ヒップホップとサルトリアルの交差点、ジェイデン・スミスが再定義するChristian Louboutinのメンズ像
“ジェイデン・スミス就任”が意味するもの
俳優、ミュージシャン、アーティスト、そしてファッションアイコン。ジェイデン・スミスは、多彩な活動を通して同世代のカルチャーを象徴する存在となってきた。ラグジュアリーブランドのキャンペーン出演から独自のファッション表現、環境問題への取り組みまで、その活動領域は幅広い。
2025年9月、ジェイデン・スミスが<Christian Louboutin>のメンズ クリエイティブ・ディレクターに就任すると発表された際、ファッション業界には大きな驚きと期待が広がった。
<Christian Louboutin>は、レッドソールを象徴に、ドレスシューズやフォーマルシューズの分野で独自の地位を築いてきたメゾンだ。一方のジェイデン・スミスは、音楽やストリートカルチャーを背景に、自身ならではのスタイルを発信し続けてきた。
今回の2026年秋冬コレクションを見ると、この両者には確かな共通点があることが分かる。それは、自分たちらしい方法で既存のルールを書き換えてきたことだ。
デザイナー クリスチャン・ルブタンは、クラシックな紳士靴に装飾性や色気を持ち込み、独自のエレガンスを築いてきた。ジェイデン・スミスもまた、ジャンルやカルチャーの境界を軽やかに行き来しながら、自身の表現を磨いてきた。
今回のコレクションでは、ヒップホップ、スケートカルチャー、サルトリアル、テクニカルギアといった異なる要素が自然につながっている。ジェイデン・スミスは<Christian Louboutin>の持つ大胆さを、現代のカルチャーへと結び付けているように映った。
ストリートと機能美を接続する「Tactical」

今回のコレクションを読み解くうえで欠かせないキーワードが、「Tactical」だ。コレクション名に登場する「TCT」は“Tactical(戦術的)”の略称であり、機能性や実用性へのアプローチを示している。ジェイデン・スミスは、ストリートカルチャーの感覚と都市生活に求められる機能性を一つのスタイルとして提案している。
その空気感を象徴するのが、ジェイデン・スミスの親しい友人であり、俳優・写真家としても活動するモイセス・アリアスとの協業だ。彼が撮影したパリの音楽祭「フェット・ドゥ・ラ・ミュージック」の写真はレザーへプリントされ、シューズやバッグへ展開。コレクション全体にストリートカルチャーの熱量をもたらしている。
Tactical Skate (左から)130,900円、123,200円、123,200円
なかでも特に目を引いたのが、「Tactical Skate(タクティカル スケート)」だ。スケートシューズ由来のボリューム感を持ちながら、全体のラインはすっきりとしている。ストリートの空気感と洗練された佇まいが同居し、デニムからスラックスまで幅広いスタイリングに馴染みそうな一足に仕上がっている。「フェット・ドゥ・ラ・ミュージック」プリントに加え、WHITE、LOUBI、PASTEL BLUEなど豊富なカラー展開も魅力のひとつ。今回のコレクションの方向性を最も分かりやすく示しているモデルと言えるだろう。
また、「Trapman TCT 2」は、長年展開されてきたTrapmanラインをアップデートしたモデルとして登場。Trapmanが持つカルチャー性に、Tacticalの実用的な発想を重ねることで、今季らしい表情へと進化している。
さらに「SK VI」も見逃せない。モデル名は“Skate”に由来する「SK」と、2026年へのオマージュである「VI」を組み合わせたもの。レトロなムードを漂わせながら、クッション性と通気性を備えたメッシュライニングによって快適な履き心地を実現している。
「Tactical Skate」や「SK VI」から伝わってくるのは、機能性を日常のスタイルへ自然に取り込もうとする姿勢だ。ストリートカルチャーとクラフツマンシップが交わることで、メゾンのメンズシューズはより現代のライフスタイルに寄り添う存在へと進化している。
サルトリアルを再解釈するローファー&サンダル

メゾンの原点とも言えるサルトリアルなシューズも今季の大きな見どころだ。ジェイデン・スミスを迎え、ストリートや機能性に注目が集まる今季だからこそ、メゾンらしいエレガンスの存在感も際立って見える。
(左から)The Plato Dots 225,500円、Asclepius Sling 各206,800円
「The Plato Loafer(ザ プラト ローファー)」は、クラシックなローファーを現代的なプロポーションへと調整したモデル。ドレスシューズらしい品格を保ちながら、軽やかな印象にまとめられている。
「The Plato Dots(ザ プラト ドッツ)」では、アッパーに大胆なレーザーカットを施すことで、ローファーに軽快な表情を加えた。ソックスとの組み合わせによって見え方も変わり、スタイリングの幅を広げてくれる。
さらに、「Asclepius Sling(アスクレピウス スリング)」は、スリングバック仕様によって足元に抜け感を加えたモデル。ブラックやルビレッドを基調としたカラーリングにメタリックなディテールを添えることで、ルブタンらしい華やかさも感じさせる。
クラシックなローファーやサンダルというカテゴリーに、軽やかさや遊び心を加えている点も印象的だった。ジェイデン・スミスは、メゾンが得意としてきた領域にも新鮮な視点をもたらしている。
バッグ&アクセサリーまで貫かれた世界観
バッグやアクセサリーにも、機能性とカルチャーを掛け合わせる今季のアプローチが色濃く表れている。
(左から)Tactical Tote E 357,500円 ※日本限定、Nostalgic Multi-Pocket ATL Bumbag 566,500円
バッグでは、「Tactical Tote E(タクティカル トート E)」や「Nostalgic Multi-Pocket ATL Bumbag L(ノスタルジック マルチポケット ATL バムバッグ)」を展開。収納力や実用性を備えながら、スタイリングの主役としても存在感を発揮する。
さらに今季は、新アクセサリーライン「Canopy(キャノピー)」がデビュー。カードホルダーやウォレット、キャップなど、日常に寄り添うアイテムが揃う。
(左から)CL Necklace 141,900円、CL Bracelet 48,400円
(左から)CL Keyring 37,400円、L Opener 56,100円、CL Lighter Case Keyring 56,100円
加えて、「CL Necklace」「CL Bracelet」「CL Keyring」「CL Opener」「CL Lighter Case Keyring」など、インダストリアルなメタルパーツを取り入れたアクセサリーも登場。ジュエリーとツールの中間のような佇まいが印象的だ。
フットウェアからバッグ、アクセサリーまでが同じ方向を向くことで、今回のコレクションの魅力はより立体的に伝わってくる。
今回の2026年秋冬メンズコレクションで印象的だったのは、ジェイデン・スミスが自身のカルチャー感覚を取り入れながら、<Christian Louboutin>が培ってきたクラフツマンシップやエレガンスを新たな角度から見つめ直していたことだ。
ストリートカルチャー、機能性、サルトリアルな美学。それぞれ異なる文脈から生まれた要素が、一つのコレクションの中で自然につながっている。そのバランス感覚こそが、今回の最大の魅力だった。
レッドソールが象徴してきたエレガンスは、ジェイデン・スミスによってより自由で現代的なものへとアップデートされた。2026年秋冬メンズコレクションは、新生<Christian Louboutin>の方向性を示す重要なシーズンとして記憶されるだろう。
販売情報
取扱店舗:クリスチャン ルブタン ブティック各店および公式サイト
