Kalevalaが90周年を記念したイベントをヘルシンキで開催、フィンランドの伝統と未来をつなぐ新たな物語
90年前、女性たちの文化的な使命から始まった
<Kalevala>は、1937年にエルサ・ヘポラウタによって設立された。その背景にあったのは、当時のフィンランドで社会を担う存在として歩みを進めていた女性たちの姿だった。フィンランドでは1906年に女性が選挙権と被選挙権を獲得し、世界に先駆けて女性が政治に参加する道が開かれていた。さらに1917年にロシアから独立すると、自国の民族文化や言語を見つめ直す「国民的覚醒」が起こり、その象徴のひとつとなったのが、<Kalevala>と同じ名を持つ民族叙事詩『Kalevala(カレワラ)』だった。
そうした時代の空気の中で、エルサが考えたのが「フィンランドの文化や伝統をどう讃えるか」ということだった。そこで目を向けたのが、フィンランドの女性たち、とりわけ『Kalevala』に登場する女性たち。彼女たちを讃える記念碑をつくるため、エルサはその資金をジュエリーの制作と販売によって集めることを思い立った。
最初の作品は1937年12月8日、大統領夫人カイサ・カッリオが主催したティーパーティーで披露され、大きな反響を呼んだという。フィンランド国立博物館のコレクションから40点の古代ジュエリーを選び、それをもとに芸術家ゲルムンド・パーエルがデザインを描いた。過去のフィンランド女性たちが身につけていた装身具を現代によみがえらせ、その売上を再び女性たちのために使う。そこには、文化や歴史を受け継ぐだけでなく、自分たちの手でその記憶を未来へつないでいこうとする意志があった。
それから長い時を経てブランド創業90周年記念の幕開けとなるこの日、会場には当時つくられた最初の40点が、新作のアイテムとともに並んだ。そこにあったのは、ひとつのジュエリーブランドの歴史だけではない。フィンランドの文化と歴史を受け継ぎ、女性たちの手で次の時代へと残そうとしてきた人々の足跡だった。<Kalevala>が歩んできた時間を辿ることで、そのジュエリーに宿るものが、装飾としての美しさだけではないことにも気づかされる。受け継がれてきた記憶と、それを未来へ手渡していこうとする意志。その両方が、ひとつひとつのジュエリーの中に息づいている。
その歩みは、ブランドの運営にも受け継がれている。1941年には、エルサのパートナーだったアイノ=マリ・メックリンが初のCEOに就任。その後も<Kalevala>のCEOは一貫して女性が務め、現在のCEO、キルシ・パーッカリで8代目となる。創業以来、<Kalevala>を所有しているのも、当初の銅像建設委員会から生まれた文化団体「カレワラ女性協会」だ。女性たちを讃えるために始まった<Kalevala>は、もうすぐ90年を迎える今も、女性たちの手によってその歴
過去、現在、そして未来が出会う場所
現クリエイティブディレクターのアイノ・アールネースが語った言葉は、今回の会場そのものを表しているようだった。舞台となったのは、20世紀初頭に建てられた歴史的建築。新たに設けられた屋根や柱が共存する空間は、90年にわたって進化してきた<Kalevala>とも呼応していた。会場では、ジュエリーが生まれるヘルシンキの自社工房にも焦点が当てられた。創業以来、<Kalevala>のジュエリーはこの工房でつくられ、ブランドのものづくりを支える揺るぎない拠点である。伝統的なフィンランドの金細工技術を受け継ぎながら、モダンなジュエリーデザインや新たなテクノロジーを取り入れてきた。この日、博物館の静かな空間には、金属を打つ音や金細工職人が手を動かす音が響いていた。完成したジュエリーを目にするだけではなく、それがどのような場所で、どんな手仕事を経て生まれるのか。静謐な博物館に響く金属の音が、<Kalevala>のものづくりを連想させた。
9つの時代を巡るジュエリーショー
このイベントのハイライトとなったのが、<Kalevala>の「9つの時代」を巡るジュエリーショー。フィンランド国立博物館のコレクションをもとに生まれた最初の40点から、ビョルン・ヴェクストロムによる「Planetaariset Laaksot(プラネターリセット・ラークソット/惑星の谷)」、そして現代の「Männyt(マンニュットゥ)」や「Vetovoima(ヴェトヴォイマ)」へと続いていく。その中には、映画『スター・ウォーズ』でレイア姫が身につけた「惑星の谷」という、フィンランドのジュエリーデザインが世界的なカルチャーへとつながった象徴的なエピソードも含まれた。

ブランド初の女性チーフデザイナー、パウラ・ハイヴァオヤへのオマージュ
90周年を迎える<Kalevala>が最初のコレクションでオマージュを捧げたのは、ブランド初の女性チーフデザイナーを務めた芸術家、パウラ・ハイヴァオヤ。今回のコレクションでは、彼女が残したデザインやその精神を現代の視点から捉え直し、パウラの娘であり彫刻家でもあるヨハンナ・ハイヴァオヤとの協働によって、新たなジュエリーへと昇華した。過去のデザインをそのまま復刻するのではなく、今の感性を通して読み替えることで、そこに宿るものを次の時代へと渡していく。そうした姿勢にも、90年にわたって<Kalevala>が大切にしてきた「大胆であり続ける」という精神が息づいている。
ジュエリーは、誰かのもとへ届いて初めて命を得る
ショーでは、ヘルシンキの工房で丁寧に手入れされた「Kalevala Preloved」のジュエリーも登場した。新しくつくられたものも、長い時間を過ごしてきたものも、使い手から使い手へ、世代から世代へと受け継がれていく。<Kalevala>のジュエリーは、完成したプロダクトとしてそこに留まるのではなく、身につける人の人生に寄り添いながら、それぞれの物語を重ねていくのだろう。クリエイティブディレクターのアイノが語った「ジュエリーが人々のもとへ届いたとき、ジュエリーは命を得る」という言葉も印象に残った。90周年という節目に振り返ったのは、フィンランドの文化や自然、女性たちの勇気、職人たちが受け継いできた技術、そしてそれらを現代へとつなぐデザイン。受け継いだものをそのまま残すのではなく、その時代の感性によって新たな形へと変えていく。
ブランドの原点でもあるフィンランド国立博物館で90周年








