音を纏い、服を聴く|STORAMA 谷田浩 × UNISON SQUARE GARDEN 鈴木貴雄 特別対談 <後篇>
STOF/bedsidedrama/STORAMA/VOY/Waltermatiefなど多くのブランドを手がけてる人。旅と漫画と柴犬と垢抜けないポメラニアンとエキゾチックショートヘアが好き。
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キャッチーなメロディーラインと3人が織りなす鮮烈なライブパフォーマンスでオーディエンスを魅了し続ける実力派3ピース・ロックバンド。2019年に結成15周年を迎え、大阪・舞洲スポーツアイランドにて記念ライブ「プログラム15th」を成功させた。UNISON SQUARE GARDENのドラム。ゲーム好き。
取捨選択のスピード
ーゲームと服作りで重なる点を感じることはありますか?
谷田:そうですね、少しですがあると思います。 服づくりも結局コツコツ系なので。キャラメイクとか、シムシティとかも近いといえば近いかも。
鈴木:けっきょくデザインよりもそこから形にするまでの行程が大変ですよね。 それこそコツコツじゃないですか。 何千とある生地の中から選んだりとか、どこに発注するとか、納期がどうとか。 それは俺苦手だわ。
ーひとつひとつ組み立てていくのは昔から好きな作業なのでしょうか?
谷田:サンプルをつくるまでは他人に任せられない作業だからなぁ。好きかと聞かれると好きかも。 嫌いではない。というか得意っていうのが一番しっくりくるかも。
ー最初のお話でも着地のお話ありましたね。 イメージしたところまで辿り着くためのルートとかが整理されている感じでしょうか?
谷田:あんまり迷いがないというか、正解は無数にあるというのが前提なので、あとはどれを選択するかだけ。 なら、迷わなくていいかなって。
鈴木:判断が早いんですよね。
ー作っていくとなるとあれもいいな、これもいいなってなるところを取捨選択が出来るっていう事ですよね。
谷田:取捨選択はたぶん異常に早いですね。逆に何かを諦めるのも得意なので、せっかくつくっても使わないみたいなのもよくあります。
ー映画監督とかでも大変な思いして撮ったから使わなきゃじゃなくて、いかにバッサリ切れるかが重要って言いますもんね。
鈴木:僕が結構突飛なことを言ったときも、ちょっと考えて、すぐに代わりのアイデアを出してくれて、それがまた良いみたいなことが何度かありました。 何、この人早っ!て思いますよ。
ーそうですよね、谷田さんはSTOF/bedsidedrama/STORAMA/VOY等数多くのブランドを手掛ける中、渋谷 – 代官山エリアにSAMVA(谷田氏がAquviiの川辺恭造、YEAHRIGHT!!の河村慶太との三者で立ち上げたショップ)もスタートして一見とても忙しそうですが、思いついたらどんどんやりたくなるのでしょうか?
谷田:やりたいことをやってるというのももちろんあるんですが、やりたい!というエモーショナルな感じで動くというよりは与えられた場所があるならやってみようって感じが近いですかね。
鈴木:この話、前もしたことあるんですど、その時も同じ感じで話してて。 能動的にやりたいやりたい、服大好きっていう言葉は一切聞かないですね。 服っていうよりも、つくること自体が好きで、できちゃうっていう温度感なんだなって思いました。 なのでアイデアマンっていう言葉がその日でしっくり来た言葉だったんですよね。
谷田:興味のあることがやれる環境になった時、迷わずやっちゃうタイプですね。やりたくなくないんだったらやろう。みたいな。
ーそうですよね、それでいろんなことがきっかけでブランドが生まれていったり、企画が生まれていったり。
谷田:はい。今回のセッションも比較的やりたくてやってる指数が高いです。(笑)
皮膚と鼓膜
ー今回、QUIとしてのテーマは「皮膚と鼓膜」なのですが、音楽と洋服というテーマにしていて、タイトルも「音を纏い服を聴く」というタイトルにしようと考えています。
谷田:鈴木くんと凄い気が合いそうだね。気が合いそうなフレーズ。(笑)
