。ライブ中は客席でファンと一緒に身体を揺らしていた。
〜xiangyu振り返り〜
トリプルさんは曲はもちろんですが、MCも雑誌でやってるコラムも全部が面白くて大好きです。トリプルさんのライブのおかげでイベントがキュッと締まった感じがしました。MCで吉田さんがなんか不思議なことを言っていて、その時他のメンバーが全員「無」みたいな状態になっている構図がすごい好きなんですよ。鳥居さんとかずっと楽器見てますし(笑)。楽屋でトリプルさんとぎゅうたまくんが談笑していたのとか、みんなリラックスしていて、ほんと家みたいな感じでよかったです。
【トークステージ】酒向萌実×ぎゅうにゅうとたましい×xiangyu
みんな25歳という同い年3人のトーク。25歳にしてクラウドファウンディング会社の社長を務める酒向萌実(さこうもみ)は、19歳のときからの友だち。同世代ならではの親トークなどで盛りあがる。
〜xiangyu振り返り〜
もみちゃんとぎゅうたまくんって、普通に暮らしていたら出会わないかもしれない2人なんだけど、でもなんとなく同じ匂いがしたんですよね、勝手になんですが(笑)。なのでこの2人でトークをしたらいいんじゃないかなと思いました。2人は当日初顔合わせだったのに、案の定その場で意気投合していたし、やっていることはそれぞれ違うけど、同じ25歳、がんばっていくぞ!っていう気合いは似ていて。2人で謎の結束みたいなのが生まれてました(笑)。
【ライブステージ】テニスコート
とにかくおもしろい!とxiangyuがイチオシするコントユニット。スタンディングでコントを見るという異様な光景の中、観客はみなナンセンスな世界感に引き込まれた。
〜xiangyu振り返り〜
テニスコートさんも、トリプルさんと同じく、出演していただいたおかげですごくイベント自体が引き締まったなと思いました。私が知っているコントをしている人達の中で間違いなく一番面白いから、どうしても一緒にイベントをやりたかった!普段の神谷さんは近所のお兄ちゃんみたいな感じで、吉田さんと小出さんは年に一回会うか会わないかくらいの親戚のお兄ちゃんみたいな感じ。会う頻度が高いと色々話せるけど、時間があくとまた初対面に戻っちゃう感じの距離感です(笑)。
【ライブステージ】xiangyu
いよいよ大トリ、xiangyuのライブ。新曲の「ピアノダンパー激似しめ鯖」「ひじのビリビリ」を含む10曲を歌いあげる。満員御礼の会場を眺めて、「こんなお客さんパンパンの中で歌うのはじめて」とxiangyu。大好きな人といっしょに作りあげたイベントをたくさんの人に見てもらえたという感動と興奮が伝わってきた。
−セットリスト−
ヒューマンエボリューション
Go mistake
ピアノ激似しめ鯖
プーパッポンカリー
菌根菌
31
ハマエゲ
ひじのビリビリ
餃子
風呂に入らず寝ちまった
Go mistake(アンコール)
プーパッポンカリー(アンコール)
〜xiangyu振り返り〜
風呂に乗った時ようやくみんなの顔が見えて、一年前、音楽活動をはじめた時には想像もつかなかったくらい後ろまでパンパンで。こんなにもたくさんの人に支えてもらっているんだなと思い、本当に泣きそうでした。もともとは服で表現していたけど、それ以上に今は音楽が楽しくて仕方なくて。そう思えるのはこうやって日頃支えてくれている人たちのおかげなので、全員にハグしたい気持ちでした。
このイベント開催にあたって、みんな来てくれるかな?って最初はすごく不安だったんです。でも予想をはるかに超える人が集まってくれて、なにより、お客さんも出演者も、みんなが楽しそうにしてくれていてうれしかった。すごく幸せな時間でしたね。
自分のパフォーマンスを向上させたい、もっと大きい舞台に立てるようになりたいと改めて強く思いましたし、自分の頑張るスイッチが入り直した気分でした。
今回の香魚荘で、自分のライブに対する観点が変わったというか、ライブを含めて音楽って生き物なんだなぁといつも以上に感じたんですよね。自分自身も生き物だし、パフォーマンスも、オーディエンスも全てが生き物。だから「今日はこういう風にライブするぞ!」と思って臨んでも思い通りにいかないこともあって、でも思った以上のことができることもあって。ライブをはじめたばっかりの頃はそんなこと思えなかったんですが、今はそういう、自分と、音楽と、その場の対話というか、その日にしか起こり得ないようなものも全てひっくるめて楽しいと思えるようになりました。
いま自分が表現したいxiangyuはこういうのです!っていうのをその時々で更新して、自分自身も、自分がやっている音楽も、生き物として一緒に成長していけたらいいなって思うんですよね。
私自身はこのイベントを通じていろんな発見があったんだけど、みんなはどうだったんだろう?このイベントに関わってくれた全てのみんなにとって何か新しい発見があったらいいなと思います。
またやりたいな、香魚荘。出演者も増やしたりして、家族が増えていく感じ。なんか、そうやって輪が広がっていったら楽しいと思う!
「仲よくしてくれてありがとう」
このイベントの間、xiangyuが何度も客席に向かって口にした言葉だ。自分の好きな人を集めて、そこで起きる化学反応が見てみたいと言っていたxiangyu。
「xiangyuが好きな人」を通じて彼女自身の人となりが浮き彫りになるような、なんだか披露宴のようなイベントだった。歌を歌うというだけでなく、彼女自身がまるごとエンターテインメントになった夜。ステージと客席の間でも、たしかな化学反応が起きたにちがいない。