「ぼくチラ。」を仕掛ける“たこあし商工店”って何者?|スタイリスト青木貴志インタビュー
1980年生まれ。服飾専門学校を卒業後、渡英。2004年からデザイナー兼スタイリストとしての活動を開始。数々のCMやMV、アーティスト、タレントの衣装制作及びスタイリング担当。高円寺のセレクトショップ「MACARONIC」を経営し、海外や日本企業のコンサルティングやアートディレクション、プロデューサーを務める。バンタンデザイン研究所で講師も担当。2018年に企画会社TAKOASHI SHOKOTENを設立。
たこ足配線のようにいろんな人を絡めながら、面白いことをやる
−「たこあし商工店」が発足した経緯を教えてください。
青木:CILANDSIA(チランドシア)というブランドをやっている近藤崇さんと10何年くらい仲良くさせてもらっていて、二人で「インフルエンサーといっしょにビジネスをやりたいよね」という話からはじまったんです。
その次に入ってきたのが元アクセサリーデザイナーの小野剛義くん。最後に入ったつるしまたつみくんは、元々僕のお店(MACARONIC)でやっているインフルエンサーイベントに参加してくれていたイラストレーターでした。
たかし・たかし・たかよし・たつみ。4人とも名前に「た」が付くんですよ(笑)。たこ足配線のようにインフルエンサーといろんな人を絡めた企画をやるという意味と、商(ビジネス)と工(クリエーター)両方の側面がある会社という意味合いで「たこあし商工店」と名付けました。
インフルエンサーのパワーを見せつけられた
−最初の企画は「アーTコレクション」ということですが、どんな企画だったのですか?
青木:一定のフォロワー数がいるさまざまなジャンルのイラストレーター、アーティストとコラボレートしてTシャツを作り、ラフォーレ原宿や全国のパルコで販売するという企画でした。MACARONICでインフルエンサーのイベントをやっていた時から、彼らの影響力をまざまざと見せつけられていましたが、やっぱり一人ひとりがメディアになっているので、拡散力がすごいんですよね。
−実際の反響はいかがでしたか?
青木:全国5カ所くらいで展示を行いましたが、反響は大きかったです。イラストレーター本人が来場するわけじゃないのに、どの会場にもファンがたくさん来てくれるんです。イラストレーターさんってあまり顔を出したくない人も多いから、最初のレセプションパーティにもほとんどの人が来ないですし、だから僕も実際に会ってない人がいるくらい(笑)。
ちなみに、たこ足メンバーの小野剛義は、この「アーTコレクション」を面白がってくれて、「何かあれば手伝わせてください」と言ってくれたのが加入のきっかけです。
デザイナーが作った制服×ボクサーパンツ
−「ぼくチラ。」はどういうきっかけでスタートしたのですか?
青木:元々メンバーのつるしまたつみが「制服症候群。」というサイトも運営していたんです。インフルエンサーの女の子に制服を着せて、自分で写真を撮るという連載。彼は制服が大好きらしくて(笑)。ただ、それをどうビジネスにすればいいのかわからないと相談を受けて、そこからインスパイアされて考えたのが「ぼくチラ。」。たこあし商工店はあくまでも“ファッションに特化したインフルエンサー事業”をしないと意味がないと思っているので、ありものの制服じゃなく、ファッションデザイナー達が作ったオリジナルの制服を着せるという形にしました。そこにボクサーパンツのチラリズムを加えて「ぼくチラ。」という企画が生まれ、そんなグラビア連載をどこでやったら面白いか?と考えた時、『週刊プレイボーイ』しかないなと。そこで週プレの知り合いに企画を持ち込んだところ、あっさりと1年間の連載が決まりました。
−制服からチラリとするのはなぜボクサーパンツなのでしょう?
青木:奇抜なデザインの制服とインフルエンサーという組み合わせはすぐ思いついたのですが、もう一つ何かが欲しい。パンチラさせる?でも制服にパンチラってすごくありがち。じゃあ「ブリーフをはいてるのはどう?」とつるしまに聞くと「それいいですね!」となったんですが、ブリーフをオシャレに見せるのはなかなか難しいのと、少しエロの要素が多くなってしまうから出演してくれる子が限られてしまうなと。あくまでも卑猥なパンチラではなく、かっこいい、かわいい、ファッション的なパンチラがポイントだったのと、ボクサーパンツならイラストレーターも参加しやすいなと。デザイナー(制服)×インフルエンサー(被写体)×イラストレーター(ボクサーパンツ)、この掛け算で表現できるのは大きいと思いました。
−いろいろなデザイナーさんが制服をデザインされていますが、依頼するブランドはどう決めているのですか?
青木:特に大人の方には勘違いされやすい企画だと思うので(笑)、この企画の意味をキチンと理解してくれそうな方にお声掛けしています。あとは、まだまだこれからという無名の若いデザイナー達。オーダーとしては、可能な限り奇抜なデザインで、ただ絶対に制服に見えるデザインにしてくれ、とお願いする以外は基本お任せにしているので、毎回仕上がってくるのが楽しみです。
−とくに印象に残ったデザインはありますか?
青木:第一回の衣裳をお願いしたのが、JUVENILE HALL ROLLCALLの入江さんで、もう15年以上の付き合いなんですよね。いつも何かやる時は相談に乗ってくれるし、アドバイスもしてくれる。今回の企画も「青木っぽい企画だよね」と喜んで協力してくれました。制服というとセーラーカラーのデザインが多いんですが、入江さんは全然意識してなかったですね(笑)。けど、スカートのチェックでちゃんと制服らしさが出ていて、可愛かったです。このジャケットは僕も普通に着たいくらいかっこいい。ジュベ×ゆずぽん、っていう意外な組み合わせもいいですよね。
−モデルとなるインフルエンサーさんを選ぶ基準はありますか?
青木:ファッションが好きで、ちゃんとオシャレに見える子。そういう子は、フォロワーさんも感度が高いから、奇抜な制服をちゃんと可愛い、オシャレだと思ってくれるはずですし、中には欲しいと思ってくれる方もいるんじゃないかなと。
たこあし商工店が大切にしていることは、あくまでもインフルエンサーを使ってファッションの可能性を広げる、ということなので、被写体選びはとても重要ですね。
クリエーションだけではない、プラスアルファの付加価値
−「ぼくチラ。」で今後やってみたいことは?
青木:いま、撮影で使用した制服やボクサーパンツ等を販売するイベントを都内数カ所で行なっているのですが、いつか全国各地でやってみたいですね。現状決まっている連載は50回だけど、100回、1,000回と可能な限り続けて、いつかすごいボリュームのデジタル写真集を作りたい。「ぼくチラ。」のファッションショーとかもやってみたいです。
“よいものを作る”という当たり前のことだけではなく、時代に寄り添ったクリエーションとビジネスをしないとどんどん古い人になってしまう。今はCtoCで気軽になんでも買い直せる時代だし、モノを長く大切にするという価値感がどんどん薄れているじゃないですか。そこに例えば、「これ○○○○ちゃんが着てたから大事にするんだ」っていう価値観を与えられたら、その服の価値がちょっと上がったことだと思いますし、それができたら「ぼくチラ。」を続ける意味があるんじゃないかと思っています。