ー恐縮です(笑)。そこで、このテーマを切り口にお二方の表現の哲学について迫りたいと思います。それぞれ、耳で聞く音と、肌に纏う衣服という点では無形か有形かという違いがあると思うのですが、その違いを踏まえた上で最終的なお届け先であるお客様への思いや哲学をお聞かせください。
谷田:とにかく、(お客さんが)面白がってくれればいいなって。本筋からずれるかもしれないんですけど、今回これをやろうと思ったきっかけが大きく二つあって。一つは服を専門でやってない人と服を作ってみたい。もう一つは、僕が思いもよらないところで見られたい。という気持ちがありました。半年ほど前にUNISON SQUARE GAERDENの15周年ライブのグッズを作らせてもらった時にとても大きな反響があったんです。それはある意味ユニゾンの枠は超えていないのかもしれないんですけど、普段(自分の作った服を)見ていない人たちが見てくれたという手応えはありました。今回はその範囲をもう少し拡張したいという気持ちもあって動画も作ってます。面白がってほしいっていうのは基本的な思いなんですけど。今は何かを作って普通に出しても、小さな村の中で終わってしまうような、見えない壁があってこれ以上は外に行けないみたいな感覚がずっとあって。今回はその壁を壊して外に出てみようっていうのが一つの目的になっています。
ー普段STOFやbedsidedramaのアイテムをあまり手に取らないお客様へ届くようにしたかった?
谷田:そうですね。ジャンルとか、値段とかじゃない部分でとにかく一回見てもらえたらなって。
鈴木:確かに、、服は視聴できないですもんね、音楽と違って。デパートとかに置いてもらうしかないから。セレクトショップとか。
谷田:デパートもデパートで村だし、セレクトショップもセレクトショップで違う村なんだと思う。一度迷い込んだら意外と出にくい村。
鈴木:ZOZOさんなんかはどうなんですか?
谷田:ブランド名で検索してくれる人はいるけど、全く知らない人があたらしいファッションに出会うという機能はZOZOにはあまりない気がする。そういった人たちにも届ける方法って意外にないかも。
鈴木:音楽サイトのナタリーとかに今回のプロジェクトが載るといいですね。
谷田:そうだね。恵比寿のリキッドルームで音楽フェスをしたり(自分の踊りを踊ればいいんだよ/2017)、今回の狙いと近いことは昔からやっているけどなかなかどこかに届いたって実感がなくて。面白いものを作ってる自負はあるので、もう少し色んな人に見てもらいたいなって気持ちはあるなー。
鈴木:一回見た上で必要なければいいんですけど、そもそもその選択をする機会がない人が圧倒的に多いからもったいない。こんなにいいブランドなのに。
谷田:まぁ、うちの服はどちらかというまでもなくマニアックなんだけど。
鈴木:そうですね。
ドラマーとしての成長
ー鈴木さんのファンの方々で、谷田さんの作る服が好きそうだなと思う方々は多いですか?
鈴木:いや、うちのバンドの音楽はファッションとの親和性が高いわけではないので。マニアックなファッションにさほど興味がない人も多いかもしれない。一般的にも、遊び心のある洋服に高いお金を払いたいっていうよりは、値段がお手頃で自分に似合いそうなら着てみたいという感覚で選んでる人も多い気がします。でも、こんな面白い服あったんだっていう感動を知らないファンの方々も多いと思うので、ファッションについて考える機会になれば嬉しいです。その上でファンなら買ってくださいという気持ちは全くありません。でも興味を持っていただいて心が動いた方は買って着てみてほしいです。だから、今回は良い機会だなと思いますね。僕の自慢の谷田さんの服たちだから。
谷田:自慢の谷田さん(笑)。PVはそういう意味でもお互いのこれまでのお客さんを超えて、それよりも外側に届けるためのツールとして作ってます。プロモーションすら超えて、単純にかっこいい動画として文脈なくバズればいいなと思って。そういった意味でも匿名性があっていいのかなって。
ードラムの叩き方もPVの中では普段と意識的に変えてる部分もあるんですか?
