「気に入ったものが、いつのまにか仕事のそばにある。」 写真家・服部恭平|クリエーターの仕事道具 vol.1
使い慣れているから手放せないもの。機能だけで選んだもの。特別な理由はないけれど、気づけばいつも持っているもの。
クリエーターのバッグや仕事場を覗いてみると、作品だけを見ているときには気づかなかった、その人なりの小さな基準が見えてくる。
連載「クリエーターの仕事道具」では、さまざまな分野で活動する人に、普段仕事で使っている10のものを見せてもらう。
第1回は、写真家・服部恭平。
ファッションやポートレートの撮影と並行し、日常のなかで出会う私的なイメージを撮り続けている。
撮影の日に持っていくものから、仕事とは直接関係なさそうでいて欠かせないものまで。
本人に撮影してもらった10の仕事道具を紹介する。

PHOTO: 山根悠太郎
PROFILE
服部恭平
KYOHEI HATTORI / PHOTOGRAPHER
写真家。1991年、大阪府茨木市生まれ。東京在住。ファッションモデルとして活動する傍ら写真を始め、2018年より写真家として本格的に活動。2025年、服部恭平写真事務所を設立。ファッション、ポートレートなどの撮影と並行し、日常のなかで出会う私的なイメージを撮り続けている。
HIS WORDS
——仕事で使うものを選ぶとき、大切にしていることはありますか?
兎に角使ってみることです。使ってみて合うかどうか自分で判断したいと思っています。あと仕事だから写真が変わったりしないので、愛着があるものですね。
——長く使い続けているものに、共通するところはありますか?
長く使えるものがいいですね。物はあんまり増やしたくないです。息苦しくなってしまって、何しているんだろうって。使うものを使うだけ。だからたくさん使えるもので、長くもつものが理想です。
——仕事をするときに大切にしている習慣や、自分なりのルールがあれば教えてください。
こんな自分にお願いしてくれてるんだって思って、精一杯になって自分ができることをやりたいと思っています。あとできるだけみんなと仲良くなりたいです。そして自分がやっていることが伝わればこの上ないです。
01 / WORK TOOL
CAMERA
PENTAX 67II

このカメラで写真を撮っています。大きくて重くて、こいつの言うことなら聞いてやるかという気持ちになります。ウッドグリップがかっこいいね。このカメラで撮れるものが写真になっていって、それが自分にとっては心地よい。バージョン違いとかで4台あります。最近初代はご機嫌がわるい。
02 / WORK TOOL
FILM
Kodak PORTRA 400

いれてるフィルムはこれです。他も気になるけど、何入れたかよくわからなくならないようにこれひとつにしています。これで撮りたいものが撮れます。冷蔵庫にたくさんいれているので狭いですね。
03 / WORK TOOL
CAMERA BAG
mont-bellの古いやつ

代官山のGTカメラというカメラ屋で見つけました。カメラとフィルムとか周辺などなどがちょうどすっぽり。mont-bellは機能が美しく備わっていて好きです。ショルダーなのに腰で固定できるベルトまでついてます。3個ストック。
04 / WORK TOOL
TRIPOD
HUSKY HT-1030 3段

いつもは車に積んである。重くてしっかり立ってくれる。三脚を倒したり、カメラを落としたりするときっていつも時間がない。ゆっくりやろう。倒してハンドルが割れたときはパーツだけ買って、くっつけた。クイックシューより、ネジ穴だね。
05 / WORK TOOL
CAR
Renault Kangoo(2009)

毎日乗っています。どこでも行けるね。写真もよく撮る。どこでもスタジオになるんです。友達の嶌村吉祥丸くんがおすすめしてくれて買いました。パリに行くとたくさん走っていて、みんなボロボロで、見習ってこすったりぶつけたりしています。あんまりカスタムはしていません。自分過ぎると距離の取り方が難しくなってくる。
06 / WORK TOOL
CLOTHES
COMME des GARÇONS

よく着ています。仕事着ではないけれど、単純に着ている日が多いです。着ていると心が休まります。ここに心があったのね。最近はパリでメンズのショーを見せてもらっていて、それが本当に。本当に感動するんです。お店でも買うし、古着も着ます。色んなギャルソンの店舗でお買い物するチャレンジしています。
07 / WORK TOOL
BOOKS
古い雑誌とか写真集とか

どんどん増えちゃった。写真を見るの好きなので。写真を始めるときに一番見てたのは装苑とかGINZAとかの雑誌でした。ほとんど雑誌と写真集と、少し小説と漫画。本を読んでいるとまだ自分いけるかもって前向きになりますね。自分で本をつくるときはここに入れたい本かどうかも考えます。今欲しいのは本を読む時間です。
08 / WORK TOOL
HOME
古いアパート

お家で写真を撮るので、愛しています。2020年に原宿のBOOKMARCで展示したときに、当時住んでた部屋ではもう無理かもと思って、ここに引っ越すことに。そのときは会社員だったので家賃が倍になっても大丈夫かなって思ってたら、色んなことがあり辞めてフリーランスになることになってしまって。でもなんとかなりました。やりたいことにお金を使えば大丈夫です。広いワンルームで窓が大きくて外が見渡せて、カーペットの部屋がよくて半年探して。でもカーペットはなかったので、友達にピンクを敷いてもらいました。
09 / WORK TOOL
RED SOFA
ligne roset ROSETCalin

アニエスベー青山店2階のギャラリーに特注の赤いソファーが備え付けてあって、そこで写真を撮ったのがきっかけで赤いソファーを買いました。友達が来たらここにいることが多くて、ここで写真を撮ります。
10 / WORK TOOL
OIL-BASED MARKER
ZEBRA マッキー極細

撮ったフィルムに番号をふったり、サイン入れたりするときに使っています。忘れてもコンビニですぐ買えるのがお気に入りです。ペンはスラスラかけて、にじみがないのが好き。こういった子どものときから使っているものをいまだに使っていることがよくあります。
ZEBRA マッキー極細 / ¥132
AFTER THE 10 TOOLS
気に入ったものが、いつのまにか仕事のそばにある。
並んだ10点には、いわゆる仕事道具らしいものと、そうでないものが混ざっている。PENTAX 67II、PORTRA 400、三脚。その隣に、車やCOMME des GARÇONSの服、本、自宅、赤いソファーがある。
服部の話を聞いていると、仕事のために何かを揃えるというより、普段から好きで使っているものが、そのまま撮影の時間にもつながっているように感じる。
たくさん持つより、気に入ったものを長く使う。まず使ってみて、自分に合えば自然と残っていく。今回の10点には、そんな選び方がそのまま表れていた。
HIS WORDS
——今回選んだ10点を見て、ご自身らしいと感じるところはありますか?
仕事をしたくて写真を撮り始めたわけではなくて、写真が好きになってやってきておりまして。仕事のためにってわけではないです。だから専門道具とかたくさん必要なわけではなくて。できるだけシンプルに、気に入ったものだけで僕は満足です。
——10点の中から、ひとつだけ残すとしたらどれを選びますか?
どれがかけてしまっても、バランスがとれなくなって歩けなくなってしまいます。困ります。それくらい大事なものです。
- Edit : Yukako Musha(QUI)