地獄のトラウマ映画3選|Lenny code fiction片桐航の「映画三枚」Vol.3
1993年生まれ、滋賀県出身。ロックバンドLenny code fictionのVo.&Gt.。多い時には年間200本以上の映画を観る、知る人ぞ知る映画通。独自のランキング付けには定評がある。
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ご無沙汰してます。
映画好きバンドマン、Lenny code fictionのボーカル・片桐航です。
「観れるもんなら観てみろよ」といわんばかりのトラウマ映画って観たことありますか?
感動、高揚感、ハッピーエンド。そういった映画がやっぱり多くなる世の中で、尖り続けるダークサイド映画。好き勝手やってるだけあって、そっちの方が映像が綺麗だったり衝撃が強かったりする事が多いんです。
たまにはエグ味の強い映画でも観てくださいよ。(オレも『QUI』も一切責任取らないんで自己責任で!)
Disc1 『CLIMAX クライマックス』
まずは1作品目『CLIMAX クライマックス』。こちらは今年、2019年公開。
この映画の事を書きたいから今回のテーマにしたといっても過言ではない(笑)、2019年に観た映画でダントツの衝撃作。
監督はギャスパー・ノエ。オレの大好きな(この監督の『Enter the Void』という作品が好きすぎて同じタイトルの曲を作ったぐらい好き)、尖りに尖った監督です。
映画『CLIMAX』は、実際の事件を元にしてるらしい。山奥のボロホテルみたいな所でダンサー20人が合宿するんだけど、その打ち上げで出されたサングリアの中に誰かがヤバい薬を入れて、20人全員が徐々に狂って行く様を描いただけの映画。
結論から言うと、こんな地獄という地獄を人間が作品として作れるのか!という感想でした。
とにかく地獄。ゆっくりと全員が地獄に落ちていくのをループされる叫び声とトランスミュージックの中覗き見する自分。その状況に浸ったら負け。この映画に入り込んだら負け。しかし、映画はずっとオレたちを酔わせ、連れ込もうとする。爽快感?満足感?そんなものはない。人の地獄をただ見る。それが芸術として成り立つのは、この監督の腕でしか成し得ない。
どうしてもどうしても気になる人だけ見てください。下手にカップルで観たりしないでください(笑)。ただ一つ言えるのは、2019年個人的に観た映画の中ではトップクラスに最高でdopeな映画です……。
Disc2 『縞模様のパジャマの少年』
胸糞映画というジャンルがある。
バッドエンドでもなく、胸糞悪いオチの映画(有名な所でいえば『ダンサー・イン・ザ・ダーク』等)。
あらすじは予告観てもらえばわかるはずなんで省きますが、この映画『縞模様のパジャマの少年』はオレが観てきた映画史上1番の胸糞映画。
この映画は決して娯楽ではない。もしかしたら芸術でもないのかもしれない。ただ絶対に必要な映画やと思う。この映画を観始めてしばらくすると、「もしかしてこういうオチなんじゃないか?」「こうなったら嫌やなぁーー」と、色んな想像をしていくかもしれません。
しかし、その想像は外れていきます。
そのどんな想像よりも最悪なラストが待っています。
しばらく味わったことのない余韻が襲うかもしれません。それを芸術鑑賞後の高揚感ではなく、必要だと感じた感情ならば、あなたは人間です。
Disc3 『コックと泥棒、その妻と愛人』
あなたは変態ですか??
変態じゃなければどんな生き方をしてもこの映画は作れないです。
一言で表せば「究極の美」。
『コックと泥棒、その妻と愛人』は映画というジャンルの中でも圧倒的に美を追った映画。色によって変わる表現、セリフ、小物に至るまで、とことんこだわった演出にカメラワーク。これほど美しく作られた映画をオレは知らない。
しかし、その美を惜しみなく追い続けるが故に、あらゆる変態的表現も惜しみなく使う「美を求めた変態性」。唯一無二の素晴らしさを確実に持ってる、今まで映画を多く観てる人ほど刺さる独創的映画です。
今回の3本の中で1番観やすいかもしれません(笑)。
「好きな映画なに?」と問われて1番に答えにくい3本。しかし、人生に大きすぎる何かを残す3本をお送りしました。
是非見てください。ただ、もう一度いいますが責任はとりません(笑)。
また次回。
今月のMM計画 inspired by “CLIMAX”
映画『CLIMAX クライマックス』にインスピレーションを得て、Lenny code fiction片桐航が新たに紡いだ1曲。
♪モバイルサイト「THEATER02」で再生する
※スマートフォンのみ対応
MM計画とは“1MOVIE 1MUSIC”をコンセプトに、1日1本映画を観て、その作品に着想を得て1日1曲作るという片桐航の私的プロジェクト。無類の映画好きかつ300曲ものストックを持つソングライター片桐航ならではのスパルタ作曲術で、過去には1カ月間連日MMしたこともあるという。映画と音楽の幸福な協奏がここに!
着用アイテム:シャツ / Effecten、その他スタイリスト私物
styling:橘 昌吾(@shogo_tachibana)
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- text : Wataru Katagiri(Lenny code fiction)
- photography : Kei Matsuura