鈴木:それはないですね。でも今回のセッションの中でドラマーとしても成長させてもらえたなっていうのはあります。PVの中で叩いてる楽器とか、譜面とか、こうしたいっていう点については自分で考えてるんですけど、普段のバンドでは曲を書いた人の気持ちありきで叩いてるので、今回みたいに完全に自分が自分のために考えて叩けるっていう機会はあんまりなくて。一人でスタジオでドラム叩いてるとき、神に捧げてるなって。それも今回の機会があったから生まれた感情だと思うんです。ちょっとスピリチュアルな話ですみません。変なこと言い始めたなって思われるかもしれないんですけど、不思議と本当に神に捧げている感覚になったんですよね。ドラムを叩く上での喜びはたくさんありますが、今までもってなかったベクトルを生んでもらえたなって思います。そこで得た捧げるっていう感覚をバンドにも持ち帰ってやってみたら、とても楽しいんですよね。
谷田:すごくいい話じゃん。
鈴木:心がスッとする感覚です。
ー祈祷みたいなイメージでしょうか?
鈴木:昔から神事の時にパーカッションを叩くっていう文化は、僕らが生きてる時間の何十倍何千倍という時間で行われてきたことなのでDNAレベルで何か反応しているんだろうなっていう感覚。(パーカッションが生み出す音は)メロディーという概念が生まれる前のはるか昔、それこそ言葉もなく狩りをして過ごしていた時代からみんなが盛り上がっていたものですからね。無条件で体や精神が高揚するものだなっていう感覚はあったんですけど。自分の中の原始人が喜ぶような。例えば、理屈じゃなくて叫びたくなるとか。ドラムはそういったパワーを持っている楽器だなと思っていたのですが。まさか本当に神に捧げるような、神の前で踊りをするような、それこそ今回のPVでのホナガさんの踊りと、僕のドラムっていうのはまさに神に捧げる儀式に近いのかなって。
ーそれをバンドに持ち帰って、メンバーの方にお話はされたんですか?
鈴木:いや、全くしていないです。変なこと言い始めたなって思われたくないので(笑)。でも、捧げるっていう感覚は今自分の中にたしかに存在しますけど、バンドの中ではその思考回路を出す必要はないかなって思ってます。何ならちょっと邪魔になるのかもしれない。メロディーがあって歌詞がある音楽なのでそこに乗っかっている方が自然だなっていう。でも、この捧げるっていう感覚を大事にしたプロジェクトをどこかでやってみたいなって思いましたね。
ー普段はどういった想いを持って演奏して、リスナーの方々の耳に届けようとされてますか?
鈴木:色々あるんですけど、あんまり崇高な事を言語化するのは少し野暮ったい気もしていて。谷田さんと一緒で、僕がやったことを面白がってもらえるか、もらえないかくらいの感覚ですね。あとは、僕自身が窮屈な思いを抱えながら少年時代を送ってきたので、同じように感じている方々の心がスッと自由になるような演奏がしたい。そのためにステージ上ではとにかくあけすけに大爆発してやろうっていう気持ちを一番大事にしてます。
ーその点、今回の神に捧げるイメージの演奏も、DNAレベルでお客さんの心を動かせたらいいですよね。
鈴木:そうなればいいですよね。
谷田:ライブでも鈴木くんのドラムは印象的なんですよ。普通ドラムって一歩引いた位置にいる楽器だと思うんですけど、鈴木くんは存在感が負けてないというか、ユニゾンは3人それぞれのスタイルで、いいバランスでセッションしてると思います。
鈴木:谷田さん、昔から褒めてくれるんすよね。普段は全然人のことを褒めないというか、本当に正直な人なんで。欠点についてもずけずけ言う。でも、ドラムに関してはよく褒めてくれるんですよ。だから、信頼できます。「あの谷田さんが俺を褒めてるぞ。」ってなる。(笑)
ーお二人の交流が始まるきっかけはライブの衣装を作った時ですか?
谷田:そうですね。でも、最初に衣装作った時はライブ行ってないな。なぜか誘われてないから。(笑)
鈴木:なに、そのチクチクした感じ。(笑)
谷田:バッジとかも作ったよね。
鈴木:あー!そっか、武道館?バッチだけ作って頂いたんだ。
谷田:呼ばれてないもんね。
鈴木:逆に申し訳ないと思ってました。僕からしたら一方的な愛はありましたけどね、愛がありすぎて逆に。(笑)
ー今回セッションすることで探り合い見たいなものはあったんですか?
