多田美波の没後初となる大規模回顧展「多田美波―光、凛と ゆれる」、東京都現代美術館で開催
多田は、生涯でおよそ200点の彫刻作品と、約500点の建築関連作品を手がけた。公園、駅、市庁舎、ホテル、劇場など、美術館にとどまらない都市空間に作品を残し、ステンレス、ガラス、アクリルといった工業素材や加工技術を芸術表現へ取り入れてきた。
その作品では、無機質な表面に光の反射、透過、屈折、揺らぎが組み込まれ、周囲の環境や鑑賞者の動きに応じて見え方が変化する。多田は光を単なる視覚効果ではなく造形の中心に据え、美術、プロダクトデザイン、インテリア、建築を横断しながら、空間そのものに働きかける表現を展開した。

光造形 1968 皇居・新宮殿、東京 撮影:野堀成美

光造形《瑞雲》1973 リーガロイヤルホテル大阪 ヴィニェット コレクション 撮影:作本邦治
本展では、多田美波研究所の協力のもと、作家自身が「光造形」と呼んだシャンデリアを含む照明作品など約70点を展示する。建築造形のパーツ、写真、スケッチといったアーカイブ資料もあわせて紹介し、素材、光、空間の関係を軸に多田の創作をたどる。
会場には、外光が差し込むアトリウムを含む約1,500平方メートルの地下展示室と、隣接する屋外展示エリアを使用。立体表現への移行を予兆する絵画、初期のブロンズ彫刻、アクリルやステンレスで周囲を映し込む作品、陶板による彫刻、照明の仕事までを展観する。

《Space Eye No.4》1975 多田美波研究所蔵 撮影:多田美波研究所

《Mirage》1989 多田美波研究所蔵 撮影:多田美波研究所

《座標》2009 多田美波研究所蔵 撮影:末正真礼生
現存しない作品や、建築空間と不可分だった照明作品の再制作・再構成も行われる。1963年に松屋サロンへ設置された、ボールチェーンを素材とするシャンデリア「チェーンデリア」は、本展のために原寸大で復元。リーガロイヤルホテル大阪 ヴィニェット コレクションの光造形《瑞雲》(1973)は、制作当時のクリスタルガラス・パーツ約3,000個を用いて一部を再構成する。
会期中には公式図録を刊行するほか、研究者や専門家によるトークイベントも実施予定。彫刻、建築、デザインを横断した多田美波の仕事を、創作背景と美術史的な位置づけの両面から検証する。
プロフィール

多田美波研究所での制作風景 1978 撮影:成瀬友康 (株)世界文化社提供
多田美波(Tada Minami)
1924年、台湾・高雄に生まれ、朝鮮で育つ。1944年に女子美術専門学校(現・女子美術大学)西洋画科を卒業。1956年に第41回二科展、1957年に第9回読売アンデパンダン展へ油彩画を出品し、同年、東京・炭労会館のためにレリーフ《炭鉱》を制作した。1962年、多田美波研究所を設立。
代表作に《周波数 37306505》(1965、東京都現代美術館蔵)、屋外彫刻《キアロスクーロ》(1979、東京国立近代美術館蔵)がある。建築空間における仕事として、皇居新宮殿の光造形(1968)、帝国ホテル 東京の光壁《黎明》(1970)、リーガロイヤルホテル大阪 ヴィニェット コレクションの照明《瑞雲》(1973)などを手がけた。
主な受賞歴に「第8回日本国際美術展優秀賞」(1965)、「第1回ヘンリー・ムーア大賞」(1979)、「第6回吉田五十八賞」(1981)がある。1988年に紫綬褒章、1994年に勲四等宝冠章を受章。2014年逝去。
開催情報
多田美波―光、凛と ゆれる
会期:2026年8月29日(土)~12月6日(日)
会場:東京都現代美術館 企画展示室 B2F
開館時間:10:00~18:00(展示室入場は閉館の30分前まで)
※11月の毎金曜日は20:00まで開館
休館日:月曜日(9月21日、10月12日、11月23日は開館)、9月24日、10月13日、11月24日
観覧料:一般 1,600円/大学生・専門学校生・65歳以上 1,100円/中高生 640円/小学生以下無料
※10月10日(土)~12日(月・祝)は中高生・専門学校生・大学生は無料(要学生証提示)
主催:東京都現代美術館(公益財団法人東京都歴史文化財団)
企画協力:多田美波研究所
ウェブサイト:https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/Tada-Minami/
Instagram:@mot_museum_art_tokyo