KAMIYA2026年秋冬コレクション──KAMIYAが描く、装飾なき男たちの現代グルーヴ
<KAMIYA>のクリエイションの根底には、80年代のブルースやロックといった、内省的で泥臭い「男らしさ」への憧憬が流れている。しかし近年、彼が手がけるヴィンテージライクなアイテムは、現代のユースカルチャーを牽引するラッパーたちから支持を集めている。デザイナーが好むブルースの内面的なかっこよさから、HIPHOPの陽気な若いグルーヴへと、ブランドの眼差しをシフトさせていた。
この投稿をInstagramで見る
今季、デザイナーの神谷氏はインスピレーションの源泉として「シカゴ」を挙げていた。音楽の歴史において、シカゴといえば重厚で泥臭い男のブルースを感じさせる街である。これまでの彼が提示してきた世界観にも、そうした「泥臭さ」があった。しかし、実際のランウェイを歩くモデルたちの佇まいから伝わってきたのは、カラッと晴れ上がった西海岸のような「陽気さ」と「やんちゃな不良な少年」であった。<KAMIYA>がこれまで美学にしていた男らしさとの「ズレ」を紐解く鍵は、ショーのために来日したラッパー、Tobi Lou(トビ・ルー)の音楽性にある。
彼はシカゴ育ちでありながら、シリアスなラップではなく、陽気なサンプリングと軽快なリズムを特徴とするアーティストだ。神谷氏はこのキャスティングを通して、「重たくて渋いルーツ」ではなく、現代の若者特有の「自由で軽やかなノリ」でショーの空気をガラッと換えたのである。Tobi Louの音楽は、ブランドが持つ過去の歴史と、現代のストリートカルチャーを繋ぐ、架け橋となっていた。


今季のコレクションを見て、「プレーンな服」だと感じる人もいるかもしれない。しかしそれは、デザインを手放したわけではない。自由を求めて集う男たちの強烈な個性をありのままに受け入れるための「余白」なのだ。その余白にこそ、神谷氏が伝えたいグルーヴ感やカルチャーのムードが色濃く込められているのである。
ラックに掛かっている時は静かな服が、彼らが袖を通し、ポケットに手を忍ばせ、ビートに合わせて歩みを進めた瞬間、ストリートの生々しさが躍動する。装飾を削ぎ落としたオーソドックスなアプローチだからこそ、彼らが纏うHIPHOPの緊張感や、着こなし一つで魅了する説得力が、輝きを放っていた。


とりわけ今季を象徴していたのが、素肌に直接ベストやジャケットを羽織るルックである。通常、ランウェイにおいて素肌に着せる手法は、アイテムの素材やカッティングを際立たせるための「演出」として用いられることが多い。しかし<KAMIYA>のショーにおいては、スタイリングのギミックではなく、圧倒的な「リアリティ」として機能していた。むき出しの肌が放つ生々しさが、ショーの空気にヒリヒリとした男性性を強く存在感を放っていく。現代のストリートが持つ特有のグルーヴを、リアルなスタイルとして取り入れたかったのだろう。
服を見せるためのショーではなく、自由を渇望する彼らの「生き様」に寄り添うためのユニフォーム。<KAMIYA>の26AWコレクションは、ファッションとカルチャーが深く交わる現代のストリートの姿を、私たちに見せてくれた。



KAMIYA 2026年秋冬コレクションはこちら
- Text : Keita Tokunaga
- Edit : Yusuke Soejima(QUI)