谷田:探りというか、待ちですよね。
ー体調が良くなってほしいっていう事ですね。(笑)
鈴木:僕のアイデアを見て初めて谷田さんが行動できるので、何もできない状態でしばらく待たせてしまった。
テーマが無いと面白くない
ー今回のセッションに限らず普段の活動も含めて、アイデアの出どころは先程言っていた仏師の様に降りてくるという感覚でしょうか?
谷田:色んなルートがありますね。最初にシーズンテーマを決めるので、それに紐ついてバーッと出てくることもあれば、こっちから探しに行くこともあるし。テキスタイルを先に作ることもあれば、形から作ることもあります。テーマさえ決まってしまえば、あとはいろんなところから拾い集めてくるような感じですね。
ーとある漫画家さんが言っていたのですが、ストーリーを練るというより登場人物がしだいに独り歩きしていくようなイメージでしょうか?
谷田:そうですね、テーマありきで後はどんどん紐付いていくので。
ー谷田さんの創作活動において、テーマは非常に重要ということですよね?
谷田:いや、実はテーマいらないんですけど。でもテーマがないと面白くないなって。ないとただの服になっちゃうんです。ただの服を作るのってそんなにSTOFでやりたいことではないので、ルール付けみたいなイメージでテーマを設定してます。
ーファッションにおけるエンタメ要素の一つみたいな感じでしょうか。
谷田:というよりも、テーマがあった方が面白いデザインを考えやすい。でも、テーマが無い方がたぶん売れるんですよ。でも、無いとつまらない。
ーただの服になってしまうからですね。ちなみに谷田さんの作る作品を服以外の言葉で言うと何になるんでしょうか?
谷田:服以外の言葉、、、全然ふさわしい言葉じゃないですど、とんちみたいな感じですね。
ー服を手にとった人に対して、何かを問いかけてるような感覚でしょうか?
谷田:どちらかというと世界を面白がらせたいっていうのが基本的な考え方ですかね。
ー答えを出している服というよりは、見たり触ったり着てもらいながら意味を考えてもらえるような服?
谷田:僕はあまり親切なタイプではないので、何かしら意味を込めても伝えずに手放す。答え合わせをさせない感じかな。分かってくれる人がクスリと笑ってくれたらそれでいい。
ー基本的には説明する必要もないですよね?今こうしてインタビューを通して説明を求めてしまっているのですが(笑)、回答していく中で感じることはありますか?
谷田:クライアントワークとして服を作る場合は説明が必要ですね。でも実はその適正は持っているのかなと思ってます。対象を自分じゃないところにおけば、説得力のあるものづくりもできると思います。
鈴木:僕が谷田さんに衣裳を発注する時はクライアントワークになりますか?
谷田:そうだね。でも、鈴木くんの場合はちょっとエモすぎるから(笑)、正確にはクライアントワークではない。鈴木くんを説得する必要がない。ある意味ぶちのめせばいいっていう気持ちでやるからちょっと違う(笑)。説得してもらいたいと考えているクライアントに、説明付きで企画を通すことは出来ると思うけど、ただ、自分の中では何も説明したくないっていう。
鈴木:説明しすぎないのが、谷田さんの服の好きなところですね。
ーある程度の余白を残すことで、お客さんも「これってこういう事かな」と考える。その時間がお客さんとのコミュニケーションになってるんでしょうね。
谷田:そういえばクライアントワークとして引き受けた本(書籍:ドラえもん短歌)が最近増刷になったんですよ。装丁も、短歌の並びも考えました。クライアントに求められていることが何なのかを汲み取る力もあると思います。一応ちゃんとした大人なので。
ー服作りは、その時とは思考パターンが全然違う感じですか。
谷田:そうですね。求められてなくても、でも、やるんだよっていう精神でやっちゃう。
ー鈴木さんはその点いかがですか?
