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NEW GENERATIONS vol.05 – Yuta Hayashi|Actor

Jul 29, 2023
次世代を担う注目クリエイターやアーティストの新たな魅力を届ける「NEW GENERATIONS」。第5回は、俳優・林裕太。演じる役に深く向き合い、「複雑なことは複雑なまま受け取りたい」と語る22歳の思考に迫る。

NEW GENERATIONS vol.05 – Yuta Hayashi|Actor

Jul 29, 2023 - FASHION
次世代を担う注目クリエイターやアーティストの新たな魅力を届ける「NEW GENERATIONS」。第5回は、俳優・林裕太。演じる役に深く向き合い、「複雑なことは複雑なまま受け取りたい」と語る22歳の思考に迫る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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俳優になるきっかけ

― 林さんは2000年生まれで、現在22歳。小さいころはどういう子どもでしたか?

結構活発でした。家族で山登りによく行ったり。

― ご両親もアクティブなんですね。現在の趣味はランニングということですが。

中学のころに陸上部で長距離をやっていたんです。今は1日ごとに5kmぐらい、なるべく速いペースで走っています。こんなにつらいことは他にないだろって気持ちになるんですけど、その達成感が気持ちよくて続けているのかな。あとは、健康のことを考えるのが好きなので。

― 心肺機能がアップして、発声にもいい効果がありそうです。

それはあんまり意識してなかったかも(笑)。

― そんな活発な子が、俳優の道に進むきっかけは何だったのでしょうか?

小6のときに学芸会の舞台で、1人で歌う役に挑戦したんです。そのときにいろんな人から褒められたことや、舞台に立って注目を浴びていること、歌って届けている感覚がすごく気持ち良くて。俳優をやってみたいなと漠然と思うようになりました。

でもすぐに動きだしたわけではなく、普通に受験して就職することを考えていました。それで明大中野(明治大学付属中野中学・高等学校)から明治大学までエスカレーターで行ったんですけど、大学に文学部文学科の演劇学専攻というところがあったんです。

― 俳優への思いが蘇った?

悩んだのですが、やりたいことをやってみようと演劇学専攻に進学しました。そこで出会った友だちが櫻井健人という鈍牛倶楽部の俳優で、事務所を紹介してくれて。本当に運に恵まれました。

― 偶然の賜物ですね。子どものころに演劇をして楽しかったという人は少なくないでしょうが、その火を絶やさず持っていたこともすごいです。大学はそろそろ卒業でしょうか?

もうすぐです。つい最近まで卒論に追われていました。

― 卒論はなにを?

トランスジェンダー映画の変遷について書きました。

― 誰が演じるべきか、どう描くべきか、ここ数年よく話題になりますよね。

それはすごく考えなきゃいけないことです。でも役を演じることって、その役を知ることじゃないですか。だから僕は、トランスジェンダーの方や社会的マイノリティの方たちのことをもっと知るためにも演じて、それから自分になにができるのか考えていきたいんです。

複雑な問題ですが、複雑なことは単純化しないで、複雑なまま受け取れるようにちゃんと悩んで考えようといつも心がけています。

 

初めての映画で得たもの

― 俳優として活動されて約2年半、ご自身の中で大きな経験になったと思う作品はありますか?

初めて出演させていただいた『草の響き』という映画です。役者を続けようと、心の底から思えた作品でした。斎藤久志監督が厳しくやさしくお芝居について教えてくださって、共演した東出(昌大)さん、奈緒さん、大東(駿介)さんが、芝居ってこういうものだよと背中で見せてくれて。ホテルに帰ったあとにはみんなで集まって、トランプをしながら自分の悩みを聞いてくれたり。

東出さんと奈緒さんと大東さんにはすごく憧れるし、自分も10年後はこういう大人になっていたいというか、後輩に背中で語れるような役者になりたいと思っています。たとえば斎藤監督は、大東さんほどカメラの前で無防備でいられる人はいないと言うんです。

― 無防備?

構えず自然体でいられる人なんです。僕も何度か現場でお芝居を見させてもらったんですけど、本当に普通に過ごしてるんですよ。

― カメラの前でも普通なんですね。

それがすごいなと思って。歩くのさえ難しいじゃないですか。

― 撮られている、見られていると意識すると急に難しくなります。

大東さんに教えてもらったのが、生理現象を大事にしたほうが良いということ。たとえば足が痒くなったらかけばいいし、あくびが出そうになったら出しちゃえばいい。自分の体に起こるちょっとしたことを逃さずにそのまま反応すればいいって。

― でもできないですよ、普通。

カメラの前であくびできるようになったら最強ですよね。

斎藤監督からはどのような言葉が?

「お前は演技するな。芝居すんじゃねえ」って、めちゃくちゃ怒られて。初めての映画で芝居をしにきてるのに、芝居するなってどういうことだよって泣きそうになりながら、頭がぐちゃぐちゃになったままカメラの前に立っていました。でも、やっているうちにこれってお芝居を超えたなにかじゃないだろうかと感じる瞬間があるんですよ。自分の意図していないことが心の中で起こって自然とセリフが出る経験をしたときにはOKが出るし、これが監督の言っていたことなのかなと。お芝居って深いなと思うきっかけでした。

― しびれるエピソードですね。

芝居をするなというのは、小手先でやるなということだと思うし、役者のスキルじゃなくて人間として成長しろってことなんですよね。それが自分の根幹として残ったのはすごく大きかったです。

 

中川大志監督との仕事

― 2023年2月11日(土・祝)にWOWOWで放送される『アクターズ・ショート・フィルム3』の中川大志監督作品「いつまで」が最新の出演作となります。友人役を演じた井之脇海さんと板垣瑞生さんとは初共演ですか?

