QUI編集部が注目するファッション新興勢力|VALETTE STUDIO
—最初にブランドのコンセプトについてお話いただけますか。
<VALETTE STUDIO>のコンセプトは「パリで作られたノンジェンダーのテーラリング」です。すべてのコレクションはパリの工房で製作されていて、カスタムメイドやハーフメイドも行っています。上質さに拘ってはいますが価格が手頃なこともブランドの特徴ではあります。
—テーラリングに軸を置くブランドとして、デザイナーとして大切にしていることはなんでしょうか。
人の手で美を創ること。自分に厳しく、自分を超えること。忍耐を伴う人生の旅は、最高の自分になるために必要なことだと私は信じています。
—デザイナーとしてのインスピレーションはどこから得ることが多いですか。
コレクションごとに女性用と男性用のジャケット、パンツ、シャツなどを手がけていますが、それらは芸術、音楽、映画からインスピレーションを得ています。さらに私を魅了する人物から着想を得ることもあります。フランソワーズ・サガン、アンディ・ウォーホル、デヴィッド・ボウイ、ギャツビー、ロード・アングレーのコレクションがまさにそうです。私はアイデアをモッドボードに集めますが、何のつながりもないようなインスピレーション源が互いに議論し合うのです。集い、自由に団結すること。これこそがクリエイションだと思っています。
—デザイナーを志したきっかけを教えてください。
私は大学では法律を専攻していたのでデザイナーという道を志したのはかなり急激な方向転換でもありました。卒業後にパリのChambre Syndicale de la Couture Parisienne / French Fashion Instituteに参加し、<ISABEL MARANT(イザベル マラン)>と<Saint Laurent(サンローラン)>のテーラーリングスタジオでも働きました。そこから自分のブランドとして<VALETTE STUDIO>を立ち上げたのですが、それはメゾン・サンローランの社内研修コースであるサンローラン・クチュール・インスティテュートで最優秀賞を獲得したことがきっかけとなりました。2024年には開発を支援するためにブランドに助成金を支給する「文化省プロジェクト・モード・アペル」にも選ばれました。
—<ISABEL MARANT>と<Saint Laurent>での経験は<VALETTE STUDIO>のクリエイティブや運営にどのように活きていますか。
<ISABEL MARANT>と<Saint Laurent>で働いたことで開発からクリエイティブプロセス、ノウハウ、職業上の要求など多くのことを学びました。<VALETTE STUDIO>の挑戦や冒険に賛同してくれる多くの人と出会うこともできたので、ファッションは何よりも人間のノウハウに基づいたチームワークであることも学ぶことができたと思っています。
—テーラリングというとクラシックな枠組みが存在するイメージがありますが、デザインするうえで伝統的なルールに難しさを感じることはありますか。
<VALETTE STUDIO>のデザインに難しさというものは存在しません。製作はすべて芸術のルールに従ってパリで行われ、芯地などすべてのコンポーネントもフランス製です。図面からフィッティング用の「トワル・ア・パトロン」に取り組み、そこからプロトタイプを中継するための素材を割り当てます。適正な価格を保証するのが難しい場合もありますが、夢と現実を両立させることも仕事の一部です。
—QUIの読者にはファッション業界で働くことを夢見る学生も多いのですが、そんな若者に何かアドバイスをいただけますか。
「夢を見て、努力し、決して諦めない人には、すべてが起こる」。これは私の言葉ではありませんが覚えておいてほしいです。
—デビューからわずか1年でパリコレクションの公式スケジュールに選ばれました。順調なキャリアを歩んでいるように思いますが、ブランドとして今後も変わらないもの、または変えていきたいことはなんでしょうか。
うれしいお言葉と質問をありがとうございます。<Saint Laurent>のDNAは今後も変わっていくことはありません。私たちはMade in Parisであること、培ってきたノウハウや服づくりへの情熱、お客様に未知なるものを提供したいという願望で結ばれた特別なチームです。これらの価値観を指針として衝突することなく、たくさんの仕事に情熱をもって取り組んでいきたいと思っています。
- text : Akinori Mukaino
- translation : Tetsu Charles Kawamoto
- interview & edit : Yusuke Soejima