鈴木:クライアントワークっていうものがそもそもないので。
谷田:今回のセッションはクライアントワークなんじゃない?
鈴木:あんまりしっくりこないな。
言葉で伝えること。感覚で伝えること。
ー鈴木さんがアイデアの元となる絵やストーリーを谷田さんに渡した時も、あまり説明はなかったですか?
鈴木:それはしましたね。
谷田:鈴木くんは説明好きだもんね。
鈴木:説明好きというより、設定好きですね。
ー谷田さんが鈴木さんの意図を汲み取る余白を残したりは考えましたか?
鈴木:特に余白なんて考えず、自分の頭の中にあるものは全部出しました。谷田さんにどこかを拾ってもらえるといいなって。数打ちゃ当たるっていうのは大事にしてましたね。なんでもいいから書こうって。
ー普段からインタビューでいろんな質問を受けると思うのですが、どういったスタンスで回答されてますか?
鈴木:僕が自分の音楽で、自由にやることで、それを聴いた方が自由になる助けになればっていう話をよくしているんですが、それも多くのインタビューを通して自分はそう考えてたのかって分かってきたり。そうやって誰かに話していくことで見えてきたことはたくさんあります。それは僕以外のメンバーも言ってますね。話した後に自分がこうやって考えてたんだっていうのを知ることが出来る。曲を作っている時や服を作っている時にターゲットを考えてから作業に取り掛かるのと順序が逆なんですよね。
ー最初に服を作ろうと思ったきっかけ、音楽を始めたきっかけを聞かせてください。
谷田:僕は昔から「豊かな無駄のある物」を作りたいっていう気持ちがずっとあって、そこにわかりやすいものとして服があった。本来は防寒や、肌を隠す機能として服があったのかもしれませんが、防寒とか性能だけのことを考えたら服って何種類も必要ないじゃないですか。だから、ほとんどは無駄な機能だと思うんです。そういうアンチ機能みたいな考え方をしているところがあります。機能的な素材も好きなんですけど、例えばボンバーヒートっていう温感の機能を持った素材の裏地に、クールマックスという冷感の機能を持った裏地を付けるみたいな。そういう遊びが好きなんです。でも、それって全く意味はない。素材や機能よりもユーモアを勝たせたいし、機能性だけじゃ着ていて面白くないよねっていうのはコアにある。
鈴木:音楽には機能がないですからね。衣食住の中には入っていないし。災害があっても優先的に必要とされるものではなかった。例えば、ご飯を食べた後になにか聴きたいなって時はあっても、まずは食べ物だし、住むところですし、着るものだし。衣食住が完全に担保された状態が前提としてある。それこそ昔の僕自身が「豊かな無駄」のない生活をしていたこともあって、心が豊かになる無駄を求めて音楽を始めました。当時、よく聴いていたバンドが過激な発言をするんですけど、そういうところが好きだったんですよね。
ー当時はどんなバンドをよく聴いていたんでしょうか?
鈴木:その時は黒夢ですね。
ードラムに興味を持たれたきっかけは?
鈴木:もともとドラムにちゃんと興味を持ったことは無かったんです。ロックバンドに憧れていたので、バンドを組みたいと思って周囲を見ると、どうやらドラムに需要がありそうだと。みんなギターやボーカルをやりたがるんで、ドラムを探している人が多い。ドラム愛は後から付いてきましたね。
ー服でも音楽でも、お客さまの元に届いた時にどういった感想が聞けると嬉しいですか?
谷田:これを言うと角が立ちそうな気もするんですが、個人的に服に感想はいらないって思ってる。SNSでファッションについてレコメンドしてる人ってあんまり面白くないなと。心にしまっておいてほしいなって思ったりする。嬉しくないわけじゃないんですけど、自意識とのせめぎあいがあって。ファッションについて長々と語ってる人があんまり好きじゃない。説明してる自分にうっとりしてるんだろうなって感じがしてしまう。うっとりしないでほしい。もうちょっとうっとりじゃない方向に満足してほしいですね。
ー解説ではなく、例えば「カッコイイ」や「カワイイ」などの抽象的な感想をもらえるとしたら?