実は初共演でなく、板垣君は自分が初めてセリフをもらったドラマで一瞬だけ共演させてもらって、井之脇さんは自分が生徒役のドラマで先生役をやっていて。それから2年ぐらいたって同級生役で共演できることがものすごくうれしかったし、俳優として前に進めた感覚がありました。

― 感慨深いですね。3人の気のおけない男子ノリがおもしろかったです。

友だちとこういうバカみたいな会話するよなとか、友だちが結婚したらどういうふうに思うんだろうとか、自分と重ねながら見てもらえるとすごく楽しめるかなと思います。

― 中川組の雰囲気はいかがでしたか?

楽しかったです。監督も年が近いので、男4人で固まってこういうシーンにしたいとか話し合って。演出をつけるときも、僕はよく肩を組んでもらって(笑)。

― 中川監督からはどんな演出が?

監督の中でビジョンがかなり詳しく決まっていて、ここはちょっとバカにする感じでとか、ここは真面目にやってみてとか、細かな心情の変化までちゃんと伝えてくれました。自分がどうすればいいのかすごくわかりやすくて、とても初監督には見えなかったですね。

― 『アクターズ・ショート・フィルム』は俳優がショートフィルムの監督に挑戦するというプロジェクトですが、林さん自身はいつか映画を撮ってみたいなという気持ちはありますか?

監督って役者と近いようで遠い存在だからなかなか難しいですけど、いつかは撮ってみたいです。

― 撮るならどんな作品を?

映画じゃないですけど、僕「リーガルハイ」が大好きなんです。ずっと笑ってられるじゃないですか。コメディ映画は役者の力が必要で、監督のユーモアセンスも問われると思うので、挑戦してみたいですね。

 

役を演じるということ

― お芝居する際には、どのように役にアプローチしていますか?

その役の行動原理を、自分の中にある感情や考え方から探して、広げていくことを意識しています。型にはめてしまうのは楽だし、それが求められることも多いんですけど。

― わかりやすさみたいなことを。

でもそうすると、突き詰めきれないというか、ある一定のところで終わっちゃうような気がするんです。

― 年齢や経験を重ねるほどに役との共通点も見つけやすくなりそうです。

経験から引っ張れるものってたくさんあると思うんですけど、逆にそれがなかった状態に戻すのは難しいですよね。経験がないからこそのみずみずしさも魅力だから、今の自分の年齢や経験でしか出せないものを大事にしたいと思っています。

― やりがいや達成感が沸き上がるのはどういうときですか?

観てくれた人が「いいね」と言ってくれたり、一緒に仕事をしてくれる人が「一緒に頑張ろう」と言ってくれたり、そういう人のおかげで役者を続けられています。実際にやっているときって自分が良いのか悪いのかさえわからないですし、自分が映っている作品はなかなか客観的に観られなくてつらいです(笑)。

― 座右の銘はありますか?

僕、星のカービィが好きだったんですよ。

― ゲームの?

はい。そのキャラクターの座右の銘が「明日は明日の風が吹く」で。そのぐらいの気持ちでいることで、毎日を新鮮に過ごしたいなって。

― あきらめの意味でなく、すごくポジティブな捉え方でいいですね。

感受性豊かにいろんなことを取り込んで、また明日、また明日と生きていければ楽しくなっていくんじゃないかと思います。

― 最後に、俳優として将来像や目標があれば教えてください。

クルド人の移民問題を題材にした映画『マイスモールランド』の川和田(恵真)監督が大学に授業をしにきてくださったときに、映画をきっかけにクルド人の移民が1人認められたというようなことをおっしゃっていて。僕は映画にはそういう力があると思うし、生きていくのがつらい人たちに寄り添っていけるような作品に出られるようになりたいです。

役を演じることで、社会問題や誰かの悩みを知って、そのうえで自分にできることを探さなきゃいけない。そのことをもっと考えて、行動できる人間になれたらなと思っています。

 

 

Profile _ 林裕太(はやし・ゆうた)
2000年11月2日生まれ、東京都出身。2020年に俳優としての活動スタート。2021年に『草の響き』(斎藤久志監督)にて映画初出演し注目を集め、翌年に『間借り屋の恋』(増田嵩虎監督)にて映画単独初主演。近年の主な出演作に、映画『少年と戦車』(竹中貞人監督)、『少女は卒業しない』(中川駿監督)、ドラマ『特捜9』(EX)、『家政夫のミタゾノ』(EX)、『センゴク 大失敗したリーダーの大逆転』(NHK-BSP)、『ちょい釣りダンディ』(BSテレ東)などがある。W主演を務めた映画『ロストサマー』(麻美脚本・監督)の公開が控える。

 

  • Photographer : Ayaka Horiuchi
  • Stylist : Kyoka Tanabe
  • Hair&Make-up Artist : Terakado Yuka
  • Editor / Writer : Yusuke Takayama(QUI)

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