KEENとプロギングと音楽と|自然と人のつながりを感じるフジロック'25の朝
2日目となる7月26日(土)の朝に行われたのは「プロギング」というごみ拾いを兼ねたエコアクティビティだ。澄んだ空気の中でごみを拾う。そこには知らない人とも自然につながれる楽しさがあった。
「ただいま!苗場!」
。フジロックの会場に足を踏み入れると、多くのフジロッカーたちは自然とそんな言葉を口にする。フェスのための遠征でありながら、まるで実家に帰省したような気分。
「自然と音楽の共生」をコンセプトにしているように、フジロックでは音楽と自然と人々が調和し、訪れた人々たちの間には一体感が生まれる。この独特な空気感こそがフジロックの魅力であり、他のフェスとは一線を画すところが音楽以外の多彩な活動。ヨガ、ワークショップ、そしてフジロックランなど、誰でも気軽に参加できるアクティビティが会場の至る所で行われている。


プロギングとは?

「プロギング(plogging)」とはスウェーデン発祥で「plocka upp(拾う)」と「jogging(ジョギング)」を組み合わせた造語で、ジョギングしながらごみ拾いを行うエコアクティビティのこと。
今回参加したフジロックランは、グリーンステージからホワイトステージにかけて、朝の澄んだ空気の中を走り、ごみを拾いながら帰ってくるというプログラム。入場ゲートがオープンする前の午前7時半からスタートし、誰もいない会場に足を踏み入れることができるのはちょっとした特典のようにも感じられる。
主催しているMOBSTYLESによると、この特別な体験をさせてもらっている苗場の自然への恩返しのつもりで1日目はラン、2日目はプロギングというプログラムで開催しているという。
日本最大級のフェスであり世界的にも「クリーンなフェス」として有名なフジロックでも、残念ながらごみの散乱が目立つようになっている。会場内は毎朝ボランティアスタッフによる清掃活動が行われ、会場の美しさが保たれている背景には、多くの人々の地道な活動がある。その一端を担うフジロックランだが、参加者たちは「良いことをしている」という優越感ではなく、「フェスの一部として楽しんでいる」という純粋で前向きな空気が漂っている。
参加者のモチベーションに呼応するように、ゴールエリアでは入場ゲートで並ぶ人たちから自然と拍手が湧き上がる。名前も知らない者同士だが「フジロックを楽しむ」という共通認識でつながっていることが表れた、何とも素敵な瞬間だ。

フジロックに根づく、観客であり「担い手」としての意識
このような取り組みが行われている理由は、フェスへの関わり方の影響が大きい。来場者はステージで音楽を楽しむだけでなく、フェスご飯を楽しみ、川で涼み、そして夜はテント泊を楽しむ。天候も過酷で、雨の中で過ごすこともある。“フジロックは自然の中で開催されている”ことを感じる瞬間がいくつもあり、ごみ分別など自然とその輪が広がっていく中で「このフェスの空気を一緒に守っている」という感覚を抱く人も少なくない。フジロックではゴミを捨てる場所を「ごみゼロステーション」と名付けており、そこで分別し回収されたごみは“資源”と変わる。“資源”は翌年に使用するトイレットペーパーなどにリサイクルされ、循環型フェスであることを実感する。


<KEEN>が行動で示す自然への感謝
アウトドアのために生まれた<KEEN>は、「地球と人という存在を意識して、モノづくりをする」ことを大切にしているフットウェアブランド。多くの命が輝く自然環境を守り、地球にとってより良い存在であるために、素材の選定や製造工程のみならず、環境保護や社会貢献においても積極的に活動している。今回参加したフジロックでのプロギングにとどまらず、各地で行われるエコアクティビティや自然保護活動にも積極的に参加・支援しており、その行動のすべてに「世界を少しでもポジティブに変えたい」という思想が根付いている。
今回のフジロックで<KEEN>がサポートしたプロギングは、そのブランドの姿勢の延長線上にある。フジロックをサポートし続けるのは、アウトドアフィールドで音楽や思い思いの時間を過ごす人々と楽しい時間を共有するためでもあり、「苗場を、フジロックを一緒に育てる仲間」として存在しているのだ。
Photograph:Yukihide [JON...] Takimoto
苗場で早起きをして森を走りながらごみを拾う。自分にとっても気持ちのいい行動が、誰かの笑顔を生み、ごみのないフジロックを作っていく。
参加者の口から自然とこぼれる「また来年も」という言葉。
そんな気持ちを共有できる人たちと一緒に走るフジロックの朝は、音楽体験とはまた異なる豊かな時間だった。
- Photograph : Toma Uchida
- Text & Edit : Yusuke Soejima(QUI)