谷田:「おもしろい」が一番いいかな。デザイナーズブランドをやっている以上は「カッコイイ」と言ってもらえて当たり前。単純に「カッコイイ」だけを目指すのって何も難しくない。服に対して「おもしろい」っていう評価はあんまりないので、そう言ってもらえるのが一番嬉しい。
ー鈴木さんはその点いかがでしょうか?
鈴木:ここで僕が何かを言うと、ファンの皆さんに求めてるようだったり、言葉を制限してしまいそうで言いづらいところですね。特に「カッコイイ」って言われたい願望はないですね。あと、リスナーの方々と自分との間にはどうしても見えないものがある。人気があるらしいけど、本当に人気があるのかを目視で確認が出来ないというか。ファンの皆さんが喜んでくれてるらしいけど、それは現象に過ぎなくて可視化できないので。以前、友達のバンドの手伝いでライブをしたことがあって、それを観に来て下さった数人のファンの方たちと少し話した時、「救われている。」っていう言葉をもらえたのはとても嬉しかった。というのも、僕自身が過去の自分を救いたくて音楽活動をやっているところがあるので。もしも、過去の自分が客席にいたら、そいつがちょっとでも救われるようなドラムを叩きたいとも思っているんです。だから、そういった気持ちがファンのみなさんにもちゃんと届いてたんだって思えて本当に嬉しかったですね。
ーそれは最高ですね。また別の評価として、服が何枚売れたとか、CDが何枚売れたみたいなのがあると思うんですけど、その点はいかがでしょうか?
鈴木:負けたくはないかなぁ、、数字の事をバカにはしたくない。もちろん数字だけで見るのは良くないし、好きじゃないです。テレビとかだと分かりやすい情報を求められることもあるんです。何枚売れたとか、何万人動員したとか。僕らは丁寧に数字じゃないところを大事にしてるから数字がついてきたと思うんです。質ありきですよね。数字を大事にしようが、それ以外の感情や面白さを大事にしようが、やることは一つで質を上げること。それが数字に繋がってくるなって。数字が欲しいから、こうしようっていう発想はなかったですね。僕だけでなく、バンドメンバーも共通です。でも、数字を求める人を否定する気は全く無いです。そこも自由ですからね。
谷田:僕は数字にあんまりこだわりがないというか、食えればいいと思ってるタイプです。食えてるからいいかって感じです。もちろん続けられないと困りますけど。
鈴木:ちょうどこの前、谷田さんが二つの生地を持って来て「どっちがいいと思う?」って僕に聞いたんですね。そこまでクオリティに差はないんですけど、値段が倍違う。安い方でも十分なクオリティだったので「安い方でいいと思います」って答えた時に、谷田さんは「俺こういうの高いほうを選んじゃうんだよね」って。最終的な値段もそんなに高くはしないので、そういう人なんだなって思いましたね。
谷田:一部のお金持ちのためにブランドをやるというのは自分の中にはなくて。そういった意味では意外とどんな方が買ってくれるのかを気にしているかもしれないですね。
ー例えば服ならコレクション、音楽であればアルバムを作るっていう業界ではお決まりのアウトプット方法についてはどうお考えですか?
谷田:自由にやりたいですよね。自由にやりたいんですけど、まず値段を高くしたくないという気持ちがあるので、一点物っていう概念は無くなるんですよ。一点物で高くするのであれば自由に出来るんですけど、量産が前提となると、ある程度はフォーマットに沿う必要がある。そうじゃない部分もやっていきたいけど、それってお金にはならないのでお金にならない前提でやります。ファッションショーなんかもお金にはならないけど、やりたいからやる。趣味の世界ですね。今回のPVも最終的にどうなるかわからないけど、お金に繋がると思ってやったことではないです。
鈴木:そうですね。ここまでお金を掛けたのに、お金にならないものを作りましたよね。イメージ戦略というか。
谷田:イメージ戦略の中でもマニアックな部類だから。映像としての強度は強いと思うんですけど、コマーシャルとしていいとは言えない。ある意味、豊かな無駄使い。
ーお金を作りに行くところとそうじゃないところのバランス感覚みたいなものは意識はされてるんですか?
