ラッパー Kaorukoインタビュー|DJ zeraのDIG THE NEW TUNE ! Vol.01
高円寺はラッパーとしてのホームグラウンド
Kaoruko: zeraちゃんとこうやって話すの恥ずかしいんだけど(笑)。友だちとして普通に飲んだりするのはいいけど、改まっちゃうとね。
DJ zera:そうだね(笑)。知り合ってから1年ぐらいはたつ?
Kaoruko:前からイベントとかで何度か会ってはいたけど、ちゃんと話してからはたぶんそれぐらい。
DJ zera:Kaorukoの第一印象はめっちゃシティガール(笑)。わたしが屋久島出身で…
Kaoruko:わたしは横須賀生まれで、小学校からずっと新宿。たしかにzeraちゃんに比べるとかなりシティガール。
DJ zera:Kaorukoはアーティストとしてもシティガールの印象で、トラックもリリックも都会的でかっこいいなって。
Kaoruko:ありがとう。(トラックメーカーの)gu^2(ググ)さんもいればよかったね。
DJ zera:gu^2さんと曲を作るようになったきっかけって?
Kaoruko:この部屋の主と一緒に飲みに行ったときに、音楽がやりたいんだったらちょうどいい人がいるよって紹介してくれたのがgu^2さん。会ってすぐ曲作りを始めたんだけど…1年半ぐらい前かな。
最初のころはずっとこの部屋で、それも飲み行って深夜ここに帰って遊びながら録音して、自宅に帰って寝てまた集合してみたいな。ずっと高円寺にいるような生活を去年の夏はしてた。
DJ zera:うん。ずっと一緒にいたって言ってたよね(笑)。
Kaoruko:すごい楽しかった。いまはgu^2さんの家で録ることが多いな。
DJ zera:私の中でgu^2さんは、ヒップホップじゃなくてベースミュージック、クラブミュージックのイメージだったけど。でも高円寺でみんなで集まるようになってからは、よく行くバーでヒップホップがずっと流れてたり、あとはKaorukoが教えてくれたりね。その影響で、みんなそういう音楽を聴くようになって。私も前まではヒップホップはぜんぜん聴かなかったもん。
いまのスタイル、ヒップホップでいこうっていうのは最初から?
Kaoruko:うん。それまでも歌はやってたけどラップはやったことなかったから、最初に作った曲はたどたどしくて完全にドシロウト。逆にそれがいいかなとも思ったけど、今回のEPで新しく入った曲は声が違いすぎてめっちゃ面白い。
どこにぶつけたらいいかわからない思いをリリックに
DJ zera:じゃあ、その1st EPについて聞いていい?
Kaoruko:1曲も聴いてもらえてなかったらどうしよう。
DJ zera:ちゃんと聴いてるから(笑)。ライブも観たし。
Kaoruko:そうだった(笑)。
DJ zera:タイトルの『Starting now』はKaorukoとしての第一歩という意味でもあると思うんだけど、EP作るってのはいつぐらいから?
Kaoruko:EPの前に『ミニッツメイド』って曲のMVを出してて。それが2018年の11月。ほんとは翌年の3月ぐらいにEPをリリースしたかったんだけど、長引いて5月になっちゃった。
6曲ぐらい入れる予定でいろんな曲を同時にレコーディングしたんだけど納得いかない曲もあって、結局すでにサウンドクラウドにあげてた『ミニッツメイド』と『テンタクルール』に、新曲の『Accept myself』と『paranoid』をプラスして4曲組にしたの。
DJ zera:EPの聴きどころは?たとえば1曲目の『Accept myself』。
Kaoruko:最初に作った2曲はgu^2さんにぜんぶやってもらってたんだけど、『Accept myself』と『paranoid』は自分で歌詞を書いていて。ちょっと恥ずかしいんだけど、以前の活動のこととか不満に思ってることとか、どこにぶつけたらいいかわからない感情をめっちゃ書いた気がする。
『paranoid』はメロディがキャッチーなんだけど、トラックを聴いてたらどんどん歌詞が浮かんできて、何も考えずに書けちゃった。恋愛の歌みたいになってるけど、その時恋愛してなかったし、なんでアレが出てきたのか分からない。
DJ zera:書き上がってびっくりみたいな?
Kaoruko:そうそう。曲を聴いた子から、彼氏できたのって聞かれたりして(笑)。文字に起こしたら分かりやすい曲だとは思うよ。
DJ zera:リリックはいつ書くの?
Kaoruko:私めっちゃ夜型だから、夜とか明け方にしか書けないな。あとお散歩しながらメモしたりとか。
DJ zera:大事にしてることってある?
Kaoruko:リアルなこと。フェイクはやだから等身大で。
DJ zera:たしかにKaorukoって飾らない感じがするよね。
Kaoruko:まじで普通の人間過ぎて、普通のことしか書いてないけど。うまいこと言ってやろうみたいのはないね。
DJ zera:そういうところがいいと思う。自分からしたら育った環境とか全部違うから、Kaorukoが等身大で表現すること自体がKaorukoらしさに映る。
Kaoruko:うん。いま普通って言ったけど、中2病こじらせて「私はみんなと違うから」って思ってた時期もあって。そういう気持ちを思いだして書いたりもする。
DJ zera:いまはそういう気持ちはないの?
Kaoruko:あったらやばくない(笑)? でも昔は自分のフラストレーションをツイッターとかにめっちゃ書いてて。それってキモいじゃん。だったら歌にしちゃえばいいんだって。そしたらなんでも書けるようになってサイコーサイコー!
DJ zera:健全だね(笑)。今後のリリース予定は?