谷田:特に意識したのは阿修羅Tシャツかな。ユニゾンのファンの方々のお手元に届きやすい価格を重視しました。
鈴木:ありがとうございます。バンドのグッズとなると相場がありますからね。
谷田:うちだと安くてもその2.5倍くらいしちゃうもんね。
ー鈴木さんはその点いかがでしょうか?
鈴木:僕は曲を作ってるわけではないので、上がった曲に対してブラッシュアップするんですけど、そこは職人的な作業に近いです。今回は普段とやってることが全然違うので、それも楽しかったです。自分の脳内からスタートして服が出来上がったので。
音と服と記憶
ー実家の部屋を整理したら、昔の恋人とよく聴いてたCDが出てきたり、毎日のように着てた服が出てきて懐かしんだりする場面ってあると思うんです。そういった記憶に繋がるお仕事って素敵だなと。そういった「思い出」に残るものを作っているということについてどう思いますか?
鈴木:そこまで考えてやってないかな。結果的に誰かにとってそういうモノにはなるとは思うんですけど、そこを目的にはしてないですね。もっとシンプルにやりたいことをやるっていう、自分の身近にある狭い範囲の事をちゃんとやるっていう事しか考えてなくて。さっきの話でいうと、何枚売ることを目標にしましょうとか、誰かの心に届く事をやりましょうとか。全て順序が逆なんです。地図も描かずにやりたいことをやってたら、結果的に辿り着いていたのが到達点だったっていう。そんな順番になっていたい。音楽もファッションも、思い出として自然とついてくるんだなって思います。
ーCDやレコードのジャケットを開けて、再生するまでの一連の作業が好きという方もいらっしゃるようですがそういった視点ではいかがでしょう?
鈴木:僕は完全にサブスクリプション派なんです(笑)。便利だから漫画も電子書籍派だし。今ではサブスクとCDで音質の差も殆どないので。大切なのは「モノ」というよりも「反応」だと思うので。
谷田:それこそ最近はサスティナブルとか、10年20年と持続させようみたいな服の作り方ってあると思うんですけど、僕は本当にそういうものに興味がないんですよ。興味がないっていうのは、元からそれを目指して作るっていう事が全然面白くないと思っていて。例えば、先日会ったスタイリストさんは僕が14年前くらいに作った服を着てくれていたんですが、それでいいじゃんって。結果的に15年愛される服が作れていればいいと思ってる。でも、記憶に残る服作りはしたいなって思います。無味無臭の10年の記憶よりは、3ヵ月でもいいから記憶に結びつくような。そんな感じになればいいかなって。
ー最後に、今後の展望をお聞かせください。今回のコラボレーションも1度きりなのか気になっている方もいるかと思いますので。
鈴木:力不足を実感したのでおこがましいんですけど、個人的にはまたやりたいですね。自分の中で達成しきれなかった部分があるので。
谷田:悔いがある?
鈴木:QUIだけに(笑)。5年後、谷田さんにその気があればやりたいですね。3年後でもいいですけど。来年、再来年だと早いし、何よりも自分がそこまで変わってないと思うから。もうちょっと自分が成長したなって実感した時や、次の段階に行ってるときにやりたいですね。それまでは谷田さんも陶芸家さんとかいろんな人とコラボしていて欲しい。
谷田:今回は僕の中でも新しい試みでした。でも、こっちから誰かを探して「一緒にやりませんか?」というのも面白くないと思うので、また自然な流れで出来ればとは思います。とりあえず、3年後か5年後あたりを楽しみにしていただければと思います。
鈴木:次は悔いが残らないように。(笑)
<前篇はこちら>
Credits
Model:Hiroshi Tanida / Takao Suzuki
Photography:Yasuharu Moriyama
Transcription:Takehiko Sawada
Production Assistant : Seiko Inomata
Art Direction/Edit/Text:Hiroaki Ubukata
Information
▼谷田浩が、Aquvii 川辺恭造、YEAH RIGHT!! 河村慶太と共同運営するコンセプトショップSAMVAの記事はこちら
▼SESSIONS BY STORAMAのアイテムの予約販売は終了いたしました。