Kaoruko:先日3曲レコーディングしたんだけどMVと一緒に出したくて、もうちょっと時間かかるかも。
Karuko『ミニッツメイド』MV
アイドルのエンターテイナーぶりにやられた
DJ zera:普段はどんな音楽を聴いてる?
Kaoruko:日本のヒップホップアーティストがきっかけでラップを始めたんだけど、もともとはアイドルがめっちゃ好きで。ジャニーズも好きだし、モーニング娘。も好き。いまでもそういう曲はジャンルレスで聴きまくる。
DJ zera:アイドルの魅力は?
Kaoruko:曲とか分かりやすいじゃん。盛り上がるポイントとか。聴いてて単純にアドレナリンがバーって出てくる感じが好き。
DJ zera:じゃあ昔から現場にも?
Kaoruko:うん、めっちゃ行ってた。中学の時は完全にジャニオタで、推しメンとかじゃなくてコンサート自体が楽しすぎ。みんなのエンターテイナーぶりがやばくて、ディズニーランドより楽しいって思ってたもん。
それで高校ぐらいからエビ中(私立恵比寿中学)の現場にも行くようになって。ヒャダインの作る曲の衝撃がすごかった。
DJ zera:そのころから自分でも音楽やりたいって思ってたの?
Kaoruko:そうだね。でもヒップホップとか聞くようになったのはいまから2年ぐらい前。リリックとかけっこうリアルで、え、日本なのにこんなことまで書いていいのって(笑)。アイドルじゃあり得ないようなことを書いてたり、そういう自由なところが面白かった。
DJ zera:音楽以外の趣味は?
Kaoruko:うーん、ラーメン食べること(笑)。音楽やってる人って映画とかすごい好きな人が多いでしょ。でもわたしは家にいるときも基本音楽しか聴いてない。暇な時間があっても音楽ディグったり、良い曲と出会ったらその曲をユーチューブで観るぐらいで。逆にさ、zeraちゃんは家だと何してるの?
DJ zera:だいたい家に帰ったらテレビつけて、ゲームするか、Netflixを適当に流すか。
Kaoruko:そっかー。テレビを自分でつけることって一切ないからなあ。
DJ zera:あとはSpotifyのニューリリースをずっと聴いてたり。
Kaoruko:ああ、Spotifyはめっちゃすごいよね。レコメンドの精度が高い。
zeraちゃんはどういう曲聴いてるの?
DJ zera:最近は、前にこの部屋でも聴いたFKJとか。基本ラッパーじゃなくて、トラックメーカーなの。自分でも歌うけど。
Kaoruko:オールマイティーだ。サマソニで観た?
DJ zera:うん、観たよ。あとはMura Masa。トラックがよくてDJしてるころから聴き始めて、もともとはチルトラップとかクラブミュージックって感じだったけど、最近はA$AP Rockyとかラッパーにもトラックを提供するようになって。そういう意味ではヒップホップだけどジャンルレスな感じの曲とかは聴くかな。
服も音楽もすべてがジャンルレスかも
DJ zera:見た目とかファッションに対するこだわりってある?
Kaoruko:1年ぐらい前まではちゃんとオシャレしてたつもりなんだけど、最近はぜんぜん。わたし高円寺いるときはだいたいすっぴんだよね?
DJ zera:うん(笑)。
Kaoruko:しかも寝間着みたいな格好で(笑)。デニムにTシャツ、それで十分みたいな。いまはラフな感じが好きだから。
DJ zera:めっちゃラフになったなって思った。昔黒髪で長かったじゃん?髪の毛がピンクになってから話しかけやすい雰囲気になったよね。
Kaoruko:え、普通逆じゃない?ピンクだよ?鼻ピも開けちゃったし。
DJ zera:んー、確かに(笑)。でもすごく明るくなった気がする。アイコニックだよね。
Kaoruko:ピンクの髪の人ってなっちゃったから変えづらい…傷みすぎちゃって切りたいんだけど。
基本的にボーイッシュな服装が好きだけど、ピンクにしたからたまにガーリーな服を着てみたり。なんかすべてにおいてジャンルレスなのかもしれない。音楽も服も。中学生の時とかロリータ着たりしてたからね。やばいよね。家にまだあるもん。
DJ zera:ホントに!?でも似合いそう。
Kaoruko:いまでもときどき家で着てる(笑)。
いまは歌詞を書くのがすごく楽しくて気持ちいい
DJ zera:いまは友だち同士で活動してるけど、将来的に新しい人とやってみたいとか、レコーディングもスタジオでやってみたいとかある?
Kaoruko:うーん、経験としてはやってみたいけど、わたしはいまの制作環境やメンバーが合ってるし、宅録で全然楽しい。けっこう有名な人でも宅録だったりするから、そんな感じがいまっぽいかなって。
でもいろんな人とやること自体は、刺激を受けられるからね。この前のリリースパーティーに出てくれた「玉名ラーメン」っていうアーティストがいて、その子はまだ18歳なんだけどひとりで曲を作ってて、映像はお姉ちゃんが撮ってるっていう、その時点で興味がやばくて。わたしとはだいぶ違うけど、曲作りとか一緒にやれるならやってみたい。
DJ zera:ヒップホップにこだわりはある?
Kaoruko:なんていうか、ジャンル自体にこだわりがあるってわけじゃないかも。ただ、いまは歌詞を書くのがすごく楽しい。トラックにハマって曲になっていくのがめちゃくちゃ気持ちいいなって。そのうち自分でも曲を作ってみたい気持ちもあるけどね。
- Text : Yusuke Takayama
- Photography : Yasuharu Moriyama